19 : ちょっとした、ひと時


地球 日本 大和学園 中等部 3年A組教室

キーン♪ コーン♪ カーン♪ コーン♪
昔から続いているのか、お約束のチャイムの音がスピーカーから流れている。

「おや、もう終わりですね。このままHR済ませましょう」
「休憩なしですか」
「その分だけ早く帰れますよ」

最後の授業が担任教師だったので、「早く帰れる」という理由で、みんなが黙る。

「さて、明日から冬休みですね。近くの学校で帰宅途中の女生徒を襲う事件が続発していますので、くれぐれも注意して下さい。」

((( はーーーい )))

「また、クリスマス会の準備を行なう方は、準備で遅くまでしないようにして下さい。」

((( 遅くならないと思いますよぉ ルリが厳しいから )))

「まあ、この点については心配しなくても大丈夫ですね」

((( は・は・は・・・ )))

「では、終わりましょう。みなさん元気で来年・・・というか次はクリスマス会で会いましょう!」

( きりーーーつ … 礼! )

担任の先生に挨拶しつつ、みんなは自宅へと足早に教室を出る。

「ルリっ 帰ろう!」 (京子)

窓際の席に座っているルリに声を掛けるのは、クラスメイトの京子。
本当なら年齢通りに小等部にいるルリなんだが、スキップ制で中等部3年生にいる。
スキップで上がってきた子たちは、順当に上がってきた子たちと合わないのか、クラスに馴染めない。
しかし、年の差を気にしない京子が中心になってルリを引っ張って、現在では生徒会書記として、ルリ生徒会長を支えている。

「ちょっと待ってて京子ちゃん。日誌を届けるから」 (ルリ)
「几帳面だねぇー」 (京子)

カバンの中を整理したルリは、クラス日誌を持って教室を出る。
目的地である教職員室へと到着すると、日誌を指定の場所へと置いてから担任教師へと告げた。

「先生! クラス日誌を戻して起きました。」 (ルリ)
「はい♪ ホシノさん 有難う (パラパラと捲って) 相変わらず丁寧ね」
「あと クリスマス会の準備は、ほとんど終わっていますので、前日に内装を整えるだけです。」 (ルリ)
「作業で手伝うことは?」
「京子がいますから大丈夫です。では、失礼します。」 (ルリ)

担任教師へと挨拶を済ませると教職員室を出て行く。
まわりにいる同僚の先生方からは羨ましがられる言葉を掛けられて、ルリの担任教師は喜んでいた。


中等部 校門

京子と並んで歩くルリ … 春から続いている登下校。
昨年までは、カイトがいっしょに登校していたが、高等部に上がってからは、登下校の時間が重ならない。
仕事の時間でも移動の激しいカイトの仕事では、会社内での合わないので、専ら通信で話している。
まあ、自宅に帰れば話せるが、カイトと話す時間は、急に減った。
その代わりに、京子と友達になり、学校内では京子といっしょにいる時間が増えている。

京子と話しながら下駄箱へ到着して自分の靴を取り出すためにフタを開けると数通の手紙。

「また手紙なの。 数減らないねぇ。」 (京子)
「朝のも含めて5通ですね。困った物です。」 (ルリ)
「しかしねぇ ルリの場合は、手紙読んで全部の断りメールを書いているのが驚きなのよね」 (京子)
「書く!ことで思いを込めているのでしょうから、返事は書かないといけないでしょう」 (ルリ)
「でもねえ 調子に乗ってくるのもいるでしょう。 それに逆恨みもあったりして (ふふっ)」 (京子)

ルリはちょっと頭を傾げると・・・

「確かにありますね。そんなのは送られてきた枚数の1割未満ですが(笑顔)」 (ルリ)
「あるのお〜 でも、今でも大丈夫って事は無難に対処しているのね」 (京子)
「それは私なりの方法で! ですが」 (ルリ)


京子と並んでの下校ルート … ルリの感覚では後方に同じ人がいる感じがする。
今日は、オモイカネの調整日なので、会社の方向へと歩いていた。
ちょうど京子も何か用事があるということで、並んで歩いている。

「ルリ 何かあるの … 後ろを気にしているみたいだけど 」 (京子)
「ちょっと離れていますけど何人か、後を追っかけていますね。」 (ルリ)
「このままネルガルへと行こうか? 私のバイト先って、そこのネルガルだし。あそこは許可証がないと入れないから」 (京子)
「ちょっと待って! 今日からのアルバイト先ってネルガルだったの」 (ルリ)
「そうよ! 電算部のサブ・オペレーターなの。高収入だし試験にも何とか通過したし。」 (京子)

京子は毎月の小遣いはアルバイトで稼いでいる … というのも、お父さんが病気がちで今も入院中。
お母さんの収入だけでは足りないので、不足分を京子がアルバイトで稼いで家計を助けている。
学校で「今日から高収入のバイトを始める」って聞いていたから、どこかの会社へ臨時入社したかと思っていたルリだった。
まさか、ネルガルとは知らなかった。
もともと、ナデシコのメインAIであるオモイカネの教育はルリ自身がやっているが、サブ・システムはネルガル電算部が担当している。
ネルガル会長が、若くて良い人材を探すために一般公募した事を知っていたが、まさか京子が参加しているとは思わなかった。

「そういえばルリのアルバイト先って」 (京子)
「同じネルガルです。私の場合は開発部のメイン・オペレーターです。」 (ルリ)
「アルバイト料って高いんでしょ。メインだったら」 (京子)
「まあ、ちょっとの差でしょうね。」 (ルリ)

2人は後ろを見ないで、そのままネルガルの通用門を通って行った。


( 困りました。後についている方は、ネルガル関係者だったんですね。まだ付いています。 )

ルリは京子といっしょに地下へと進んで行く。
そして何回もドアを通過して、大きな倉庫へと出た。
そこは出入口が、今、通ってきたところだけで行き止まりになっている場所。

「ルリ! ここって行き止まり!」 (京子)

「へぇー ちょうど良い場所に出たじゃん。」
「アンタ! 誰よ。 ここは社内だから警備部を呼ぶわよ!」 (京子)
「呼んでもイイよ。親父の名前を出したら、引き下がるから」

服装から見て、大和学園・高等部の男子だと判る。
後ろには、ルリや京子と同じ中等部女子の制服を着たのがいる。
あとは、服装バラバラのチンピラが数名。

「2人いるから 楽しめそうだな」
「今までの1人ずつじゃ 飽きたし 2人を交代にヤルのも一興だなぁ」
「さあ、私の恨みを張らしてね。 あの小生意気な中等部生徒会長さまと生徒会書記の2人をさぁ」

( 今回のも怨恨絡みですね。 )

「ルリ どーすんの あの人数相手じゃぁ逃げ切れないよ」 (京子)
「さてと、どういう経緯なんでしょうか?」 (ルリ)

「単純な事さ! 今年の春に立候補した彼を負かしたのがアンタだって事さ!」
「生徒会長選挙 立候補者のひとりですね」 (ルリ)
「負けただけだったら良かったけど、そのまま『ルリ信仰者』になってねぇ。私の事は見向きもしなくなったんだよ」
「それは、ご愁傷様です。それで私に恨みですか」 (ルリ)
「そうさぁ ちょうど利害が一致したんで、手伝って貰ったのさ。」

「そこからはオレが話そう。最近、やり過ぎて警戒されちまって、獲物がないからなぁ」
「周辺で発生していた事件は、あんたたちの仕業ね」 (京子)
「そういうこと。 逃げた先がコッチで良かったよ。ここだとオレの独壇場だしな」
「もみ消しやすい … という事ですね」 (ルリ)
「そうさ、親父の名前を出せばSSでさえ従うからなぁ」

ネルガル内部の略号を使って言い合いしたので、ネルガル初心者の京子には沸かなかったのでルリに聞く。

「ルリ ・・・ SSって何?」 (京子)
「ネルガル内部にある警備部で、特殊な仕事専門の部署です。シークレット・サービスの略です。」 (ルリ)
「警備部なら大丈夫じゃないの」 (京子)
「相当、上部の方がいるみたいですね。そうでないと直轄系統が少ないSSに干渉は出来ません。」 (ルリ)

代表格のオトコがルリの説明に感心している。
ある程度の所属だと、ここまでは知らない。
特殊部署に所属するか、相当の年数でいないとSSのことは知らないだろう。
情報を教えてくれた女生徒の話しでは、10歳ぐらいと聞いたので、年数ではなく所属部署になると思われる。
そこへ急いできた!という感じの集団がやってきた … 服装や懐にある装備から見て、SSだろう。

「坊ちゃん 急いで脱出して下さい!」

これから楽しみが始まるのに邪魔をされたオトコは不機嫌に返事した。
しかし、理由を聞いて慌てている。

「出入口が判らない?」
「そうです 坊ちゃんが地下に入ったのを見かけて追ったのですが、後方のゲートが閉じて」
「閉じ込められたのか」
「はい! 周辺を探したのですが不明です」
「ここはネルガルの地下施設の、どこかじゃないのか」
「建前上、ネルガル施設になっていますが最深部の地下は違うんです。」
「だったら、どこだよ」
「Marsです」

奥にルリと京子は立って、出入口にたむろしているチンピラたちを見ている。
途中から乱入してきた黒服の集団が合流すると、チンピラたちは動揺している。

「黒服の集団が入ってきたら、向こうって動揺しているけど、どうしたんだろ。」 (京子)
「京子 ここの部屋って知ってる。」 (ルリ)
「うぅん知らない。ルリが知っていると思ったから付いて来たけど、ここは」 (京子)
「ネルガル最深部の秘密地下ドックにある船の中」 (ルリ)
「船の中ぁ〜 それに秘密地下ドックって何なの」 (京子)
「京子 ナデシコって知ってる」 (ルリ)
「うん♪ 私のバイトがそれに関係しているのは教えてもらったよ。確かサブシステムだったと思うけど」 (京子)
「ここはナデシコのサポート艦の中。所属はMars。そして、ここは格納庫の中!」 (ルリ)

ルリが場所を告げると室内の照明が一気に点灯した。
非常灯のみの薄暗い室内だったので周辺の状態が判らなかったが照明がつくと判った。
まわりの壁には足場のような造りがあり、中にはエステバリスが収めれている。

「ルリ ゲートロック確認 通路のエア抜きも済ませておいたよ」 (シグマ)
「ありがとう♪ シグマ」 (ルリ)
「どういたしまして」 (シグマ)
「ルリ どこと話しているの」 (京子)

どこ?と聞かれても、今まで普通に使っていたので気にしていなかった。
普通に考えれば話しができるAIなんて物は知られていないので、不思議がったり脅えるのも判るだろう。

「シグマ 自己紹介」 (ルリ)
「はい♪ 初めまして 機動空母キャリー メインAIのシグマと言います。ネルガル電算部アルバイトの清水京子さんですね」 (シグマ)
「あっ よろしく !? AIって喋れるのぁ」 (京子)
「はい♪ 私は特殊なシステムがあるんで言語機能も付いていますから、お話しできますよ。」 (シグマ)
「わぁぁ 面白ぉ〜い バイト先のコンピュータも、こんなのかなぁ」 (京子)
「私の他には3台しかありませんので、喋ってはくれないと思いますよ」 (シグマ)
「そうなんだぁ でも面白いなぁ」 (京子)

ゴン ルリの後ろに何か当たった音

「楽しく会話しているのに不躾ですね。」 (シグマ)
「本当に邪魔ばかりして」 (ルリ)
「えっ えっ 何 なに ??」 (京子)

ルリの後ろの床にはゴルフボールぐらいの大きさの鉄球。
チンピラたちの中の1人が投げつけた物だった。
しかし、ルリに当たりそうな手前で透明な壁に当たり、落下した。
ルリは、落ちている鉄球を拾うと重さを量ってみて、当たると怪我では済まない重さだった。

「これの重さだと怪我では済まないでしょう。」 (ルリ)
「どれどれ (ルリの手から取る) うわっ 重いなぁ 洒落じゃ済まないね 何考えてんの」 (京子)
「今までの事件の中で 何か鈍器のような物で怪我した人がいましたから、凶器はコレでしょうね」 (ルリ)
( ピッ )
「調書 調べたけどビンゴ 鈍器で動けなくした後、乱暴されたって書いてあったよ」 (シグマ)
「ありがとう♪」 (ルリ)
「どういたしまして」 (シグマ)

襲撃者を含むグループは、いつの間にやら近付いている。
ルリと京子が話しをしている間に接近した様子だった。

「出口がないなら 知ってそうなオマエらから聞けばいいさ」
「こっちはSSも含めて20人は越えているから、1人頭10人は相手して貰おうか」
「身体の方が壊れるか、精神の方が壊れるか、どっちだろうな」

この手の人種は困り者。
ルリはお仕置きがてら、1つ思い付いたのでやってみた。

「シグマ 5G」 (ルリ)
「了解 ルリ♪」 (シグマ)

人は誰でも歩いている最中 身体に重量が掛かったら倒れてしまう。
ルリの言葉通り、シグマが重力変換装置で1Gから5Gに変えると、SSとルリ以外は床に倒れてしまった。

「なんだ急に身体が重くなった。」
「重いよぁ〜 潰れる〜ぅ」 (京子)

ルリは下着が見えないように、スカートを調えながら、しゃがむと京子をお姫様だっこで持ち上げて、周囲にあるライン外へと歩いた。
ライン外に出ると急に身体が軽くなったので、抱えていた京子を床へと降ろした。

「ルリって 力あるねぇ」 (京子)
「まあ毎日、修練しているからでしょうね。」 (ルリ)
「んで、ラインの内側って、重量が違うの? 急に重くなったけど」 (京子)

あのライン内の説明する。
もともと機動兵器の格納庫は実験場も兼ねていて惑星上のいろいろな重力を試すための場所がある。
そして自由に重力を変更できるので、修練の場所としてパイロットたちの練習場も兼ねていること。
一応、同じ設備がトレーニング室にもあるが、ここのは広さがあるので、それなりに大きい場所が作られていた。

「という事は、もし体重が40キロの人だったら、あの中では」 (京子)
「200キロになっています」 (シグマ)
「黒服さんたちは、まだ立っているけど」 (京子)
「頑張っているけど、もっと加重をかけたら、倒れますね」 (シグマ)

「おい 助けろ もう 手出ししないから」
「勘弁してくれぇ 俺らは頼まれただけなんだ」
「胸が潰れるぅぅぅ」
「もうチョイでラインの外になりそう」

ルリに助けを求めているが、物を頼むというより命令口調。
冷ややかな眼で、首謀者のオトコに眼を向けると

「今までの女性たちの助けを、あなたは聞きましたか?」 (ルリ)
「ぐっ (視線がウロウロ 脂汗)」

「まあ少しは反省したみたいなので、シグマ 0.5G」 (ルリ)

一気に身体の加重がなくなり、さらに軽くなったので、チンピラたちの口調は軽くなる。
まあ、イキナリ反省するワケないので、ルリたちに飛び掛ろうと体勢を変えているが、

「反省の色が見えませんね … シグマ 10G」 (ルリ)

今度は0.5Gから10Gへの急な加重。
身体が軽いので、浮かび上がっていたのは落下。 (打ち所が悪かったのか痙攣してますね)
立ち上がろうとしたのも、また床にへばり付き。
前の5Gの頃と違って、黒服のSSさんたちも床に倒れて動けない様子。 (まぁ ゴキブリみたいですね)


(ピッ♪) ルリが持っているコミュケのウインドウが開く

「あの〜ぉ すみません ルリさん」 (プロスペクター)
「はい♪ なんでしょう」 (ルリ)
「地下ドックの通路が封鎖されているのですが、なにかあったのでしょうか」 (プロスペクター)

今までの経緯を話して、プロスペクターに引き取って貰う事にした。
一旦、地上まで帰ってきたプロスペクターの後ろには、同じようにSSの黒服が付いてきている。

「この者たちですね。」 (プロスペクター)

ライン外に立って見下ろすプロスペクター。
その先には黒服のSSたちが倒れて、もがいている。 (本当にゴキブリみたい)
ちょうど手だけが、ライン外にある者を見つけたので、DNA検査器をあててみる。

「あなたの名前は何でしょう♪ ・・・・・・・・・・ 出ましたね! ほぉーっ ヨーロッパ方面ですかぁ」 (プロスペクター)
「あとの処分は、お任せしますね。」 (ルリ)
「お任せください! 徹底的に調べますね。」 (プロスペクター)

ルリがシグマに言って10Gから1Gに戻すと、プロスペクターが連れてきた黒服たちが、倒れている黒服を連行する。
同じようにチンピラたちや、制服の男女も連行しようとすると、プロスのコミュケで割り込みがあった。

「プロスさん ちょっと待って貰えますか。」 (アキト)
「それは、構いませんが、どちらにいらっしゃいますか」 (プロスペクター)

プロスが姿を探してみると、格納庫の外壁側ハッチが開いて、黒と白のエステが入ってきた。
そのまま開いているスペースへと駐機して固定されるとコアが開いてパイロットが降りてくる。

「アキトさん♪ カイトさん♪」 (ルリ)
「???」 (京子)

近くまで2人のパイロットは歩いてくるとヘルメットを取る。
ルリは、白いパイロットの空いている腕を掴んで、抱き込んで甘えている。
黒いパイロットの方は、その2人を見て微笑んでいる。
ルリの甘えた仕草を見て驚いたが、黒服に連行されようとしていた制服の男女のうち、オトコの方が驚いていた。

「生徒会長!」

「プロスさん これでウチの学生だという事が判りました。」 (アキト)
「では、引き渡しましょうか?」 (プロスペクター)
「いいえ アカツキには話しを通しておきますので、そちらで処理して下さい。」 (アキト)
「では、じっくりと料理しましょう。 … では失礼しますね」 (プロスペクター)

プロスペクターが立ち去ると、その後ろには逮捕した連中を引き立てていく黒服の一団。
途中で、なんか喚いている人たちを、ドツキながら歩いているのもいる。


秘密地下ドック内 キャリー船内 シャワールーム

「ふわぁー 気持ちいいですね。」 (ルリ)
「緊張して汗かいたけど、勝手に使っちゃって大丈夫かなぁ」 (京子)
「一応、Mars船籍の船ですから、大丈夫ですよ。先程、了解は取って置きましたから。」 (ルリ)
「そうなの」 (京子)

襲撃を無事に退けた後、緊張しまくっていた京子の「汗かいた」で、シャワールームへと直行して、2人はシャワーを浴びている。
バスタオルを身体に巻いて、出てくると、髪を乾かしながら、服を探すが、見付からない。
ルリが言うには、汗臭くなったからクリーニングに出している … ということ。

「下着も全部〜〜〜ぅ。じゃぁ、このまま裸で待っているの?」 (京子)
「大丈夫ですよ。こっちのロッカーには下着から服まで入っていますから。」 (ルリ)

ルリが開いた先には、ネルガル製の制服がいっぱいあった。
サイズを知っているのか、下着から制服、ブーツまで、一式を選び出し、京子に渡す。
同じようにルリも自分のサイズにあう制服を見繕うと、着ていく。
最後は、コミュケの装置を左腰へと取り付ける。

「さて、サッパリした所で、みなさんが待っている部屋へと行きましょう。」 (ルリ)
「みんなが待っている?って」 (京子)

勝手知ったるキャリーの中 、ルリは、ずんずんと通路を進んでいく。


船内 食堂

到着した部屋は、食堂。
中からは、甘ぁ〜ぃ香りが漂っている。
食堂の中に入ってみると、テーブルの上には大きなケーキが置かれて、切り分けられていた。

「京子 飲み物どうする?」 (ルリ)
「ルリと同じでいいよ。」 (京子)
「カイトさぁ〜ん 私と同じ物を、もう1つ お願いします。」 (ルリ)

テーブルを切り分けているのは、カイト先輩 … その隣には飲み物を準備するアキト先輩がいる。
切り分けたケーキを食べているスーツ姿の男性と女性。
ルリと京子は席につくと目の前に切り分けられたケーキとミルクティーが置かれた。

「さて、アカツキ (軽め怒り) 今回の騒動は、高等部の奴が原因だと思うが、親はどうなる」 (アキト)
「そう怒らなくても (汗) たかだか親父の権力を使った坊主の悪さだから」 (アカツキ)
「オマエだって同じだろうが … どう違うんだ!」 (アキト)
「結構、キツイねぇー そこまで悪くは無い! 少なくとボクの場合は…ね」 (アカツキ)
「えぇ 書類さえ溜めなければ… ですが。」 (エリナ)
「両方からの攻撃はキツイなぁ は・は・・は・・・ はぁ〜ぁ」 (アカツキ)

「こっちの処分は、学園長と相談して即決決定したぞ! 明日の朝、掲示されるが退学に決定した。」 (アキト)
「中等部もです。謹慎処分1週間プラス校内美化活動のオマケ付きです。」 (ルリ)

「こちらは降格のうえ、本社への転属です。」 (エリナ)
「本社だと降格の意味がないのでは」 (カイト)
「現在は重役ですが、期間契約社員まで格下げです。一番下から、やり直して貰います。」 (エリナ)
「契約が切れるまで辞めることはできないよ。エリナ君の下で徹底的にシバいて貰うよ」 (アカツキ)

お茶の席でスーツ姿の男女を紹介してくれた。
男性がネルガル会長 アカツキ・ナガレさんで、 その秘書のエリナ・キンジョウ・ウォンさん。
話しの途中でアカツキさんが私を口説きにきていたけど、お付き合いしている男性がいるので断ったの。
名前を聞いて、テンカワ先輩とカイト先輩が驚いていたけど、そんなに驚くかな。

「京子ちゃんって15歳だってね。ちょっとボクとお付き合いしない。」 (アカツキ)
「やっだぁ〜 アカツキさんって口説き上手ですね。 でも私 お付き合いしている男性がいるので」 (京子)
「えぇー もう、お手つきなの。」 (アカツキ)

( バシ! ) ハリセンでアカツキの後頭部を叩く

「表現が悪いでしょ!」 (エリナ)
「(うふっ) まだ、キスまでですよ♪ お隣さんだったので、お兄ちゃんから彼氏に格上げしたぐらいかなぁ」 (京子)
「京子 そんな素振り見せないから、判りませんでした。」 (ルリ)
「ルリが判らないのも無理ないよ。宇宙軍にいるから、たまぁ〜にしか帰って来ないし … サダちゃんは」 (京子)

「サダ … ちゃ …ん ?」 (ルリ)

「サダアキって言うの それで略してサダちゃんって言ってるの」 (京子)

「サダちゃん … サダアキ … 連合宇宙軍 … ? … ? … ? 」 (アキト&カイト)

「サダちゃん ってね 今は結構偉いの 大佐って言ってたなぁ あっ! 今度の配属で准将になるって」 (京子)

「サダアキ … 大佐 … 今度の配属 … 准将 … ? … ? … ? … まさかなぁ?」 (アキト&カイト)

「サダちゃん って今度は民間の船に乗るって言ってたから、私も乗れないかなぁ〜 一応、オペレータになったし」 (京子)

「「 わかった!! 」」 (アキト&カイト)

連合宇宙軍 ムネタケ・サダアキ大佐 … 現在の宇宙軍総参謀長の息子だ!」 (アキト)

せいかぁ〜い(正解)! って、なんで知っているの先輩たち」 (京子)

※ 京子サイド
先輩たちが言うには、サダちゃんのお父さんを知っているってこと。
それで、息子の名前が判ったらしいけど、少ない材料で、よく判ったねぇ。
まあ、それだけ有名になったのかな? サダちゃんは。 (ムフッ)

※アキト&カイト サイド
驚いたなぁ あのキノコの彼女が、ルリのクラスメイトとは知らんかった。
それも彼女ができてから性格変わったって(?) 信じられんけど ナデシコに乗ったら判るだろう。
ついでに 京子ちゃんも乗せれないか、アカツキと交渉しておこう。


意外な人の迎え

ネルガルの建物前には迎えが来ていた。
京子の家へも連絡が行っていたのだが、ちょうど帰っていたムネタケに頼んで迎えに行って貰ったらしい。

「キノコ (驚) いや … ムネタケ大佐ですね。」 (アキト)
「そうよ! あんたはーぁ … あ! あの時の … また変な所で会ったわね。」 (ムネタケ)

アキトとムネタケは、街の中でのトラブルで偶然居合わせた。
その時に顔を知ったので、今回の出会いでも、すぐに思い出したみたいだ。

「えぇ おかしな所で会いますね。」 (アキト)
「サダちゃん お待たせ! んっ アキト先輩のこと … 知ってんの?」 (京子)

「アキト先輩???」 (ムネタケ)
「そうよ テンカワ・アキト先輩 … 私が通っている大和学園・高等部・生徒会長なの。」 (京子)
「あんた、それで、あの時に制服の人たちを連行して行ったのね。(ふむふむ)」 (ムネタケ)
「まあ、あの時はウチの学生が悪さをしていたんで成敗ですよ。(苦笑い)」 (アキト)
「ホント腕っぷしもあるし (ポン♪) 宇宙軍に入らない? 結構オススメの就職先だと思うけど」 (ムネタケ)
「遠慮しておきます。 実は、もう就職先が決まっているんで (あははは) 」 (アキト)
「そうなの まぁ 軍に入ることになったら何かの縁だし 連絡してね それじゃ … 京子 帰るわよ」 (ムネタケ)
「それじゃ ルリ クリスマス会でね … カイト先輩 アキト先輩 失礼します! … あぁー ちょっと待って って言ってんでしょ」 (京子)


その夜

「アキト兄さん キノコさんの記録が出ました」 (カイト)
「どれどれぇ〜」 (アキト)

2人してモニターを見ているとユリカがやってきた。
そしてアキトの隣に座ると、同じようにモニターを読む。

「これってキノコさんの記録じゃない」 (ユリカ)
「前と違っていてな なんか丸くなっているんだ … 性格が」 (アキト)
「ふう〜ぅ〜ん」 (ユリカ)

カイトがユリカに今日起きたことを説明すると、ユリカも信じられない…という表情になっている。
3人がキノコの記録を読んでみると、火星大戦で地球に戻った後、フクベ提督といっしょに、祭り上げられた。
だが、自分の信念と、何か食い違いを感じて、どん底状態に落ちた時に、隣家にいた京子が遊びに連れ出したらしい。
それからは、休暇の度に京子と遊びに出て、現在では両家公認で、お付き合いをしている。
なんとまぁ、変われば、変わるもんだ。

「なんとまあ、変わるもんだなぁ」 (アキト)
「これで京子ちゃんもナデシコ行きだったら、ムネタケの精神安定剤になるかも知れませんね 兄さん」 (カイト)
「でも、キノコさん … じゃなくてムネタケ副提督ってブリッジ勤務でしょう どうするの京子ちゃん」 (ユリカ)
「オペレーターのサブは、出来ないしなぁ … IFSないし」 (アキト)
「通信士のサブは、どうでしょう?」 (ルリ)
「そこがあった …っっって、ルリちゃん! いたの?」 (ユリカ)

「はい、 いました♪ カイトさんに、お願いがあったんで」 (ルリ)
「お願いって?」 (カイト)
「明日のクリスマス会で、エスコートして欲しいんです。」 (ルリ)
「そんなこと … 明日は休暇にしているから大丈夫だよ」 (カイト)
「ありがとうございます」 (ルリ)

「でも通信士のサブって、確かに穴だったよね」 (ユリカ)
「操舵士のサブはエリナさんが後から乗ってくるし、サブ・オペレーターはラピスの予定だし」 (アキト)
「ユリカ姉さんのバックアップは、アキト兄さんだから、通信士しかないね。」 (カイト)
「ほんじゃ … ま! さっさと行って調整しとこう。」 (アキト)


大和学園 中等部 校門前

今日は、クリスマス会です。
制服は着ないで、パーティドレスでの参加になります。
パーティなので異性のエスコートがあるのですが、私の場合はカイトさん。
私が着ているドレスも、わざわざカイトさんが見立てて、私が『お願い』に行く前に準備をしてくれていました。
カイトさんは、会社のパーティでも使っている会社のスーツ。
学校の校門までは、アキトさん運転で送ってくれました。
そして、校門前で京子を待っていると、軍服を着た男性のエスコートで、やってきました。

「おはよう! 京子」 (ルリ)
「おはよう! ルリ」 (京子)

親友である京子の表情は明るい。
昨日、ネルガルのスカウトが来て、通信士として乗り込むことに決定。
もちろん、隣のムネタケさんの部屋に乗り込んで、いっしょに行くことを話したら、ちょっとゴネたらしいの。
まあ、説明・説得して、なんとかなったみたい。

「昨日 通信士として契約して サダちゃんに言ったら ごねまくり。 でも何とかなったわ」 (京子)
「それは、良かったね」 (ルリ)
「中卒で、ネルガルの社員かぁ。今のご時世らしい仕事の決め方よね」 (京子)
「京子! 高校は出てもらうわよ! 私との釣り合いがあるからね」 (ムネタケ)
「えぇー 通信制だと卒業まで時間かかるし もう永久就職先が決まっているからイイでしょ」 (京子)
「それでも駄ぁ〜目! 京子のご両親との約束なんだから 何年かかっても大学卒業までして貰うわ」 (ムネタケ)

京子の左手には指輪 … もちろんサダちゃんからの贈り物。
同じような物が、ルリの左手にもある … こっちはカイトさんがくれた物 … ピアスといっしょに。

2組が教室に入ると、黄色い歓声。
ムネタケと京子 … ムネタケさん って意外にも若かったんですね。それでも年の差カップルです。
私とカイトさんの年の差は3つ違いですが、もう結婚済みなんですよ。
でも、これはバラす訳にはいきません。


あとがき

前哨戦の最後としてのサイドストーリーとして、カイト×ルリにしてみました。
まあ、伏線も入っていて、書いていたら長くなってしまいました。(笑)
あとがきを書くときに、1ページの容量をみるのですが、今まででイチバン容量が大きい。
2ページに分けることも考えたのですが、いっきに書いてしまい、結局、区切りを考えずにやってしまいました。

さて次は20話目。
出港直前のつなぎを書いて、21話からTV版の始まりです。


| 2007/01/04 製作開始 | 2007/01/04 校正 | 2007/01/05 『風の通り道』 投稿 |


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