14 : また・・・火星へ


地球 日本海上空 試験戦艦内

「くっそぉ〜、また負けたぁー」
「どーやったら、あそこで避けれるんだよ」
「これで・・・全員、負け!」

艦内にあるシュミレーション・ルームでは、エステバリスの模擬戦闘を行なっていた。
士官学校1年生VS2・3年生混合の戦闘・・・混合チームが全滅して戦闘終了。

そもそも、こんな状況になったのは、試験戦艦の所属パイロットとして各士官学校から選ばれて乗艦したのだが、お山の大将になりたいのは毎度のこと。
各地域の士官学校の1年生から3年生が入り混じっているので、当然、揉める。
最終的には、実力勝負で決着を付けるのである。

シュミレータの周りには、パイロットたちと判定係となる支援課の生徒たち。
壁にレポートを貼り付けて対戦を始めたのだが、佐世保の士官学校からきた選抜チームが強い・・・というか強すぎた。
もう3ケタの勝負をしているのに負けが・・・ない。

まあ、負けまくっていても下級生に負けるとなると意地が出て、また勝負という、エンドレスを続けていた。
とうとう最後には、教官長が出てきて、ナイフ1本での総当り ・・・ バトルロイヤルという事になった。
これで生き残ったのに『従う』という約束付きで・・・。

「よっしゃ〜ぁ! 武器なし・・・ナイフ1本の格闘戦なら負けんぞぉ」 ・・・と意気込む上級生
「まだ、やるのぉ〜 早く終わりたい(悲)」 ・・・佐世保以外の下級生
「やっと終わりになるのかな ・・・ アキト・・・マジでやるぞ! 今度は絶対勝ってやる」 ・・・アキト以外の佐世保チーム
「はぁ〜メンド」 ・・・面倒臭そうなアキト

アキトも含めて約40機のエステバリス。
バトルロイヤルが始まって・・・時間経過中・・・佐世保チームのエステだけが残って勝負している。
アキトのエステバリスを挟むように、残り全機のエステバリスで取り囲んで格闘しているのだが、当たりもしない。

「もう手がないぞ・・・ 他はどうだぁ」 (汗ダラダラ・・打つ手なし)・
「こっちもエネルギー切れ寸前 ・・・ 戦闘機動できない」 (諦め)
「わりぃ ナイフにヒビが入っているわ 使えないぞ」 (素手しかないか)

「もうギブアップしろ! またコクピットを刺してやろうか」

毎回、コクピットへの直接攻撃で勝負が付いているので、また、同じになるだろうと ・・・ 全員ギブアップした。
シュミレーションからアキトたちが出てくると、教官長との約束でもあるので、他のチームは、しぶしぶながら実力を認めた。

教官長から解散を告げられたのでバラバラになったが、佐世保チームは、その場で検討会を始めた。
アキトがいる頃から始まった検討会だが、実力アップにつながるテクニックを検討するので、さらに実力をアップできる。
実際にアキトがチームに入ってから、模擬シュミレーションをする度に、検討会を繰り返して、チーム全員が実力を付けて来た。

アキトがパイロットのトップになってから、他チームの人たちも検討会に混ざるようになった ・・・ 


パイロットたちがバトルロイヤルをしている頃・・・戦略課と地球連合大学との戦闘指揮での勝負が、第2艦橋で行なわれていた。

「ここを、こうしてぇ〜 若葉ちゃんに任せて ・・・ 残りで集中攻撃 っと」

のんびりした指揮を執っているのは地球連合大学の代表。
他に地球連合大学からきた学生たちがいるが、のんびり娘の指揮に従っている。
それだけ指揮が優れているのか ・・・ 雰囲気からではそんな風には見えないが ・・・ 実際、対戦したチームが、ケチャンケチョンに負けているので実力は明白。
戦闘指揮を行なうメンバーなので、誰が1番の実力者なのか判ると、素直に従っている。
全員が納得したので・・・

「それでは私が戦闘指揮を行ないますので、みなさん、よろしくお願いします。」
「はい! よろしく、お願いします。」 (一同)
「それでは、みなさんで食堂に行きましょう!」

食堂では、機動兵器課と整備課・主計課が集まって、組織表をまとめていた。
艦内全員が入る食堂なので、艦内にいる学生たちが集まると、結構、五月蝿い。
そこに、戦略課と連合宇宙大学の学生たちが連れ立って、やってきて空いている席に座った。

「艦橋メンバーは、どこが勝った?」
「ユリカチームでぇ〜す。」
「ユリカ・チームね。んなチーム・・・あったっけ?」
「うんにゃ 地球連合大学(ミスマル)チーム・・・って書き直ししとけよ」
「はいよ 艦橋は地球連合大学のミスマルね ・・・ 主計課は、横浜チーム ・・・ 整備課は、岡山チーム ・・・ 機動兵器課は、佐世保チーム ・・・ っと」

アキトとユリカが、この試験戦艦で集まることは、事前にネルガルで決まっていたので2人とも知っていた。
ユリカの方でも、実力を遺憾なく発揮し、みんなを纏め上げ、チームトップになっている。
アキトの方は、士官学校佐世保チームの代表になっており、予定通り、相転移エンジン搭載の試験戦艦へと乗り込んだ。

「さてと指揮系統の主要メンバーを決めようか? 艦長は誰か ・・・ 地球連合大学で決めてくれ ・・・ 」
「もう決まっているよ〜ん、ミスマル・ユリカ が艦長さんです。 エッヘン!」 (バッシン♪)

いつものパターンで、白い眼で見られそうなことをしたので、アキトは取り出したハリセンで、ユリカの頭を叩いた。
ハリセンってのは知っての通り、実際の痛さより、大きな音が発生するが・・・

「痛いのぉ・・・」 (よよよ・・・)
「いつまでも、やるな! ・・・ また、やったら、お仕置きするぞ!」
「もうやりません ・・・ だからオヤツ抜きは無しにして ・・・ (真剣)」

周りのみんなが驚いて2人のやり取りを見ていた。
ちょっと前の休暇で戻っていた時に、ユリカが馬鹿をやったので、アキトが「お仕置き」として、ユリカの大好きなオヤツを作ったが、目の前にあっても食べられない罰を与えた。
それを覚えているユリカは、パブロフの犬・・・のような条件反射的な素早さで返事していた。

「忘れるなよ! 今度は宇宙服を着させてセイルマストに縛っておくからな」

機動兵器課にいる全員が震え上がった。
もともと機動兵器課の罰の中でも重い罰に入っており、恐怖に負けて辞めていったのもチョボチョボいる罰である。
一歩間違えると宇宙服の中で窒息してしまう罰なので、艦長がコレ(ユリカ)なら副長はアキトに押し付けられるのは必然だろう。
ちょうど、戦略戦術課にも所属しているので・・・

「次の副長はパス ・・・ 佐世保チームのテンカワ・アキトで決定!」

全員一致で決められてしまう。
その他の主要担当長も決定し、組織表を教官長へと提出した。


夜 ・・・ アキトの部屋

アキトの部屋には、アキトが居るのが当たり前だが、ベッドにはユリカが腰掛けている。
ユリカの部屋では、いっしょに乗り込んでいる若葉がベッドの中でお休み中・・・。

「ユリカ ・・・ 若葉の方は大丈夫なのか?」 (アキト)
「大丈夫だよ ・・・ ユウ君特製の睡眠薬を飲ませたから ・・・ 朝までグッスリ (笑)」 (ユリカ)

ユリカは答えながら、アキトのベッドの中に潜り込んで、なにやらゴソゴソ動いている。
通常、訓練生たちの部屋は2人部屋だが、アキトの部屋には相方がいない。
佐世保チームの編成で人数が奇数になっていた為、アキトの部屋は1人になってしまった。

「こら! ユリカ・・・中で何やっている。」 (アキト)

布団の脇からユリカの服やら下着が落ちているので、布団の中は・・・。
どうやら、いっしょに寝るツモリで来ているようだ。

「カイトやユウの方は、どうなっているかな?」 (アキト)
「予定通りだと ・・・ 火星に到着している頃よね 」 (ユリカ)
「あぁ 今日の朝に届いたメールには、火星の地表に降りて待機状態にしているらしい。」 (アキト)
「それじゃ、今夜から向こうに行くの?」 (ユリカ)
「日付があっていれば、明日の夜から行くことになる。」 (アキト)
「(真っ赤) 今日は、このまま寝ようね。」 (ユリカ)

部屋の照明を消すとアキトは服を脱いでベッドへと入った。
中にはユリカがいるが、抱いたまま眠りに落ちる。 ・・・ アキトは叔父との約束があるので、抱いて寝るだけで何もしなかった。


火星 ユートピア・コロニーの近く

「カイト兄ぃ 衛星軌道上で戦闘が始まったよ」 (ユウ)
「予想通りに始まったなぁ ・・・ 時間的には、どうかな?」 (カイト)
「一応、探査範囲の端に写っているから、このまま進むと、アキト兄ぃが来る頃には、大きいのが来るかも ・・・ 」 (ユウ)

ユウの返事を聞きながら、カイトはメールで、アキトに状況を報せる。
時間の調整が必要になったらキャリーで介入して調整を行なう予定になっていた。

アキトが来るのは夜になってからになる。・・・ というのも向こうで自室に戻らないと、ジャンプで来れない。
カイトとユウは、仕事を開始した。
アキトが来るまでに少しでも被害を少なくしようと、市民への脱出を促すのである。

「キャリー発進 ユートピア・コロニー上空へ」 (ユウ)
「僕は報道施設から、上で何が起こっているのか放送しよう」 (カイト)

姿を現したキャリーは低空飛行で、ユートピアコロニー上空へ移動して、行政庁の上空で停止した。
カイトは放送施設のアンテナに移動すると、コミュケ経由で届いている映像を、放送電波に流した。
コロニーにいる市民たちは、衛星軌道上での戦闘が始まっていることを知ると、空を見上げる市民が続発
中には事実確認のために行政へ問い合わせをしていたが、どこも考えることはいっしょ ・・・ 通話回線がパンクして通話できない状態

行政の関係者も、上空で何が起こっているのか知らなかったので、市民と同様にパニックになりかかるが、1通のメールで気持ちを抑えていた。
( 軌道上の戦闘は明日の朝には終ります。軍の艦船は地球へと帰還します。市民たちの避難準備を進めて下さい。 ・・・ 上空戦艦より )

行政関係者は軍のホットラインをつなげて情報を得ようとすると、軌道上の戦闘は苦戦状態。
基地内にあるシャトルを使って軍関係者は避難を準備し始めている。

(時間は過ぎて ・・・ もう夜中)
そろそろ日付が変わろうとする時刻になってアキトがやってきた。
カイトやユウに「遅い!」で怒られたが、ユリカが離してくれなかったらしい。

「さて状況は?」 (アキト)
「現在、軌道上で防衛しているけど、あまり効いていないみたい」 (カイト)
「馬鹿がイッパイ ・・・ なんにも役にたっていない ・・・ やるだけ無駄!」 (ユウ)

個人で意見を言っても無駄なので、メーカー側のネルガルから意見具申していたのだが、頭の固い上の方は、知らん振り。
少し柔らかめの軍人さんは考えてくれるのだが、判断を下す石頭たちが聞こうとしない。(とことん腐ってるな)
結局のところ、戦闘しても被害が増えるだけ、その上、火星市民には報じていないから何も知らないまま・・・。

「兄ぃ! 軌道上の軍艦が退避行動に入っている ・・・ 戦線離脱するみたい ・・・ 」 (ユウ)
「逃げ出す所が出てきたね。」 (カイト)

「火星全域で見て、まわりの状況は?」 (アキト)
「どっこも同じだけど、裏側が少し薄いかなぁ ・・・ コロニーはないけど」 (ユウ)
「兄さん どうしようか?」 (カイト)

「カイトが裏側に回ってくれ ・・・ ユウは衛星軌道上から、2人のサポートを頼む。」 (アキト)

アキトの指示で3人は、それぞれの担当エリアへ移動し、侵攻してくる無人兵器の相手をすることにした。


ユートピア・コロニー上空

コロニー上空では、衛星軌道から侵攻してきた無人兵器が火星軍のエステバリスと交戦している。
しかし、圧倒的な数のために押し戻すことができない。

「隊長〜ぉ〜 ちょっと数が多すぎます。」
「もう弾がありません。撤退しましょう!」

「馬鹿やろうがぁ 市民の避難が完了してねぇ! それまで粘れ!」

近距離に接近したジョロが爆発し、1機のエステバリスの足が破壊された。
それに続いて、アチコチで被弾、破損している。
そろそろ限界に近いづいているのが判っている。

「機体が駄目になったのは着陸して、陸戦隊と合流しろ! 無事なのは何機だぁ?」

隊長機が、まわりを確認すると、2・3機しか残っていない。
その2・3機もアチコチに被弾して、機体の隙間から火花が散って、ガタガタになっているのが判る。
そういう隊長機も同じ状態なので、無事な機体は残っていない。
地上の滑走路を見下ろすと、市民を載せたシャトルが離陸開始した所が見えた。

「よおっし あのシャトルが最後だな! 守りきるぞ!!」
「「 了解!! 」」

上昇してくるシャトルに並ぶと、守る位置についたまま上昇を開始する。
今までの戦闘で周辺の無人兵器は、ほどんど駆除しており、上昇を妨げる物はないと思っていたが・・・

「隊長! 敵の母艦が落下して来てます。」
「なっにーーー! 正面じゃねぇかぁーーー おい! シャトル! 軌道変更しろぉ」

「無理です! でか過ぎて避けれません!!」

随伴しているエステバリスには大型の武器はない。
部下である2機のエステバリスに、シャトルを直接押して、軌道を変えるように命令すると、落下してくる母艦へと向かった。

「武器がねえんじゃ コレでもぶつけるしか方法がねぇなぁ・・・」

特攻する隊長機に向かって部下たちや地上にいる仲間から無線で何か言っている。
しかし隊長機は軌道も変えずに、まっすぐに母艦へと向かう。

「コレ1機で軌道が少しでも変わればヨシ!とするかぁ ・・・」
「なにをしている?」
「なに?って、これから特攻して、あの母艦の軌道を少しでも変えるんだよ!」 ・・・・・・・・・?(ん?)

落下してくる母艦に向かってエステバリスが特攻している機体の横には、いつのまにか黒の機体が並んでいた。

「1機だけでは軌道は変わらないぞ!」
「そんじゃ、そっちも付き合ってくれるのか?」
「そんなツモリはない。こんなのは ・・・ 」
(肩のショルダーからグラビティブラスト発射!) ・・・ (チューリップ爆発!) ・・・
「こうすれば、障害物はないだろう。」

隣に並ばれた黒の機体から、エネルギー弾頭が発射されると、落下してきているチューリップに当たり、チューリップは大爆発を起こして消滅した。
特攻をかけようとしたエステバリスは、速度を緩めて、さらに後ろから追いついてきたシャトルと並んだ。
そのままシャトルをエスコートして輸送艦へと送り届けて、やってきた方向を見ると、不時着した部下たちが乗ったシャトルが追い付いてきた。

「あんたも、いっしょに輸送船にのれよ。地球行きの最後の便だ!」
「ご好意はありがたいが、生き残りがいないか確認してから帰るよ。」
「帰る・・・ったって、これが最後の便だと言っているだろうがぁ」
「こっちは自前の輸送船でやってきているから、帰りの足の心配はない。」

黒の機体が見ている方向をみると、白と赤でカラーリングされた輸送船が接近している。

「それじゃ俺は、こっちので帰るよ。そういえば名前聞いてなかったな? 俺の名は大剛寺凱・・・おまえは?」
「(本名を言ってもなぁ・・・) 黒百合・・・」
「それは通り名だろうが、名字は?」
「そっちも本名じゃないだろう ・・・ どうせ魂の名!とか言ってないか!」
「(汗・汗・・汗・・・) そ! そんなんじゃねえぇーーー 本名だぁーーー」
「そうか! まあエステバリスライダーだったら、いつか会えるさ! またな!」


後始末 その1

最後の輸送船を見送り、ユウやカイトたちと合流すると、ユートピアコロニー上空へと戻ってきた。

「ユウ! 生き残りがいるかサーチしてみてくれ!」 (アキト)
「判った・・・探す!」 (ユウ)

ユウが座っているシートを中心にウィンドウボールが作られ、ユウの身体が光りだす。
ウィンドウボールの脇には、アキトとカイトが黙ったまま、結果を待っていた。

「兄ぃ! 反応あった ・・・ シェルターは1箇所」 (ユウ)
「どこだ?」 (アキト)
「シティの南端 ・・・ 大型シェルターなのかバッタやジョロが集まっている ・・・ (焦)」 (ユウ)
「「 マズイ 」」 (アキト&カイト)

ユウの報告を聞いて、アキトとカイトは格納庫へ向かって走り出す。
2人は格納庫へと到着すると、待機させていた機体に乗り込み、シェルターのある方向へと急行する。

「ユウ ・・・ シェルター内にエステが通るぐらいの通路は何本ある?」 (アキト)
「全部で5本! 地上への直通路が4本 ・・・ 直下にある水路から上がっているのが1本ある。」 (ユウ)
「カイトは、通路の掃除を頼む! 俺は水路側からシェルター内部に入り込む。」 (アキト)
「 判った 」 (カイト)
「 うん! 」 (ユウ)

アキトは水路側にあるゲート前に疾風を置くと、単身でシェルターに入った。
中には逃げ込んだ市民たちが、てんでに座り込んでいる。
シェルター内を見渡していると、横から声を掛けられた。

「そこのあなた! 手が空いているのなら手伝って!!」

声を掛けられた所へ行ってみると、怪我人の治療を行なっているみたいだ。
「どうすれば、いいんですか?」 (アキト)
「麻酔が少なくて効いていない! 暴れると思うから押え付けて!」
戦場では良くある光景だが、力の限り暴れるので、抑える方も必死になる。
処置が終わって、声を掛けた女性を改めて見てみると、どことなくイネスさんに似ている(?)。

「ありがとう! 手伝ってくれて ・・・・・・・・・ どうしたの?」
「いえ ・・・ 自分が知っている人に良く似ているので ・・・ 」 (アキト)
「あなたの口説き文句なのかしら?」
「い! いいえ ・・・ そんなんじゃないです。 すみませんが、お名前を教えてくださいませんか?」 (アキト)
「モミジ・フレサンジュよ」 (モミジ)

(同じ・・・フレサンジュ・・・血縁者かもな)

「モミジさんですね。 自分は、テンカワ・アキトです。」 (アキト)
モミジさんは、名前で引っ掛かりがあったらしく、何かを思い出そうとしている。

(ポン♪) 

「空間転移を研究しているテンカワ博士の息子さん?」 (モミジ)

(父さんたちと同じ研究関係者かな?)

「えぇ ・・・ そのテンカワです。」 (アキト)
「やっぱり〜♪ ネルガルの研究所では良く会っていたから ・・・ 雰囲気がいっしょねぇ」 (モミジ)
「おかあさん」
両手にミカンを持った小さい女の子が走ってくる。
「あらあら ・・・ どうしたの ・・・ それ」 (モミジ)
「向こうで配っていたから、貰ってきたの。」
「そうなの。良かったわねぇ」 (モミジ)

(もしかして ・・・ アイちゃんかな?)

「はい! 初めて会った人には挨拶しましょうね。」 (モミジ)
「うん ・・・ 初めまして ・・・ アイです。」 (アイ)

(やっぱり)

「ご丁寧にありがとね。僕はテンカワ・アキトだよ」 (アキト)

モミジ&アイと楽しく話しをしていたが、シェルターの出入口の隙間から軍人たちが逃げ込んできた。
そのままシェルター内の市民たちを無視して、反対側のゲートを開けようとしている。

アキトはモミジとアイを連れて、軍人たちがいるゲートから離れる方向で地下ゲートの端へと移動した。

「どうしたんでしょう? 軍の人たち・・・ 慌てて反対側のゲートを・・・ (バッタ!!)」 (モミジ)

アキトはモミジ親子から離れて、地下ゲートの開閉スイッチを操作している。

「アキトさん そこは地下水路への出入口ですから行き止まりですよ! 急いで逃げましょう!!」 (モミジ)
「そうなんですか・・・ でも、僕の道具が、ここにあるんで出さないと・・・」 (アキト)
「道具なんて、ほっといて逃げましょう。」 (モミジ)
「えぇ 道具というか仲間ですね。 アルファ出て来い!」 (アキト)
「イェス♪ マスター」 (アルファ)

※モミジ主観※
道具って、大型機動兵器じゃないの! なんでアキト君が持っているの!
テンカワさんって空間跳躍の研究者だけど、機動兵器関連なんか、からっきしだったし。
私の機動戦艦のことなんか興味なかったのに、息子さんは機動兵器を持っている??? なんでぇ〜

モミジはパニックなのに、娘は大はしゃぎ。
アキトの声にあわせるように地下ゲートから出てきた機動兵器はライフルを構えている。

「アルファ ・・・ 掃除しといて」 (アキト)
「了解! マスター」 (アルファ)

地下水路から現れた黒い機動兵器によって進入してきたバッタたちは全滅した。
そして、逃げ込んできたゲートからも白い機動兵器がやってきて、黒い機動兵器の横に並んだ。
2機の兵器のまわりには軍人や市民たちが集まっている。
白い機動兵器のコクピットが開くと、大人ではなく子供が飛び降りてきた。

「兄さん ・・・ 外のバッタやジョロたちは、だいたい掃除したよ。」 (カイト)
「ごくろうさん! カイト」 (アキト)

カイトのスラックスを引っ張る手があることに気付くと、アイちゃんがいた。

「これ! あげる。」 (アイ)

そのまま受け取り感謝の言葉を伝えると、女性の背中側へとまわりこんだ。
その光景をみてアキトは微笑んでいる。

「兄さん ・・・ どうします?」 (カイト)
「もらっとけよ!」 (アキト)

兄弟のやりとりを見ているモミジは疑問に思っている事を聞いてみる。

「カイト君よね ・・・ よく研究室のシュミレータで遊んでいたでしょう。」 (モミジ)
「やっぱり・・・ モミジさんですね・・・ お元気そうで大丈夫でしたか?」 (カイト)
「おいおい・・・モミジさんを知っているのか? カイトぉ」 (アキト)

アキト・カイト・モミジが話し、アイは黒白の機動兵器を眺めている。
軍人たちや市民の代表なのか、話しに割り込んできて、外の状態を聞いてきたので説明した。

無人兵器の侵略があったこと ・・・
宇宙艦隊も全滅に近い戦いをしたこと ・・・
そしてシャトルで脱出したこと ・・・
軍が撤退したこと ・・・ などなど

「頑張って1年間! 待てば救援がくるのね! 私が基礎設計した・・・戦艦が!」 (モミジ)
「えぇ・・・ 現在、急ピッチで製造していますから」 (カイト)
「製造期間と移動期間も含めて1年後には、こっちへと救援に駆けつけられる。」 (アキト)

残された市民たちや軍人たちには、「助けがくる!」という希望が芽生えた。
その人たちの脇には、バッタとジョロ!!!

「その侵略兵器は、頭の中を作り変えたので、モミジさんの言うことをききます。」 (カイト)
「シェルターから極力出ないで、それに命令して下さい。あっと、それのゴハンは外に出しといたら勝手に食ってきますから・・・」 (アキト)
「モチロン・・・ 利用させて貰うわ! じゃぁ1年後に、また会いましょう!」 (モミジ)


あとがき

サブストーリーで進めている内容と、TV版の本編との重なっている辺りです。
逆行前のお話しだったら、シェルター内に無人兵器が侵入して、アイちゃんを巻き込んでアキトがボソン・ジャンプ。
ちょっと面白くないので、変えちゃいました。
尻切れトンボにしているのは、どう変化するか方向を考えていなかったので、途中で途切れる形にしています。


| 2006/10/11 製作開始 | 2007/11/01 校正 | 2007/01/05 『風の通り道』 投稿 |


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