11 : 士官学校


地球・日本 極東方面軍 士官学校

「士官学校 ・・・ 軍隊の将校(士官)を養成する教育機関 ・・・ と書いてあっても訳が判らん。」

アキトは、ユリカが書いて渡してくれたアンチョコを読んでいた。
士官学校に到着するまでに読んで置くこと ・・・ と言って渡してくれたレポートの束(量を考えろよなぁ〜)。
士官学校の入学試験に合格したのだから、一般の基礎知識は十分にあると認められたのだが、軍関係の内容はチンプンカンプン。
紹介者が紹介者なだけに、一応、軍の基礎知識を知っていないと、最初からコケると踏んだユリカが渡してくれたのだ。
一応、時計のように見えるコミュケの中にはアルファがいるので、情報を引き出すことは出来るが、真面目に覚えようとしている。

(キーーーーーーーィ プッシュー ガシャ)

バスが止まると、乗っている男女が、ぞろぞろと降りていく。
アキトの降りると目の前には大きなゲートがあり、そのゲート前に立っている歩哨へと書類を提示して中に入っていく列へと並んだ。
並んでいる列には色々な服装があるし、年齢もバラバラ。
複数の列があるので、ゲート内に入っていくのは思っていた以上に早い。
順番に進んで行き、アキトの番になった。
ゲート前にいる担当官がDNA検査機から読み取った情報を読み上げている。

「テンカワ・アキト 火星生まれ 極東方面軍・士官学校の新入生 学科は・・・戦略戦術科・・・主計科・・・機動兵器科・・・???」

目の前にいるアキトをジロジロと見ている。
3学科に所属するのは珍しいのだろう・・・ 珍獣として見られている気分になる。
アキトを確認していた兵士は、書類上の荷物について確認のために聞いてきた。

「書類には、持込武器等・・・とあるが何を持ち込む?」

「太刀と銃 ・・・ それと大型コンテナに入れたのをひとつです。」 (アキト)

そういって背中に背負っていたケースから太刀と拳銃を抜き出し、目の前に出した。
兵士が確認をしたので、ケースへと戻してから、コンテナの方は、後日届くことを話した。

「確認は終了した。宿舎へと向かえ! あとの指示は舎監が出す。」

アキトは一礼すると指示された宿舎へと向かった。


ルームメイト

宿舎の玄関にある掲示板に部屋割り名簿があり、指定された部屋へと入った。
部屋は2人1室になっており、部屋に入ると同居人がいた。

「君がルームメイトだね。ボクは葵 純(あおい じゅん)。戦略戦術科所属 よろしく!」 (ジュン)

「こちらこそ、よろしく。テンカワ アキトです。」 (アキト)

ベッドの上下や部屋内の基本ルールをお互いに確認した後、各自の荷物を収めることにした。
アキトは、略式軍服を納めるときに、クローゼットの扉に太刀を収めたケースを立てかけた。
そして、拳銃を取り出すと机の上に置き、荷物の中から家族が写っている写真立てを机の端へと置いた。

「アキトって呼んでもいいかな?」 (ジュン)

「オレは別にいいよ! なんだよ・・・」 (アキト)

「物騒な物があるなぁ・・・ そのケースって中身は刀だろうし、机には大型拳銃。 ・・・ 使えるのか?」 (ジュン)

「あぁ・・・ 一応、携帯許可は取っているから、持ち歩くけど・・・」 (アキト)

「さっき聞きそびれたけど、所属学科は?」 (ジュン)

「戦略戦術科と、主計科。あとは機動兵器科の3つだけど・・・」 (アキト)

「3つ!(驚き) 普通3つもやらないよ! 1つでも結構難しいのに・・・」 (ジュン)

コン♪ コン♪

「おふたりさん ・・・ いいかな ・・・ 入っても?」 (舎監?)

「「 はい 」」

「テンカワ アキト君に面会だ。この部屋へと連れて来てもいいだろうか?」

「ジュン ・・・ いいよな。 (うん、いいよ) どなたでしょうか? 」 (アキト)

許可を求めた舎監(?)が部屋から出ると、入れ替わりに提督の軍服を着た人物と女性が入ってきた。
その人物を見て、アキトより先にジュンが声をかけた。

「ミスマル伯父さん! ユリカ!!」 (ジュン)

「おぉー ジュン君かぁー 大きくなったなぁー」 (ミスマル)

「あれー ジュンちゃんじゃない。お久しぶりー」 (ユリカ)

この2人とジュンは顔見知り (うっかり、忘れていた)
確かに最初に会った時には、ナデシコの副長だったし・・・
あまりにも若いし印象が違ったから、名前だけでは判らなかったなぁ〜

「今日は何でまた・・・ ここへ?」 (ジュン)

「うぉっほん♪ 今日は、隣にいるアキト君に会いにきた!」 (ミスマル)

「オレにですか?」 (アキト)

「今日は新入生代表をして貰おう。」 (ミスマル)

「へっ???」 (アキト)

「うっわぁー アキト! 新入生代表さんなんだぁー」 (ユリカ)

新入生代表と聞いて慌てまくりのアキト。
入学式は、あと1時間もすると始まってしまう。
こういう式典の場合、挨拶などをする場合は、前もって連絡があるはず ・・・ だが、ミスマルは今まで黙っていた。

「叔父さん! なんで連絡がなかったのですか?」 (アキト)

「あれはねぇ〜♪」 (ユリカ)

ユリカを睨むと、ユリカは黙りこくった。
あの状態になったアキトへ言うことはできない。
ユリカが静かになると、ミスマルに向き直り・・・。

「忘れてた・・・はないと思います。しっかりとした理由をお願いします。」 (アキト)

「うぅ〜む そうれはな ・・・ アキト君を見極める為だと言ったら、どうするね。」 (ミスマル)

「見極める?」 (アキト)

「ウチの家内が先に気付いたのだが、ユリカとは仲良い ・・・ どころではない仲になっているだろう。」 (ミスマル)

「お父様 ・・・ どういう事ですか!」 (ユリカ)

「ユリカ ・・・ 黙ってろ! 男同士の話しに割り込むな!」 (アキト)

口を出したユリカは、アキトに怒られて、ベッドの端へと座って黙った。
ミスマルは、黙って座るユリカを見て確信した。

「そうだな・・・アキト君。男として聞く! ユリカとの仲は、どこまで行っている。」 (ミスマル)

アキトは、ミスマルが男と認め、女であるユリカとの仲を聞いている事は判った。
姿勢を正して、見詰めると、真剣に男として話した。

「君は、もうネルガルのテストパイロットや非公式ではあるが階級を持ち、軍の任務もこなしている。その力量は認めている。」 (ミスマル)

「話さなくても大体は理解はされていると思います・・・が、ユリカとは将来、いっしょになろうと思っています。」 (アキト)

アキトから決定的な言葉が聞けたので、ミスマルは、胸のつかえが下りた。
アキト君を前にして、ユリカの態度や接し方・・・でも理解していたが、目の前で宣言されると嫁に出す感情も・・・。(仕方がない ・・・ 認めるか ・・・)

「よろしい ・・・ 認めよう ・・・」 (ミスマル)

「お父様 ・・・ 本当にありがとう!」 (ユリカ)

ミスマルの宣言で、ユリカの表情も、パッと明るくなって、アキトを腕を取って抱き付こうとしたが ・・・ かわされた。
ユリカの行動は、手に取るように判るアキトだったので、腕に抱きつこうとするユリカをかわしたのだった。

「馬鹿 そういうのは、家に戻ってから・・・ それまでは、御預け!」 (アキト)

「ふみぃ〜ん ・・・ ちょっとぐらいイイじゃない ・・・ 」 (ユリカ)

「ちょっとでも、駄目なものは駄ぁ〜目!」 (アキト)

アキトがユリカに対する態度には、ミスマルも「これなら大丈夫だろう!」という確信が持てた。


入学式

ミスマルの面会が終わり、部屋から退出する時に服装について注文をつけられた。

「アキト君 ・・・ 君の階級章は今日から正式な物となる。任務中の服装で入学式に参加しなさい。」 (ミスマル)

「しかし、新入生としての階級章は頂いています。それでは階級違いになるのでは?」 (アキト)

「校長の許可は、もう取っている。士官学校にいる間も任務として活動して貰うので、そのまま使用しなさい。 ・・・ テンカワ特務少尉!」 (ミスマル)

「了解しました。ミスマル提督!」 (アキト)

お互いに敬礼するとミスマルは来賓として入学式に出席するため、ユリカを伴って式場へと向かった。
あとに残ったのは、アキトとジュン。
入学式までの時間がないので、支給されている軍服へと着替える。
士官学校生の制服は、略式軍服が通常の服装で、各自の利き腕とは反対側の脇に拳銃を収めるホルスターがある。
そこには学校側から支給される拳銃を収めるが、入学式前だと何も入っていない。
ただ、各自が許可を取り、拳銃を持っていれば、制服を着ていく間は収めておく事が義務付けられている。

ジュンは支給された略式軍服に士官学校生を現す階級章を付けた。
そして、父親から入学祝いとして受け取った拳銃を取り出し、ホルスターへと収めた。

アキトは支給された略式軍服に任務中に使っていた軍服に付いていた階級章や部隊章を移し変えた。
そして、机に置いていた拳銃をホルスターに収めた後、腰の後ろへと太刀のケースを取り付けた。

2人の準備が整うと、入学式が執り行われる会場へと向かう。
途中で、同じように略式軍服を着た学生たちが声を掛けてきて、これからの事を話しながら歩いていく。
アキトとジュンの2人は、拳銃を携行しているので、その事やケースに収まっている太刀について色々質問してきたが、素直に受け答えしながら歩く。
会場に到着すると徽章の違う略式軍服がいる。
アキトとジュンは同じ戦略戦術科の略式軍服を着ていたので気付かなかったが、会場内に入ると徽章ごとにグループが出来ていた。
会場の中には学科ごとの区分けはないが、最前列に座るのは気が引けるのか、空きが目立つ。
アキトとジュンは話し合った訳でもないが、そのまま通路を通り最前列の席へと着席した。

入学式が始まり、校長や教官の紹介・・・ 来賓の挨拶・・・ 上級生の挨拶と続き、新入生代表の挨拶となった。

「新入生代表 テンカワ・アキト特務少尉!」

アキトは返事をすると壇上へと上がる。
会場内は、ざわめいている。
通常、士官学校生は学生の階級章を付けていて、卒業すると少尉の階級章を付けて各部隊へと配置される。
アキトのように、在学中に階級章を持っていること自体が珍しい。
入学式の挨拶は、普通の挨拶で済ませた。


クラス委員長

入学式の後、各学科のクラス分けと集合場所と時刻が掲示されていて、それまでは各自の装備や準備に追われることになった。
アキトは自分の名前が書いている場所と時刻を見ると、見事にバラバラの状態になっているので、ホッとした。
学校側の都合もあって、教官が複数のクラスを兼任しているので、時間が重ならないように別けられているらしい。

最初は、戦略戦術科。
隣には部屋割りの時から、いっしょに行動しているジュンがいるので、そのまま教室へと向かった。
アキトが部屋に入ると空気が変わるというか、雰囲気が変わった。
ジュンと空いた席へと着席すると同じクラスの女子が周りを囲んで質問攻め。

「テンカワ君って、彼女いるの?」 (まあ一応は)
「何で階級があるの?」 (入学前に軍の任務をやっていたんで・・・)
「兄弟とかいるの?」 (弟や妹がいるよ)
「両親は?」 (いないよ)
両親に関する質問が効いたのか、質問攻めは突然終わった。

そこへ担当教官が入ってきた。
学科の内容と、講義の組み方について説明した後、今日の内に決めることを話した。
決めることは、クラスのまとめ役というか雑用係となるクラス委員長を男女1名ずつ決めるだけである。
各自の実力が判らないので、初めの学期は教官が指名した2名をクラス委員長とすることになり、さっさと指名されて解散となった。

**********

続いて2つ目は機動兵器科。
途中でジュンと別れた後、機動兵器科は武道場に集合という事なので、徽章だけ交換してから部屋へと入った。
部屋の中では息の荒いのが牽制し会っていた。
雰囲気を壊さないように中立を示しているグループへ混ざる。
中立グループには女性が多く、機動兵器科にしては珍しい。
ネルガル製の機動兵器はIFSがあれば女子供でも操縦できるので、最近の傾向として女性の比率が増えている。
それでも全体から見ても、3割程度なので、少ないといえば少ない。

ここでも同じように担当教官の説明があり、クラス委員長を決めるときに、ひと悶着が発生した。
機動兵器科らしく武器で勝負!・・・という事になったが、機動兵器の経験者は、ほぼゼロに近いので、武術か射撃での勝負になった。
全員、拳銃を所持しているので、場所が場所なだけに射撃で勝負になった。

適当に手を抜いて済ませようと思ったが、手抜きしても勝ってしまった。
結果を受け入れられない馬鹿が武術で勝負を付けようと掛かってきたが、自然に受け流して技を繰り出してしまい・・・ ここでもクラス委員長になってしまった。
女子の結果を聞きたいが、次のクラスの集合時刻が迫ってきているので、担当教官に訳を告げてから行くことにした。

**********

最後の3つ目は主計科 ・・・ 前の機動兵器科で時間がかかったので遅刻してしまった。

「すいません! 遅れました。」

「おっそーい! 機動兵器科の教官から連絡があったので聞いてはいる。」

周りにいるクラスの面々は、もくもくと調理している。
担当教官が腕試しとして、教官が準備した材料を使って調理することになったらしい。
その調理をしながら、学科の説明を行っている。

材料を見ながら、時間的に食事の時間になるので、夕食メニューを作ることにした。
調理時間は残り1時間程度なので、なんとか間に合うだろうと作り始める。

「調理時間終了ーーー」

「よっし! 出来上がり」 (アキト)

アキトの前には6品が並んでいる。
魚料理 ・・・ 肉料理 ・・・ スープ ・・・ サラダ ・・・ 飲み物 ・・・ デザート
担当教官が味見をしながら、出来上がった料理を味見している。

「おい! 調理終了だ」

「はい、すみません。道具を洗っていました」

洗い終わった中華鍋を拭いてから片付けると、教官の味見を待った。
ぐるっと廻って、アキトのテーブルへくると、素直な感想を言ってくれた。

「時間が無かったので、どうかと思ったが、なかなかやるな! 味付けもしっかりしているし、よし合格。」

「有難うございます!」 (アキト)

「おいおい・・・ この腕試しはクラス委員長の選出も兼ねているだぞ!」

「 ・ ・ ・ えーーー クラス委員長 ・ ・ ・ まずい3つとも重なった」 (アキト)


夕食後 クラス交流

「まいった・・・」 (アキト)

「何がまいったの? クラス委員長になったんだから、もう少し威厳を出して欲しいね!」 (ジュン)

アキトにしてみれば、3つの学科だけでも負担が大きいので、役割が増えると困ってしまう。
運が悪いのか、いいのか判らないが、所属する3つの学科のクラス委員長になってしまった。
入学式前にミスマル叔父に会っている時に、任務も増える事が予想されたし、ネルガルの仕事もあるから、いったい何重に重なったのだろうか、指折り数えてみる。
先程、夕食を食べたが味が判らないほど、今後の事を考えてしまっていて上の空。

ジュンの案内で、宿舎近くのカフェへとやってきて、ひと休みとなった。

「あっ いたいたぁ〜 テンカワ君・・・発見!」 (戦略戦術科の女性)

3人の女性がアキトの近くへと寄ってきた。
徽章から別々の学科に所属しているのは判るが、何でアキトを見付けて来たのかは判らなかった。

「私達、テンカワ君を探して宿舎に行ったら、バッタリ会って、話してみたら驚いたよ」
「本当に〜 テンカワ君って新入生代表をしたから頭がいいと思っていたら」
「3つの所属学科があったとは思わなかったよ」

3人とも宿舎前で会ったときに探している人物が同じだったので、いっしょに探していたけど、探している目的は何なのか話していなかった。
話をしてみると、3人の女性はアキトが所属している各学科のクラス委員長になったらしい。

決まってしまった物は仕方が無いので、各学科のクラス委員長になった女性たちに手伝って貰って、出来るだけ頑張る事にした。


あとがき

アキトの士官学校入学を書こうと考えてやってみたら、こんな感じになってしまいました。
ちょっと暴走気味です。
外では台風が通過している最中なので、ちょっと五月蝿いです。
さて、次は在学中のお話を書く予定です。
その後はユリカの連合宇宙大学の話しを書いて、アキトと合流して、物語の本編へと進みます。


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