森の奥に、ひっそりと建っている病院。
表向きは、精神障害者用の病院となっているが、実際はネルガル反会長・・・社長派が経営している病院。
入院患者は、子供ばかり・・・。
その病院へと続く道路脇には、黒づくめの集団が闇に紛れていた。
大柄な体格のゴート・ホーリーも、その中にいた。
(重役専属のSSと聞いたが、あまりにも小さすぎないか?)
ゴート・ホーリーが見ている先には、アキトとユウがいた。
この2人も全身黒尽くめに幅のひろいゴーグルを御揃いでかけている。
前世界である復讐者の格好、そのままである。(サイズが違うだけで・・・)
デカイ身体に似合わないほど、音もたてずに、ゴートはアキトの横へと移動した。
「目標はアレか?」
「間違いない。アレの地下にいる子供たち全員の保護と、関係者全員の処分だ。」
「処分とは・・・(まさかな)」
復讐者の格好をした小さい方は、ハンドガンのセーフティを確認して収めると脇にあった道具を取り出した。
それは、刃渡り20センチほどの小刀。
刀身は黒く塗っているかのように真っ黒。
使ったことがあるのか、所々に色が違っている箇所がある。
ゴートの隣にいる大きい方は、小さい方の刀と同じ造りの大刀を持っていた。
「言葉通りだ・・・先触れが終わったら突入するぞ!」
ゴートの役割は部隊長・・・横にいるテンカワ・アキトが現場サポートと聞いていた。
もう1人のSSは小さすぎるが、オペレート能力が高く、ゴートの部隊の情報収集担当者より腕はいい。
そうしていると、1台の高級車が病院の玄関前に到着した。
到着したのは、ネルガル重役でもあるアカツキだった。
車両から降りると出迎えが来ており、病院内に案内されて行った。
「やぁ・・・ご苦労さん。」 (ようこそ、御出で下さいました。今回は、どのようなご用件でしょうか?)
「いやぁ〜、ちょっと小耳に挟んだもので確かめにね。」 (なんでしょう?)
「ここでMCの実験を継続している・・・って話し。」 (・・・・・・・・・・)
応対者は「MC」という言葉で、驚いたのか応対が遅れた。
アカツキが問いつめていくと、終いには、ある1点を見つめている状態になっていった。
「あっちにいるんだね。」 (・・・・・・・・・・)
応対者の肩に触れると震えている。
アカツキは、それだけで理解し、この近辺に立ち入らないように要請した。
「あとは任した!」 (了解した)
アカツキの問いかけに対して、廊下を曲がった先から答えが返ってきた。
いつの間に来ていたのか、黒尽くめの一団がいた。
応対者が見詰めていた一角を探すと隠し扉が見付かり、黒い集団は中へと入っていった。
あとに残ったのは、アカツキと約1名。
椅子を持ってきて、今後の身の振り方でも話そうかとタバコを取り出した。
足元では地下での振動が伝わってくる。
相当派手にやっているようだった。
地下では照明設備を破壊して真っ暗。
武器を持って応戦するものには容赦なく死体になって貰っている。
時々、濡れた床で滑りそうになっているが、実験で使用している溶液やら血なのか判別付かないほどになっている。
アキトとユウは実験施設のある場所を目指している。
途中にも同じような部屋は沢山あったが、ユウの調べによると、ラピスがいそうな部屋が奥の方にあるらしい。
それでも可能性がある部屋には途中で寄ってみて、中で実験をしている白衣には、躊躇いもなく切り掛かっていった。
動いている白衣がいなくなると、奥に設置されたカプセルの中を確認している。
この中に子供たちがいる。
少しでも生きているなら、廊下に出て、同行したSS隊員へと預けると、次の部屋へと進んだ。
そのまま、どんどん奥に進むと白衣の人数が多い部屋へと入った。
そこにはカプセルに入って眠っているラピス・ラズリがいた。
「兄ぃ・・・見付けた。」
廊下でSS隊員へと指示を出しているアキトへと声をかけると、ユウは部屋の中へと突入していた。
白衣を着た研究者たちは、声を上げる間もなく、絶命し倒れた。
廊下からゴートが飛び込もうとしていたが、もう遅かった。
黒い刀身が赤黒くなるほどの状態になった得物を持った小さい身体・・・初めて会った時の印象と違っていた。
ゴートの隣にはアキトが立っていた。
ユウが突入した部屋を見て、倒れた研究者たちの状態を確認し、止めを刺している。
動いている者たちがいなくなったのを確認すると・・・呆けているゴートたちへと指示を出した。
「カプセルごと移動させよう・・・ユウ・・・データは全部頂け!」」
「うん・・・わかった。オマケも設置しとく」
アキトがカプセルを持ったまま地下通路を戻っていくと、同じようなカプセルを持った隊員たちがいる。
そしてゴートが生存者の確認と引き上げを指示していた。
病院の敷地外にでると、救急車や病人搬送者を見送ったアカツキが待っていた。
そこへ回収したカプセルを持った一団が到着し、報告をしている。
報告が終わると、アキトの横にアカツキとゴートがやってきた。
「これで終わり・・・かな?」
「まあな・・・最後の仕上げは・・・」
アキトがユウを見て頷くと、ユウは手に持っていたスイッチを押した。
押した途端に地響きが起こり、病院の建物自体が大きな落とし穴に落ちるように消えた。
「これで完了・・・ちょっと多かったかな・・・アキト兄ぃ・・・」 (ユウ)
「そうだな・・・次は計算通りに仕掛けないとな・・・手抜きした分だけ余分があったな」 (アキト)
「十分だと思うけど・・・ねぇ」 (アカツキ)
「・・・・・・・・・・(化け物兄弟)」 (ゴート)
翌日の新聞には謎の事件として、大きく掲載されていた。
勿論、アカツキが情報をリークした結果である。
施設を破壊され、マスコミに叩かれまくった反会長派の社長たちは、次々と引退していった。
空いた席には、順当に昇格し、アカツキが社長になっていた。
(よおぉ〜し、階段は、あと1段。親父を引き摺り下ろしてやるぅぅぅぅぅ。)
「ほらぁ〜、ラピスぅ〜」
「・・・・・・」
「おいで〜」
ラピスは、アキトに促されて差し出されたユリカの手を握った。
「・・・あったかい・・・アキトと・・・いっしょ」
「うん。ラピスの手もあったかいよ。同じだね♪」
「おなじ・・・」
研究所から助け出されたラピスが、ユリカとも打ち解けた瞬間である。
ラピスとユリカは、いろいろなゲームをしたりして楽しんでいる。
そのうちに疲れたのか、ラピスはクッションにもたれたまま寝ていた。
「zzz・・・」
「かわいい〜♪」
「アキト・・・ラピスはどうするの?」
「とりあえずは、このままネルガルに保護してもらおうと思う。」
「そうだね。ルリちゃんもカイト君とナデシコにやってくるだろうし・・・」
「今度、アカツキと会うからルリちゃんのことも頼んでおこう。」
「うん・・・。そうだね・・・」
ラピスの体調が落ち着くころには、ユウとも仲良くなった。
そして、ユウがオペレーターとして入る研究所はネルガル系列だということで、ユウといっしょにラピスも入所した。
同じ頃、アキトは士官学校、ユリカは連合宇宙大学へ。
やっと、ラピスの登場です。
これで主要登場人物が出てきた・・・《私がいません》・・・すみません! ルリちゃんの登場は次回でした。
アキト・ユリカ・カイト・ユウ・ラピス・・・と、現在は5人。
書こうと思っていた人物6人目は、次回で登場します。
| 2006/08/10 製作開始 | 2006/08/11 校正 | 2006/08/17 『風の通り道』 投稿 |
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