機動戦艦ナデシコ


お間抜けな人たちの恋愛事情



  突然だけどさ、いや本当にさ。僕は今電子の妖精ことホシノ・ルリと暮らすことになった。こういうと世界中のルリちゃんファンから怨嗟の声が聞こえそうなんだけどさ。別にいやらしい訳で暮らしている訳じゃない。それはこんな事があったからさ。





「ルリちゃんが倒れただって!」

宇宙軍の本部の食堂で宇宙ビックバンセットのA(定価430円:量がすごくて2000Kカロリーを超える一品。若い士官に人気。)をかっ込んでいる僕に信じられない話が飛び込んできた。

それを伝えたのは僕の直属の部下に当たるベルトール・カイナモン。かなり真面目な奴なので冗談を言うようには思えない。

「私も正確に聞いたわけではないのですが・・・。けどあれではないですかね。火星の後継者事件での疲労が」

「確かにそうかもね」

自分の考えが認められて顔がほころぶベルトール。こいつは本当に素直である。褒めると素直に喜ぶし成長もする。

「確かにナデシコは精鋭ぞろ いですけど今回の事件の大詰めはあの人一人でしたからね」

確かにルリちゃんのことを良く知らない人は今回の事件をそうとるのかも知れない。けど多分だけど今回倒れたのは精神的なものだと思う。

「後そのことでカイト中尉、ミスマル提督が私用で呼んでいますよ」

「それを先に言え。まぬけ」

そう言ってベルトールの頭を小突く。

「す、すっすいません」

慌てた様子で謝ってくる。冗談で言ったことも本当に素直にとる。かなりからかうのが面白い。

「ばーか。冗談だよ。それじゃ提督のところに行って来るわ」

そういって食べ終えた食器を持って立ち上がる。ベルトールは律儀に頭を下げて見送る。それを背に僕は食堂を出る。



エレベーターと徒歩とでミスマル提督の部屋の前までたどり着く。当たり前のことだがテロ対策のおかげでかなりごちゃごちゃした道順になっている。

「ミスマルさん、カイトですけど入りますよ」

本当なら階級が下の僕がこんな口の聞き方は出来ないのだが私用の時はこういう風な口の聞き方じゃないと提督はいじける。いい年の男の人なんだけどね。

「おぉ カイト君かぁ。入っていいぞ」

その声を聞いてドアのノブを回して部屋に入る。

「こんちわっす。僕になんか用ですかね」

「うーん、いけず。オジサンは悲しいぞ」

目に本当に涙をためて言う。しかしこうでもしないと毎日話し相手に呼ばれてしまう。この人は暇なのか?絶対忙しいはずなのに。ものすごく優秀なんだろうね、やっぱり。あの人の父親だしね。

「仕方がない。呼んだわけは分かるかな」

まぁ、大体察しがついているけど。

「ルリちゃんのことでしょ」

「おぉ。やっぱりわかったか」

「話を最初に聞いてからそこらじゅうで話しているのを見ましたよ」

「うん、うん。そうかじゃ話は早い」

「どうしたんですかルリちゃん、からだのほうは?」

一番聞きたかったことを聞いてみる

「それは大した事はない。しかしからだの疲労ではなく心の方だからね」

予想した通りだった。出来ればついていたかったけど。あの人のこともあったしね。

「それでだ。ルリ君の休養も兼ねて」

なぜかそこで言葉を切る

「君と一緒に暮らしてもらう」

「なんですとぉぉぉぉぉお」

かなり驚いた。意味が分からない。

「つまりだ。彼女には精神的休養が必要何だけどね。彼女はA級重要人物だね。するとこちらも警備をしなければならない。そうすると彼女に精神的重圧がかかる。そこで彼女が気を置けて腕の立つ人物の君が選ばれたのだよ。ルリ君は既に君の家に行っている。あの部屋なら二人で暮らすなら十分だろ」

気持ちがぐらぐら揺れて否ドキドキしているのか?提督の声の半分しか入ってこない。

「そういうことだ。今日の仕事は他の者に引き継がせておくから。早くかえっていいよ。あ、あと夕食の十尾は二人分して帰るんだよ」

「りょ、了解!」

なぜか敬礼して部屋を出て行く。





というわけであの後ぼーっとして本部を出て地下鉄に乗ってしかも律儀に夕食の準備もして来た。ぼーっとしていたからね。というわけで今は部屋の前にいる。ドキドキしながらドアノブをまわす。勇気を出して部屋に入る。

「あっ、カイトさんお帰りなさい」

あっ、やっぱり本当だったんだ。僕の部屋には少しだけやつれたル リちゃんがいた。



少しだけ続け。






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