機動戦艦ナデシコ

〜 Endless  Story  第一章 アカキヒトミ 〜








第三話 最悪の再会




ビ――――――、ビ――――――

簡素な機会音が騒がしい管制室内に響いた・・・
しかしこの簡素な音により管制室は静寂に包まれることになる。

「オペレーター、どうした!現状を報告しろ!!」

当面の指揮を取るために管制室に来ていたアズマ准将が指示を飛ばしている

「は、はい、第二次ライン上にボソン反応の増大を確認・・・」

「なに!?」

その言葉はやはり信じがたいものだった、ここ最近A級ジャンパーと呼ばれる人たちは事故死、行方不明と相次ぎ一般社会から姿を消している、それ以前に長距離の単独ボソンジャンプする機体は存在しないはずなのだ、宇宙軍にも統合軍にも・・・
そのことをアズマが知っていたかどうかは定かではないが、今までの一連の出来事は誰の目から見ても驚愕の事実には変わりなかった。

空間が湾曲したかと思った瞬間その場から統合軍の戦艦に向け黒い閃光が放たれる・・・

「守備隊の側面へグラビティブラスト、被害多数!」

謎の攻撃を受けた統合軍の有する戦艦の約8割が戦闘不能まで陥っている、敵の不敵なまでの奇襲によって・・・

「質量測定・・・。戦艦クラスです!」

第二次ライン上に白い、従来の型に無い・・・異型の戦艦が姿を現した。

「敵、グラビティブラスト来ます!!」






「ジャンプする機動兵器の次は戦艦ねぇ〜」

「ネルガルでしょうか?」

「さあ・・・」

先ほどまでアズマの横にいた男、ヤマサキが黒いスーツの男と白衣の男を連れアマテラス内部にある一室を目指していた

「あの連中は?」

「『5分で行く』と・・・」

「そりゃ大変だ!急がないとね!」

言葉とは裏腹にヤマサキの顔からは余裕すら見え隠れしている、どこからが冗談でどこまでが本気なのか、掴み所のない奴、それがヤマサキを現すもっともいい表現と言えるだろう・・・そしてヤマサキ一行はある部屋の前に立ち止まると遠慮なく入っていった

「緊急発令、5分で撤収!」

研究室らしきその部屋でヤマサキの声が響いた・・・






「何をしておる!敵戦艦に反撃せんかー!!」

アマテラス管制室にアズマの怒声が轟く、さすがの声の大きさに横にいるシンジョウ中佐含め、周りにいる者たちは耳を塞いだ。

「りょ、了解しました。ではキルタンサスと・・・」

「この・・・遅いわ!!キルタンサスとよいまちづきを廻せ、
早くしろ!!

「はッ」

それを聞いたオペレーターの一人がキルタンサスとよいまちづきに指示を送っている・・・しかしこの二隻の放つグラビティブラストは白い戦艦のディストーションフィールドにあっさりと弾かれていく・・・

「なんだと!?」

敵のフィールドの強さ・・・なにより白い戦艦からバッタと呼ばれる無人兵器が何百機と飛び出ていく光景はその場にいる全員にとって信じられないものであった。
何隻かの戦艦やエステバリスはバッタによって破壊されていく、どうやら戦争当時に使われていたバッタよりも改造、強化されている物らしい、一機一機はやはりバッタなのでたいしたことは無いのだが何百機といたら話は別だ、白い戦艦は統合軍にとって充分な脅威と呼べる存在になっていた。

「一体何者なんだ、奴らは・・・」

スクリーンを見ながら愚痴をこぼすアズマを一歩引いた位置で、シンジョウがあざけ笑うような冷たい眼差しを送っていた・・・






「ちぃッ!オレの相手は奴だ、おまえら邪魔すんじゃねー!」

あるポイントを目指していたリョーコ達、ライオンズシックルに向かって無人兵器が襲い掛かってきていた。

「まぁまぁ、隊長・・・それよりも・・・」

アヤはバッタを軽くあしらいつつもリョ―コに行動を急がせる。

「あぁ・・・わかってるよ!・・・・・・そこ!!」

レールカノンを構えた先には再度アマテラスへと突入しようとしているブラックサレナが姿を現した、一時は圧倒的な機動力の前にブラックサレナを見失ってしまったが、リョーコの判断により追撃不可能と思えたブラックサレナを発見する事が出来たのだ、これだけでもリョーコの力量の高さが垣間見える。

「ヘタクソ!」

リョ―コの放った弾丸はブラックサレナに当たりはしたものの機動兵器とは思えないフィールドに阻まれダメージを与えることができない、もちろんブラックサレナもその程度の攻撃に怯むわけもなくアマテラスへ楽々と進入していった。

「隊長!早く追いましょう!」

「わかってるよ!」

「じゃあ・・・」

「しっかりついてこいよ!」

「はい!」

いまだにバッタと交戦中の仲間を置いてリョ―コとアヤはブラックサレナの追撃を再開した。






「不意な出現、そして強襲・・・・・・反撃を見透かしたような伏兵による陽動、さらには突入ポイントを変えての再強襲・・・」

ナデシコBのブリッジでルリは今までの敵の行動を振り返っていた。

「やりますね、敵さんは・・・」

ルリの前にウィンドウを通じてサブロウタが現れた

「気づいたリョ―コさんもサスガです。」

「これからどうする気ですか?」

「もう少し高みの見物と行きましょう。」

「何故です?」

「敵の本当の目的、知りたくありませんか?」

ルリがサブロウタに不敵な笑みを向けた。






「(ついにラピスちゃんも来たみたいだな・・・)」

13番ゲートへと向かっていたカイトは辺りを飛び交うバッタを目にして事態を察した・・・

カイトはアキトやリョ―コなどとは別ルートで13番ゲートを目指しているのだが、

「(まだなのか・・・)」

カイトの現在位置はリョ―コたちよりもさらに遅れていた・・・



ドクンッ・・・



カイトは自分の心臓が音を立てて鳴るのを聞いた・・・



ドクンッ・・・



心臓の高鳴りと共にカイトの意識は次第に薄れていった・・・












「後戻りなんて出来はしない・・・・・・振り返っても其処には赤く血塗られた道しかないのだから・・・そうだろ・・・・・・ミ・カ・ヅ・チ・・・・・・」













ドカァァァァーーーーーーン

大音響と微かな揺れによってカイトの意識は急速に現実に引き戻された、どうやら辺りを飛んでいたミサイルの幾つかがアンスリウムに被弾したのだが、フィールドに当たるだけでアンスリウム自体は全くの無傷ですんでいる。

「何なんだ今のは・・・」

カイトはミサイルが被弾した事よりも、さっき起こった出来事に戸惑いを隠せなかった、その証拠にカイトの全身に冷や汗が纏わり付いている

「・・・・・・!」

冷や汗に不快感を感じつつもカイトは当初の目的を思い出した

「クッ・・・行かなくちゃ・・・」

先ほどの事を振り払うように頭を2、3度振ると再度13番ゲートへと急いだ

「(あれは僕の・・・いや・・・昔の・・・僕の記憶なの・・・か?・・・)」






「13番ゲート、オープン、敵のハッキングです!」

「13番?なんだそれは?わしゃ知らんぞ?」

アマテラスの管制室では、アズマだけがその事実に混乱していった、しかし他の者はさして驚く様子もなく、ただ沈黙を守っている・・・

「それがあるんですよ、准将」

アズマの後方に立っていた男、シンジョウが突然口を開いた

「どういうことだ!?」

今まで呆然と突っ立っていたアズマがシンジョウの方を向いたのだが、その顔には先ほどまでの気迫はまるで感じらず、疑問と戸惑いだけが感じられた

「茶番は終わりということです、准将」

「???」

「・・・・・・人の執念か・・・」

もの言わぬモニターにシンジョウは呟いた・・・






「隊長・・・ここどこですかね?」

「さぁな・・・でもあいつが入っていったんだから追うしかないだろ!」

リョ―コとアヤはブラックサレナを追い13番ゲートへと入り込んでいた

「まあそうなんですけどね・・・」

「うわぁたぁ、どぉあーーーッ」

13番ゲートを奥に進と、リョーコとアヤに無人機が突然襲いかかってきた・・・がリョーコとアヤにとって数機の無人機なんて物の数にも入らない相手だった、不意打ちにも瞬時に反応して二人は数機の無人機を一瞬で片付ける

「隊長!大丈夫ですか?」

「当たり前だろ!そんなことより早く追うぞ!」

「了解!」

ブラックサレナの追撃を開始しようとした二人の前に、正確にはリョーコの前にだがウィンドウが開いた

「お久しぶりです、リョーコさん」

「ルリか!2年ぶり。見たところ元気そうだナ」

「相変わらずサスガですね」

昔と変わっていないリョ―コをみてルリは内心ホッとしていた。

「ヘッ。無人機倒したって自慢にゃなんねぇよ」

一方、リョ―コも以前会った時より大人びているルリに感嘆しつつも、変わっていないルリに安心した。

「無差別に進入する者を排除するトラップのようですネ」

「フーン」

「ところでリョーコさん、そちらの方は?」

ルリはリョーコの隣に開いているウィンドウに気がついた、正しくは最初っから気づいてはいたのだが話すきっかけを掴めなかったといったところだろう。

「んッ・・・あぁこいつの名前はアヤ、俺の部下だけど腕は立つぜ!」

アヤの前に改めてルリはウィンドウを開いた

「初めまして、連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリです。ヨロシク」

「・・・あっ、私は統合軍少尉ササキ・アヤっていいます。お会いできて光栄です、ホシノ少佐」

その答えに微かに微笑むと再びリョーコに向き直った

「この先にトラップはありません。案内します」

「スマネェな・・・・・・ってお前、人んちのシステム、ハッキングしてんだろ!?」

「フフッ・・・それは秘密です。」






管制室ではシンジョウが新たな動きを見せようとしていた。

「敵、第5隔壁に到達」

「プラン乙を発動!各地に打電、『落ち着いていけ』」

「はッ」

管制室は先までとは打って変わり、シンジョウが実権を握っている、そしてオペレーター達もその様子を疑うことなくシンジョウにしたがっていた・・・ところで今まで指揮を取っていたアズマはというと

「離せ!わしは逃げやせん!」

の言葉どおりアズマは両脇を部下にガッチリと掴まれ身動きが取れない状態にあった

「准将、お静かに・・・」

シンジョウが冷たく言い放つ・・・

「シンジョウ中佐!何を企んでいる?君らは一体何者だ!?」

「・・・フッ・・・地球の敵、木連の敵、宇宙のあらゆる腐敗の敵・・・・・・」

「な・・・なんだというんだ」

「我々は、火星の後継者だ!!」

シンジョウは突然、統合軍の制服を脱ぐとその下からは♂のマークが胸に描かれた赤と白の服が姿を現した・・・






そのころ13番ゲートに侵入したブラックサレナは最後の隔壁である、第5隔壁まで到達していた。

「ヨッシャーー、間に合ったな!そのまま動くなよ!」

壁を突き破って、ブラックサレナを追っていたリョ―コとアヤのエステバリスが姿を現した、時間短縮のためかなり無理矢理な道を通ってきたんだろう。損傷とまでいく傷は無いが塗装が多少剥がれた箇所が幾つか見える

「ほら、隊長早くしないと!」

「わかってるよ!」

リョ―コはエステバリス・カスタムの左手の甲に装備されている有線交信用のワイヤーを発射した、これによりウィンドウ通信の送受信にプロテクトをかけているブラックサレナに通信を試みようというのだ

「俺は頼まれただけでね、この子が話がしたいんだとさ・・・」

アキトの前に開いたウィンドウがリョ―コからルリに変わる。

「こんにちは、私は連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリです。無理矢理ですみません、あなたがウィンドウ通信にプロテクトをかけているので、リョ―コさんに中継を頼んだんです。・・・あの・・・教えてください・・・。あなたは・・・誰ですか?」

「・・・・・・」

ルリの質問にアキトは無言で返した、

「あなたは・・・」

「ラピス、パスワード解除」

アキトはルリの言葉を完璧に無視して着々と第5隔壁を開ける準備を整えていく

「隊長・・・」

「今は黙ってろ・・・」

そんな会話をする二人の前にアキトが姿を現した、もちろんヘルメットのため二人には誰だか見当もつかない・・・

「時間がない、見るのは勝手だ・・・」

3人、正確には4人が見守る中、今・・・・・・運命の扉が開かれた・・・

「何ィ!?」

第5隔壁の奥にはルリとリョ―コにとって信じられないものが安置されていた・・・

「ルリ―ッ、見てるかーッ!?」

リョ―コは未だに目の前の光景が信じられずに、全速で奥へと向かっていく

「リョ―コさん・・・」

「何だよ、こりゃあ・・・」

「リョ―コさん落ち着いて」

「ありゃ何だよ!」

「リョ―コさん・・・」

「何なんだよ、ありゃあ!!」

次第にリョ―コの声に感情がこもってくる

「リョ―コさん!」

「・・・・・・」

ルリが声を掛けてもリョ―コはじっと黙るだけだった・・・

「形は変わっていても、あの『遺跡』です」

リョ―コ達の前には在ってはならない物が其処に存在していた、解体されたナデシコ、そして消失したと思われていた遺跡・・・

「この間の戦争で地球と木連が共に狙っていた、火星の遺跡・・・・・・ボソンジャンプのブラックボックス・・・。ヒサゴプランの正体はこれだったんですね・・・」

「そうだ・・・」

ルリの自問自答的な言葉にアキトが相槌を打った

「ルリィ・・・」

「え?」

遺跡を見てすっかり意気消沈してしまったリョ―コが呟くように話し掛けた

「これじゃ、あいつらが浮かばれねェよ・・・」

「リョ―コさん・・・」

「何でコイツがこんなところにあるんだよ・・・」

リョ―コの瞳に薄っすら涙が浮かんでくる・・・

「・・・・・・」

リョ―コの悲痛な叫びをアキトも黙って聞いていた・・・

「それは人類の未来のため」

あたり一面に超が付くほどの特大のウィンドウが開く・・・かつて若手木連将校が起こした熱血クーデターの時、謎の失踪を遂げた事実上の木連指導者、元木連中将、草壁春樹・・・その人だった・・・

「・・・エッ!?」

突然、草壁の眉間に銃弾が打ち込まれた、もちろん本人が死ぬはずないが辺り一面に広がっていたウィンドウは姿を消した・・・

「誰だ?」

予測していなかった事態にリョ―コは辺りをキョロキョロと見回した・・・

「・・・な、なんだありゃ?・・・・・・」

リョ―コの探しているものは意外と簡単に発見できた、リョ―コやアキトの遥か上空、純白の美しい機体が其処にあった。






「あなたにそんな事を言う資格はありませんよ・・・」

そう言ってカイトは現状を把握するために辺りを見回した・・・

「!?」

カイトは辺りに点在する殺気を発見した、全部で6つ極力抑えてはいるがカイトやアキトなら無難に見つけられるだろう、しかしリョ―コやアヤはそうはいかない、現在の状況もあるが二人は全く気づいていなかった敵の襲撃を・・・

「二人とも!下!!」

そのことに気づいたカイトは咄嗟に通信を開き指示を飛ばす、

「「!?」」

二人はその言葉に頭よりも先に体が反応した、敵の攻撃を避けるために必死に機体を制御したが・・・

「クッ、クッ・・・・うわぁッ!」

しかし二人の敵はそれほど甘い敵ではなかった、敵の完璧なまでのコンビネーションにより完全にペースを掴まれ翻弄されている、ここまで来ると、もはや時間の問題だった・・・

「うッ・・・・・・わあーーーッ」

「・・・・・・キャーーーーーーー」






「ヒサゴプランは我々『火星の後継者』が占拠する!」

そのころ管制室ではシンジョウが宇宙軍、統合軍に向けて決起表明をしていた、俗にいう反乱である。

「「「ウォーーーーー」」」

その言葉を合図にアマテラス各所でシンジョウと同じ服を着た者達が各所を制圧していた。

「占領早々申し訳ないが。我々は、これよりアマテラスを爆破、放棄する」

演説じみた口調でシンジョウはアマテラスの宙域にある戦艦、機動兵器にと送信オンリーでウィンドウを開いた

「敵味方、民間人を問わずこの宙域から逃げたまえ。繰り返す・・・・・・」

この通信はもちろんナデシコBにも流れていた

「律儀な人たちだなぁ・・・」

それを見ていたハーリーは自分の素直な感想を口にした

「ハーリー君、データは取れた?」

「は、はい・・・あの艦長・・・」

「なんですか?」

「中にいる二人大丈夫でしょうか?」

ハーリーは突然通信を切れた二人の事が心配でならなかった。

「今は信じるしかないです。」

「エッ・・・」

「あの人を・・・」






「隊長、大丈夫ですか?・・・」

「かなりヤバイ・・・そっちは?」

「たぶんもっと酷いです・・・」

二人の機体はリョ―コは床にアヤは壁にと錫杖と呼ばれる武器で貼り付けにされていた

「動けるか?」

「手足を無くせば・・・」

「お前達は関係ない早く逃げろ」

今度はアキトが二人に呼びかける

「今やってるよ!」

そんな会話をしながら二人は間接部にある爆発ボルトを作動させ錫杖が刺さっている部分を吹っ飛ばしていった

それを見届けたアキトは敵の中に突っ込んでいくが、カイトは対称的に二人の前で無言で立っていた・・・

「・・・・・・来る!」

今までアキトと戦っていた六連と呼ばれる丸い機体、6機の内3機がこちらに突進してくる

「・・・・・・」

カイトの神経が急速に研ぎ澄まされていく・・・そして別に慌てる様子もなく、敵の中に突っ込んでいった・・・

「・・・・・・!」

カイトは自分の中で的を絞り込むと、右腕のハンドカノンを収納しフィールドランサーUに持ち替えた、相手も一直線に並びカイトに襲い掛かってくる、正面から見れば一機にしか見えないほど鍛錬されたコンビネーションだ。
アンスリウムと敵との距離が急速に縮まってくる・・・

「一機目は陽動か・・・」

最初の一機はミサイルランチャーを放つと早々と上空に逃れていった、カイトは左腕のハンドカノンでミサイルを迎撃するとあたり一面が目視出来ないほどの爆風に包まれる、どうやら相手を破壊するためのミサイルではなく撹乱が目的のミサイルらしい、しかしカイトもそれに臆することなく爆風の中へと入っていた。

「・・・・・・甘い・・・」

敵の作戦はこうだった・・・一機目はミサイルを放ち撹乱の後、上空へと離脱・・・二、三機目は爆風に紛れて左右から攻撃・・・とどめに上空からの奇襲・・・それなりに出来るパイロットでもこの攻撃には耐えられないだろう、しかしそんな作戦もカイトは見透かしていた、爆風の中に入ったカイトは二機目に全速で突っ込んでいく、例え目視できなくてもカイトには関係ない、気配を探る・・・カイトはこのことについては天武の才としか言いようがないほど秀でていた。

「・・・もらった!」

爆風の中から更なる爆発音が聞こえる、煙の中でカイトが六連を背後からフィールドランサーUで破壊したのだ、被害状況は不明だが少なくとも戦闘継続は不可能だろう・・・

「まず一機・・・」

カイトは爆風から出てきた次の敵に攻撃を仕掛ける、左のハンドカノンを連射して動きを止めつつ急加速で懐に入り込むとフィールドランサーUで胴体部分を切り裂いた、攻撃を受けた六連は攻撃に耐えられずに小さな爆発を重ねながら落下していく・・・

「次!・・・」

上空から襲い掛かってくる六連に目標を変えた瞬間、辺りが凍りついた・・・敵もそれを察したのか、動きを止め一旦退いた・・・

その気配にカイトとアキトは戦闘を中断し、ようやく錫杖から抜け出したリョ―コとアヤの前に降り立った・・・





「一夜にて、天津国まで伸び行くは、瓢の如き宇宙の螺旋・・・・・・」





カイトやアキトの前方の空間が歪む・・・いや、裂けた・・・
そこから赤い夜天光が姿を現し、その後ろにはカイトとアキトによって中破した機体や大破した機体が仲間に支えられながらも浮かんでいた全部で六機、最初と数は変わっていない。
そうとう安全性の高い機体らしい、ボロボロの機体でもコックピット部分だけは軽傷ですんでいる、たぶんパイロットは全員生きているだろう。

「(やっぱりさっきの黒い夜天光のパイロットとは違うか・・・)」

赤い夜天光から放たれる殺気は先ほどの黒い夜天光の殺気とは全く別物だったことに、カイトの予想の一つが消えた。

「・・・女の前で・・・死ぬか?」

その場にいる全員にその音声がとどくが・・・本当はアキトに向けた言葉のようだ、その言葉の本当の意味はアキトしか知らない。

「・・・・・・」

その問いにアキトは答えはしなかったが、その顔には著しい変化があった・・・上半分はやはり見えないが下半分は、遺跡のような光る模様が顔に浮かび上がっている

「・・・・・・クッ・・・」

赤い夜天光のパイロット・・・北辰の言った言葉にさすがのカイトも怒りを隠せなかった

「「「!?」」」

張り詰めた空気の中、遺跡がパッっと輝いたかと思うと、突如遺跡に変化が現れはじめる・・・

「これは・・・」

再度リョ―コに通信を開いて状況を見守っていたルリもこの光景には驚愕した、まるで花が散るかのように一枚、また一枚と遺跡が解けていく・・・

「・・・この目で見る事になるなんて・・・」

カイトにとって遺跡の中心から現れたモノは目を背けたくなるものだったのだろう、奥歯がミシッと音を立てる・・・

「ユリカさん・・・」

遺跡の中から現れたのは遺跡と下半身が融合し金色に輝く初代ナデシコの艦長ミスマル・ユリカだった、その顔はまるで死んでしまっているかのような無機質な顔だ・・・

ドゴォォォォォーーーーーン

激しい揺れと共に様々場所で爆発が起きる

「滅」

そんな状況でも怯むことなく北辰の一言で六連六機の内無傷の三機が一斉に向かってきた

「(どうする・・・)」

カイトには二つの選択肢があった、

1、ここに残り戦う・・・

2、損傷の激しい2体を連れてここから脱出・・・

カイトにとって考える必要さえ無かった、そのことを告げるため特別回線でアキトに連絡を取る

「お久しぶりです。」

「カイトか・・・」

「僕は、あの二人を連れて先に脱出させてもらいますよ・・・」

「なら早く逃げろ、ここも長くは無い・・・」

そういうとアキトは一人敵の中に突っ込んでいく・・・

「アキトさん・・・・・・あの人の3回忌の日、今度は地球でお会いしましょう・・・」

「・・・・・・わかった。」

カイトには最後にアキトがそういった気がしたのだが、深く考える時間もなくカイトは急いで二人に通信を入れた

「二人とも、今すぐにアサルトピットを射出してください。」

「隊長、どうしますか?」

「・・・するしか、無さそうだな・・・」

リョーコの言葉は正しかった、二人の乗るエステは既にかなりの損傷を受けている、このまま脱出すれば途中で爆発に巻き込まれるのは目に見えている、ならばとリョーコは目の前にいる白い機体に全てを託す事にしたのだ。

「わかりました!」

アヤはリョーコの言葉を疑うことなくアサルトピットを本体から切り離した、そしてリョーコもアサルトピットを切り離す・・・

カイトは2体のアサルトピットを脇に挟むと恐るべき加速力で入り口から出て行った・・・

「た・・・たい・・ちょう・・・なん・・なん・・・です・・か・・この・・重・・・力は・・・」

「舌・・噛むぞ・・・(それにしても、このパイロットさっきの戦闘といい一体何者なんだ?とんでもない腕だぞ・・・いや・・・それよりも・・・)」

普通のパイロットスーツというのは耐G用には出来ていない、宇宙に放り出されても短時間なら大丈夫というだけのものだ。

そんな気密性だけを追求したパイロットスーツでは、当たり前だがアンスリウムの加速にはついていけるはずも無い、二人には緩和できなかった重力が直接体に降り注いでいた・・・・・・






「(一番近い戦艦はナデシコしかないか・・・)」

最終ラインと第二次ラインの間まで来たカイトは両脇に抱えている二人のことを考えていた・・・もちろんカイトの性格上ここで二人を放り出すなんてこと出来るわけがなかったため、覚悟を決めてカイトは第二次ライン上で負傷者の救助に当たっているナデシコBを目指した・・・

「・・・たいちょ〜・・・これから私達どうなるんでしょうかね〜?」

「さぁな・・・このパイロットしだいだろ・・・」

リョ―コにしてはあまりに味気ない答えだった、というよりも心ここに有らずといった感じだ・・・それを聞いたアヤもまた事態を察して口を噤んだ。






「艦長!先ほどの所属不明機がこちらに近寄ってきます!どうしますか?」

ルリは既にワンマンオペレーションシステムを解除しており自席で女性オペレーターの話を聞いていた。

「その機体からの反応は一つですか?」

「少々お待ちください・・・・・・・・・いえ、一つではありません。全部で三つです。・・・その内二つは・・・えーこれは統合軍のものですね。」

「わかりました。相手の反応を待ちます・・・」

「(いた・・・)」

カイトはさらにナデシコに近寄っていく・・・

「(ここで、放り出すわけにも行かないよな・・・)」

カイトは考えた挙句に結局、ナデシコに連絡を入れることにした

「艦長・・・前方の機体から通信が入っています、どうしますか?」

「・・・出してください」

「分かりました」

その言葉の少し後にルリの前にウィンドウが開いた、やはり顔の下半分しか見えない

「どうも、ナデシコBの艦長、ホシノ・ルリです、あなたは?」

ルリは焦る気持ちを抑えつつも質問をした

「・・・・・・統合軍のパイロットを2名をそちらに保護してもらいたい」

カイトはワザと冷たい口調で質問には答えず自分の用件だけを伝える

「そのことについては了解しました・・・しかし質問の答えにはなっていません」

ルリの声が微かに震えている事にカイトは気が付いた

「(ルリちゃん・・・)」

カイトは今にも口から洩れそうになる言葉を我慢しながら

「・・・感謝する・・・」

一言そう告げると通信を一方的に切った

「・・・・・・サブロウタさん・・・スミマセンが」

ルリの一言で待機中のサブロウタの乗るスーパーエステバリスがハッチから出て行く、しかしサブロウタのエステは先の戦いで左腕を失い各所に深い傷を負っている、あの短時間で直るわけでもなく出来た事といえば仮初めの腕をつけたぐらいだ。
ハッチから飛び出たサブロウタのエステはゆっくりと、しかし確実にアンスリウムへと近づいていった。

「(やはりあなたは・・・)」

ルリはその光景を見ながら、またもや胸の前で服の上から何かを掴む様な仕草をする。

「・・・・・・・・・」

カイトは近寄ってきたスーパーエステバリスに二つのアサルトピットを差し出した

「オイお前は!!」

サブロウタがカイトの前にウィンドウを開くがカイトの口が開く事は無かった

「(スミマセン、サブロウタさん・・・)」

仕方なくサブロウタが受け取るのを確認したカイトは黒く深い・・・宇宙の闇へと姿を消していった・・・・・・





つづく



後書き

ど〜も〜海苔で〜す!
3話どうでしたでしょうか?
楽しんでもらえれば幸いでございます。
やっとアマテラス編が終わりましたね〜(^▽^)
戦闘は余り得意じゃなくて・・・結構駄目な所が多かったと思います。(゜゜;)

それよりも書く事がなくなってしまいました・・・

例の企画の第2回でもやりますか!
それではオリキャラのアヤさんどうぞ〜〜〜(^▽^)

海「グ、グハァ」

?「ちょっとまってください・・・」

海「!!・・・ル、ルリちゃん・・・」

ル「なんで私が呼ばれないんですか?」

海「い、いや〜みんな知ってると思ってさ〜〜ところでアヤさんは?」

ル「次回に回ってもらいました!」

海「そ、そう・・・」

ル「ところで作者さん!」

海「はい、何でございましょう?」

ル「もっと明るい話にしてください!!面白みに欠けますよ!ホ・ン・トに!?」

海「すみません・・・当分無理かと・・・なにしろカイト君とルリちゃん離れてるし・・・」

ル「!?」

海「グハァッ!?」

ル「そこを何とかするのが、あなたの役目でしょう・・・あっ・・・気絶していましたか・・・みなさん、そういうわけなのでこんな話でスミマセンがもう少し我慢してやってください!・・・それではみなさん次話でお会いしましょう。さよーなら・・・」

ル「あ、あと・・・みなさん・・・お暇でしたらこのバカにメールをしてあげてください、お願いします・・・それでは本当にさようなら・・・」(ペコリ)

海「だ、誰か・・・救急車を・・・」



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