機動戦艦ナデシコ

〜 Endless  Story  第一章 アカキヒトミ 〜








第二話 謎の敵・・・現る




8月10日 アマテラス・・・



「何だ貴様らは!?」

ミスマル総司令の命令でアマテラスにやって来ていた、ルリたちに対してアマテラスの警備責任者であるアズマ准将が不快の念を口にした。それもそのはずルリたちは宇宙軍、アズマたちは統合軍、お互い水面下での小競り合いは続いている、戦争が終わった後だからこそ・・・

「地球連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリです。」

「同じく連合宇宙軍大尉、タカスギ・サブロウタ」

もちろんアズマの叫びなどで動じるルリたちではなかった。

「そんなことを聞いているのではない。何で貴様らがそこにいる!!」

またもやアズマの怒声が部屋に轟いた。ハーリーだけがその状況に罪悪感を覚えたが、他の二人はあいかわらずシラッとしている

「先日のシラヒメの事件において、ボソンの異常増大が確認されています。ジャンプシステムの管理に問題がある場合、近辺の航路並びにコロニー群に影響があります。」

そういうルリの口調に変わりは無い。当たり前だが・・・

「これはコロニー管理法の緊急査察条項が適応されますので、あしからず・・・」

「ヒサゴプランに欠陥は無い!!」

しだいにアズマの顔が真っ赤になってくる。顔といっても頭がハゲなのか剃ったのかは知らないがスキンヘッドのために頭も赤くなっていく

「あれじゃあ、まるで茹蛸だな、ハーリー」

サブロウタが小声でルリを挟んだ位置にいるハーリーに話しかけている、その顔は至って真面目そのものなのだから恐ろしい

「ブッ・・・サ、サブロウタさん、駄目ですよ!そんなこと言ったら!」

そういうハーリーの口元は今にも笑い出しそうだった。いや現に少しだが笑っている。

「まあまあ准将。宇宙の平和を守るのが我らが連合宇宙軍の使命、ここは使命感に燃える少佐に安心していただきましょう。」

今までアズマの横にいた男、ヤマサキが口を挟んだ、ヘラヘラしている様に見えるがどこか安心できない、油断できないそんな雰囲気を持っている事にハーリー以外の二人は気がついた

「クッ、おまえがそう言うなら、仕方が無い。勝手に調べろ!!」

渋々、アズマが調査を承諾した。それにより益々ルリたちは疑問を抱いた、

「「(この人何者でしょう?(何者だ?)」」

「わかりました。それではこれで失礼します。」

承諾したことを聞いたルリたちは部屋を後にした。

「サブロウタさん、ハーリー君、このまま素直にあの人たちが調査させてくれるとは思いません。今すぐ、二人はナデシコに戻って・・・・・・してください。」

「了解!」

「でも、艦長それって・・・」

ニヤッと笑うサブロウタに対してハーリーの目が潤んできた。

「この場合、仕方がありません。」

「でも・・・」

「わがまま言ってないで行くぞ!」

サブロウタのその言葉でハーリーは渋々ナデシコに戻っていった

「(どうなるんでしょうね、これから・・・)」







「みなさ〜ん、こんにちはーーーッ」

「こんにちは―――ッ」

ヒサゴプランのイメージキャラクターである黄色い物体のヒサゴンの挨拶にルリの前にいる子供たちが答えた。

アズマたちによって、ルリはアマテラスに見学に来ていた子供たちと、見学コースを臨検査察をする羽目になったのだった、といってもルリも妨害に会うことぐらいは予測していたが、さすがにこれは予定外のことだったろう・・・

「未来の移動手段、ボソンジャンプを研究するヒサゴプランの見学コースへようこそ!ガイドは私マユミお姉さんと」

「ぼく、ヒサゴン!」

ガイド役のマユミお姉さんとヒサゴンが自己紹介している。ピンクで統一されたマユミお姉さんとヒサゴンのコンビはどこか愛らしいものがある。

「なんと今日は、特別ゲストです。皆さんと一緒にコースを回ってくれるのは、あの!」

「そう、あの!」

「史上最年少の天才美少女艦長、ホシノ・ルリ少佐でーす♪」

「よろしく」

力無くルリが子供たちにピースをする、子供たちもそれに答えるように満面の笑みでピースをした







「・・・・・・フム・・・領域11001までクリアー・・・。そろそろ行こうか?」

ナデシコに戻ったハーリーは、自席にてウィンドウボールを展開していた

「データ検索、絹ごし・・・・・・・できたスープを順次ぼくに・・・。スピードはわんこの中級・・・」

ハーリーはルリに言われた事、アマテラスへのハッキングをしていた・・・

「よッ!!」

突然ウィンドウボールの中にサブロウタが入ってきた。

「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーぁ・・・・・・・・・・・・・・・ハァハァ・・・」

ブリッジにハーリーの尋常でない叫びが響き渡る

「なに驚いてんだ、おまえ?」

「サブロウタさん・・・
ウィンドウボールの中に勝手に入らないでください!

ハーリーは声を大にして怒り出した

「はぁ・・・・・・。でも、いいんですかね?これハッキングですよ。」

「怒ったり、後悔したり、色々忙しい奴だなぁ。」

「だって・・・」

ハーリーは、すがりつくような目でサブロウタを見た

「はぁ〜・・・しょうがないだろ、調査委員会も統合軍もなんか隠してるみたいだしナ」

「でも・・・艦長が・・・」

「その艦長がおマヌケやってんだから、そのスキに掴めるもんは掴んじまおうぜ」

そして、ハーリーに向かってニヤッと笑った

「わかりました・・・」

覚悟を決めたのかハーリーの顔が引き締まった・・・様に見える







「・・・・・・・というわけです。わかりましたか?」

ボソンジャンプについてマユミお姉さんが説明している。

「わかんなぁ〜い」

「要するに、チューリップを通ることによって非常に長い距離を一瞬で移動できるんです。」

隣にいるヒサゴンと一緒に模形を使って説明している。

「うわぁ〜〜〜」

模型がポンと弾けると中から鳩が飛び立った。

そこから一歩置いたところでルリもそんな様子を見つめていた。







ルリが子供たちと見学コースを視察している頃、ハーリーとサブロウタがハッキングに成功していた。

「あーー、やっぱり。公式の設計図にないブロックがありますね。」

「襲われるなりの理由って奴かな?よし、次、いってみよう!」

次に現れたのは、サブロウタとハーリーにとって、いやこれを見た全ての人にとって信じられないものだった。

「ボソンジャンプの人体実験?・・・・・・これ、みんな非公式ですよ。」

「おいおい、こいつは」

さっきまでヘラヘラしていたサブロウタの顔が一変した

「あッ!?」

「バレたか?」

「モード解除、オモイカネ、データブロック!」

「進入プログラム、バイパスへ!」

ハーリーは的確に指示を出す、しかし事件は起きた・・・

「何!?」

今まで普通に表示されていたウィンドウが豹変し

『OTIKA』

と表示されたのだ。そしてこの怪現象はナデシコだけでなくアマテラス全体にも及んでいた。







「ハーリー君、ドジった?」

ルリは事態の異常を感じて、コミュニケを使ってハーリーと連絡をとった

「僕じゃないです!アマテラスのコンピューター同士のケンカです。」

ハーリーの言っている事は確かに正しかった、ハーリーの行ったハッキングは完璧に近いものがあったのだから・・・

「ケンカ?」

「そうです!そうなんですよ!」

「今の騒ぎは、そいつが自分の存在をみんなに教えてるっていうか、こちらをからかっているっていうか・・・」

「・・・・・・・・・・」

ルリはハーリーの話を聞きながら考え込んでいた

『OTIKA』=『AKITO』

その考えが浮かんだ瞬間、ルリは走り出した

「どうしたんですか?艦長」

「ちょっと待ってくださいよぉ―――ぉ」

ウィンドウがルリを追いかけていく

「ハーリー君、今からナデシコに戻ります。」

「え?」

「敵が来ますよ!」









「ボース粒子の増大反応を確認!」

アマテラスの管制室では突如発生した事態に混乱していた

「全長約10m、幅約15m!ボソンアウトしてきます。」

第一次ライン上に光の粒子が形作っていく。

「識別不能、相手反応ありません。」

アマテラスに、アキトの乗るブラックサレナが姿を現した・・・









「乗っていきます?ホシノ少佐!」

ナデシコに戻るために、急いでいたルリは声をかけられた。

「あなたは、」

「ガイドのお姉さんこと、マユミお姉さんで〜す!」

見学コースを回るための車を乗り回しながら答える

「ホシノ少佐、乗っていくんでしょ?」

「はい・・・」

そういうとルリは車に颯爽と乗り込んだ

「スミマセン、わざわざ・・・」

「いーのいーの!なんか燃えるっしょ、こーいうの!」

「フッ・・・」

マユミお姉さんの言動が面白かったのか、表情が面白かったのかは分からないが、自然とルリの口元に笑みが浮かんだ・・・

「予感は的中、敵は来た」

『OTIKA』=『AKITO』

「あれは暗号?あれは偶然?」

「でも、あの人は・・・」

ルリは無意識の内に右手を胸の上で握った・・・まるで何かを掴むように・・・









突如現れたブラックサレナを迎撃するべく、初代ナデシコのパイロットだった、スバル・リョ―コ率いるエステバリス隊・ライオンズシックルがブラックサレナを待ち構えていた。

「何者ですかね?敵は?」

リョ―コの前にウィンドウが開いた、ライオンズシックルでリョ―コに次ぐ腕前を持ち、副長的立場にいる女性だ。

「んっ・・・アヤか、サッパリわかんねぇよ!」

目の前に映る赤毛の女性、アヤにリョ―コは言い放った。

「はぁ〜、隊長・・・そんな事でホントに勝てるんですか?」

「わかんねぇ!でも、只者じゃないぜ!」

リョ―コの口調に自然と力がこもった

「・・・そうですね。でも隊長が勝てない相手なんているんですか?」

アヤの言葉どうりリョ―コの腕は統合軍一とまで言われるほどだった・・・

「・・・そりゃいるさ!」

「へ〜、誰なんですか?」

戦闘中だというのに、二人の間に張り詰めた空気は全く感じられない、ナデシコに乗っていたリョ―コだけなら頷けるがこのアヤという人間、なかなかの人物らしい。

「カイトっていう奴でね、結局一度も勝てなかったんだよな〜」

リョ―コはナデシコ長屋での生活を思い出していた。
何かと理由をつけてはカイトに勝負を挑んでいた日々を・・・

「そんなに凄いんですか?」

アヤは元々そんな答えが返ってくる事は予測できなかったんだろう、意外そうにリョーコに尋ねた

「凄いどころじゃないぜ!気づいたら負けてんだからよ!」

心底悔しそうに語るリョ―コについついアヤの口元が緩んだ

「プッ・・・」

「なんだよ!」

「いえ、やっぱり隊長も負けるんだなぁと思って・・・・・・ところで、今その人は何してるんですか?隊長に勝つぐらいなんだから、今ごろすごい人になってるんでしょうね?」

その瞬間、リョ―コの顔が歪んだ。

「・・・・・・死んだよ。シャトルの事故でな・・・」

「えっ・・・・・・ご、ごめんなさい、そんなこと聞いてしまって、」

アヤは自分の言ったことの無責任さを痛感した

「気にすんなよ!それよりも敵さんのお出ましだ!」

リョーコは軽くウインクをした

「はい!」

その言葉を聞いてアヤの顔がパッと明るくなった

「野郎ども、行くぜ!」

「「「「「「「おう!」」」」」」」

掛声と共にステルスシートに覆われていたリョ―コの赤いエステバリス・カスタムとアヤの乗る緑色の量産型エステバリス・カスタムが他のエステバリスと共に姿を見せた

「遅い!」

姿を現すと同時にリョ―コはブラックサレナに向かってレールカノンを放った

楽々とリョ―コの放ったレールカノンをかわし、反転したブラックサレナは一気に逃げ去った

「チッ!追うぞ!」

「「「「「「「了解」」」」」」」

リョ―コ達、ライオンズシックルはブラックサレナの追撃に出た。









「皆さんおまたせです」

ナデシコのブリッジに

『おかえり』

とウィンドウが表示されている。オモイカネらしいといえばオモイカネらしいのだが・・・

「戦闘モードに移行しながらそのまま待機、当面は高みの見物です。」

「加勢はしないんですか?」

「ナデシコは避難民の救助を最優先します。」

「はぁ・・・」

「ハーリー君!」

「はい?」

ハーリーの体がビクッと震えた

「もう一度アマテラスへハッキング」

「またですか?」

「はい、キーワードは『AKITO』です。」

「え?艦長、アキトってなんですか?艦長、艦長ぉーーー!」

ルリに無視されたハーリーの目にはうっすらと涙さえ浮かんでくる

「IFSフィールドバック、レベル10までアップ。艦内は警戒体制パターンA。システム統括!!」

ハーリーの言葉を無視してルリはワンマンオペレーションシステムを起動させた、シートが前方にスライドして立ち姿勢に移行される、そしてルリの回りにウィンドウボールが展開した。

「艦長!前方にボソン反応増大!ボソンアウトします。」

「サブロウタさん!」

事態を察したルリが指示を飛ばす

「了解!」

スーパーエステバリスで待機していたサブロウタがハッチから出撃した。

そしてナデシコの前方で謎の黒い機動兵器が姿を現した、各所にスラスターらしき物が見える。そんなことよりも、その機動兵器から発する禍々しい気配をそこにいた全員が感じていた。

「相手、応答ありません!」

「サブロウタさん、どうですか?」

謎の機動兵器と対峙しているサブロウタのスーパーエステバリス

「どうやら話し合いの通じる相手じゃなさそうですね。」

サブロウタは相手から感じる殺気に少なからず恐怖を覚えた、その証拠にサブロウタの額から汗が流れ落ちる。

「クッ!?」

今まで沈黙を守っていた謎の機動兵器がスーパーエステバリスに牙を剥いた、サブロウタの放つラピッドライフルを不規則な動きでかわしつつ謎の機動兵器は確実に間合いを詰めてくる

「なんだ?あの動きは!?」

サブロウタは初めて見る敵の動きにあきらかに戸惑っていた、しかし謎の機動兵器は相変わらず飛んでくる弾を避けながら間合いを詰めてくる

「クソッ!」

謎の機動兵器は手に持っている杖状の武器を構えるとスーパーエステバリスに迫ってきていた

「ヤ、ヤバイ!」

サブロウタは迫りくる危機を感じて咄嗟に身を捻った・・・

激しい音を伴いながら交差する二体・・・お互い何事も無いように見えたのだが・・・

「マジかよ!」

スーパーエステバリスの左腕が忽然と消えていた、後方で左腕の爆発音だけが聞こえる・・・あの時サブロウタが身を捻っていなければ、左腕ではなく間違いなくコックピットが破壊されていただろう

「サブロウタさんが・・・」

ブリッジにいるハーリーが呟いた。サブロウタが負ける・・・ハーリーにとってそれほどショッキングな出来事はない、そしてそれはブリッジにいる全員にも言えたことだった。
それほど皆はサブロウタの事を信頼していたのだ、操縦技術を含めて・・・

そんな緊張状態の中、ルリの前にウィンドウが開いた

「か、艦長!?ナデシコ前方に新たなボソン反応を確認、スクリーンに出ます。」

そう告げる女性オペレーターは、まるで自分の言っていることさえ信じられない。そんな顔をしていた。しかし現実にルリたちの目の前で光の粒子が急速に収束して白く輝く機動兵器が姿を現した。先ほどの黒い機動兵器とは違い、その姿には神々しさ感じられた・・・

「あれは一体?」

ブリッジにいる全員が我が目を疑った。









「これは・・・」

カイトは驚愕した。目の前の黒い機動兵器が放つ只ならぬ殺気というものに・・・

そして、前方ではスーパーエステバリスが左腕を失いながらも謎の機動兵器の攻撃に必死に耐えている、そんな状況にカイトは怒りさえ覚えた、しかしそんな中カイトの頭の中は怒りに反比例するように冷たく冷めていった・・・

「あれは夜天光、何でこんなところに・・・」

カイトはサブロウタと戦っている、機動兵器に心当たりがあったのだがそんなこと深く考える時間も無く両腕に取り付けられたハンドカノンを連射しながら二体の間に入り込んでいく、しかしまたもや謎の機動兵器、夜天光の動きにかわされる

「早く、ナデシコと共に逃げてください。」

仕方なくコミュニケを使ってサブロウタに呼びかける、

「おい!おまえは・・・」

カイトの顔は半分以上がヘルメットとそれに付けられたバイザーらしいもので隠れていてサブロウタには誰だかわからないようだ

「早くしてください。」

カイトがサブロウタの判断を促す

その時、サブロウタの前に新たなウィンドウが開いた

「サブロウタさん、残念ですがその人の言う通りです」

サブロウタの前に現れたのは艦長であるルリであった。

「・・・わかりました、艦長」

悔しそうに答えると、スーパーエステバリスがナデシコに帰艦していく

「あなたは何者ですか?」

カイトの前にウィンドウが開いたルリである、しかしその顔はどこか厳しい

「フッ・・・」

カイトは久しぶりに見た、ルリの顔におもわず笑みがこぼれた。

その顔を見た瞬間、ルリの瞳が大きく見開かれる、驚き、困惑、すべてが入り混じったそんな顔だ。

「あなたは・・・」

おもわずカイトは通信回線を遮断したこのままだと決意が揺らいでしまいそうだったから・・・

「(ごめんよ・・・ルリちゃん・・・)」

そう思うカイトを尻目にナデシコは後方に退いていった、そして改めてカイトは夜天光と対峙する・・・

「一筋縄ではいきませんよね・・・」

逃げていくナデシコには目もくれず夜天光が標的をカイトに代えて襲いかかってきた。
カイトは体に受ける重圧を感じた、殺気という名の重圧を・・・
ハンドカノンを連射するカイト、しかし夜天光は今までの様に胸につくスラスターを巧みに使い分け避けていく

「なかなか・・・」

接近戦は危険と判断し一旦距離をとるカイトはその間もハンドカノンを放ってる、今度は相手の動きを読んでいるためか徐々に当たり始めていく
敵もそれに反抗するかのように腕に内蔵されているミサイルランチャーを放った・・・

「・・・・・・・・・」

無難にハンドカノンでミサイルを迎撃していく・・・しかしカイトには何か漠然とした違和感を感じていた。

「・・・・・・いない!」

爆風の向こうに夜天光の姿は無かった・・・
自身を守る防衛本能の如く自然にカイトの五感が研ぎ澄まされていく

「・・・後ろ!?」

夜天光は突然アンスリウムの後ろに現れた、しかしすでにそれを察知していたカイトは右腕のハンドカノンを外すと腰元にあるフィールドランサーUを使って一閃する
フィールドを切り裂き傷を負わせるが致命傷には至らなかったようだ、敵からの殺気は弱まるどころか強くなっていく・・・そんな常軌を逸する戦いをナデシコも見守っていた・・・



ブリッジにいる全員が職務を遂行しながらもスクリーンに映る食い入るように見つめている
唯一人ルリを抜かして・・・

「もしかしたらあの人は・・・」

先ほどのパイロットとカイトの笑顔がルリには重なって見えたのだ・・・

「すいません、艦長・・・」

サブロウタがブリッジに戻ってきた、やはりさっきの戦闘が堪えたようだ、いつもの明るさが無い。

「お疲れ様ですサブロウタさん、エステバリスの方はどうですか?」

ルリはウィンドウボールの中にいるためにコミュニケを使ってサブロウタと話す

「左腕のほかにも損傷が酷いようで動く程度ならできますが戦闘は無理です・・・」

悔しそうにするサブロウタの拳に力が入った

「わかりました、何かあるかもしれないので一応待機しておいてください。」

「はい・・・」

ルリとサブロウタの会話をハーリーが不思議そうに見ていた、

元気が無いというか、覇気が無いというか、ハーリーにはいつものルリと違う気がした、さっきのパイロットと話してから・・・

「あの・・・艦長?」

「なんですか?ハーリー君」

「あの・・・どうかしたんですか?・・・なんかいつもと違うみたいなので・・・」

「!・・・大丈夫ですよ、ハーリー君」

そういうルリが微かに笑っている事にハーリーも気がついたのだろう、ハーリーの顔が赤くなっていく

「いえ、何でもないんならいいんです・・・ハハッ、気のせいですよね?・・・そ、それでは仕事に戻ります、オ、オモイカネ!ス、スピードをちゅ、中級からじょ、上級へ・・・」

一人で混乱していくハーリー、それに気がついたのか恥ずかしそうにハーリーが通信を終わらせる。

「・・・・・・」

ルリには言えなかった・・・あそこで戦っているのが、もしかしたらカイトかもしれないということを・・・
ここナデシコでカイトのことをほとんどの人間が知っている、例外としてハーリーなど後から配属になったものだ、そのためほとんどの人がカイトの死というものを自分の目で見ている、そんな時ルリが、あのパイロットはカイトかもしれないなどといったら少なからず動揺というものが走るだろう、そしてその少しの動揺が戦場では重大な事なのだ、要するに生きるか、死ぬか・・・そのことはルリも心得ていた、だからこそ言えなかったのだ・・・

「あの人はもういない・・・私達の前で死んでしまったのだから・・・」

誰に言うわけでもなく、ルリは自分に言い聞かせるように呟いた。

一方、スクリーンに映る戦闘もクライマックスに移ろうとしていた。



「似ている・・・」

さっきから同じ疑問が頭をよぎる、ずっと気になっていた、敵と自分との戦い方がそっくりなことに・・・
間合いの取り方、攻撃の仕方、避け方までもがカイトに似ていた・・・しかし同じ技量だとしても二人の乗っている機体は違う、ここにきてカイトの乗るアンスリウムが夜天光を押してきていた

「・・・・・・いける!」

そう確信したカイトは余りある機動力を使って、今度はこちらから間合いを詰めてゆくもちろんフィールドランサーUを構えて、敵もその動きに反応し切れなかったようだ初期動作が一瞬遅れた、しかしそれだけの時間でもカイトには充分だった

「もらった!」

懐に入ったカイトは夜天光に仕掛けた、その一撃は確実にフィールドを突き破り夜天光の胸部を切り裂く・・・はずだったのだが・・・

「(ニヤリ・・・)」

別にカイトが笑ったわけでも見たわけでもない、感じたのだ夜天光から背筋も凍るような不気味な笑みを・・・

そしてその一撃が当たるか当たらないかの瞬間、カイトの目の前から夜天光がまたもや姿を消した・・・というよりも消えたといった方が正しいだろう

「逃げられたか・・・」

辺りから今までのことが嘘のように殺気が消えた、そしてカイトの脳裏に一つの考えが浮かんでくる、できれば考えたくない考えが・・・

「敵にも、A級ジャンパーがいる・・・」

カイトには敵の消え方には心当たりがあった・・・単独ボソンジャンプ、現在カイトやアキトなどのA級ジャンパーしか行えない移動手段の一つである





「ふぅ〜、とんだ足止めをくらっちゃったな!」

不意にカイトの顔が緩んだ、彼の顔には戦闘中のような張り詰めた空気は無い

「13番ゲートか・・・」

カイトの目の前に一枚のウィンドウが開く、どうやらアマテラスの地図のようなのだが、其処には公式設計図に載っていない場所も表示されている。

「(ここか!)」

公式設計図に載っていない部分に赤く光る光点を見つけると

「・・・よし!」

カイトは一路、13番ゲートへと急いだ・・・・・・13番ゲート、別名、『遺跡』専用搬入口へと・・・






補足:武器説明

フィールドランサーU

従来のフィールドランサーをアンスリウム用に改良したもので、
全高8mを誇るアンスリウムの大きさに合わせて大型化、標準武装にするために折りたたみ式になっている。
本体とパワーケーブルで繋がっているために、今までのようなバッテリー交換が不要になっている。





つづく



後書き

ど〜も!海苔です!
2話でした、どうでしたか?
本編も長かったので後書きも長くしていきましょう!
まずキャラ設定なんですがアニメや劇場版と同じです。
武器については自分でもよく分かっておりません。(おいおい・・・Σ(゜△゜;)

ここで登場人物に自己紹介でもしてもらいましょうか
光栄の第一回目は本編の主役であるカイト君で〜す!
それではどうぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜(^▽^)

カ「えっ!?僕ですか?って、その前に僕って主役だったんですね・・・」

海「そうです!そんな事よりどうぞ〜〜」

カ「あの・・・自己紹介って何言えばいいんですかね?」

海「名前とか歳とか言ってればいいんじゃないの?」

カ「わかりました!・・・名前はミスマル・カイトって言います。歳は二十・・・それと・・・」

海「んっ・・・ストッ〜〜プ!!、カイト君ってたしか記憶喪失だよね〜?」

カ「?・・・そうですよ!それが何か?」

海「記憶喪失なのになんで歳がわかんの?」

カ「・・・実はイネスさんに診断してもらったんですよ!」

海「ふ〜ん、まあ良しとしましょう、続きをどうぞ!」

カ「そ、そうですか、え〜と趣味は散歩、特技は色々ありますね!」

海「例えば?」

カ「まっ色々は色々です。」

海「エステの操縦とか?」

カ「それもその内の一つですね、他はそのうちあなたが書くでしょう。」

海「・・・まっ要するに謎がいっぱいあるという事で!」

カ「結局、自己紹介っていっても何にもわからなかったような気がしますよ・・・」

海「しょうがないじゃん!今いったら後が面白くないし・・・」

カ「そうですけど・・・」

海「ハッ!?もうこんな時間だ!」

カ「なにが時間ですか・・・」

海「いやぁ〜後書きで引っ張りまくるのもどうかなぁ〜と思ってね!」

カ「そうですね!それでは皆さん次話で会いましょう!」

海「あっ、言われた!?」

カ「さよ〜なら〜」

海「ウウッ・・・それまで・・・後で酷いぞ・・・」

カ「ウッ・・・じゃあ、さようなら作者さん!」

海「あっ!待てコラ〜!っとその前に質問などがあったらガンガンメールください。暇つぶしでもいいですから!ちゃんと返事は出させてもらいます。」



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