機動戦艦ナデシコ

〜 Endless  Story  第一章 アカキヒトミ 〜








星の数ほど人がいて


星の数ほど出会いがある・・・


そして別れ・・・


でも・・・あの人は・・・


あの人たちは・・・






第1話  動き出した運命




試験戦艦ナデシコB


連合宇宙軍第4艦隊所属の試験戦艦。ネルガル重工が開発したナデシコ級第2世代型宇宙戦艦である、運行目的はIFSの発展型である「ワンマンオペレーションシステムプラン(一人一戦艦計画)」の実験データの収集を目的とし、それは今も変わりは無かった・・・少なくともこの日までは・・・


8月10日 ナデシコB ブリッジ


ナデシコB艦長であるホシノ・ルリは今時珍しい紙の本を読んでいた、艦内は静まりかえり各々が自分の仕事に没頭している。

「艦長、交代の時間ですよ。」

ルリはその声に反応して後ろを向いた。そこにいたのは最近ナデシコBに配属された新人オペレーター・サクラ准尉だ。採用理由が趣味で作っていたゲームソフトのデキがよかったため・・・と言う変わった理由なのだが腕は確かでクルーからの信用もそれなりに得ていた。

「あれ?その写真は?」

ルリのパネル脇にある写真立てに気づいてサクラ准尉は思わず口に出してしまった。

写真にはルリを中心に、コック姿のアキトとそのアキトの腕にしがみつくエプロンに三角巾姿のユリカ、そしてルリの両肩に手を置く青年・・・カイトが写っていた。当の本人、ルリは手にチャルメラを持って赤くなりながら俯いている。

どこにでもありそうな光景、しかし写真に写っているルリ達の顔は幸せに満ちていた。

「家族です。」

ルリはフッと微笑むと簡単にそう答えた。

「へぇ〜、お兄さんとお姉さんですか?」

「少し違いますが、大体・・・当たりです。」

「大体、当たり・・・ですか?」

サクラ准尉の目にはあきらかに困惑の雰囲気があった。そしてちょうどその時、サクラ准尉は仲の良いクルーから聞いた話を偶然にも思い出した・・・

「(艦長って・・・身寄りがいないらしいわよ・・・)」

「(あっ!!私・・・何て事を・・・)」

顔色が青くなっていくサクラ准尉に気がついたルリは・・・

「交代でしたね、あと・・・よろしくお願いします。」

と慰めるように優しく言ってルリは席を立った。

「す、すみません!関係ない話を聞いてしまってお疲れ様でした。」

サクラ准尉がルリに向かって敬礼した。

「かまいませんよ。」

ルリは微笑みかけるようにそれに答えるとブリッジを後にした。

ブリッジを後にしたルリの足は自然と自室へと向かっていた、そこしか行くところが無いと言えばそれまでなのだが、ルリの頭の中では、写真に写っていた青年、カイトとの記憶が走馬灯のように蘇ってきていた。



2198年3月・・・

遺跡を乗せたナデシコに突然ボソンアウトして現れた記憶喪失の青年、それがカイトだった。

もちろんカイトと言う名前も本人が覚えていた訳ではない、当時のナデシコ艦長であったユリカによって名付けられたのだ。

「ホシノ・ルリ、オペレーター。13歳です。」

自己紹介の場でルリはカイトにおじぎをしていた・・・ルリ本人としてはいつもと何ら変わりなくしているつもりだが、どうやらそうもいかなかったらしい・・・

「よろしくね!ルリちゃん」

そう言うとカイトは笑顔で手を差し出した。そして、その手を思わず赤くなりながら握るルリ・・・

それが、カイトとルリの最初の出会いだった・・・そのあとナデシコクルーによってルリがからかわれたのは言うまでも無いが・・・



2198年7月・・・

ナデシコクルーは遺跡の秘密を知ってしまったという事で連合宇宙軍サセボ基地資材管理倉庫D―通称、ナデシコ長屋に抑留されることになっていた。

当初、カイトは例外とされていたがナデシコクルーが事の大半を話してしまったがために、ナデシコ長屋にてルリやアキト達ナデシコクルーと共同生活を送るはめになっていたのだ。

ナデシコ長屋の生活にも慣れ始めた頃、その時カイトとルリの二人はサセボ基地の隅にあるベンチに腰掛けていた。

「ルリちゃん!誕生日おめでとう!はい、プレゼント!!」

というとカイト満面の笑みで細長いケースをルリに手渡した。

「えっ・・・」

「ルリちゃん、もしかして忘れてたの?誕生日・・・」

「・・・はい・・・色々と忙しくて・・・」

最初から赤みを帯びていたルリの頬が益々赤みを増してくる。

「まっ、とにかく開けてみてよ!似合うといいんだけど・・・」

その言葉を聞いてルリはゆっくりとケースを開けた

「これは・・・」

ケースの中には青い水晶が先端についたペンダントが入っていた。簡単な作りでお世辞でも高い物とはいないがルリはこのペンダントに心躍るものがあったのを今でも覚えていた・・・

「プロスさんに借金して買ってきてもらったんだよ。高い奴じゃないんだけどさ・・・」

カイトは少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言った・・・

「ルリちゃん、よかったら着けてみてくれないかな?」

「は、はい」

するとルリは器用に首の後ろに手を回しペンダントを着けた。カイトには見えなかったが、この時ルリの手は嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で震えていた。すんなり着ける事が出来た時、ルリは神様を信じたほどに・・・

「ど、どうですか?」

ルリは控えめにカイトに尋ねてみた、その言葉を聞くとカイトはニコッと笑い

「うん、良く似合ってるよ。」

その言葉を聞いたルリは俯きながら・・・

「カイトさん・・・ありがとうございます。」

「どういたしまして・・・」

いつのまにかルリの顔は燃えるように赤くなっていた、気を抜いたら倒れてしまうかと思うほど・・・


2198年9月・・・

ナデシコクルーの抑留が解かれた後、カイトはルリと共にミスマル家に引き取られたが、色々と問題が発生して結局、アキト家でアキト、ユリカそしてルリと共に生活を送ることになった。

そんなある日、あれは4人で行った銭湯の帰りだった・・・

「あっゴマ油買うの忘れてた。」

突然、アキトが口を開いた。

「悪いけど、先に帰っててくれないかな。」

返事を待たずにアキトは横道に入っていった、そしてそれを見たユリカも

「待ってよ〜!アキト〜〜〜!!」

といって凄い速さでアキトの後を追いかけていった。

その場に取り残されるカイトとルリ・・・

「帰ろっか、ルリちゃん?」

「そうですね。」

軽く言葉を交えた二人は自宅に向けて歩き出した

「カイトさん、前々から聞きたいことがあるんですけど・・・」

先に声をかけたのはルリだった。

「なに?」

「カイトさんは記憶喪失なんですよね。」

「多分そうだと思うよ!」

「カイトさんは、記憶が戻った方がいいと思いますか?それがたとえ思い出したくない記憶でも・・・」

「戻るのなら戻ってほしいな、例えそれが思い出したくない記憶でもね、これの意味も知りたいし。」

カイトは自分の両手に浮かび上がる2種類のIFSのタトゥーを見つめた。右手にパイロット用の、左手にオペレーター用のIFS、この二つのIFSをつけているのは誰の目に見ても異常だった・・・

「そうですか・・・やっぱりそう思うんですね。」

「どんな過去があっても、僕は僕だからね。」

そう言ってカイトはルリに向かって微笑んだ。



2199年6月・・・

この年アキトとユリカはめでたく結婚することになる。

それから、数日後・・・

アキトとユリカは、カイトやルリ達に見送られながら新婚旅行に出発した。

行き先は火星、二人にとっての思い出の地・・・

アキトは出発前にカイトとルリに、あの草原を自転車で走りたいと言っていた。

しかし、その願いは叶う事は無い。

シャトルはみんなが見送る中で爆発し、二人は帰らぬ人となった・・・

それからカイトとルリはコウイチロウの勧めもあり宇宙軍に入隊することになる。



2199年12月・・・

艦長にホシノ・ルリ、副長にタカスギ・サブロウタ、そして副長補佐にミスマル・カイトを迎えたナデシコBが就役する。



2200年1月・・・

その時ナデシコBは補給のためにネルガル月ドックに停泊中だった。

そしてこの日、ルリにとって忘れられない事件が起きる。

「なぁ、カイトあとでトレーニングに付き合ってくんないか?」

カイトに声をかけたのは金髪に赤いメッシュ頭の元木連将校にしてナデシコBの副長を務めるタカスギ・サブロウタ大尉だった。

「またですかぁ〜、サブロウタさん」

「お前に勝つまでやめないからな!」

などとブリッジにはいろんな会話が飛び交っている。別にいつもと何も変わらない・・・普段の日常風景・・・

そんな中、ルリの前にウィンドウが開いた

「艦長、ミスマル総司令から通信が入っていますが」

「わかりました、繋げてください。」

ルリがその言葉をいうと同時にブリッジ一面にウィンドウが開いた。

「久しぶりだねぇ・・・ルリ君。」

「お久しぶりです。ミスマル総司令」

「ルリ君、急で悪いんだがカイト君と変わってくれないかな。」

「わかりました。」

するとカイトの前に小さいウィンドウが開いた。

「どうしたんですか?コウイチロウさん?」

「コホン、君には至急ネルガル本社ビルで開発中の機動兵器のテストパイロットをしてもらいたい、シャトルの方もすぐにそちらに着くはずだ。」

「・・・わかりました、それでは至急準備を始めますので」

そういうとカイトの前のウィンドウが閉じられた

「ルリ君、聞いての通りだ、すまないが頼んだよ。」

そういうコウイチロウの顔は本当に申し分けなさそうな顔をしていた。なぜそんな顔をしていたのかルリには分からない、確かにコウイチロウのコネで今までルリとカイトは全く無関係になったことはない、必ずどこかで接点があった。その事に関する顔なのか、しかしそんな些細な疑問が消えてしまうほど衝撃的なことがこのあと起こった。


1時間後・・・


「じゃあ、ルリちゃん、サブロウタさん行ってきます。」

「おう!じゃあな。」

「いってらっしゃい、カイトさん。」

二人に笑顔を向けるとカイトはシャトルへの階段を下りていった。

「行っちゃいましたね、カイトの奴」

カイトが下りていった階段を見つめながらサブロウタが口を開いた。

「えぇ、そうですね。・・・私達も戻りましょうか?ナデシコに」

「そぉっすね、艦長」

そしてルリとサブロウタはナデシコに向かって歩いていった。

そしてルリ達がブリッジに着くと同時にカイトの乗るシャトルがウィンドウに表示された。オモイカネなりの気配りなのかどうかは分からない、しかし誰の目にも見えるようウィンドウはブリッジ一面に広がっていた。

そして次の瞬間・・・ブリッジにいるクルーが見つめる中、突然シャトルは謎の爆発した。

静寂に包まれるブリッジいたる所で悲鳴が聞こえる。叫ぶ者、泣く者・・・三者三様の光景。

「おいおい、冗談だろ。」

サブロウタは目の前の光景が信じられないようだ。いまだに爆発の名残を残すウィンドウを見つめていた。

そして、ルリは・・・

「・・・ィ・・・イヤヤヤヤァァァァァァァァァァァ」

その場に腰が抜けたように座り込んでしまった。
手で顔を覆い隠しているが、その隙間からは光る涙が見える・・・アキトやユリカが事故にあった時でもルリの瞳から涙が零れ落ちる事は無かった・・・しかし今のルリは子供のように涙が流れていた・・・

ルリはシャトルの事故でアキトやユリカ・・・そしてカイトを永遠に失った。




「・・・・・長」

「・・か・・長」

「・・艦長」

その言葉でルリの意識が現実に戻された。

ルリが顔を上げると目の前にウィンドウが開いている。カイトの後に副長補佐としてナデシコBに配属になったマキビ・ハリ少尉だ。

「艦長、すみませんが至急ブリッジまで上がってきてください。ミスマル総司令から通信が入っています。」

「わかりました。」

ルリは一人、ブリッジへと走っていった。






その日、ナデシコBに連合宇宙軍総司令ミスマル・コウイチロウから直々に一つの命令が下った。

『君達もシラヒメの事件は知っているだろう。その時、シラヒメにおいてボソンの異常増大が確認された。そのため、ナデシコには今から事故調査のためヒサゴプランの中枢であるアマテラスに行ってもらいたい。もちろん開発公団の許可も取ってあるから安心したまえ。』

それがナデシコに下された命令だった。


そして1時間後・・・


「艦長、前方にターミナルコロニー『タキリ』を確認」

女性オペレーターがルリに現状を伝えた。

「わかりました。ディストーションフィールド出力最大、ハーリー君ルートの確認を・・・」

ルリの斜め後ろにいるサブロウタとハーリーに指示を出した。

「ディストーションフィールド出力最大!」

サブロウタがルリの命令を復唱する。

「ルート確認。タキリ、サヨリ、タギツを通って、アマテラスへ!」

「光学障壁展開」

ハーリーの甲高い声がブリッジに響いた

「各員、最終チェックよろしく」

その言葉と同時にルリの前に多くのウィンドウが開く

『通信回線閉鎖』

『生活ブロック準備完了』

『エネルギー系統OK!』

『艦内警戒体制パターンB』

「フィールド出力も異常なし。その他まとめてオールOK!」

サブロウタらしい言葉で締めくくると、ナデシコはタキリの中に入っていった。

「フェルミオン=ボソン変換順調」

「艦内異常なし」

「レベル上昇、6,7,8,9・・・」

「じゃんぷ」

そしてナデシコは跳んだ。事件の始まりとなるアマテラスへと・・・



同日 ネルガル本社ビル・・・



カイトは一人、浮かない顔である一室を目指していた。

特別治療室そう書かれた部屋の前で立ち止まると一人カイトは部屋の奥に入っていった・・・

「・・・やっぱり来たのね。」

カイトは部屋に入るのと同時に声をかけられた、長い茶色の髪に銀縁の眼鏡をかけている利発そうな女性だ。

「えぇ、それよりユリさんあの子は起きましたか?」

カイトはユリと話しながら部屋の奥にあるベッドに歩いていく

「いえ、まだよ。」

ユリもカイトの横を歩きながらベッドに近づいていく・・・

「そうですか・・・」

カイトはベッドの前に置いてあるイスに座った。

「もう半年だものね。」

「・・・そんなに経つんですか。」

そしてカイトは優しい瞳でベッドの上に横たわっている少女を見つめた。

カイトと同じ黒い髪に浅黒い肌、閉じられた瞼で瞳の色はわからないが、歳は顔立ちや背格好から見て10歳前後だろう。

「どうしたの、浮かない顔して・・・」

「・・・昔のことを思い出したんですよ。」

「昔・・・ナデシコに乗ってた時の?」

「いえ、その後ですよ。色々あったなぁ、と思いまして」

「色々って?」

「・・・それは・・・秘密です。」

そういって笑みを浮かべるカイトはゆっくり少女の手を握った。その手は少し冷たく何か人形、無機質な物のような気がしてカイトの心に陰を落とした・・・

「・・・まっいいでしょう。それよりもこの子のことなんだけど、もしかしたら・・・」

「もしかしたら?」

カイトはその言葉に少女の手を離しユリの方に体を向けると息を呑んだ。

「内緒!」

その瞬間カイトはイスからずり落ちた・・・

「ハッハハ、内緒・・・ですか?」

その顔はあきらかに引きつっている。あそこまで期待して結局わからないなんて、テストで名前を書き忘れた子供と同じ位の失望だろう・・・

「そっ、内緒・・・でもすぐにでも答えは分かるわ。」

そういってユリは悪戯っ子の笑みを浮かべた。カイトには今だにユリの真意が掴みきれない・・・

「カイト君!」

カイトの前に突然ウィンドウが開いた。

「エリナさん、どうしたんですか?」

カイトの前に現れたのは、元会長秘書、現宇宙開発部の部長を務めている、エリナだった。

「どうしたんですか・・・じゃないわよ。今日が10日って忘れたの。」

その顔にはあきらかに怒気が満ちている。

「忘れるはずがないですよ。」

一瞬カイトの表情が曇った。

「と、とにかく・・・至急地下格納庫に来なさい!」

その顔を見たエリナはあきらかに動揺していた。しかし今はそんな余裕も無く用件だけを的確に伝えた。

「わかりました、今から行きます。」

カイトの言葉を聞くと、エリナは乱暴に通信を切った。

「そういうことなんでユリさん、僕はこれで失礼しますよ。」

カイトはイスから立ち上がり出口へと向かった。

「あなたも大変そうね、カイト君。」

カイトはそれに答えるように笑いかけると部屋を後にした。


地下格納庫


エリナに呼び出されたカイトは格納庫の隅にある、白い機動兵器の前に立っていた、その格好は今までの私服ではなく鎧ともいえる耐G用の白いパイロットスーツを着ていて手にはヘルメットを持っている。

「アンスリウム・・・」

カイトは目の前にある白と銀色に輝く機動兵器を見つめた。



アンスリウム・・・

カイトの乗るエステバリスカスタムに追加強化装甲をつけたものであり、そのため従来のエステバリスより一回りほど大型化している。
形状はシラヒメなどのコロニーを襲った犯人、アキトの専用機であるブラックサレナとかなり酷似しているが、スラスターなどの追加で機動性やパワーなどではブラックサレナの上を行く機体になっていた。
標準武装は、後ろの両肩の部分から足元に伸びるグラビティカノン×2、腰元に備え付けられたフィールドランサーU×1、両腕に取り付けられているハンドカノン×2
このアンスリウムの最大の特徴は内部に小型相転移エンジンを持っており、単独ボソンジャンプ機能も備えていることだ。



「やっときたのね。」

カイトが振り返ると胸の前で手を組んでいるエリナが立っていた。

「また、あの子のところに行ってたらしいわね。カイト君!どうしてそこまであの子にかかわるの?確かに助けたのはあなただけど、毎日のように行くこともないんじゃないの?」

「似てるんですよ、昔の僕の境遇に・・・」

「え・・・」

「僕がナデシコに来た時、正直不安でした。なにも分からず自分のことさえわからなかったあの時、僕には皆さんがいてくれました。ナデシコのみんなが。だからですかね、あの子に自分を重ねてしまうんですよ。」

カイトの目は遠くを見つめていた。まるで昔を思い出すかのように・・・

「ほんと、あなたらしいわカイト君。」

その話を聞いたエリナはやれやれといった表情をしている。しかしエリナはそこがカイトの良い所と、半ば内心は安心していた。

「このまえ、アカツキさんにも同じことを言われましたよ。」

「う、うるさいわね!」

カイトにからかわれたと思い怒りだすエリナだったがカイトはあっさりとそれを受け流した。

「それよりもエリナさん、アマテラスの方はどうなんですか?」

カイトの顔は今までとは打って変わり真剣な面持ちになっている、そこにはさっきまでの和やかな雰囲気も無くなっている。

「今ごろ、大変なことになってるでしょうね。」

エリナの顔も元の真剣な表情に戻っていた。

「と、いうことはアキトさんはもう・・・」

「もう向こうに行ったわ。それと、カイト君・・・ナデシコもアマテラスにいるらしいわ。」

「ナデシコが・・・」

「まぁ、あの子のことだから大丈夫だとは思うけどね。」

「・・・わかりました。そろそろ僕も行くことにしますよ、アマテラスに・・・」

自分の愛機であるアンスリウムに乗り込もうとするカイトが急に振り返った。

「エリナさん、アカツキさんに伝えてください。あの子をもし実験に使うようだったら、僕もそれを全力で阻止すると・・・」

その顔は普段からは想像できないほど哀しみに満ちていた。

「ちゃんと伝えておくわ。」

その言葉を聞いたカイトは納得したようにアンスリウムの胸部にあるコックピットに入っていった。

ヘルメットをかぶったカイトはパイロットシートに座ってアンスリウムを起動させていく。カイトの目の前をおびただしいウィンドウが開いては消えていった。

『システムチェック完了』

カイトの目の前に最後のウィンドウが現れて、そして消えた。

「ふぅ〜、ナデシコか・・・」

カイトの頭の中に一人の少女が浮かんできた。カイトにとって大切な人・・・

「ルリちゃん・・・」

その思いを消し去るように首を振ると、

「イメージ、アマテラス・・・・・・・・・・」

「ジャンプ」

アンスリウムはエリナの前から消えた。そして、そこには幻想的なボソンの光だけがそこにアンスリウムがいたことを物語っていた。

「会長も私も、あなたを敵に回すほどバカじゃないわよ。」

一人、取り残されたエリナが光に向かって呟いた・・・





つづく



後書き

どうもです海苔です。

一話どうだったでしょうか?私としては楽しんでいただければそれでいいのですが?
やっと話が始まりましたね、過去ばっかりでしたけど(^^;)
やっと話の概要が見えてきたかな?っと思っちゃたりしてる今日この頃です。
次回からはアマテラス編です!だから今よりかは面白くなるかなぁ〜?なんて思ってるんですが、まだわかりませんね?
え〜・・・後書きで引っ張るのもなんですので、この辺で・・・海苔でしたm(_ _)m
お暇でしたらメールお待ちしております、もちろんお返事お返しします。
それでは次回・・・読んでくださいね〜m(_ _)m




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