01:帰還者・・・4人(!?)


西暦220?年 火星〜木星間の宇宙空間

(敵の殲滅を確認・・・周辺に艦船・機動兵器の残存を認めず) 「そうか・・・終わったな・・・」

AIアルファの報告に艦長席の人物は応じた。
全身真っ黒の格好で艦長席に深く身体を沈めた人物はテンカワ・アキト。
最重要指名手配の犯罪者として手配されている。

火星で北辰を倒し、ナデシコのみんなと別れてから、火星の後継者たちの残党を追撃し、先程終わった。

「間に合ったな・・・がっ・・・」 (マスター!!)

突然の咳き込み・・・口からは大量の吐血・・・。

「本当にタイムリミットが来たようだな・・・」  (マスター・・・)

すでに五感はなく、弄くり回された身体は、もう席から立ち上がることもできない。
ラピスとのリンクも、最後の寄港をした時に、イネスに頼んで離してもらい、エリナに預けて普通の生活をさせて貰えるようにしてある。

「アルファ・・・頼みがある・・・」

(私はマスターのために生み出されたもの。最後までマスターの、お供をします。)

「すまないな・・・オレが死んだらジャンプしてくれ・・・近くの恒星でいい・・・」

(跡形も残さずに消えるのですね・・・)

「そうだ・・・無残な姿を誰にも見せたくない・・・か・・・ら・・・な・・・」 (血圧低下・・・心拍数低下・・・)

(了解しました・・・)

アキトの脳裏には、楽しかった記憶が走馬灯のように次々と蘇える。
ラピス・・・ルリちゃん・・・ユリカ・・・
そして、思い出すものがなくなり闇へと飲み込まれた。

(・・・マスターの死亡を確認・・・ジャンプ・シークエンス起動・・・恒星中心へ・・・」

アキトの最後を看取ったアルファは、遺言となった最後の命令を実行する。
アキトの棺桶となった戦艦は、最後のジャンプをして・・・消滅した。


アキトは、暗い空間の中で目覚めた。

「ここは、どこだ? 確か、終わったハズだよな・・・自分の生(命)も。」

暗闇の中から返事が返ってくる。

(確かに終わっているよ! テンカワ アキトくん。)

声がした方を見ると、人魂が浮いていた。
アキトは、そちらに向くと人魂が話しかけてきた。

(君の人生は確かに終わったけど、僕の方の用事というか、お願いがあったので、あの世に行く前の段階で、こっちへと呼び寄せたんだ。)

「お願いだと!(怒)」

(そう・・・お願いというか、君も、やり直したいんじゃないかな? 人生を・・・)

「人生だと・・・あんな思いをする人生は、ごめんだな。」

(確かに・・・でも今までの事実を知っている状態で、もう1度やり直して修正してほしい!というお願いなんだけど。)

「オマエは何なんだ? 人生をやり直すというと神様なんかか?」

(嫌、君も良く知っている存在さ。君たちが遺跡と呼んでいる存在さ・・・。)

「遺跡! オマエのせいで、どんだけ苦労したのか知っているだろう!」

(そのことについては、すまないと思っている。だが、君たちの世界には直接関与することは禁止されているんだ。)

「禁止だと! それなら呼び出すな!! 静かに眠りたいんだ、オレは!!!」

(お願いがあるって言ったろ! このままだと平行世界で同じことが繰り返されてしまう。それだけは何としても避けたいんだ!)

「平行世界? また繰り返されるのか?」

(多分、同じ事の繰り返しになると思う。)

「あっていいわけが無い。どうすれば変えることが出来るんだ。」

遠くにあった人魂がアキトの近くに寄ってきた。

(君を過去へと送り込む。当然だけど君がいるが、その存在に重なって貰う!)

「重なるって事は、前のオレはどうなる?」

(普通は消えることになるけど・・・アキト君、小さい頃に大きな事故にあった事はないかな?)

アキトは昔の記憶を探ってみると、確かにユリカのイタズラで2人して死に掛けた事件があった事を思い出した。

(思い出したようだね。あの時は奇跡的に生き返った時があったけど、その時を利用して君の存在を入れ込むよ。)
(その時だと存在が重なるので、その世界のアキト君と混ざり合うと思うよ。)

「混ざり合う!?」

(そう! 混ざってしまって、そんな感じかな。)

話しを進めていると、アキトの身体にも変化があり事故当時の身体へと縮んでいる。
何を思ったのかアキトは自分の頬を殴った。

「痛った〜ぁ! 確かに五感は戻っているな。」

(んな、試し方をするなよな! ちゃんと戻っているよ、それに能力も最盛期の状態になっているから、僕の後ろに動いている物も見えるだろう。)

アキトは人魂の後ろを見てみると、炎が色々な形へと変化して文字をカタチ作っているのが見えた。

「1・3・7・9・・・・(結構早く変わっているなぁ)」

(コンマ1秒単位で変えても見えているなら大丈夫だろう!)
(あとは身体の動きだけど・・・)

人魂が説明しているのにアキトは、体術の構えを取ったりして、身体の反応を確かめている。

「筋力も衰えていないし、反応も落ちていない。しかし、チビの身体なのに、能力がありすぎて、まわりが不審がるだろうなぁ。」

(そこは向こうに行ってから君の調整次第だね。)

「アバウトだな!(コイツ・・・楽しんでいるな!・・・)」

(あとは機体だけど、僕の趣味で君の機体を修理といっしょに改造したから・・・)

アキトが使っていた真っ黒の機体がある。
人魂の言うとおり、見慣れた機体なのにアチコチの形が変わっている。
ふと、アキトが目を凝らしてみると、隣に同じような機体が、もう1体ある。
こちらは、アキトの機体色とは正反対で真っ白!
アキトの表情を読み取ったのか、人魂が付加説明をした。

(隣にあるのは相棒の機体だよ・・・。)

「相棒だと・・・誰だ・・・」

白い機体の後ろからアキトより小さい少年が出てきた。
年の頃は、アキトの2〜3才ぐらい下だろうと感じた。
だが、年の割には雰囲気がアキトに似ているので、見掛けどおりではないだろう・・・。

「初めまして! アキトさん・・・僕はカイト・・・」

「あぁ・・・初めまして・・・カイト君だね・・・」

2人は簡単な挨拶を交わすと、人魂がカイトの一生を説明してくれた。
アキトと同じようにナデシコに乗り、ルリちゃんの友達・・・彼氏・・・恋人・・・となり最後には、敵の罠に嵌り、戦死してしまったこと・・・。
カイトも人魂のお願いを聞いて、過去へと戻ることにしたらしい。

「2人で戻って、歴史を変えるのか・・・」

(実を言うと、もう2人いるんだ・・・汗)

「何! じゃぁ全員で4人なのか?」

過去へと戻る人数が多いことにアキトは驚く。
いつの間にか、アキトの服の端を引っ張る子供がいることに気付いた。
気配さえ感じさせなかった子供の名前を聞くと、小さな声で「ユウ」と教えてくれた。
カイトの更に2〜3才下ぐらいだろう。
人魂の話しでは、MC(マシン・チャイルド)の実験体で、実験失敗により廃棄された1人らしい。

「あと1人は誰なんだ・・・」

(いやぁ〜・・・最後の1人は、君のよぉく知っている人さ・・・(笑))

「イネスさんかな? それとも・・・???」

『ア・キ・ト♪ すぐに思い出さないってのは・・・悲しいなぁ〜♪ すねちゃうぞ♪』

アキトは声がした方向に振り向くと、アキトと同じぐらいに小さくなったユリカがいた。
どう答えたらよいのか、うろたえているとユリカは近づき、今まで会えなくて言えなかったことを言いまくった。

「ゴメン・・・ユリカ。」

『ううん・・・私の方もイネスさんの手術で、遺跡から離れても、アキトがジャンプする度に感じていたから・・・・』

「ユリカ・・・本当に、ゴメン。」

(さてと夫婦喧嘩は収まったかな・・・。)

アキトとユリカが落ち着くと、人魂の説明が始まった。
過去へと戻るのは4人であること。
それぞれの愛機・AIを、いっしょに持っていくこと。
あの時代ではオーバーテクノロジーになりそうな技術・・・等など、いろいろな説明を受けた。

「オレのAIは、アルファか・・・。」 (はい! マスター)

「いるのか」 (いますよ・・・私も復活しました・・・)

「それとサレナ・・・じゃないよな・・・改良されたみたいだし・・・名前・・・どうするんだ?」 (好きに付けても、いいよ。君専用の機動兵器だし・・・)

「面倒だな・・・ん!よし! 疾風にしよう。」 (なぜ、その名前なの?)

「思い付き・・・かな。好きな言葉が『疾風』と『鉄壁』だから、自分の戦闘スタイルで選んだ。」 (確かになぁ・・・攻撃重視だし・・・)

「アキトさん・・・それ頂き♪ 僕は鉄壁にしょ〜っと。僕の場合は防御タイプだし。」 (カイトに伝染したみたいだな)

「僕は、キャリーにする。」 (ユウは、ちゃんと考えたみたいだけど、なぜにキャリーなのかな?)

アキトとカイトは、ユウが名付けた名前を聞いて、2人と同じように機動兵器があるのかと・・・探した・・・が見付からない。
人魂を、ジ〜と見ると、アキトの服を引っ張るユウが指差ししている。
その方向を見ると、何か巨大な影があった。
よくよく眼を凝らして見ると、それはナデシコの倍ぐらいありそうな艦船だった。

「おいおい(汗)・・・ユウのは船か・・・それにしてもデカイ。」 (アキト)

「うっわぁ〜。ナデシコの倍はありそうだなぁ〜」 (カイト)

「ほぇ〜。見た感じだと、ナデシコの倍はありそう・・・でも、なんかナデシコと、合体するのかな? はまりそうな所あるし・・・」 (ユリカ)

(流石にナデシコ艦長だったユリカさんだね・・・そのとおりで、ナデシコにドッキングしたら、全長・全幅は2倍になるよ)

「「「ドッキング」」」 (アキト・カイト・ユリカ)

「空母になるみたいだから、エア・キャリーで、キャリーにした。」 (ユウ)

「お〜い・・・ちょっと、やりすぎっぽいぞ」 (アキト)

(いやぁ〜、面白かったんで、試しに作ってみたら、ハマってもうた)

「どぉーすんだよ。あの時代に持って行ったら、オーバーテクノロジ・・・どころじゃないぞ・・・コレ」 (アキト)

「でも、僕らの機体も、考えてみたらオーバーテクノロジーの塊りみたいだから大丈夫かも」 (カイト)

「はぁ〜・・・仕方がないか・・・」 (アキト)

「ねぇ♪ 私のは・・・私のは・・・?」 (ユリカ)

「おまえはナデシコの艦長だろうがぁ・・・エステや艦船を貰って、どうするんだ。」 (アキト)

「へっ? そうだったねぇ〜。アキトたちが色々貰っているから、ついつい・・・欲しくなっちゃった。てへっ(微笑)」 (ユリカ)

「欲しくなった〜じゃぁ・・・ないだろうが、コミュケと専用AIで十分だろ!」 (アキト)

4人と人魂の問答は、区切がついたので、戻る年月の話しになった。
アキトたち4人は、子供になっている(ユウは乳児)ので、相当の年月を戻ることになりそうだった。
人魂の話しでは、4人とも火星にいた頃に戻すらしい。

(それじゃ・・・歴史の変更は任したからね。)

「「「「 任されたよ♪ 」」」」

返事を聞いた人魂は、ボソン・ジャンプで4人を送り返した。


あとがき

初めまして・・・「はんどめいど」と申します。
むかしのアニメを棚の奥から引っ張り出して見たときに、2次小説で、どう書いているのかなぁ〜とアチコチ読みまくり。
読みまくった後、ほんの思い付きで書き始めてみました。
そうとう長くなると思いますので、ながぁ〜い眼で見て下さい。


| 2006/08/01 製作 | 2006/08/03 校正 | 2006/08/13 『風の通り道』 掲載 |


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