『逃げるな』







…あれから早5日。

さすがの僕にも…我慢の限度があると思う今日この頃。




あの直後。

「ル、ルリちゃん!」

艦内を駆けずり回って見つけた彼女に、僕の人生最大の覚悟で声をかけた瞬間。

「勤務中は『艦長』と呼んでください」

思いっきり出鼻をくじかれ。

「これから打ち合わせがあるので失礼します」

そのままあっさり置いてかれた。


それを始めとして…


―ブリッジでは―
「艦長!」
「勤務中は所定の場所にて待機してください」


―ミーティング中では―
「艦長!個人的なことですが…」
「私語厳禁。減俸1ヶ月」
(しくしく)


―格納庫では―
「艦長!少しお話が…」
「あ」
(どっか〜んっ!)


―食堂では―
「ルリちゃん、一緒に食べても…」
「ごちそうさまでした」
「「「ざまぁみろっ!」」」(by ルリルリ親衛隊一同)


―大浴場前では―
「ルリちゃん!ちょっと待って!」
「それ以上中に入ってきたら本気で怒りますよ…」
「「「痴漢っ!変態っ!!」」」(by 女性陣一同)
カコーンッ!
「ぐはっ!!」


―艦長室前では―
「ルリちゃんいるんだろ?」(ドンドンドンッ)
<ルリさんは既にお休み中です。お引取りください>(byオモイカネ)


―とある廊下―
「あ、かん…」
スタスタスタスタスタスタ。




…ちょっと待ってくれよ、おい(涙)




もはやまともに話すどころか顔もろくに見れない日々。
ルリちゃんと僕の不信な行動は当然ナデシコ艦内全域に知れ渡り、恰好の噂ネタにされていたりもする。
無責任な推測話は乱舞して、僕らの周りのギャラリーは増加の一方。
挙句の果てにやっと話ができそうなとこに乱入してくる連中まで現れ…。




頼むからそっとしといてくれよっ!(心の叫び)



はぁ…。

何かこう…
自信をなくしたというか…
悲しくなってきたというか…
アレはやっぱり夢だったような気がしてきた…。

こうも徹底的に避けられてしまっては
もしかしたら何か嫌われるようなことをしてしまったんじゃないかと不安にもなってくる。

考えたくはない。考えたくはないけど…。

はぁ…。
今日はもう寝よう…。

僕は疲れきった精神(こころ)と身体をひきずって自室へ向かった。







<あんまし期待しちゃだめにゃ…>








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