慌しく動くブリッジ。

ゴートがルリに尋ねる。

 

 

「具体的な作戦はあるのか?」

 

「はい。今からオモイカネと一緒にカイトさんの機体を強制停止させます」

 

「・・・君とこの艦ならそれも可能か。艦内全クルーに告ぐ、聞いての通りだ。各員行動開始!ショックには常に備えておけ!」

 

 

みな一同に各々の作業を開始する。

仲間を、カイトを助けるために。

その顔は生き生きとし、気力に満ち溢れていた。

 

 

「パイロットの皆さんは時間稼ぎとナデシコの防衛よろしく」

 

《おうよ!なぁ、ナデシコは離れた方がいいじゃねぇのか?》

 

「相手がジャンプできるならどこにいてもおんなじです。死ぬときゃ死にます」

 

「「「「゛」」」」

 

「あ、あはははは・・・ルリルリったら毒舌ぅ!」

 

「ルリ!ネルガル月基地から通信・・・増援を送ってくれるって!」

 

《お、そりゃありがたい》

 

《時間かかるのかな?》

 

《手放しでは喜べないわね・・・》

 

《ま、なるようになんだろ!各機散開、フォーメーションは葵華!》

 

《《《了解!!》》》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

The Prince of darkness

U

― 傀儡の見る『夢』 ―

 

 

第六話

【消えない『絆』】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・救援?いますぐ?」

 

 

ネルガル月基地、ブリーフィングルーム。

一人の男がパジャマ姿のままそう訊ねた。その目は虚ろ、寝癖のついた頭をボリボリと掻く。

 

 

《そう。戦艦が一隻、敵の攻撃を受け立ち往生している。周りに群がる敵を撃破、戦艦及びクルーをこの基地まで無事に送り届けて欲しい》

 

「こっちは寝起きですよー?」

 

《私は寝起きじゃない。フィオナ少尉も起こして直ちにフライトデッキに来て》

 

 

不満そうに上司を睨みつける男を完全に受け流し、必要事項を伝える。

 

 

「・・・はいはい、わかりましたよー!」

 

わかってるとはと思うけど、先方がフィオナ少尉についてふれてきても何も答えるな。フィオナ少尉はサレナ型のストライカー、お前にはあのフレームに搭乗してもらう》

 

「・・・マジですかー」

 

《あともう一つ。今回の任務については他言無用。見たことやったこと、全て忘れなさい》

 

「?なんでー?」

 

《質問は許可していない。貴方達はただ指示に従って動けばいいだけ》

 

「はい!わかりましたイチゴちゃん!」

 

《・・・ステファノティス中佐と呼びなさい。・・・お前、減俸な》

 

「・・・!?」

 

 

『苺・ステファノティス』

日系の母親をもったこの上官の名前である。本人はこの名前を気に入っていない。

彼女曰く『軍人らしくないから』とのこと。

 

 

《十分で用意して。一刻を争う》

 

 

それだけ言い残し、減俸処分に唖然とする男の前からウインドウが消える。

消える前に上司から受けたアイ・コンタクト。

 

『十分で来れなかったらさらに減俸な』

 

 

「・・・洒落にならないしー。あ、フィー起こさないと!」

 

 

そう呟くと男は駆け出した。

パジャマのままで。何故か小脇に車椅子を抱えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!艦長〜?あとどれくらいスかぁ!?」

 

 

もう何度目かの建御雷の攻撃をかろうじて避けながら尋ねるサブロウタ。

口調こそいつもの調子を崩さないが、その表情は明らかに強張っている。

 

 

《すみません。まだしばらくかかりそうです》

 

「そうですか・・・っと!できるだけ早めにお願いしますよー。艦長のお仲間さんはなかなかにお強い!」

 

《はい。とにかくがんばってください》

 

 

ルリのウインドウが消える。

 

 

「・・・っ!ホントに、早く頼むぜ・・・!みんな・・・!」

 

 

なにかうるさいと思ったら、自分の息遣いだった。

極度の緊張、右腕部を失った状態での慣れない機動、そして死と隣り合わせの恐怖の中、サブロウタの体力、精神力は限界に来ていた。

そしてそれは他のパイロットも同じ。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・同じコトの繰り返しで目が回ってきたぁ」

 

「こうも相手に変化がないと・・・ね」

 

「く・・・まだまだぁ!!フォーメーションはこのまま!とにかく今は逃げ回るしかねぇ!」

 

 

加速、ジャンプ、攻撃。加速、ジャンプ、攻撃。

ビデオを巻き戻し、繰り返し再生をしているかのような建御雷の、カイトの機動。

それは単調。

しかしその動きは衰えを知らず、攻撃は速く、正確。

そして全てが必殺・・・パイロットを『必ず殺す』攻撃なのだ。

避ける者の精神にかかる負担は並みのものではない。

さらに攻撃しても当たらない・・・いや、当たっても効果がないのだ。

まるで水に向かって攻撃しているかのような、そんな感覚。

 

 

「・・・っあ〜!むっかつく!!オレたちゃ時間稼ぎしかできねぇのかよ!!」

 

「ま、これ以上状況が悪くならなそうなのが唯一の救い・・・」

《ボソン反応一つ!あ、二つ!!》

「「なにぃ!!!」」

 

 

サブロウタとリョーコの声に合わせ何かがボソンアウトする。

 

 

「・・・ウソだろ?おい・・・」

 

「・・・あはははは・・・どうやらぁ」

「三つ子さんだったようで」

 

「こりゃあいよいよ覚悟が必要になりますねぇ、中尉」

 

 

それはたった二機の機動兵器、しかし・・・

 

 

《!!なんで!?カイトの乗ってる機体がもう二機も・・・!》

 

 

ユキナの驚きの声。

そう。

皆の視線の先には確かにもう二機、黄金色の機体が出現していた。

 

一機で苦戦しているのに・・・もう二機も・・・!?

 

絶望に陥るナデシコ。そしてパイロット達。

しかし・・・

 

 

「・・・動かない?」

 

 

ジャンプアウトしたもう二機の黄金。

しかしその二機はなにをするでもなく、現れたその場所で微動だにしない。

とっさにリョーコが叫ぶ。

 

 

「・・・!イズミ!」

「もう狙ってるわ!!」

 

 

リョーコの声と同時にレールガンの発射。

黄金に光弾が突き刺さる。

 

・・・やはり効かないのか?

 

パイロットの頭に先程カイトと戦っていた時の映像がフラッシュバックし、最悪の事態を想像させた。

だが打ち抜かれた一機は、一瞬の静寂の後いとも簡単に爆炎に呑まれる。

 

 

「!!効いてるよ!!」

 

「っしゃあ!あともう一機!!潰せイズミ!」

 

「了解!」

 

 

イズミは二機目に照準を合わせようと、レールガンの砲身を向けた。

だがそこで止めてしまったのだ。動きを。

瞬間、イズミ機の後ろに現れる建御雷。

 

 

「イズミぃ!!」

「っく!」

 

 

回避できない。

そう判断したイズミは、ジャンプアウトしたカイトの懐に自ら突っ込む!

 

 

「はあぁぁ!!」

 

 

鈍い衝撃音か響き、イズミのエステバリス・カスタムと建御雷が接触。

結果、損害は軽微。その攻撃での死は免れた。

しかしそのまま、振り払うように突き飛ばされるイズミ機。

 

 

「・・・っぅ!!」

《・・・》

 

 

コックピットに衝撃。そのあまりの激しさに、イズミの手が一瞬コンソールを離れる。

そしてカイトがイズミの命を刈り取るには、その一瞬だけで十分だった。

 

 

《邪魔だあぁぁぁあ!!!!》

「イズミィィィ!!!」

 

 

響く、戦慄。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラカラ・・・!

 

 

「・・・ってわけで戦艦の救援。見たもの聞いたものは他言無用。OK?」

 

 

フライトデッキへと続く道を走る男。

パイロットスーツを着込み、先程とは打って変わってシャキッとした表情。

その手は車椅子を押していた。

 

 

「何度も聞かなくてもわかってる。あ、そこ、右・・・〜・・・」

 

 

車椅子に座っているのは一人の少女。

こちらもパイロットスーツを着込んでいる。

幾何学的な紋様の入った、他の者とは違ったデザインのものだ。

曲がるべき角を通り過ぎた男に罵倒をあびせる。

 

 

「いい加減道くらい覚えたら?だからそんな寝癖がつくだ」

 

「・・・寝癖は関係ないだろ・・・悪かったよーちくしょう

 

「なんか言った?」

 

「いーえー!・・・ほら、急旋回して左に曲がるぞー」

「あ、ちょっ・・・!」

 

 

車椅子、急旋回。

左に傾いた機体(?)を、身体を右に大きく乗り出すことで安定させる。

 

 

「おおー!やるぅ!」

「・・・だまれ。早く押せ」

「あ、はい。押します。はーい」

 

 

角を曲がるとフライトデッキへの最後の直線。

車椅子は加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《邪魔だあぁぁぁあ!!!!》

「イズミィィィ!!!」

 

 

コックピットに響くカイトの声。

目の前に広がる黄金。

 

・・・・・・・・・

 

しかし、今まさに死が迫るコックピットの中、イズミの唇には微かな笑みが浮かんでいた。

 

目の前に浮かぶウインドウ。

オールバックの少年が映ったそれを指で横に動かし、すぐそこにいる黄金の機体に視線を移す。

そしてつぶやいた。

 

 

「ここまでがアンタのターン・・・ここからは私たちのターン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- ナデシコC -

 

 

 

 

「敵機体の掌握完了!!って、敵じゃないでしたっけ」

 

「了解。ありがとう、ハーリー君」

 

 

ほぅ・・・と、胸に溜まっていた息を吐き出す。

ルリだけではない。みんな一様に安堵のため息を吐いた。

後一秒遅れていたら・・・

 

 

《ふぅ・・・回収を頼むわ。どうやらどこか破損したみたいね。動かない》

 

「はい。サブロウタさんはイズミさんを。ヒカルさん、リョーコさんはカイトさんをナデシコまで連れてきてください」

 

《了解、艦長》

《おうよ!》

りょーかー!》

 

 

二機のエステバリスが建御雷に近づいてゆく。

ゆっくりと、でも確実にカイトに近づく。

 

その様子をルリは息もしないで見守っていた。

 

 

(・・・もうすぐ・・・カイトさんに・・・逢える・・・の・・・?)

 

 

建御雷との回線はイズミ機が突っ込んだ時に途絶えており、今はコックピットの様子がわからない。

それがルリを不安にさせた。

 

もう中にはいないじゃないか?

また消えてしまったじゃないか?

 

 

(・・・ううん、そんなこと考えている場合じゃない。一刻も早く月に行って、それから・・・それから・・・)

 

 

先のことを考えようとするが頭が回らない。

身体が火照り、思考回路がオーバーヒートをおこしていた。

先のこと、戦争のことなどすぐに頭から消え、瞬きもせず作業を見守る。

 

 

《到着!ナデシコまで一名様ご案内〜。なんなら、お姫様抱っこで運びましょうか?》

 

《ふ・・・遠慮しとくわ》

 

 

一足先にタカスギ機がイズミ機を回収。ナデシコへの帰艦を開始する。

リョーコ機、ヒカル機、さらにカイトに接近。

 

 

《・・・へへ。心配かけやがって・・・この!》

 

《ほんとだよ!絶対にマンガのアシやってもらうだから!》

 

 

あと少し、あと少しで・・・

 

 

《う〜し!とうちゃ《やらせん!》

 

ギィィィィイ!!

 

 

リョーコ機が建御雷に手を差し伸べた、正にその時だった。

金属の擦れ合う嫌な音がした。

 

 

《なんだぁ!!?》

 

 

突如リョーコ機の真横に姿を現したもう一機の黄金が、その右手を削ぎ落としたのだ。

リョーコ、距離をとりつつ削ぎ落ちた右腕部をパージ。直後、爆発する右腕。

 

 

「あー!?なんで邪魔するの!!」

「もう!あと一歩だったのに!!」

 

 

ユキナとミナトが声を上げる。

皆イズミに、カイトに気をとられており、一瞬だがもう一機のことが頭から抜けていたのだ。

もちろんルリも。

 

 

《リョーコ!!》

《・・・っ!!そーいやもう一機残ってたっけな

 

 

そのままカイトを護るように立ちふさがる黄金。

ナデシコ、各エステバリスのコックピットにウインドウが開く。

 

 

《・・・私は南雲義政。火星の後継者の戦士。我々の理想の為、新たなる秩序の為・・・貴艦には退いてもらう》

 

《へっ・・・!よく言うぜ!人様の幸せ奪って何が理想だよ!》

 

《大儀とは常に尊い犠牲の上に成り立つものだ。その大小を関係なく、な》

 

《そんな!じゃあ犠牲になった人達はどうするの!?》

 

《犠牲になった者達は新たなる世界の糧となり礎となる。その者達を想う気持ちは世界を動かす力になる。そう信じている》

 

《・・・信じることはいいことね。でも、入れ込むと周りが見えなくなるわよ》

 

《そうそう。相変わらずご立派なお考えですねぇ、南雲中佐》

 

《その声、秋山の下にいた・・・そう、タカスギ・サブロウタ。貴様か》

 

《おお!すごい記憶力ですねぇ、中佐。まだ頭は柔らかいとみえる》

 

《調子づくな。腕に抱えているそれは玩具ではあるまい》

 

《・・・く!》

 

 

動けないイズミ機を護るようにエステバリス三機が布陣を整える。

その様子をじっと見詰めるルリ。

 

「ルリ」

 

ユキナの声。

少し下にいる彼女に視線を向ける。目を合わせ、そして頷く。

 

 

 

 

− GOGO−!言ってやれ−!

 

− はい!

 

 

 

 

《もう一度言う。退け》

 

《その後ろにいる奴を引き取ったら言われずともサヨナラしますよ》

 

《それはできんな》

 

《どうしてだよ!さっさとカイトを返しやがれ!!》

 

《彼は我々の剣であり、盾である。それが理由だ》

 

 

「勝手なこと・・・」

 

 

《・・・何?》

 

 

南雲目が目を細め、ルリを見据える。

その視線を真正面から受け止めるルリ。

 

 

「勝手なこと、言わないでください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネルガル月基地、フライトデッキ。

新型機体の急発進の為、そこは僅かに沸いていた。

忙しなく走り回る技術者達。

男は少女を抱きかかえて、サレナS型のコックピットにそっと座らせる。

その体はいつもながら驚くほどに軽い。

 

 

「はいよー、到着

 

「ん」

 

 

自分が座ると狭く感じるコックピット。

この少女が座るそこのなんと大きく見えることか。

そしてなんと不釣合いなことか。

 

 

「・・・」

 

「・・・どうしたの?早く準備しないと減俸なんでしょ?」

 

「ん?・・・ああ。じゃ、死ぬなよー」

 

 

こつん、と互いの拳を突き合わせる。

それは戦闘の合図。そして、またここでという約束。

 

ぱっとそこから降り、空っぽになった車椅子を目に付いた作業員に預ける。

そしてこれから自分の搭乗する機体を改めて見上げてみた。

 

 

「・・・ほんとに動くのかー?これ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《勝手なこと・・・か》

 

「そうです。勝手です。みんな勝手ですよ」

 

 

ルリは続ける。

 

 

「アキトさんとユリカさんは新婚旅行に行く途中のシャトルの中で、あなた達にさらわれました」

 

《さらわれた・・・》

 

「カイトさんも・・・せっかく待っていた人の隣で眠りについたのに・・・あなた達に無理矢理起こされて実験を受けました」

 

《実験・・・そうか、A級ジャンパーの・・・》

 

「戦争したいのなら戦争したい人たちだけで、軍人の人たちだけでやればいいじゃないですか。なんでなんにも関係のない人まで巻き込むですか?」

 

《・・・》

 

「戦争に行く人たちはまだいいです。その覚悟も・・・きっとできているでしょうから・・・」

 

 

覚悟、というところで少し目を伏せるルリ。

みな黙ってルリの話を聞く。

南雲にも、リョーコ達にも動きはない。

静かに宇宙を漂う。

 

 

「でも・・・戦いたくもないのに、なんにも知らないのに、A級ジャンパーであるという理由だけでさらわれた人たちはどうなるですか・・・!?」

 

《・・・それは》

 

「当たり前にそこにあったはずの幸せを突然奪われた人たちはどうなるですか・・・?」

 

四人で暮らすことになったあの日をいつも思い出す。

ちょっと・・・ううん。だいぶ狭かった。

でも、表情には出さなかったけど、これからの生活に少しワクワクした。

 

「あの人は・・・あの人たちは・・・もう戦うつもりなんてなかった・・・」

 

私が、カイトさんが、ナデシコBに乗ると言ったときのアキトさんの表情を覚えている。

この人は私たちのことを本当に心配してくれてる

不謹慎だけど、嬉しかった。

 

「狭いアパートで一緒に寝たい・・・」

 

アキトと一緒に寝たい、と子供のように駄々をこねたユリカさん。

・・・ちょっと可愛かった。

二人の喧嘩のばっちりで顔に当たった枕は痛かったけど。

 

「毎日一緒に屋台を押したい・・・」

 

初めてチャルメラを触ったとき、カイトさんとどっちが先にうまく吹けるか勝負をした。

『朝練』を実行に移した私に、朝に弱いカイトさんが勝てるはずもなかった。

優勝賞品として買ってもらったオレンジジュースは、今まで飲んだどんな飲み物よりおいしかった。

 

「もう一度火星の草原で一緒に自転車に乗りたい・・・」

 

新婚旅行に火星に行く、と嬉しそうに、本当に嬉しそうに話していた二人。

そのピンク色の雰囲気に耐えられず、私とカイトさんは外の空気を吸いに玄関を出た。

すると、数少ない住人たちみんなが外に出ていた。

なんでも急に部屋の色が変わったらしい。何色かは聞かなくてもわかった。

 

「ただ・・・大事な人と一緒にいたい・・・!」

 

ずっと一緒にいようね、とユリカさん。当たり前だ、とアキトさん。

黙って頷くカイトさん。もちろん私もこの人たちとずっと一緒にいるつもりだ。

四人一緒なら、きっとどんなことがあっても幸せだから。

 

 

「それだけ・・・それだけだったのに!」

 

 

ルリの言葉に力がこもる。

その声は人の心を揺さぶり、事情を知るクルーの瞳からは涙が零れ落ちた。

 

 

「そんなささやかな幸せを摘み取ることがあなたの言う理想ですか・・・!?軍人でもない・・・一方的に捕らえられた人が何も知らずに死んでゆくことが理想に近づくことだというですか・・・!?」

《・・・》

「そんなのは尊い犠牲なんかじゃなくて・・・ただの人殺しです・・・」

 

 

まっすぐ、ただ真っ直ぐ南雲を見つめるルリ。

そのルリを睨みつけていた南雲の目から殺気が消える。

 

 

《・・・すまない》

 

「・・・え」

 

《ジャンパーの誘拐、人体実験。遺跡を使い戦争を仕掛けることを良しとしなかった人間達がいたこと》

 

「・・・」

 

《そして、一度信じたものに付いてゆくことしかできない・・・実直で、不器用な人間達がいることを覚えておいて貰おう》

 

「・・・あなたは・・・」

 

《遊びは終わりだ・・・この男はわたさん。そして貴艦が退かないのであれば全力をもって、私は貴艦らと戦う》

 

 

南雲駆る黄金が、その爪を振りかざした。

 

 

《結局来るのかよ!》

《気を付けろよ中尉、言うだけあってヤツは強い・・・!ことに戦闘においては旧木連でNO.1だ》

 

 

身構えるエステバリス。しかし・・・

 

 

「その必要はないです」

「その通りです!さっきのハッキングでその機体の大体の情報は掌握しています!システムダウンさせるのなんてあっという間ですよ!」

 

 

ルリとハーリーの声。

二人の顔にナノマシーンパターンが浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

へへ・・・だってよ!」

「さっすがルリルリ!頼りになるぅ!」

 

「・・・そうか」

 

「ずいぶん落ち着いているのね・・・諦めたのかしら?」

 

「いや、この勝負私の勝ちだ」

 

「・・・負け惜しみですか?中佐」

 

「私はナデシコの力を認めている。無論そのパイロットである貴様達も

 

 

突然の南雲の言葉に顔をしかめるサブロウタ。

南雲は何を考えているのか・・・

 

 

「そりゃどうも。じゃ、チャッチャとそいつを渡してください。俺たち時間ねーんすから」

 

「そう焦るな。私は貴様達の力を認めている。当然この使い慣れない機体一機で勝てるはずもないことを知っている」

 

「なに言ってやがる!」

 

 

 

 

 

 

ぞわ・・・と、ルリの背中に悪寒がはしった。

それと同時に、ユキナがブルッと体を震わせる。

それに気付いたミナトがその背中に寄り添う。

 

 

「どうしたの・・・!?ユキナ」

「なんか・・・嫌な予感がする・・・!」

 

 

ゆっくりと、南雲は続ける。

 

 

 

 

《私は勝てない戦はしない主義だ。だがここに出向いた、その理由》

 

 

 

 

「なにを・・・」

 

 

 

 

《貴様らと長々と弁論をしなければならなかった、その本当の理由》

 

 

 

 

「ルリ!来る!」

 

 

 

 

《言っておくが、私はお前らを好かん》

 

 

頭上を睨みつける、南雲。

 

 

「ボソン反応!!七つ!!」

 

 

ユキナの叫び。

ブリッジにいるもの皆がその場所を見る。

カイトの黄金、南雲の黄金、その周りの空間が歪み、ゆっくりとその者達が姿を現す。

 

七匹の、鬼が。

 

 

シャラン・・・・

 

 

この場にはまるで不釣合いな透き通った音。

そしてその音とは対照的に、沈んだ、黒い声が響く。

 

 

《ククク・・・我々は影。光に生きる中佐殿と反りが合わないのは仕方のないこと・・・》

 

 

この声・・・

相手を縛りつけ、動けなくする重い声。

アキトさんを、ユリカさんを・・・そして恐らくカイトさんをもさらっていったあの男・・・確か・・・

 

 

「北・・・辰・・・!」

 

《クク・・・なんにせよ時間稼ぎご苦労様です。お疲れのご様子、もうお帰りになられたらいかがでしょう》

 

《いや、見届けさせてもらう。どのみち機体が動かんのでな》

 

それはそれは・・・では、我々の行動に口を出さず静かに待機していただきたい》

 

《・・・っ。勝手にするがいい・・・》

 

《ククク・・・有難う存じます》

 

《・・・いかがなさいますか、隊長》

 

《傀儡の回収は後でよい。まずは目の前の鼠どもだ》

 

《御意》

 

《敵は手負い。だが手負いの獣ほど恐ろしいものはない》

 

《では、死力を尽くして・・・》

 

《畳み掛けろ。この先我等の障害となりうる者、全てを殺せ》

《《《《《《応!!》》》》》》

 

 

瞬間、七機の鬼が散開する!!

ルリの目がカイト機を見つめる。

 

すぐそこにいるのに・・・こんなにも遠い・・・

 

エステバリス隊が武器を構える。

 

 

《ルリ・・・アイツと会うのがもう少しのびちまうみたいだ、わりぃな》

 

「ええ、大丈夫です。早く、イズミさんをナデシコへ」

 

《了解!サブはそのままイズミをナデシコへ!ヒカルは俺と一緒にいくぞ!とにかく片端から叩け!》

《了解!》

いっくよ〜!!》

《頼んだわよ、リョーコ、ヒカル!》

 

 

エステバリスも散開!途端に戦闘が始まる!

 

 

「サブロウタさんとイズミさんの収容準備を。サブロウタさん、時間もないので1、2の3でフィールドを切ります。パッと入っちゃってください」

 

《了解、艦長!》

 

「ハーリー君」

 

「おーいで!皆さん!オモイカネ!よろしくお願いしますよー!」

 

「じゃ、1、2の3」

 

 

フィールド解除、サブロウタ、イズミの両機収容。同時にフィールド展開。

 

 

「すぐにサブロウタ機の再出撃準備を。セイヤさん、イズミさんの機体は?」

 

《あー、ルリルリ、こりゃダメだ!駆動管理が完全にイカれちまってる!》

 

「はい。聞いての通りです、サブロウタさん」

 

《はいよー!きちんと二人分頑張ってきますよ!》

 

《頼んだわよ・・・今の私じゃ・・・なにもできない・・・!》

 

 

悔しそうな表情のイズミ。その顔を目に焼き付ける。

 

 

《ああ・・・!タカスギ機、出るぜ!》

 

 

青いエステバリス。背中に輝く炎。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいかげん当たれコンチクショウ!!」

 

「リョーコ!サブちゃんがきたよ!」

 

「おせーサブ!」

 

「あらら、ひどいお言葉。どうよ?敵さんは・・・おっとぉ!!」

 

 

六連の攻撃、フィールドが接触し吹き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直す。

リョーコ機がサブロウタ機の隣に停止した。

 

 

「ま、感じてる通りだよ。いつものオレ達なら、こんな奴らに苦戦することはねぇ!でも・・・!」

 

パアァァァン!!!!

 

弾ける音。

リョーコ機の左足がパージされる。そして、爆発。

 

 

「オレ達は、想像以上に消耗してる・・・」

 

 

背中合わせになった二機の周りを旋回する四機の六連。

電灯にたかる蚊のような動きでグルグル、グルグルと回る。

 

 

「・・・!ヒカルちゃんは!?」

 

「あっちでハエにたかられてるよ・・・奴ら、戦慣れしてやがる。タイマンははらねぇらしい」

 

 

サブロウタが目を向けると、ヒカルが六連二機相手に奮戦していた。

やはり明らかに動きが重い。

 

 

「・・・くそ・・・!・・・四機・・・二機・・・?」

 

「どうした!サブ!?」

 

 

違和感。

確か、ジャンプアウトしてきた機体の数は・・・

 

 

「!!??ナデシコ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・終わったか)

 

 

今、北辰駆る夜天光がナデシコに取り付いた。

ナデシコもミサイルで応戦するも、そんなものが北辰に当たるわけもない。

夜天光の攻撃により確実にダメージを受けてゆくナデシコ。

ナデシコの機動兵器隊は六連の包囲を逃れられずにいる。

その様子を南雲は暗くなったコックピットから見ていた。

圧倒的。

そんな言葉が頭に浮かんだ。

 

せめて・・・機体が万全であったならな・・

 

(・・・馬鹿な。敵の心配をするなど)

 

 

急に機体に動力が戻る。明るくなるコックピット。

 

 

「ついに掌握にまわす力も失った・・・さらばだ、ナデ・・・」

 

ガシュ・・・!

 

小さな音がした。

途端、コックピットに鳴り響くアラーム。ダメージランプが両腕を示している。

 

 

「両腕・・・唯一の武器を丸ごと持っていかれた・・・そうか・・・『彼』が・・・」

 

 

装甲越し、背中に感じていた気配がなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイト・・・さん・・・?」

 

 

それは一瞬だった。

爆発を繰り返すナデシコ。

ブリッジ正面、錫杖を振りかざす夜天光。

そこに落ちる雷・・・いや、黄金。

 

 

《隊長!!》

 

《あわてるな・・・傀儡が・・・操りの糸が切れたか》

 

 

ゆっくりと、ナデシコの前に立つ黄金。

両腕を大きく広げる。

 

 

「・・・ルリ・・・アイツ・・・ナデシコを護ってくれてるよ・・・ルリ・・・!」

 

「カイトさん・・・私の声・・・聞こえますか・・・カイトさん」

 

・・・ガガ・・・こ・・・ザザー・・・よ・・・ザァー・・・・・・・》

 

「音声の回復を!」

 

「ダメだよルリ!あっちが故障してる!」

 

《・・・状況が変わった。各機傀儡の回収を最優先せよ》

 

「カイトさん!カイトさん!!私です!ルリです!わかりますか!?カイトさん!!」

 

《・・・ガガ・・・!ザザザザーー・・・・か・・・ガー・・・!!・・・》

 

《クックック・・・足掻くな、ミカズチ。すぐに楽になろう・・・》

 

 

建御雷、ジャンプ。

ヒカルに取り付いていた六連二機を一息に破壊する。

爆発する六連。

 

 

《!?・・・カイト君!?》

 

《ミカズチ・・・これほどとは。だが・・・》

 

 

大破したヒカル機を支えるように移動する黄金。

しかし、急にその場で停止する。

 

 

《傀儡への動力供給は止まった。回収に入る。邪魔をさせるな》

《《《《応!》》》》

 

ガガガー・・・・・・・・ザザーー・・・・!》

 

「カイトさん!カイトさん!!」

 

 

叫ぶルリ、その視線の先でカイトに取り付く北辰。

その周りがキラキラと蒼く輝く。

 

 

「敵、高濃度チューリップクリスタル散布!!まずいルリ!」

「CC・・・北辰、ジャンプするつもりか!?」

「エステバリスは!?」

「無理です!スバル機、右腕部左脚部破損!タカスギ機、右腕部破損、アサルトピット損傷!アマノ機大破!敵機動兵器に阻まれてみんな動けません!!」

「・・・っ!!」

 

《ガー・・・ガガガ・・・・ザザ・・・・ザーーーー・・・・・ん!》

 

《カイト君!?動いて!!動いてよぉ!!私のエステ!!》

 

 

ヒカルの願い虚しく、蒼い光は急速に高まってゆく・・・

その場所に移動する南雲。

 

 

《・・・》

 

《中佐殿。何か仰りたい事でも》

 

《・・・》

 

《クックック・・・ハーッハッハッハ!!・・・さらばだ、ナデシコ》

 

 

 

 

ザザ・・・ガー・・ル・リ・・・ん!・・・ガガガガー・・・・》

 

 

 

 

「!?カイトさあぁぁぁぁぁん!!!!」

 

 

 

 

・・・ジャンプ。

 

光は、消えた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

「あ・・・はぁぁ・・・」

 

 

ルリの口から苦しそうな声が洩れる。

張り詰めていた神経が切れたのか、大きく息を吐き、前にうなだれる。

 

 

「ルリルリ!?」

 

「ふ・・・ふぅぅ・・・だ、大丈夫です・・・まだ、敵は残っています・・・」

 

「ルリ・・・」

 

「ナデシコは止まれません・・・何があろうとも・・・これ以上・・・幸せがなくなってゆくの・・・見てられません・・・」

 

「かんちょう〜・・・」

 

「心配ないです。とにかくこの状況を何とかしましょう」

 

 

思考回路をフル回転させ、目の前の状況を整理する。

ナデシコは半壊、ジャンプユニット故障、フィールド出力低下、グラビティブラスト発射不能。

データにないあの敵の掌握にはどれだけ時間がかかるのだろうか。

エステバリス隊はボロボロ。マキ機、アマノ機大破。スバル機、タカスギ機も活動不能一歩前。

敵は強敵四機・・・

 

胸を落ち着ける。

しかし冷静になればなるほどわかってくる。

 

・・・勝機がない。

 

ドォォォォォン!!!!

 

 

《ルリルリ!!フィールドがもうもたねぇ!!ディストーションブロックでもこれ以上は!!》

 

 

六連の攻撃はナデシコにまで及んでいた。

もはやリョーコとサブロウタ、そしてヒカルは攻撃をできる状態を保ってはいなかった。

それでも死を免れているのは技量のなせる技か、運がいいだけなのか・・・

六連一機相手に逃げ回るのみ。

 

 

《っく・・・!!逃げろ・・・!!ルリぃ!!》

 

《艦長!ハーリー!逃げるだ!!ここでナデシコまで失ったら!!》

 

《ここは私達がなんとかするから!!》

 

「そ、そんなことできませんよぉ〜!!」

 

「そうです。そんなこと許しません」

 

 

パイロットたちは覚悟を決めている・・・

ルリはイネスを振り返る。その目は厳しかった。

イネスも同じ結論に達しているのだろう。だが、あえて皆にこう語った。

 

 

「大丈夫よ。勝機はまだあるわ。それにね、正義は必ず勝つものよ」

 

 

表情を緩めるイネス。だがそれはすぐにまた険しいものへと変わる。

それはユキナの言葉。

 

 

「ボ・・・ボソン反応・・・二つ・・・」

 

 

ポツリと、呟く。

 

ああ・・・終わった・・・

 

だれもがそう思っただろう。

 

その時、大きく開く新しいウインドウ!

 

 

《ゲキガンフレアァァァァ!!》

 

 

ゴオオオオオ!!!!!

 

 

側方からグラビティブラスト一線。

リョーコ達にまとわり付いていた六連が爆炎に包まれた。

 

《な・・・》

《なんだぁー!?》

 

 

そこにいたのは・・・

 

 

「・・・」

《げ・・・》

『ゲキガンガ〜!!!???』

 

 

そこにいたのは紛れもなくゲキガンガーV。サイズもしかりである。

胸からグラビティブラストを乱射している。

その後ろには白い機体が見える。

 

 

《あの機体は・・・!》

 

知ってるの?リョーコ》

 

《ああ。サレナ型っつってな、一時期オレがテストパイロットしてたんだ・・・ロールアウトされてたのかよ

 

 

ピッ!と、男の写った大きなウインドウの真ん中、その顔を隠すように小さなウインドウが出現する。

女性・・・いや、少女のようだ。あっけにとられているクルーを尻目に、少女はその小さな唇を開いた。

 

 

《・・・ネルガル月基地テストパイロット、フィオナ・ラングライト少尉です》

《ゲキガンフレアァァア!!!》

《緊急任務にて》

《ゲキガンフレアァァァァァアア!!》

《貴艦の救援に・・・》

グェクィグァァァンフレウアアあああ!!!!》

《うるさいレシオ。だまれ》

《すいませんゴメンナサイ。でもこの機体さー、謎に音声入力式でー・・・》

《こっちの、度重なる減俸にイライラしてるのがレシオール・バーンシュタイン少尉。・・・です》

《無視かい?あと、減俸関係ねぇー!!》

 

 

ナデシコのピンチ。

そんな時に急に始まった漫才にミナトがキレ

 

 

「ちょっとあんた達!!今がーゆう状況かわかってんの!?救援に来たなら早く援護しなさい!」

 

《・・・レシオのせいで怒られた》

《俺のー!?》

《とにかく、アイツら片付けよう》

《・・・はいよー!敵さん強そうだ。油断すんなよー、フィー》

《わかってる》

 

 

再び動き出す二機。ナデシコに向かって急加速する男、レシオ。

その機体『エステバリス・ゲキガンフレーム』が輝きを放つ。

そして少女、フィオナの『サレナS型』は闇に掻き消えた。

 

 

「!?」

「ボソンジャンプ!?」

 

《グゥエキガァァン!スォォォド!!!!》

 

 

ゲキガンフレームが大剣型フィールドランサーを振り下ろす。

その大きな振りを難なく避ける六連、避けた先に現れるサレナS。

 

 

《・・・バイバイ》

 

 

腕に装備したリニアガンが零距離で火を噴く。

だが六連は虫のような動きでこれを回避、撃墜を被弾に抑える。そのまま溶けるように消え去った。

 

 

《逃がした・・・あ。レシオ、後ろにいる》

《え!?》

 

 

ゲキガンフレームにフィールドアタックを仕掛ける六連。

それは六連二機による二連ピンポイント攻撃であったが、ゲキガンフレームの厚い装甲には今ひとつ効果がない。

 

 

《っとお!・・・言うのー、遅くない?》

 

《後でいいかな、って思った》

《殺す気かぁー!》

 

 

勝ち目が薄いと悟ったのだろうか、残りの六連二機もそのままどこかに消えていた。

 

 

・・・・・・

 

 

「・・・え?え?・・・終わったの?助かったの?」

 

 

ユキナはキョロキョロと周りを見渡した。

ユキナの言いたいことはわかる。

さっきまで生きるか死ぬかの戦いの中だったのだ。助かったという実感が湧かないのだろう。

ルリ自身、そんな気が湧かないのだ。

 

 

(オモイカネ)

 

[はい。ルリさん]

 

(周囲の敵反応と各部被害度のチェックを)

 

[はい・・・・・・・・・周囲に敵反応無し。各部被害は甚大ですが航行に障害なし]

 

(うん。ありがと、オモイカネ。おつかれさま)

 

 

オモイカネの言葉を聞いて、初めて実感が湧いた。

 

 

「ハーリー君、戦闘態勢解除。通常航行に戻ります。ミナトさん、進路を再び月へ」

 

「え・・・あ、了解です!」

 

りょーかい!進路、急いで月へ」

 

「エステバリス、動けますか?」

 

《ああ!と、言いてーけど、今回ばっかりはちょっときついかな》

《俺も

《私もー》

 

「わかりました。月基地の方、エステの収容を手伝っていただけますか?」

 

《了解。そちらの指示に従います》

 

《ああ。なんなりとー》

 

「よろしく」

 

 

ルリの言葉で、皆の緊張が解ける。

ああ、助かったのだ、と。

 

 

 

 

 

 

エステバリスの回収が終わる。

パイロット四人はとりあえず互いの無事を喜びあった。

サブロウタは勢いでリョーコに抱きつこうとして殴られていた。

 

月基地の漫才コンビはそのまま宇宙でナデシコの近辺を警戒している。

月まで案内してくれるという。ゲキガンフレームの男、レシオは叫びすぎて喉を痛めたらしい。

 

大破したエステバリスを見た瞬間、ウリバタケが倒れた。

今はなんとか持ち直し、艦内各部の修理に走り回っているが。

 

イネスは負傷者の治療。

ジュンとゴートもそれを手伝っている。白衣を着て。

 

ああ、そう。

ナイト・アララギは生きていた。その部下の船も何隻かは無事だった。

先を急がなければならないナデシコ。だから生存者の救出は彼にまかせた。

 

「任せてください。生存者の救出とは・・・まさにナ」

 

そこでユキナが通信を切った。

 

ミナトとハーリーはブリッジを出てどこかにいった。

ミナト曰く、「しばらく一人にしてあげなさい」だそうだ。

 

 

そしてルリは一人、ブリッジでたたずんでいた。頭に浮かぶのはさっきの風景。

 

ナデシコを護るように立ちふさがったあの人のこと。

 

一瞬だが聞こえた、あの人の声。

 

ふと後ろに気配を感じ、振り返る。

 

 

 

 

「やっほー」

 

 

「ユキナさん」

 

 

 

 

僅かに微笑むユキナ。

 

 

 

 

「アイツ・・・覚えてたね

 

 

「・・・はい」

 

 

「大丈夫、絶対また逢える!がんばろ。ルリ!」

 

 

「・・・はい!」

 

 

 

 

ピ!

 

 

ウインドウ通信が入る。

 

 

 

 

《お疲れ様です。ようこそネルガル月基地へ。私は責任者の・・・》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《イチ・・・・・・ステファノティス中佐です》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうも〜!YOUです。

 

ごめんなさい!とりあえず謝っておきますね・・・

っていうかほんとごめんなさい!とうとうオリキャラが・・・

できる限りオリキャラは出さない方向だったですが、今後の事考えるとこの三人は出さんば!と考えたしだいでございます。

不快に思った方、申し訳ないですm(_ _)m一応、彼女らはサブキャラですので。

あと、月基地の漫才コンビの名前にはモトネタがあります。

 

今回も長いです。その分粗が目立つと思いますが、そこは寛大な目でお見逃しください。

そして全然関係ないですけど自分、ゲキガンフレーム大好きです!!

ダイマジンVも大好きです!

 

ではでは!お暇な人は、是非次回も読んでやってください。

 

 

 

 

次回

 

第七話

【『イツキ・カザマ』】

 

 

お楽しみに!

いや、たいした展開ないっスよ。

 

 


[戻る][SS小ネタBBS]

※YOU さんに感想を書こう! SS小ネタ掲示板はこちら


<感想アンケートにご協力をお願いします>  [今までの結果]

■読後の印象は?(必須)
気に入った! まぁまぁ面白い ふつう いまいち もっと精進してください

■ご意見・ご感想を一言お願いします(任意:無記入でも送信できます)
ハンドル ひとこと