・・・ユリカ・・・
- 第八番ターミナルコロニー -
- 『シラヒメ』 -
ヴィー!!ヴィー!!ヴィー!!
けたたましく、『敵襲来』を告げる警報が鳴り続ける。
「くぅ・・・!!なにが起きている!?」
「第一次、第二次、防衛ライン突破されました!!」
《ああァああ!!??があぁああ!!!!》
「第一、第二小隊、全滅!!・・信じられない・・・!!」
「敵、なおも接近!!止まりません!!!」
・・ユリカ・・
機動兵器のモニター越しに、『敵』の姿を確認する。
体が動かない・・・!!
なぜ・・・!?
それは恐怖。
「はぁ・・・あ・・・ああ・・・」
《パープルアイ!!後退しろ!!パープルアイ!?》
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
ガゴオオオオ!!!ンンン・・・!!!
ユリカ
立ちふさがったステルンクーゲル部隊を、その圧倒的な機動力とフィールドで蹴散らす。
---加速---。
アキト駆るブラックサレナ。
その漆黒の鎧が宇宙の闇に溶け込む・・・
《アキト・・・》
目前に広がるコロニー、シラヒメ。
自分に向けられた砲弾が瞬き、輝いて見える・・・
彼女のいるであろうポイントがウインドウに浮かんだ。
加速。
加速。
加速。
加速・・・!!
《フィールド、最大出力・・・》
「ユリカ!!」
ガシャアアン!!!
崩れ去る壁。燃え上がる炎。瓦礫の山。
突撃したそこにはすでに彼女の姿はなく、あるのは黒ずんだ何かと紅い液体。
そして・・・
「ふ・・・遅かりし復讐人。未熟者よ・・・」
七匹の、『鬼』。
「北辰・・・!!」
「滅」
キィィィィ・・・・
鬼達の跳躍とともに、シラヒメに仕掛けられていた爆弾が爆発する。
《アキト・・・跳べる》
「・・・・・・」
- ジャンプ・・・ -
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・座標確認」
《ポイント151379・・・まだ、シラヒメ周辺・・・》
「・・・」
視線の先、爆発を続けるシラヒメ。
アキトのバイザーが、その爆発の光を反射して輝いている。
(っ!!!)
ドンッッ!!!
コンソールに拳を叩き付ける。
その鈍い痛みが、また取り戻せなかったという現実をアキトに突きつけた。
全身が、発光する。
《・・・アキト・・・》
「・・・大丈夫だ、ラピス・・・」
こんな少女に慰められている。
アキトは自嘲めいた笑みを浮かべた。
と、近くに戦艦の反応があることに気付く。
《地球連合宇宙軍第三艦隊の戦艦、アマリリス・・・》
すかさずフォローが入る。
(・・・アマリリスには確か)
《墜とすの・・・?》
「いや、無駄な戦闘は避ける」
いくらジャマーがついているとはいえ、姿を見られるのは好ましくない。
そう判断し、ラピスにジャンプの指示を出そうとした、その時だった。
《・・・!アキト、何か来る・・・目の前・・・》
「・・・なに」
目の前に形成されるジャンプフィールド
徐々に「それ」が姿を現す
「・・・!!!まさか・・・」
その色・・・黄金
完全に姿を現したその機体は、なにをするでもなくただ、その場にいた
まるで宇宙に浮かぶ、星の一つのように
・・・・・・・・・・・・
静寂
やがてアキトが口を開く
一言
・・・お前なのか・・・?
と
- ・・・跳躍・・・ –
黄金は再び跳んだ
何も答えずに・・・
「・・・・・・帰艦する」
漆黒もまた、その姿を闇に消した
機動戦艦ナデシコ
〜The
Prince of darkness〜
U
― 傀儡の見る『夢』 ―
第一話
【幽霊ロボット『二機』】
「「「幽霊ロボット・・・ですか?」」」
三人の声が重なる。
「そう。ひゅ〜どろどろ〜・・・の幽霊」
コウイチロウが手で幽霊の真似をしながら三人を見渡す。
苦笑するサブロウタとハーリー。
「はは・・・は、あのテレビでやってるやつですよね」
ハーリーが気を利かせその場を取り繕う。
「そう。先日のシラヒメの襲撃事件、知ってるね?」
「はい」
ルリがうなずくのを見ると、手を前に組み話し始める。
「そのとき丁度アオイ君も近くにいてね、シラヒメの負傷者の救助をしていた時、見たんだって・・・幽霊ロボット」
ただでさえ野太い声をさらに太くして言う。
・・・怖い話風に。
「それも二体も」
「二体もですか?」
「うむ。黒いロボットと金のロボットだったそうだ。黒い方は全高約8メートル、単体でのボソンジャンプが可能でなんかギザギザとしていたらしい」
「金の方は?」
「単体でのボソンジャンプが可能」
「・・・それだけですか?」
「うむ。アオイ君の話によるとレーダーにもセンサーにも映らなかったらしい」
「そんなことありえるんですか?」
「ちょう強力なジャマーでも使っていれば、ありえなくはない」
やたらと「ちょう」を強調してルリに答える。
「・・・で?結局自分たちはなにをすればいいんスか?」
ほけ〜・・・と話を聞いていたサブロウタが、本題をたずねる。
「君たちにはナデシコBで、これまで襲われたコロニーを統括するヒサゴプランの中枢へ、事件、並びに幽霊ロボットの調査に向かってもらいたい」
「・・・というと?」
コウイチロウはもったいつけて一呼吸おき、そして三人に告げた。
「アマテラスだ」
「なんか変な任務ですねー、艦長?」
三人で廊下を歩いていと、ハーリーがそんなことを言い出した。
「なにが?」
「だっているかもわからない幽霊ロボットの調査ですよ?別にぼくらじゃなくても・・・」
「いいじゃねーかハーリー、面白そうじゃねーかよ。ゴーストバスターズなんてよ」
「サブロウタさんは適当過ぎます!!」
だいたい・・・!!!と、いつも通りにサブロウタにつっかかるハーリーと、いつも通りにそれをスルーするサブロウタ。
そんな二人のやり取りを、ルリはほほ笑ましく見つめていた。
(今日も二人は元気ですよ。明日また、宇宙に上がります・・・カイトさん)
カイトの眠るプラントが無くなったあの日からルリは、その日あったことを毎日カイトに報告する癖がついていた。
そうすると、彼を近くに感じる気がしたから・・・
この三年間、彼を想わない日はなかった。
今思えばあの頃の気持ちには、憧れが強くあったのかもしれない。
テンカワ・アキトの代わりとしての憧れ。
少女の、年上の男性への憧れ。
でも16歳になり、過去を見直し、未来を見通せるようになった今、確かに思うのだ。
私は彼を愛している、と。
彼を想うだけで胸が高鳴る。
嬉しくて、切なくて、悲しくて・・・
でも、心地いい・・・
・・・たとえ、二度と逢えないと、わかっていても・・・
「・・・んちょう!!艦長ー!早く行きましょうよー!」
「宇宙に上がる前にどっか飯でも食いに行きましょうや!」
気付くと、二人はだいぶ先に進んでいた。
・・・・・・
暗い・・・暗い・・・ここはどこ?
戦っていた
闇の中、戦っていた
それは疾く、何者もその姿を捉えられない
色は、黄金
宇宙を切り裂く、一筋の雷
その閃光に触れたものは、戦艦だろうが人型だろうが砕け散った
阿鼻叫喚
人と鉄との亡骸の中心で、「彼」はつぶやいた
「わかったよ・・・イツキ・・・」
「!?」
バッ!
跳ねるように体を起こし、周りを見渡す。
薄暗い部屋・・・いつもと何も変わらない部屋。
カーテンがふわりと舞い、優しい風と共に光が差し込む。
・・・チュンチュン!チチチ・・・!
遠く、スズメの鳴き声が聞こえた。
(・・・ゆめ・・・?)
まだぼーっとする頭で、枕元に置いてあるお気に入りの猫の時計を見てみる。
(5:10・・・)
「ん・・・!」
両手を前に出し、小さく伸びをする。朝、この瞬間は嫌いじゃない。
ふと、胸に手を当てると、パジャマが少し濡れている。
自分が汗をかいていることに気付くと、ベッドから降りてバスルームに向かった。
サアアァァァ・・・
(・・・きもちいい・・・)
ひんやりとしたシャワーで汗をおとしながら、さっき見た夢を思い出してみる。
(なんか・・・イヤな夢だったな・・・)
シャワーを浴び終えローブを羽織ると、鏡の前に座りドライヤーで髪を乾かす。
(髪が長いから・・・大変)
ショートの人は楽なんだろうな・・・
そんなことを考える。
部屋に戻り、私服に着替えた。
テキパキと必要なものだけをまとめると、時計を見る。
(まだ早いかな・・・?あ、たまには外で朝食もいいかも)
髪を二つに結い、バッグを肩に提げて準備完了!
靴を履き、もう一度部屋を見る。
視線の先には白い帽子と、二人が映った写真。
その写真の中の青年に、軽く微笑みいざ出陣!
「行ってきます、カイトさん」
カチャ・・
ドアを開けると、いい天気。
(そういえば・・・さっきのイヤな夢・・・)
スウウゥゥ・・・
(・・・どんな夢だっけ?)
ガチャ・・ン・・・!
地下にある部屋の扉が閉まる。
部屋に入った二人の片方が口を開く。
「話とはなんだ・・・?」
「まぁまぁ、そうはしょらない。とりあえず座ったらどうだい?君はよくてもその子がかわいそうだろ?」
部屋の主は、入り口に突っ立ってる男、テンカワ・アキトの隣に同じように立っている少女、ラピス・ラズリに視線を向ける。
「ああ」
アキトが座ると、ラピスも隣に座る。
沈み込むその弾力が、ソファの高級さを表していた。
もう一度、問う。
「話とはなんだ・・・?アカツキ」
「ああ。遺跡ユニット・・・ユリカ君だけどね、見つかったよ」
部屋の主、アカツキ・ナガレはさらっとそんなことを言う。
アキトのナノマシーンパターンが輝く・・・
「どこだ・・!」
「ヒサゴプランの中心、アマテラス・・・と、待ちたまえよ、テンカワ君」
聞くがいなや部屋を出て行こうとする二人を引き止める。
「・・・なんだ」
「まだサレナとユーチャリスの調整は終わっていないよ」
「わかっている・・・少し、動きたいだけだ」
その黒衣を翻し、部屋から出てゆくアキト、そしてラピス。
「やれやれ、そういうところは昔のままなんだけどねぇ・・・」
ふぅ、とため息をもらす。
しかし、すぐにアキトだけが戻ってきた。
「ん?どうしたんだい?」
「一つ、気になることがある・・・」
・・・・・・・・・・・・
一人部屋に残るアカツキ。コミュニケをONにする。
「エリナ君」
《はい、会長》
間髪いれず答えるあたり、流石はエリナである。
「作業の進み具合は?」
《大体は終わりました。しかし、ジャンプユニットに異常が見つかり思った以上に難航しています》
「了〜解。彼女の情報は?」
《依然、あれ以上の情報は入ってきていません》
「あーそう。じゃ、引き続き収集を頼むよ、有能な会長秘書さん」
《はいはい・・・おだてても何もでないわよ。用はそれだけかしら?》
「いや、あともう一つ。こっちが本題」
《?》
アカツキの表情が険しくなる。
「・・・『彼』の情報はどうだい?」
《!・・・いえ、あの時から一切情報がありません》
エリナもまた表情を硬くし、報告を繰り返す。
「テンカワ君がシラヒメで彼らしきものを見たそうだ」
《・・・》
「ホントかどうかはわからないけど、一応ね。・・・彼の情報ランクをSSSに」
《・・・了解しました》
プツッ・・・
コミュニケが切れる。
「・・・さーて、アマテラス・・・どうなることやら」
アカツキもまた、その部屋をあとにした。
- アマテラス –
- ????? -
「『アレ』の次の出撃、決まったんですってね?」
「うーん、決まったのはいいんだけどねぇ・・・」
白衣の男が二人、話している。広い空間。声がよく響く。
「?なにか問題でも?」
やや若年の男が、中年の男に話しかける。
「彼は気分屋だからねぇ、ちゃんと動いてくれるか・・・前回なんか何もしないで終わっちゃったし」
「大丈夫ですよ、今回は周りに有り余るくらいの『エサ』があるんですから」
「ま、やってみればわかるか」
「ええ」
そう言うと二人、ヤマサキ・ヨシオとその助手、カトウ・シンジは目の前に鎮座する、黄金色の機体を見上げた。
「・・・にしても派手すぎません?」
ピピッ・・・!
狭いコックピットにウインドウが開く
《貴様の次の任務が決まった。アマテラスでの宇宙軍、並びに統合軍の殲滅である》
ノイズ混じりの声が響いてくる
《我々の声明の後、単機で次元跳躍、戦闘行動を続けるものを排除しつつ・・・》
「・・・」
《・・・遺跡を跳ばすまでの時間稼ぎをするのだ!わかったな!?》
「・・・・・・」
《・・・・・・ちっ・・・!!薄気味悪いガキだ・・・》
ヴン・・・
ウインドウが閉じる
黄金色の機体の中
全身をコードで繋がれたその男は
操り人形のようになった自分の体を一瞥すると
「・・・・・・・・・」
ゆっくりと唇の端を吊り上げた
To
Be Continued。。。
あとがき
どうも〜!YOUです。
やー、やっと劇場版に入りましたよ・・・長かった・・・
今回もだらだら長くってスイマセン・・・
そしてカイトの影うすっ!!
ティッシュを半分にはがしたときくらい薄いですね。
微風で飛んでいきそうな勢いあります。
あ、中盤ちょっとルリの私生活的なものも導入してみましたー。え?ええ。想像ですとも。
そもそも彼女はどこに住んでおられるのでしょうか??
都内のマンション?軍内の施設?寮?・・・謎は深まるばかりです。まぁ、マンションなんでしょうけど。
さて、今回初めて「なんちゃって戦闘」みたいなものを書きました。
自分で書いててなんだかよくわかんなくなったので、読んでくださった方もなんだかよくわかんなくなってくださったら幸いです。
あと、自分の文章とレイアウト、スゲェェェェ見にくいと思いますから、目を傷めないためにも2m以上離れてお使いください(?)。
え?マウスに届かない?
気合いです。
さて次回。
いよいよアマテラスです。
宇宙軍、ネルガル、火星の後継者、統合軍、四つ巴の戦いです。
そのとき、われらのルリルリは!?
次回
第二話
【『Nightmare Black』】
(カイトさん・・・)
お楽しみに!
いや、たいした展開ないっスよ。
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