この話は「うずもれた『恋のあかし』」の大晦日ジャンプ実験で何も起こらず(つまり、イツキ、カイトの過去はいまだ不明)、そのままナデシコBに乗りこみ、木星プラントに向かった、という設定です。

オリジナル設定も多数含みます。それでは、どうぞ、よろしく。

 

 

 

 

 

 

「ごめん、ルリちゃん」

 

「・・・」

 

「僕はもうナデシコには戻れない・・・」

 

 

 

 

あなたは

 

うつむくわたしに

 

悲しそうに

 

でも

 

はっきりと

 

そう言った

 

 

 

 

「・・カイトさん・・わたしのお願いも・・ひとつだけ、

聞いてもらえますか・・?」

 

「・・・」

 

「わたしに・・・キス、してください」

 

「ルリちゃん・・・」

「そうすれば・・!」

 

「わたしにも・・変えることができるかも・・・!」

 

 

 

 

わたしのすべてを

 

あなたに捧げます

 

身も

 

心も

 

この唇も

 

流れ落ちる

 

この涙でさえ

 

わたしのすべては

 

あなたのもの

 

だから・・!

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

この言葉も

 

 

 

 

あなただけのもの・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・バカ・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な宇宙

 

真っ暗なエステバリスのコックピットの中

 

もう二度と使わないであろうその言葉を

 

わたしはもう一度だけ呟いた

 

 

「カイトさんの・・・ばかぁ・・・!!」

 

 

だんだんと遠ざかる

 

「彼」が眠る木星プラント

 

涙というフィルターを透して見る

 

その巨大な建造物は

 

今まで見たものの中で

 

一番悲しく見えた・・・

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

The Prince of darkness

U

― 傀儡の見る『夢』 ―

 

 

【プロローグ 前編】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカ・・・か」

 

 

「主」を失い、次々とその機能を停止してゆく木星プラント。

その中心部で、彼は一人呟いた。

聞き取りのみに設定していたコミュニケの電源を切り、そして苦笑した。

 

 

「僕にピッタリの言葉だな」

 

 

ゆっくり、本当にゆっくりと光が消えていく。

「彼女」の眠るカプセルに近づく。

 

 

「イツキ・・・」

 

 

その名前を呼ぶ。

 

 

 

 

自分を探していた彼女。

 

 

そんなことも知らなかった自分。

 

 

自分の対として、恋人として、一緒に創られた彼女。

 

 

突然いなくなった自分。

 

 

ずっと待っていた彼女。

 

 

全部忘れていた自分。

 

 

裏切られ、絶望した彼女。

 

 

その彼女を殺した自分。

 

 

 

 

『・・ずっと・・待ってたんだよ・・・ミカズチ・・』

 

−微笑んだ、彼女−

 

 

 

 

そっと、その頬をなでる。

 

 

「ずっと・・・忘れていてごめん・・・遅かったけど・・・遅すぎたかもしれないけど・・・」

 

 

愛おしそうに、でも、悲しそうに。

 

 

「これからは、ずっとそばにいるよ。すぐ、隣にいる。・・・ほら、もう寂しくないだろ?・・・だから・・・」

 

 

そして、キスを。

 

 

「おやすみ、イツキ・・・」

 

 

彼の言葉に合わせるように、プラント内は闇に包まれた。

 

 

プシュ・・・

 

 

彼女の眠るカプセルを閉める。

 

もう一度彼女を見つめたあと、対として並んでいたカプセルに入り込んだ。

 

そっと目を閉じてみる。

これまでのことが走馬灯のように頭に流れてきた。

 

ナデシコに現れた時のこと。

佐世保での生活のこと。

ナデシコクルーのあまりの騒々しさ。

ユリカの家が想像よりはるかに大きかったこと。

ジュンがいろいろと世話をやいてくれたこと。

ラーメン屋台でアキトと一緒にラーメンを作ったこと。

初めて「家族」を感じたこと。

大晦日のジャンプ実験の失敗。

ミナト、ユキナと一緒にナデシコBのクルーを集めたこと・・・

 

楽しいこと・・・

 

悲しいこと・・・

 

いっぱいの・・・

 

数え切れないくらい、いっぱいの思い出。

 

一つ一つはきっと思い出せない。

 

でも・・・

 

確かに覚えてる

 

いっぱいの、その思い出すべてに、「君」がいた。

 

 

 

 

『たしかにそうですね、カイトさん・・ふふふ!』

 

 

一緒になって笑い、そばにいるだけで幸せだった。

 

 

 

『もう!カイトさんなんて知りません!』

 

 

オロオロして、どうやって機嫌をとろうか必死で考えた。

 

 

 

『あなたの・・・カイトさんの・・・力になりたいと、思いました』

 

 

その不器用な優しさが、ただ、嬉しかった。

 

 

 

『・・・少女をからかわないでください・・///』

 

 

恥ずかしさにうつむいて、

でも上目遣いでこそっと顔を見上げてくるそのしぐさが、

たまらなく可愛かった。

 

 

 

『わたしにも・・変えることができるかも・・・!』

 

 

やわらかくて、ほのかに甘い唇の感触と一緒に、

痛いほど、気持ちが伝わってきた。

胸が張り裂けそうになり、決心が揺らいだ。

 

 

 

 

・・・だけど・・・

 

 

 

 

そこまで考えたとき、部屋に静かに響き渡っていた最後の機械音が消え、辺りは完全な静寂に包まれた。

 

 

シュウゥゥ・・・

 

 

カプセル内に冷たい気体が流れ込む。

大きく息を吸い、その気体を全身に取り込んだ。

 

 

(・・・眠いな・・・)

 

 

急速に訪れた眠気。少しずつ薄れてゆく意識・・・

彼はもう二度と逢うことのない、この狭い世界で精一杯愛し愛された、一人の少女の名前をつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ルリ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガ・・・オオォォ・・・ン

 

ナデシコBに、エステバリス、カイト機が着艦した。

仕事そっちのけで格納庫に集まるクルーの面々。

 

 

「な・・なんなんだぁ〜!?ブリッジのやつら全員来やがって・・大丈夫なのかよ」

 

 

突如人口密度が増えたその場を見てあきれるウリバタケ。その後ろから、やや遅れてヒカルがやって来る。

 

 

「大丈夫だってウリピー!だーれもいなくたってナデシコは動くだから〜」

 

 

ちなみに全てオモイカネまかせである。

 

 

「・・やっと帰ってきやがったな!あいつら!」

 

 

心底ホッとした表情でリョーコがつぶやき・・もとい、ちょっと興奮気味に叫びながらエステに向かって走り出した。

そして、みんな叫ぶとまではいかなくとも、リョーコと同じく本当に安心した顔をしている。

 

 

ウイィィィ・・・

 

 

コックピットが開き、ルリが顔を見せると、皆がその周りを(というかエステの周りを)取り巻いた。

・・ちょっと遠くから『「[バンザーイ(笑泣)!バンザーイ(泣笑)!!]」』などという大げさな声も、涙声を交えつつ聞こえている。

ウリバタケの声が混じっていたとかいないとか。

 

 

「おかえり!ルリルリ!」

 

 

ミナトがリフトから降りてきたルリを抱きしめる。

 

 

「もう・・帰りは遅いわ、コミュニケは繋がらないわですっごい心配しただから・・」

 

「・・すいません・・」

 

「ううん・・帰ってきてくれればそれでいいのよ」

 

「はい・・・」

 

「うん。それで、カイト君は?まだコックピットの中なの?」

 

 

その言葉に、ビクン!と身体を震わすルリ。

 

 

「どうかしたの?・・ルリルリ?」

「あれ〜?カイト君いないよ〜?」 

 

 

コックピットを覗き込んでいたヒカルがタイミングよくそんな声を上げる。

その声につられ、リョーコとイズミもコックピットを覗き込む。

 

 

「ほ、ホントだ!カイトがいねぇ!」

「カイ・・・いないね」(何か言おうとしたがそういう雰囲気じゃないことを読んだ)

 

 

ミナトが腕の中のルリを見つめる。

その身体は小さく震え、うつむいているため、表情はよめない。

 

 

「・・・ルリルリ・・?」

 

「・・て・・・せん・・・」

 

「・・・え・・?」

 

 

聞き取れないほどのかすれた声。

 

 

「ん?どうしただ?・・おーい!ちょっと静かにしろぉー!」

 

 

後ろの方で整備班と一緒にバンザイをしていた(!)ウリバタケも様子に気付いたようで、皆を黙らせる。

 

 

「・・・・は・・て・・ません・・・」

 

 

三人娘もエステから降り、ミナトのそばまで来る。

その場は怖いほど静まりかえっていた。

皆、ルリの次の言葉を待つ。

そっとミナトの腕を外し、一歩前に出るルリ。

 

 

「ルリルリ・・」

 

 

そして皆に告げた。

 

 

彼との、おわかれの言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・カイトさんは、帰ってきません・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドタドタドタ・・・

 

 

「アキトアキトー!これはどこに置くー??」

「あー、もう狭いだから走るなよ・・ってまだ置くのか!?」

 

 

アキトの4畳半の部屋で二人はなにやら作業をしている。

アキトは狭いキッチンで料理を作り、ユリカは走っている。

どうやら何かの飾り付けをしているらしい。

 

 

「当然だよ!もうすぐやっとルリちゃんとカイト君が帰ってくるだから!」

 

ユリカがクリスマスツリー(!?)を部屋の隅に置く。

 

「うーーんと豪華にしないとね!」

 

ユリカが笹の葉(!?)を押入れに飾る。

 

「うわ〜・・もう外まっくら〜・・」 

 

ユリカが窓に屋台ののれん(!?)をかける。

 

 

「・・・はぁ」

 

 

アキトはユリカの今日の行動を思い起こしてみた。

 

ナデシコBの帰艦日が今日だと聞くがいなや『ルリちゃんカイト君おかえりなさいパーティするよ!』

と御統家から色々なモノを持ち出してきた。

 

そう。

 

本当に色々なモノを・・・。

 

おかげでアキトの部屋は「この部屋でアトラクションを開催できるのでは!?」といわんばかりに、モノで埋め尽くされていた。

いまや歩くのも困難な状態である。

 

 

(ユリカはなんにでも、ちょっと加減を知らないだよなぁ)

 

 

しかしそうは思っていても、惚れた弱みである。

そこも可愛く見えてきてしまう。

 

 

(なんにでも一生懸命なんだよな!そこがユリカのいいところだし)

 

「ん?どうしたの?アキト?」

 

「いや・・そうだな。やっと家族が帰ってくるだ、とことん豪勢にいかないと!」

「うん!」

 

 

アキトの同意に嬉しそうにうなずくと、ユリカは外に向かった。

 

 

「わたし門松(!?)飾ってくるね!」

「おう!どーんと飾ってやれ!」

 

 

アキトは調理に使っていたおたまをかざして、笑ってユリカに答えた。

 

 

 

 

 

 

がちゃ!!・・きいぃぃ・・が・・ちゃん。

 

 

(・・・)

 

 

木の軋む音を立てて、ゆっくりと戸が閉まる。

 

 

 

 

 

 

つぐつぐつ・・

 

 

(・・・・)

 

 

鍋の沸騰音が狭い部屋に響く。

 

 

 

 

 

 

パーフー・・・

 

 

(・・・・・)

 

 

遠くで豆腐屋のラッパの音が聞こえる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

びーー!!!

 

「をををを!!??」

 

 

 

 

びくん!

 

 

おたまを落としてしまったアキトはそれを拾いなおすと、

この場所に不釣合いなその音の元凶を探った。

 

 

(!・・あれか)

 

 

鳴り続けているその物体がユリカの着けてきたコミュニケだと気付くのにそう時間はかからなかった。

以前に「わたしはアキトに隠し事はしない!だからアキトも隠し事しないでね」「ああ」という会話を交わしてから、

ユリカのコミュニケにも普通に出るようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい?こちら御統・・・」

 

 

 

 

 

『―――――――――』

 

 

 

 

 

「・・・・え・・・・」

 

 

 

 

 

 

・・コォン・・・

 

 

 

カラッ・・・

 

 

 

カラッ・・

 

 

 

カラン・・・ン

 

 

 

 

 

 

 

 

再度、床に落ちたおたまが、回って、止まった。

 

 

 

 

 

 

To Be Continued。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 どうも〜。YOUです〜。

今回が初作品&発投稿です〜。

いきなりですがごめんなさい・・・うまく書けませんで。

あ〜、何か思うように書けないものですね〜。

しかもしょっぱな続き物・・・カイトのいなくなった直後のこととか書きたかったですけどね〜。

なんかよくわからん・・・

ちなみにタイトルは傀儡(くぐつ)と読みます。

 

さあ!アキトが受け取ったメッセージは何なのか!?(いや、黙っといてください)

我らがルリルリは今!?

 

次回!

 

プロローグ『中編』or『後編』!!

(うわぁ〜・・・とかいわんどいてください)

 

やさしい人はぜひ読んで、至らないとこ指摘してやってください。お願いいたします。

あと、やったらめったスペース使ってますで読みにくいかどうか教えてください!

 

 


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