ナデシコB艦橋


「皆さん、お待たせしました。」

『おかえりなさい』

ウィンドウを展開させて応じるオモイカネ。ご丁寧に『byオモイカネ』とまで書いてある。彼の芸にも磨きがかかったというかなんというか。

「戦闘モードに移行しながら待機。当面は高みの見物です。」

ブリッジに着くなり指示を出し始めるルリ。

「援護はいいんですか?」

ハーリーが訊ねる。

「避難民の救助を最優先とします。それにむこうから願い下げでしょうし。」

『そのとぉーり!!』

ウィンドウから非常に馬鹿でかい声がする。いわずと知れたアズマ准将だ。

『今や統合軍は陸海空に宇宙、全ての脅威を打ち倒す無敵の軍だ。黙って見ていろオンボロ宇宙軍!』

自慢するだけしてさっさ閉じるウィンドウ。しかし准将、戦闘指揮はほっといていいんですか?

「まったく、暑苦しいおっさんだよなー。」

サブロウタが率直な感想を述べる。

「ですよね。」

いつもはサブロウタとなかなか意見の合わないハーリーだが流石にこの意見には賛成のようだ。苦笑を交えながら同意している。

「ハーリー君。」

「はい!何でしょうか。」

ルリにご指名されてとたんにきりっとするハーリー、しかし君も切り替え早いよね。

「もう一度アマテラスにハッキングしてください。キーワードは『AKITO』で。」

「『AKITO』ですか?何なんですそれ?」

「IFSフィールドバック、レベル10までアップ。艦内は警戒体制パターンA。システム統括!!」

ハーリーの質問を無視してワンマンオペレーションに入るルリ。

「艦長ー!!『AKITO』って何ですか?」

下の座席ではまだハーリーが叫んでいた。

機動戦艦ナデシコ〜The shining blade〜
              扉の向こうには・・・



アマテラス内統合軍司令部



さてさてこちらアマテラスの統合軍司令部、現在の戦況はどうなっているかというと・・・。
当初は不意を突かれてぼろぼろだった宇宙軍だが、リョーコ率いる『ライオンズシックル』の活躍でコロニー連続襲撃犯は最終防衛ラインから見る見る遠ざかっていく。そのうちに何とか体裁を整えていく防衛艦隊。ほうほうの体で逃げ惑っているように見える黒い機体を見て、アズマ准将はご満悦のようだ。

「ぐわっはっはっはっ!!見たかねシンジョウ君!」

品のない笑い声が司令室に響き渡る。しかし准将、その声のでかさほんとにどうにかならんのか。

「はぁ。」

馬鹿みたいに(というか馬鹿そのものだが)笑っているアズマ准将を見て、気のない返事を返す准将。まぁ彼がこれからやろうということを考えれば無理もないのかもしれないが・・・。

「宇宙軍のやつらめ、戦争の時はでかいつらしていたがこれからはそうはいかん。地球連合統合平和維持軍万歳!!ヒサゴプラン万歳!!」

ここまでぼろくそに言うとは。准将あんた宇宙軍になんか怨みでもあるのか?

「ボース粒子反応増大!戦艦クラスの質量がボソンアウトしてきます!!」

「何だと!?」

そんな准将の上機嫌を一瞬で打ち砕く報告が司令部に響き渡った。
ここ最近の事件により世間ではA級ジャンパーは失踪を続けている。A級ジャンパーのナビゲートがなければ単独でのボソンジャンプは成立しない。それ以前に長距離のボソンジャンプなど現行の兵器では不可能なはずなのだ。

「未確認艦ボソンアウト!!グラビティブラスト来ます!!」

空間が湾曲し現れた異形の戦艦が放つ一条の黒い光が守備艦隊を飲み込んでいった。
しかし信じられないような報告はまだ続いた。

「敵艦に重力は反応確認。再度グラビティブラストが来ます!!」

半ば悲鳴のようなオペレーターの報告は司令室を揺るがした。
あれだけの出力のグラビティブラストの連射ができる兵器など地球木星合わせても数えるほどしかないのだ。

「3・6・7の艦隊に通達!!何としてでもあの戦艦を落とせ!!」

アズマ准将の怒声が司令室に響き渡る。指令を受けてあたふたと動き始めるオペレーターたち。




アマテラス内部秘密通路



「はぁ〜今度はジャンプする戦艦か、どうやら外じゃ派手にやってるみたいだねぇ。」

「ネルガルでしょうか。」

あくまで軽いヤマサキとその後を付いてくる黒服の男。

「さぁ。それよりも準備のほどは」

男の質問など無視して自らの用件を伝える男。科学者というのは皆こうなのだろうか。

「特に問題はありません。」

「閣下への連絡は?」

「万事抜かりなく。」

「あの連中からは?」

「『五分でいく』と『素体のほうも・・・』とも言っておりました。」

「!素体が・・・ははははは、面白くなってきたじゃないか。」

今までは事務的だった男の声音が変わる。『素体』その言葉を聞いたとたん狂気を含んだ笑い声を上げるヤマサキ。
ドアを潜り抜けた時もまだその笑みは消えることはなかった。

「緊急発令!5分で撤収!」

その言葉を聞き途端にあわて始める研究者達。しかしヤマサキはそんなことは意に介さず一人狂気にとらわれていた。



ナデシコB艦橋



『なんだ・・・いったい何が起こっているんだ。』

でたらめな速さでアマテラスにやってきたカイトは目の前の光景を見て愕然とした。
そりゃ誰だってはるばるやってきたところで戦闘やってたらびっくりするだろう。

「カイト!」

いち早くカイトのことを察知したナデシコBから通信が入る。

『サブロウタさん!いったいどうなってるんですか!!』

藪から棒にカイトが聞き返す。

「カザマ大尉、詳しい説明は後です。ナデシコに着艦してください。それと・・・何故遅れたのかはっきり教えてくださいね。」

「はっ、はい(汗)」

極上の微笑を浮かべて言うルリ。答えるカイトは額に大粒の汗を浮かべていた。
後にそれを見ていた某副長は

「あの時の艦長は本当に怖かった。すごくにこやかに微笑んでるのに、目が全然笑ってないんだぜ。カイトのやつもあれじゃあ苦労するだろうな・・・。」

と語ったと言う。

なんともいえない空気に包まれるブリッジ。しかしその時予想だにしない自体が起こった。

「艦長!カイト機後方にボース粒子反応!何者かがボソンアウトしてきます!!」

『何だって!!』

「サブロウタさん!!」

瞬時にサブロウタに指示を出すルリ。

「了解!」

言うや否やサブロウタは格納庫に向かって駆けていった。



アマテラス周辺



ボソンジャンプしてきたのはエステよりも小さい機体。しかしその機体はカイトに鋭い殺気を感じさせていた
高軌道ブースターを切り離し戦闘体勢に入るカイト。

『カイトさんどうですか。』

ルリがコミュニケごしに様子をうががって来る。

「さあ、まっ世間話をしに来たわけじゃあ無さそうだけどね。」

軽い口調だが、いつになく真剣な声音で答えるカイト。静寂という緊迫が両者に走る。

先に動いたのは相手のほうだった。

「くっ、なんだこの動きは!」

奇怪な敵の動きに戸惑いながらも次々と襲い来る敵の攻撃を最小の動きでかわすカイト。
だが武装が間に合わせという状況もあってか、段々と追い詰められていく。

「ひっさしぶりの登場!!」

そんなカイトのピンチに青色のスーパーエステバリスが颯爽と現れた。
六連にレールガンで攻撃を仕掛けるスーパーエステバリス。それを不規則な動きでかわし執拗にカイト機を狙う六連。

六連の錫杖がルインスレイヤーに襲いかかる、しかしかわしきれずにバーニアに攻撃を受ける。ランサーで反撃するカイト。絶妙のタイミングで放たれたそれを錫杖で受け止める六連。カイトはすかさず刃を引きランサーで再度切りかかる。再び受け止める六連。互いの武器が火花を散らし両者の動きが一瞬止まる。

「これでもくらえ!!」

六連の動きが止まった瞬間にレールガンで援護するサブロウタ。普通ならこの状態での援護はありえない。敵機と0距離状態にある味方機に攻撃が当たる可能性があるからだ。しかし宇宙軍のエースパイロットであるカイトとサブロウタにはそんなことは関係なかった。普通のパイロットにはできないことができる、それがエースなのだ。スーパーエステバリスがレールガンを放った瞬間に六連から離れるルインスレイヤー。当然その時に相手の体制を崩しておくことも忘れない。寸分たがわずレールガンが直撃する。しかしこの程度で撃破できる六連ではない。すぐさま体制を立てなおす六連。しかしその一瞬の隙を見逃すカイトではない。六連が再び錫杖を構えるまでの間に、ランサーが六連を貫いた!

「やった!!」

「!カイトまだだ!!」

ランサーに貫かれたというのに攻撃を仕掛けてくる六連。その錫杖を紙一重でかわすカイト。
その隙に束縛をのがれ、逃げていく六連。あれだけのダメージを受けてまだ動けるということは見かけに反して余程タフな機体なのだろう。

「くそ、逃がすか!!」

最大加速で六連を追いかけるルインスレイヤー。しかし先ほどのダメージで本来の速度が出ていない。

『待ってくださいカイトさん!!・・・サブロウタさん、カイトさんを追ってください』

カイトをとめようとするルリ。しかし一度熱くなってしまったカイトはよほどのことがない限り周囲の言うことなど聞きはしない。たとえそれがルリの命令であったとしても。仕方なくサブロウタにカイトを追うように指示するルリ。

「はいよ!」

威勢のいい掛け声とともにブースターをきらめかせてカイトを追うサブロウタ。
このとき誰も気づきはしなかった。あの六連の真の目的に・・・。



アマテラス中央ブロック内



そのころリョーコ率いるライオンズシックルはブラックサレナを追い詰めていた。

「へっ、捕まえたぜ!」

サレナの後ろにつけると同時に一斉に攻撃を開始するライオンズシックル。

「どんなに性能がよくっても一機じゃどうしようもねぇだろ!」

勝ち誇ったかのようにリョーコが叫ぶ。

《背部ユニット損傷、このままでは機動性に障害が出る恐れあり》

「ちっ、流石に無傷で突破は無理か・・・。」

そうつぶやきコンソールのボタンを押すパイロット。

《高機動ユニット、排除》

ウィンドウにその文字が表示されるとともに次々と切り離されていくパーツ。
そして脱落したそれは、ブラックサレナを追撃していたライオンズシックルに質量弾となって襲いかかった。

「なに〜!」

流石にパーツを弾代わりにするとは思っていなかったらしく驚きの声を上げるリョーコ。

「うわっ」

「脱出します」

「隊長、すいません。」

切り離されたパーツの直撃をうけ次々と撃破されていくライオンズシックルのエステバリス達。精鋭ぞろいの彼らといえど予想だにしていなかった今の攻撃は避わせなかったようだ

「てめえはゲキガンガーかよ!!」

遅い来るパーツの嵐を何とかかわしつつも無茶苦茶な構成の相手をなじるリョーコ。しかし次の瞬間、

『撃てぇぇぇい!!』

突然響き渡るアズマ准将の怒声。アマテラス周辺で活動していた全ての統合軍機に強制通信が入ったのだ。そして准将の命令を受けてずらりと並んだ砲戦フレームが一斉に攻撃を開始した。

雨あられと襲い来る砲弾を難なく避けるブラックサレナ。しかし、かわした砲弾は当然・・・

「どわぁぁぁ」

ブラックサレナを追撃していたリョーコに襲いかかることになる。砲弾の嵐を何とか避けるリョーコ。

『撃って撃って撃ちまくれ!!』

しかし、アズマ准将はリョーコの事なんか気にせず命令を出し続ける。
しかしブラックサレナは難なく避わす。当然砲弾は再度・・・。

「ぎゃあぁぁぁぁ」

リョーコを襲う。これまた紙一重で避わすリョーコ。

『撃て、撃ち落せ〜!!』

また命令をだすアズマ准将。



アマテラス内統合軍指令部



『ふっざけんな!!当たったらどうするんだ』

ついに堪忍袋の緒が切れたかアズマ准将に食ってかかるリョーコ。彼女にしてはよく持ったというべきか・・・

「今はそれどころじゃない、邪魔するな!!」

戦闘で熱くなっているのか普段以上にでかい声で返すアズマ准将。

『邪魔なのはそっちだ、この下手くそ!!』

相手が准将でも気にせず罵倒するリョーコ。しかし仮にも上官だぞ。下手したら減俸じゃすまないと思うんですが・・・

「『何だと〜〜!!」』

ウィンドウをぎりぎりまで近づいて本気でにらみ合う両者。戦闘中だって言うのに司令がそれでいいんですか。

『いいんですか?ゲート開いてますけど。』

「何!」

ルリの冷静な突っ込みで、やっと元に戻る両者。しかしいわれるまで気が付かないとは・・・。無能の極みだな

「十三番ゲート敵のハッキングです!」

「十三番?わしは知らんぞ。」

オペレーターの報告に心底不思議そうな声を上げるアズマ准将。

「茶番は終わり・・・そういうことです准将。」

「なんだと!?」

シンジョウ中佐の言葉に訳が分からん、と言ったような顔をする准将。
サレナが映っているウィンドウとは別のものを見て感慨深げにつぶやく准将。

「・・・あれが我らが追い求めたものか。」



13番ゲート内




「てめぇ待ちやがれ!!」

存在しないはずの13番ゲートに入っていったブラックサレナを追いかけるリョーコ。
しかしゲートをくぐった瞬間彼女は手厚い歓迎を受けた。

「うわぁ〜!どぁ〜!!」

いきなり3機のステルンクーゲルが発砲してきたのだ。
コロニー内だというのにかまわずレールガンを連射してくる。並みのエステバリスライダーならば最初の発砲で撃破されていただろう。しかしリョーコは一瞬で体勢を立て直すと、すぐさまラピッドライフルを斉射、手近な一機を破壊した。残る2機もすぐに鉄くずとなり最初の一機のあとを追っていった。

(しっかしいきなり問答無用で発砲とは・・・こりゃ統合軍も相当後ろ暗いことやってるな。)

ステルンクーゲルを撃破したリョーコが思考にふけっていると通信が入った。撃破された部下からでもなく、あのでかい声の准将でもない。ナデシコBのルリからであった。

『お久しぶりですね。大丈夫ですか?リョーコさん』

あまり心配していない口調でルリがたずねる。

「ああ、二年ぶり。元気そうだな」

リョーコは何事もなかったかのようにそれに応じる。

『相変わらずサスガですね』

「へ、無人機倒したって自慢にゃなんねえよ」

おそらくリョーコのエステのモニターから周囲の状況を見ているのだろう。ルリが感心したように言うが、リョーコは当然だと言わんばかりである。

『無差別に進入するものを排除するトラップのようです』

「ふーん」

『ところで変な機動兵器見ませんでした?』

「変な機動兵器?」

急に話題を変えるルリ。

『はい、エステバリスより小さくて錫杖みたいな物持ってたんです。カイトさんたちが追ってアマテラスの中に入っていったんですけど・・・。』

「いや見てないけど。」

どうやらリョーコとは違うルートを通っているらしい。

『はぁ、そうですか。とりあえずこの先にトラップはありません。案内します』

「すまねぇな」

ルリに感謝の言葉を述べるリョーコ、しかしここで彼女はある事に気が付いた。

「ああっ!お前ヒトん家のシステムハッキングしてるな?」

そう、リョーコですらこのブロックの存在を知らなかったのだ。ましてや宇宙軍のルリが知っているはずは無い。

『敵もやってますし、非常時です。あ、ちなみに張本人はこのハーリー君ですので軍法会議にかけるならそこんとこよろしく』

『か、艦長ヒドイ!』

別段悪びれた様子も無くハーリーの所為にするルリ。ハーリー、いきなり突き出されてかわいそうに。

「ハハハハハハハッ」



アマテラス内統合軍司令部





「敵、第五隔壁に到達」

「プラン乙を発動!各地に打電、『落ち着いていけ』」

「ハッ!」

現在司令部では大急ぎであちこちに指令を飛ばしていた。

「離せ!ワシャ逃げはせん!」

「准将、お静かに!」

アズマ准将は一人拘束されている。しかし准将だけが拘束されていると言うことは、最初から皆あちら側だったと言うことだ。まったく根回しがいいと言うか何と言うか・・・

「シンジョウ中佐!何を企んでいる?君らは一体何者だ!?」

「地球の敵、木連の敵、宇宙のあらゆる腐敗の敵……」

「何!?」

「我々は……『火星の後継者』だ!」

バッ、と統合軍の軍服を脱ぎ捨てるシンジョウ。とその下からは♂のマークが胸に描かれた赤と白の服が姿を現した・・・




遺跡搬入口



「ラピス。」

『今、解析してる。』

流石に遺跡の目の前と言うこともあってプロテクトが厳重だが、彼女ならまもなく終わる作業であろう。

「おおっと。そのまま、そのまま」

立ち止まっているブラックサレナにリョーコが近寄ってくる。

「オレは頼まれただけでね、この子が話をしたいんだとさ」

そういいつつ送受信用のワイヤーをブラックサレナに打ち込んむリョーコ。

『こんにちは。私は連合宇宙軍少佐、ホシノ・ルリです。無理矢理ですみません。あなたがウインドゥ通信の送受信にプロテクトをかけているのでリョーコさんに中継を頼んだんです』

「……」

ルリが話しかけるが相手は答えようとしない。

『あの、教えてください。あなたは、誰ですか?テロの目的は?』

「ラピス、パスワード解除。」

「時間がない、見たければ好きにしろ。だが邪魔はするな。」

それだけいうと、開いていく隔壁の奥にブラックサレナは歩を進める。開かれた扉の向こうには・・・



遺跡ドック内




そこには信じられないものが安置されていた。

「なにぃ!!」

「ルリー!見てるか!」

今まで追っていたブラックサレナのことなど忘れて一目散に駆けていくリョーコのエステ。

『リョーコさん……』

「何だよコレ……」

『リョーコさん落ち着いて』

「何なんだよ、ありゃあ!!」

リョーコたちの前には信じがたいものがあった。蜥蜴戦争で活躍し解体されたはずの初代ナデシコ。そして蜥蜴戦争の原因となり彼女達が廃棄したはずのあの遺跡だった!

『形は変わっていても、あの『遺跡』です。この間の戦争で地球と木星が共に狙っていた火星の遺跡、ボソンジャンプのブラックボックス……』

口調は淡々としているルリだが、その声には明らかに動揺が混じっている。

『あなたの目的はこれだったんですね』

「……そうだ」

ルリの問いかける様な言葉にアキトがポツリと答える。

「これじゃあ、あいつらが浮かばれねぇよ……」

『リョーコさん……』

「何でコイツがこんな所にあるんだよ……」

瞳に涙をにじませるリョーコ。

『それは、人類の未来の為!!』

突然あたり一面に超特大のウィンドウが開く。そこに映っていたのは・・・

「え!」

「クサカベ……中将!?」

そう、先の蜥蜴戦争において木連の実質的指導者であり、熱血クーデターにおいて行方不明になった草壁春樹中将その人だった!

「三年前は遺跡を押さえられ貴様らに破れはしたが今回は違う!遺跡はわが手中にあり!!」

勝ち誇るようにクサカベが宣言する。そして・・・

「リョーコちゃん、右!」

「えっ?」

反射的に回避運動を取るリョーコ。だが少し遅く六連の錫杖が彼女のエステバリスを襲う。ナデシコに叩きつけられるリョーコのエステバリス。止めを誘うと一斉に襲い掛かろうとする六連にブラックサレナが立ちふさがる。サレナに向かっていく3機の六連、ふらふらと不規則な動きでサレナの周りを回りながら攻撃を仕掛けてくる。そしてその攻撃を避わし、はじき、反撃を仕掛けているサレナ。その人間離れした動きは傍目で見ているリョーコには信じがたいものだった。



アマテラス統合軍司令部




「ヒサゴプランは我々火星の後継者が占拠する!!」

いきなりの宣言に皆、騒然とするかと思いきや。

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

次々とオペレータたちは軍服を脱ぎ捨て火星の後継者の制服へと変わっていく。どうやらほとんどのものが火星の後継者だったようだ。

「何だと!!貴様!!」

「准将!お静かに!」

「ええぃ、放せ!」

唯一アズマ准将が叫んでいるが、この状況では一人ではなにもできないだろう・・・。

「占拠そうそうで申し訳ないが、いまからアマテラスを爆破する!!敵、味方、問わずこの宙域から逃げたまえ!!繰り返すこの宙域から逃げたまえ!!」

アマテラス周辺の全ての通信にサウンドオンリーで発進されるあまりにもいきなりな宣言。これには流石のアズマもただただ唖然とするしかなかった・・・。



遺跡ドック内



『リョーコさんだいじょぶですか?』

「今度はかなりやばいかもな。」

突き刺さった錫杖を抜こうともがいているリョーコ。2本は外れたが残りの一本がどうしても抜けない。

「お前には関係ない、早く逃げろ。」

「今やってるよ!!」

そういいつつボルトで間接を切り離していくリョーコ。しかしそのとき・・・

「一夜にて、天津国まで伸び行くは、瓢の如き宇宙の螺旋・・・・・・」

空間を切り裂き血のように赤い機体・・・夜天光と2機の六連が姿をあらわした。今まで戦っていた六連も夜天光の後ろに回った。

「・・・女の前で・・・死ぬか?」

その場にいる物の中ではアキトしか理解し得ないだろう言葉を紡ぐ北辰。

「くっ。」

アキトも表面上は冷静だが顔中にナノマシンの光が走っている。
そして一同が見つめる中遺跡が花を開かせるかのように少しずつ変化していく。そして・・・

「そんな!!」

『ユリカさん』

遺跡の中から現れたのは遺跡と下半身が融合し金色に輝く初代ナデシコの艦長ミスマル・ユリカだった、しかしその顔はまるで死んでしまっているかのように生気が感じられない無機質な表情だった・・・

ドゴォォォォォーーーーーン

爆発し始めるアマテラス、しかし北辰たちはその場を動こうとしない。

「くっくっく」

「・・・・・。」

辺りに言いようのない緊張感が漂う。そのとき・・・
緊張を破るかのように傷ついた六連とそれを追ってカイトの駆る機体【ルインスレイヤー】が入ってくる。

「なんだ、あれは!!」

遺跡とそれに取り込まれたユリカを見るなり、そう叫ぶカイト。

「くっくっくっく。ようやく来たか。」

「ちっ、何故このタイミングで!!」

それぞれ別のの反応を見せる北辰とアキト。いきなりの展開にリョーコなどは付いていけない。

「あんた、誰だ!!」

敵意を感じ取ったのだろうか、北辰の乗る夜天光のほうを向き叫ぶカイト。

「・・・縛!!」

それには答えず北辰が叫ぶ。すると今まで宙に浮いていた六連が一斉にカイトに襲いかかった!

「ちっ!!」

次々と襲い来る六連の攻撃を驚くべき速さで避わすカイト。普通の機体であんな機動をすればパイロットはミンチになってしまうだろう。
しかし予期せぬ事態がカイトを襲った。

(ぐぁ・・・な・・なんだ・・・急に・・・頭が・・・・・・)

突然カイトを襲う頭痛、かろうじて意識を保ってはいるものの途端に回避行動が鈍くなる。
そして今まで避けていた六連の攻撃が被弾し始める。

「やらせるか。」

「邪魔立てしないでもらおう。」

アキトが助けに行こうとするがその前に北辰が立ちはだかる。
いよいよカイトが危ないというその時!

「ひゃっほう〜〜!!真打登場!!」

颯爽とサブロウタの駆るスーパーエステバリスが現れ、ところかまわずミサイルやレールガンをぶっ放した。

「てんめぇぇぇ! 人んちのコロニーの中で何考えてやがる!」

「こっちも上官の命令なんでね。それに、もうすぐ爆発するんだから、今更この位どうでも良いんじゃない?」

辺りはサブロウタが放ったミサイル等の爆発の煙に包まれている。

「ほら、カイト!ここがぶっ壊れる前にとっとと帰るぞ。」

「・・・うぅ」

「おい大丈夫か!カイト!!」

コックピットの中でうめいているカイトは本当につらそうだった。

「そこのエステバリス。こいつらを連れてさっさと帰れ。」

「言われなくても、そうさせてもらうさ」

サブロウタがリョーコのアサルトピッドとカイトのルインスレイヤーを抱えて逃げ出そうとした時

「逃がすか!!」

煙を引き裂いてカイトを逃がさんとする北辰。しかし今度はその前にアキトが立ちはだかる。


遺跡搬入口



崩れていくアマテラスの中を最大戦速で突っ切っていく青いエステバリス。

「バカ野郎、引き返せ!引き返せよ!!」

「……艦長命令なんだ、悪いな、中尉さん」

コミュニケ越しのリョーコの悲痛な叫びを聞きながらもサブロウタの意識はもう一人の方へと注がれていた。

「おいカイトしっかりしろ!!」

「・・・・・・・・・・・」

「やべぇ。」

呼びかけても反応がない。コミュニケを見る限りでは死んではいない様だが、顔は真っ青で息をしているかどうかも危うかった・・・。

「艦長!!」

ブリッジに連絡を取るサブロウタ

『どうしました!サブロウタさん!』

「カイトが倒れました!格納庫に担架回してください!!」

ルリの顔がこれ異常ないくらい青くなった。



ナデシコB




ナデシコに着いたとき、カイトは動けない状態にあった。すぐさま担架に乗せられるカイト。
すると向こうからルリが走ってきて、カイトに声をかけはじめた。

「カイトさん!!しっかりして下さい!」

(ル・・ルリちゃん・・・)

カイトはまだかろうじて意識を保ってはいたが、既に呼吸は弱く危険な状態だった。

「なにやってるんだ!早く担架を出せ!!」

大急ぎで医務室に運ばれていくカイト。

「カイトさん!カイトさん!」

『早・・・・お前・・・でも・・・・い』

薄れ行く意識の中でカイトはルリの声とはまたべつのこえを聞いた気がした・・・。



あとがき          第一回Kのお茶会




K「というわけで今回から始まりました新コーナーその名も『Kのおちゃか・・・」

羊羹「こらぁぁぁちょっと待て〜〜!!」

K「なんだうるさいぞ。」

羊羹「何勝手にコーナー設けてやがる!!だいたい何するんだ!!」

K「ふっ、愚問だな。お茶会というのは客を招くもの!当然きれいなお嬢さんを呼んでお茶を御一緒に・・・」

羊羹「ザケンナボケェェェ!!」

K「黙れ。」

ズガ、バキ、ミシ


羊羹「ぎゃあぁぁぁぁぁ、ギブギブ。認めるからやめろ〜」

K「(なんだ、しぶといな)・・・さて、気を取り直して。栄えある第一回目のゲストは・・・・・」

羊羹「このSSの主人公カイト君で〜す。」

カイト「どうも〜。って何でお前がここに!!」

K「あぁぁぁぁ!!何で第一回目なのに野郎なんかがくるんだよ!!大体お前倒れたんじゃないのか!!」

羊羹「まぁまぁ、第一回目は主人公が来るってのが常識だろ。それにここでは本編の時間の流れは関係ないのだ!」

K「うるせぇ、こんの腐れ羊羹が!!」

ズガ、バキ、ミシ、パキ、メキョ・・・・・

K「ふう、宇宙のごみがひとつ消えた・・・」

カイト「なぁ、俺どうすりゃいいの?」

K「しかたない、今回はルインスレイヤーのスペックについて・・・解説してやろう。」

カイト(今言葉を選んだな・・・)

K「まず本体からだな。動力源は新開発の小型相転移エンジンver.1.5を装備。これによって従来のエステとは比べ物にならない出力を得ることに成功している。」

カイト「ver.1.5だったんだ・・・知らなかった。」

K「てめぇ、テストパイロットなんだからそれぐらい知っておけ!!・・・それでだ、それによって得たエネルギーのほとんどを武装ではなく俺が長年研究してきたバーニアにまわしてある。速度としては・・・(計算中)・・・ナデシコAの2倍弱ぐらいか。通常なら軽く15Gくらい加かってパイロットはお釈迦になってしまうんだが、作中で説明してある様にこれまた新開発のGキャンセラーを搭載してあるから、まぁ最大戦速でも3Gぐらいかな?」

カイト「3Gって、そんな無茶苦茶なGの中で操縦できると思ってるのか!200Kg近い負荷がかかるんだぞ!!」

K「ギャーギャー五月蠅いな。仮にも宇宙軍のエースパイロットだろう、だったらそれぐらい何とかして見せろよ。で、乗ってみてどうだった?」

カイト「まぁ、反応速度はよくなってるからしっかり付いてきてくれたよ。スーパーエステじゃ物足りなくなってきたところだし。パワーもかなりあがっていたな、斬りあいをしたときすごい楽だった。ただGはきつかったのと武装が・・・」

K「武装については専用の物が届く予定だから改善されるだろう。Gはお前が我慢しろ。」

カイト「言うと思ったよ。」

K「え〜まぁ今日はこの辺でお開きにしたいと思います。この作品についての感想等ありましたらぜひぜひメールを下さい。首を長くして待っております。」

羊羹「よ・・よろしく・・願い・・しま・・・グフッ。」


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