機動戦艦ナデシコ


お間抜けな人たちの恋愛事情



  やはりというかなんというべきか。ルリちゃんには元気がない。いやまあね、元気いっぱいのルリちゃんって言うのもそれはそれで不気味だけども。微妙な時に考え事に老け込んでいるとかそう言った時間が多く感じる。

何とかせねば。ポクポクポクポクポク・・・・・。

ひらめかないねやっぱり。お坊さん見たく悟り開いてないしね。

しかしこのままじゃいけないし。突撃あるのみですYOOOOO。

というわけで今はルリちゃんの部屋の前にいるのであります。この手でドアをノックするのだ。

コンコン

「ルリちゃーん。虎屋の羊羹があるけど食べないかね。ついでに玉露も入れたし」

以外にもルリちゃんは和菓子好きなのである。

返事が無いね。もう一度トライ!

コンコン

やはり返事が無い。

まさかだれかの襲来か!ちくしょう自分の役目を忘れていた!

急いでドアを開く。しかしそこは既にもぬけのからになっている。

こういうときこそ落ち着くんだ。どんな痕跡でも良いから連れ去った奴の手がかりを見つけるんだ。辺りを見回すとは世の中央の丸いテーブルに紙切れがあった。

もしやこれはルリちゃんからのメッセージなのでは。そう思うと直ぐに手にとって目を通すと

『ちょっと外の空気を吸ってきます』

なんだ僕の勘違いですか。それじゃあ帰ってくるまでにお茶を入れ替えておこうかな。玉露を入れる温度は60度なんだよね。最後の一滴が一番うまいって山岡さんも言ってたしね。





「違うだろーーーー!」

危険度は変わっていない。どこだ!ルリちゃんが悩んでいる時に行きそうな確率の高い場所は。

!考えるまでも無い。

イメージを集中して

ジャンプ!



一瞬のブラックアウトの後すぐに景色が目に飛び込んできた。何度も見た光景。ルリちゃんと・・・アキトさんとユリカさんと一緒に 暮らしていたあの場所。

そうあのアパートの近くだ。何故僕がこの場所に当たりをつけたかは自分自身が迷っていたりした 時に来る場所だから。ルリちゃんは絶対ここにいるはず!

どこだ!

      どこだ!

          どこだ!

いた!

「ルリちゃん!」

僕が声をかけてルリちゃんがこちらの方に視線を向けた瞬間。

黒い影が旋風のように彼女のそばに近づいた。

「火セいのコうけいしゃはふメツ!」

そう言うと片手に持った肉厚の小刀をルリちゃんの首筋に振り下ろす!

僕は体のばねを一気に使って腕をルリちゃんと小刀の隙間に差し込む。

一瞬の痛みの後赤い雫がルリちゃんの白い肌の上に斑を作る。

「チぃィィぃぃぃぃ」

男は口からつばを撒き散らして喚きながら小刀を抜こうとするが僕は筋肉で締めてそれを阻止する。

「ヌゥゥゥぅぅぅゥゥ!」

それが出来ないと知ると瞬時に逃亡の姿勢に入ろうとする。

一度でもこの子の命を奪おうとした奴に情けはいらない。すぐに追撃に入ろう。

「カイトさん」

泣きそうな顔のルリちゃんがしがみついてくる。

いけないね。護衛は僕一人だ。宇宙軍に連絡を入れておこう。今この子を一人にしちゃいけない。

なんて声をかけよかな?

「えーと、ルリちゃん。勝手の外に出たらお尻ぺんぺんだぞ」

とりあえず明るさを取り戻そうとしてみる。

「カイトさん・・・。うっ、うっうわぁぁぁん」

ルリちゃんが泣いてる。僕が何かしたのか?

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

何で彼女は誤っているんだろう?まさか僕の隠しておいた鎌倉カスターをこっそり食べたのか!それはちょっと怒っちゃいそうだね。でもそれだけで泣いて謝るかなぁ?

「私のせいで腕が、けっ、怪我をして」

なんだそんなことなの。

「あのさぁルリちゃん。あんま気にしなくても良いんだよ。僕は君を護るのが」

「仕事ですか!何で男の人は勝手に自分の体を傷つけて死にに行くんですか」

あっ。うーん結構ルリちゃんも抱え込んでいるんだな。よし。ある事をする決意を固める。これをしたら世界中の人に蔑まれるかもしれない。

「きゃう」

かわいい声をルリちゃんが出す。やわからーい。 なんとルリちゃんを抱きしめてしまった。ちょっと恥ずかしい。顔が真っ赤になりそうだ。

「ちょっとカイトさん、何しているんですか」

「抱きしめているんだよ。一生をかけた護りたいものを!」

恥ずかしいのでちょっと声が大きくなる。

「一生って。それって・・・」

「そういうこと。だから君と一緒に歩んで生きたいから。だから君を命を賭けて護ったんだ」

言葉にしてようやく自分の気持ちに整理がついた。僕はこの子が好きなんだ。

「ルリちゃん」

そういって肩に手を掛ける。

「カイトさん」

ルリちゃんも目を閉じる。

そっと二人の距離が近づく。

そして・・・

   グルゥゥゥゥゥ

クルゥゥ

ごめん。おなかが減ってしまった。

仕方が無いだろ。ジャンプして全速で走り回って暗殺者と戦って。

ちらりとルリちゃんの顔を覗くと笑っていた。久しぶりにそれを見た分とても綺麗に見えた。

「やっぱりこういう方がカイトさんらしいです。さっきのキザッタらしいせりふは会長さ にまかしといて下さい」

「やっぱりそう思う?」

「はい」

「そうか」

「そうですよ」

うーん『BOYS BE』の読みすぎか。

「仕方が無い。ご飯でも食いに良くか。これから作りに良くのめんどくさいし」

「そうですねぇ。メニューはお任せしますよ。その前に傷の手当てだけはさせてくださいね」

そういって僕の腕を掴むと自分の綺麗なレースのハンカチを僕の腕に巻いていく。ルリちゃんの手って小さいな。こんなに小さいのにがんばって。そろそろ自分のできる事も始めないとね。

その時ルリちゃんの小さい声が聞こえた。

「キスの続きは・・・また今度にしましょうね」

なんというかこれで今日一日の疲れが飛んだ気がする。

「あとさ、ルリちゃん。さっき部屋に入った時見たんだけどさ。下着はもう少し清楚な奴が結構似合うと思うよ。さすがに紐パンは」

下着は白のノーマルな奴が・・・。

うん?殺気が。えっ怪我してる所に塩なんて刷り込んだら。えっ。消毒。無理っす。遺書の準備がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁ



落ちました。






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