機動戦艦ナデシコ
 
〜天魔疾駆〜
 
 
 
 
『エピローグ』、又は『プロローグ』でも可
 
 
 
<???>
 
 
 「…情けないねぇ、コレが私のムスコとは………」
 
 …誰だ…
 
 「まったく、誰も護れないあげく復讐に走って自分も死ぬとは……情けない…」
 
 ………護る?………誰を?………俺は………
 
 「さっさと起きな! バカムスコ!」
 
 ……誰が“バカ”だ……つーか、その……
 
 「…アンタ誰だよ…」
 
 目の前には黒髪長髪茶眼の女が居た。年齢は………
 
 ガスッ!
 
 「黙れ」
 
 何故殴る…
 
 「女の年齢を調べようなんざ100年早いよ、小僧」
 
 …26の男を捕まえて“小僧”かよ…
 
 「ハッ! 惚れた女一人護れないような男、“小僧”で充分だよ…バカムスコ…」
 
 …余計なお世話だ……つーか、なんだ、その、“バカムスコ”ってのは…俺の知る限り母親なんぞ知らないが…
 
 「…あのなぁ…いくら何でも木の股から産まれた訳じゃないんだから…」
 
 まぁ、そうだな…いや、そうじゃなくて…
 
 「俺口に出してたか?」
 
 「いや、お前が喋ったのは今ので2言目だ」
 
 …その口元を歪ませる笑みはヤメレ…恐いから。
 
 ゴッ!
 
 「誰が恐いって…バカムスコ…」
 
 ………いや、別に誰という訳では………
 
 「さて、自分が誰なのか理解できてるか? バカムスコ…」
 
 …誰か?…決まってる、俺は…おれ…は…
 
 「…カイト………ミスマル=カイトだ…」
 
 間違い無い…ハズ…だよなぁ…
 
 「ふむ、それがお前の名前か、バカムスコ? ミカヅチ=カザマでは無く?」
 
 ………
 
 「いや、両方俺だ。ミカヅチも俺だし、カイトも俺だ。…ただ…俺はカイトとして生きる事を選んだだけだ」
 
 
 
 ―――――彼女を…殺してまで―――――
 
 
 
 「そうか…なら、自分が歩いてきた道は覚えているか?」
 
 …あぁ、覚えてる…結局アキトさんと同じ道を選ぶしかなかった…血塗られた…過去…
 
 「なら少しでいい語って見せろ。お前が体験してきた過去をな…」
 
 …語る…それほどのモノを背負った訳じゃない…ただ…護れなかった…だけ…
 
 
 
 
 
<火星・遺跡内>
 
 
 「南雲…俺の勝ちだ」
 
 『…勝てん…か…跳躍戦士よ…』
 
 「その名で呼ぶな! 俺はカイトだ!」
 
 目の前に浮かぶ夜天光はすでに戦闘能力を失っている。
 
 『…ヤマサキの研究は正しかったようだな…』
 
 「A級ジャンパーの実験か?」
 
 『いや、跳躍戦士の方だ…まさか、失敗作と言われた男が…我ら火星の後継者を倒すとはな…』
 
 …北辰はアキトさんが倒したし、火星の後継者の行動を止めたのはルリちゃんだ…
 
 「俺はお前を止めただけだ…南雲…」
 
 『…確かに…貴様自身が倒したのは私のみ…だが! テンカワ=アキトと協力し、草壁中将の目指した未来を止めた…ましてや、北辰すら倒すほどにテンカワ=アキトを鍛えたのは貴様だろう…』
 
 …ちがう…俺は…ただ見ていただけ…その気になればアキトさんを復讐鬼にさせずに済んだ…
 
 自分の回想を余所に南雲の夜天光や六連が拘束されて行く。
 
 これで、アキトさんも帰ってこれるだろうか…
 
 彼に注入されたナノマシンを無効化する方法は未だに見つからない…ユリカさんも救出した後は体調が優れない。
 
 『まだよ!! まだ終わりはしないわ! ミスマル=カイト!!』
 
 ! シャロン…って、なんですか…そのきどうへいきは…
 
 「おい」
 
 『この完成したパァァフェクト・ダイテツジン…この最強の盾を持った私に勝てると思っているの!』
 
 …いや、盾って…
 
 「まぁ、いいけどさ…結局は多層型ディストーションフィールドだろう…」
 
 徹底的に潰すぞ…それ以前にそのネーミングはどーかと思うぞ…
 
 「全員、攻撃開始! さっさと終わらせる!」
 
 『『『『了解!』』』』
 
 
 
 
 まぁ、こんなモノか…
 
 「シャロン、君の負けだ…と言うか、確かに多層型ディストーションフィールドは堅いが…攻撃力が変わらない以上大した驚異にはならないんだが…」
 
 時間が掛かって良いなら楽に倒せる。シャロン自身の戦闘力も低いし。
 
 『くっ! まだ…まだ終わってないわ! ヤマサキ博士から預かった最後の手段が残っているもの!!』
 
 …ヤマサキの?
 
 …何だ…あのダイテツジン…後部にもう一機エンジンでも積んで…
 
 エンジン? ヤマサキの…研究していた…エンジン……
 
 まさかっ!
 
 「ナデシコ! 緊急離脱! いや、イネスさん! ボソンジャンプで何処か遠くへ! 早く!!」
 
 『カイトさん? 何を?』
 
 「いいから早くしろ! アレは、相転移エンジンめがけてっ!」
 
 『遅いわね…ミスマル=カイト…せめて…貴方の大事なモノだけは貰っていくわ…』
 
 感情の無い声で呟きシャロンの乗ったダイテツジンがボソン光を残して消える。
 
 
 
―――――間に合わない―――――
 
 
 
 
 
<地球・ネルガル総合病院>
 
 
 気が付いた時には地球の病室だった。
 
 「おぉ、カイト君、目が覚めたかね!」
 
 …コウイチロウさん……
 
 「…おれは…」
 
 「…君は火星遺跡での戦闘の後、火星遺跡の近くで見つかったんだ…」
 
 …火星…遺跡…!
 
 「ル、ルリちゃんは! ミンナは!!」
 
 シャロンがやったのは、相転移エンジンの暴走…そして、もう一つのエンジンを使っての大破壊…さらにナデシコの中に跳ぶ事で………
 
 答えは…聞かなくても分かっていた…
 
 「…火星遺跡周辺で見つかったのは…君の機体だけだ…それとて、ただの鉄塊に近かったらしいが…ナデシコにおいては……ブレード部が見つかっただけらしい…」
 
 コウイチロウさんの声が震えているのが分かる。
 
 考えつかなかった…ナデシコが負ける事が…何よりもルリちゃんが死んでしまう事が…
 
 「俺は…俺はっ!! 俺だけがっ!!」
 
 握りしめた手の平から血が流れ出る。
 
 「! カイト君! 落ち着きたまえ!」
 
 「だい…じょうぶ…です。…すみません…俺の所為で…みんなを………」
 
 「………」
 
 部屋を出るまで、コウイチロウさんは黙ったままだった。
 
 
 
―――――まだ…終わってない…ゴメン…ルリちゃん…俺は…まだやるべき事が…在るから―――――
 
 
 
 
 
<一週間後・同病室>
 
 
 「いや、見事にやられたモンだねぇ、カイトくん」
 
 …アカツキ…
 
 「あぁ、まさか、な……相転移エンジンを暴走させた挙げ句にマイクロブラックホールを作り出すとはな…」
 
 未完成のブラックホールエンジンを乗せて居るとは思わなかった。
 
 「ホントにねぇ…アレは危険すぎて研究すらしないモノなのにねぇ…なんで彼女が持っていたのやら…」
 
 疲れ果てた表情で嘆息するアカツキを見れば、ナデシコCが沈んだ後の激務が伺える。
 
 「ヤマサキのモノらしいが…」
 
 表情が驚きに変わる。
 
 「ヤマサキ…って、テンカワくん達に…」
 
 「あぁ、そのヤマサキだ。そして、俺の制作者の名だ…」
 
 「なっ! 君の…いや、そうか、木星プラントの…」
 
 「あぁ、跳躍戦士の研究をしていた男だ…まぁ、それが分かっても…な…」
 
 「…ふ〜…君もかなり堪えてる所悪いが…悪い知らせがある…」
 
 …アキトさん…か?…それとも…
 
 「ユリカさん…か?」
 
 アカツキは表情を消して頷く。
 
 「彼女…テンカワ=ユリカは…後…一週間前後が限界らしい…」
 
 …一週間…早すぎる…
 
 「…ルリちゃん達の事が?」
 
 「あぁ、ボク達のミスだ。すまない、彼女に気づかれてしまった」
 
 体が弱っている所に精神的なダメージ…
 
 「アカツキ…アキトさんは?」
 
 「わからない…ナデシコCが火星の後継者に落とされたと聞いたとたんに…」
 
 「火星の後継者の残存兵力を捜して…か…」
 
 「あぁ、正直彼にはユリカくんの所に戻ってきて欲しいんだが…」
 
 「俺が探しに行こう」
 
 「君が? 分かるのかい?」
 
 …予想ならば…な…
 
 「分かった…カイトくん、テンカワくんの事は任せるよ…」
 
コンコン
 
 「あの、こちらにアカツキさんはいらっしゃいますか?」
 
 「あぁ、ボクだけど…」
 
 「お電話が入っております」
 
 「あぁ、分かった。すまない、カイトくん」
 
 「大変そうだな、落ち目の会長さん」
 
 目が覚めてから動きづらく感じる顔の筋肉を動かしてニヤリと表情を変える。
 
 「まったく…落ち目…ではないよ、今は…ね。ナデシコが落とされた事で、民間では火星の後継者に対する非難が大きくなってね…」
 
 苦笑。
 
 「クリムゾンの方が大変か…」
 
 「そう言うこと」
 
 そう言ってアカツキが病室を出ていった。
 
 みんなが居なくなるなんてな…全部を失ってなお一人生き残るか…
 
 ………ルリちゃん………
 
 ゴメン…約束…したのに…結局…護れなかった…
 
 「…カイトくん…」
 
 アカツキ?
 
 「どうした?」
 
 「…エリナくんが…」
 
 ! まさか…
 
 「やられたよ…クリムゾンと手を組んだバカ共が居たらしい…」
 
 「…副社長当たりか?」
 
 「…あぁ、この状況で来るとは思わなかったよ」
 
 「この状況だから…かもな…なんだかんだ言って、アカツキはナデシコのクルーに甘い所が有るようだしな…」
 
 …だが…エリナさんまでが…
 
 「急に手からこぼれ落ちていくな…」
 
 「すまないが直ぐに行ってくれ。一刻の猶予もないようだからね…」
 
 「分かった…アカツキ、大丈夫なのか?」
 
 「…この借りは…」
 
 「あぁ、そう…だな…」
 
 
 
 
 
<ネルガル・地下ドッグ>
 
 
 『じゃ、カイトくん。テンカワくんを連れて来てくれよ』
 
 アルストロメリアのコクピットにアカツキからの通信が入る。
 
 「あぁ、必ず。アカツキ、そっちこそ気を付けろよ…クリムゾンの爺さんはまだ何か企んでるぞ…」
 
 ウィンドウの向こうでは経営者の顔を止めて口元を歪めるアカツキが見える。
 
 ……心配いらないか…あのジジイ…誰にケンカ売ったか分かってるのかね…
 
 プロスさんとかが居れば、もう少しアカツキも楽なんだろうが……
 
 「では、な…ジャンプ」
 
 
 
 
 
<火星地下・ユーチャリス内>
 
 
 【ボソン反応】
 
 【機動兵器ボソンアウト】
 
 【アルストメリアと確認】
 
 【パイロット・ミスマル=カイト】
 
 無人のブリッジに警告標が現れては消える。
 
 『…ユーチャリス…アキトさん聞こえてますか? 応答願います!』
 
 その声を聞く者も居ない。
 
 『ダッシュ? アキトさん? ラピスちゃん?』
 
 【お久しぶりです。カイトさん】
 
 『!ダッシュ! アキトさん達はどうした!?』
 
 【マスターとラピスは】【眠っております】
 
 ………まさか………
 
 『ダッシュ! 二人は…眠ったのか…』
 
 【はい、カイトさん。格納庫へ】
 
 『あぁ』
 
 
 
 
 
<ユーチャリス・ブリッジ>
 
 
 「………」
 
 目の前に一人の男と一人の少女がうつ伏せで倒れていた。
 
 二人をユーチャリスに備え付けてある医療カプセルに寝かせると、ブリッジで二人の体調を調べる。
 
 …アキトさん…ラピスちゃん…
 
 「ダッシュ、二人が倒れたのはどれほど前だ」
 
 【30分前です】【アナタが来てくれて助かりました】
 
 「二人のカルテか何かはあるか?」
 
 【いえ、マスターはそれらを全て消していましたから】
 
 ………あの様子では長くは持たないだろう……アキトさん…せめて…
 
 「ダッシュ! ネルガルにジャンプするぞ」
 
 【お二人を会わせるのですか?】
 
 「…あぁ、時間が…無い…からな……」
 
 【了解しました】【準備完了】
 
 「ジャンプ」
 
 
 
 
 
<ネルガル総合病院・テンカワ=ユリカ病室>
 
 
 「! カイト君! それに!」
 
 病室にはコウイチロウさんが居た。
 
 ユリカさんのベットの横にもう2つベットを置く。
 
 「………」
 
 「アキトくん……それに…この子は…」
 
 「ラピス=ラズリ…アキトさんの目であり、耳であり………全ての身代わりをしていた子です…」
 
 ユリカさんの隣にアキトさんを、さらにその隣にラピスちゃんを横にさせる。
 
 生憎と…アキトさんとラピスちゃんのリンクを切る手段は分からなかった。
 
 イネスさんなら分かっただろうが………彼女もナデシコCと共に行方不明である。
 
 「アキトさんが亡くなる時に…おそらくラピスちゃんも…」
 
 「…リンク…か」
 
 「はい、死という無に意識を持って行かれるでしょうね…」
 
 また…護れない…失って行くしか…無い…
 
 「………ト…」
 
 !
 
 「ユリカッ!」
 
 「…あれ…おとーさま…ここ…あ…びょう…いん…?」
 
 「ああ! そうだ! 分かるかユリカ!」
 
 「…ごめんな…さい…ねむ…い………」
 
 眠った…か…
 
 「起きている時間が短いですね…」
 
 「………うむ………カイト君…ココを頼んでいいかね…」
 
 「? 構いませんが…何を…?」
 
 コウイチロウさんは優しく微笑みながらユリカさんの頭を撫でる。
 
 「………せめて…静かに眠らせてあげたいからな…無粋者を黙らせてくるとしよう…」
 
 ………クリムゾン…火星の後継者…ネルガルのバカ共………
 
 「…お気をつけて…お義父さん…」
 
 「!…うむ、行って来る!」
 
 まただ、また…手を差し伸べない…気絶させてでも行くのを止めれば…助かるかも知れないのに…
 
 
 
 
 
<同室・半日後>
 
 
ピーーーーーー………
 
 無機質な音が病室を叩く。
 
 アキトさんの…心臓が止まった。
 
 「………アキトさん………」
 
 結局目を開けることなく…眠りについた…兄…
 
 
 
 「これからよろしくな、カイト!」
 
 「ゆっ、ユリカッ! 余計なことを! って、何処向いてるんだよ! カイト! ルリちゃん!」
 
 「なぁ、カイト…俺…結婚するよ」
 
 「お前はルリちゃんに告白しないのか?」
 
 「あははは! ルリちゃんの事、大切にしろよ!」
 
 「お前の知っているテンカワ=アキトは死んだ…」
 
 「…カイト…いつか…又あの日を…取り戻したいな…」
 
 「カイト…みんなを…たのむ…」
 
 「…カイト…」
 
 
 
 記憶を失ってナデシコに現れた俺を友と言ってくれた…
 
 ユリカさんに誘われてミスマル家の養子になった自分を変わらず…いや、親友として、弟として…必要としてくれた…
 
 全てを失い…復讐鬼となり…それでも…隣に居ることを許してくれた…
 
 復讐が終わった時に、あの日々…アキトさん、ユリカさん、ルリちゃん、自分…4人で暮らした時に帰りたいと言った…
 
 …アキトさんは…何も…悪くなかったのに…図に乗ったバカ共が………
 
 アキトさんの手とラピスの手を…そしてアキトさんとユリカさんの手をつなぐ。
 
 …ユリカさん…
 
 「………ん………」
 
 ! 起きる!?
 
 「…あれ…カイトくん…?」
 
 目を薄く開いて呟くように喋るユリカさんの側に行く。
 
 「はい、おはよう…ユリカさん…」
 
 「…うん…おはよ…あ、あれ…ア…キ…ト?」
 
 「えぇ、アキトさんですよ…今は…疲れて眠ってますけど…」
 
 ユリカさんは嬉しそうに微笑む。
 
 「えへへ…アキトだぁ…アキトォ………あれ、向こうに居るのは…?」
 
 「ラピスちゃんです。アキトさんを手伝ってくれてたんです」
 
 「そっかぁ………ねぇ…カイトくん…」
 
 「? なんです?」
 
 「これってぇ……親子みたいだよね…アキトがお父さんで…私がお母さん…ラピスちゃんが長女…どう?」
 
 ………ユリカさん…アナタは………
 
 「そうですね。そうすると俺は…ラピスちゃんのオジさんですか…」
 
 わざとらしく肩を落とす。
 
 「あはは〜…オジさんだね〜…あ、そうすると…ルリちゃんがオバさんだぁ…」
 
 ! 記憶が…無い…いや、否定したい一心で自ら消したのか………
 
 「…ダメですよ、ユリカさん。そんなことルリちゃんに言ったら怒られますよ」
 
 ………俺は…上手く笑えてるだろうか………
 
 「………そうだね………ねぇ、カイトくん…ルリちゃんに告白した………?」
 
 ………
 
 「いえ、まだです。何か、一緒に居るのが普通みたいになっちゃって…」
 
 ………もう…ルリちゃんは………
 
 「ダメだよ〜…ちゃんと言ってあげなくちゃ……いつか…みんなで…りょこ…う……に………」
 
 「ユリカさん?」
 
 心音が…小さく…なる…?
 
 「……いこ…う…ね………ごめ…ね……か…とく………あ…と…いま……いく…よ………」
 
 ………ユリカさん?………
 
 ………
 
 ……
 
 …
 
ピーーーーーー………
 
 ………あ……あぁ………ああああぁぁぁああぁぁぁあああああああああああ!!
 
 
 
 「ん〜君の名前はね〜…カイトってどうかな?」
 
 「アキトッ! だ〜い好き!!」
 
 「ありがとね、カイト君………きっとアキトが居なかったら……でも…私はアキトが居たから私になれたの………だから…ありがと!」
 
 「もう! お父様のわからずや!! アキトは馬の骨じゃありません!」
 
 「カイト君! 何時になったらルリちゃんに告白するの!」
 
 「あれ〜…みんな老けたね〜…」
 
 「カイト君…ルリちゃんを守ってあげてね…」
 
 「…カイト君…」
 
 
 
 亡くなる………無くなる………ナくなる………全部………全部………護ると…約束したモノが………ぜんぶ………
 
 なんで…どうして…掴めない…この手は…何も………
 
 あああぁぁぁああぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁあああああああぁああぁあああぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
 
 
 
 
 
<???>
 
 
 「…それで…俺は…」
 
 「激情に任せたまま殺戮の限りを尽くした…と」
 
 ………
 
 「どれだけの民間人を巻き込んだかね…」
 
 ………
 
 「このバカムスコが…殺すなら軍人だのクリムゾンだの火星の後継者だけにすりゃいいものを…」
 
 「………あぁ…そうだな…それで…良かったのにな…」
 
 「まったく…このヘタレ!」
 
 …あ?…
 
 「ヘタレヘタレヘタレ」
 
 「…やかましい!」
 
 「好きな女に告白も出来ずとは…母は悲しいぞ…」
 
 目元に袖を添え涙を拭く…マネをする…
 
 「言ってろ…で、ココは何処だよ…」
 
 「冷たいねぇ……ま、いいや、ココは………知らん」
 
 ………
 
 「………」
 
 ………おい。
 
 「なんだ? バカムスコ」
 
 「ココに住んで居るんだろう?」
 
 「当たり前だ。お前だってココに居るだろうが」
 
 「何で分からないんだよ」
 
 「分からんモンは分からん」
 
 ………
 
 「まぁ、それは置いといてだ。俺の母親ってのはマジですか」
 
 「なんだ、まだ信じてなかったのか。事実だ」
 
 「証拠は?」
 
 女は顎に手を置き数秒考えた後に一言。
 
 「ない」
 
 ………
 
 「なら何故俺が息子だと?」
 
 「ココに来たからだ」
 
 ………詳細説明願います…イネスさん……
 
 「あのな…イネスを呼んだら呼んだで嫌がるくせに…」
 
 当たり前だ。あの説明地獄にハマる気は無い。
 
 「まぁ、いい。とりあえず、お前が産まれた辺りからいくか?」
 
 あい。
 
 「何というか…私はお前達の言う所の古代火星人だ」
 
 …ほう…
 
 「でだ、とある理由から私はボソンジャンプが出来ない体になってね」
 
 …なんでだ? ボソンジャンプってのは古代火星人が作ったんじゃないのか?
 
 「アホ。とある理由と言っただろう。言う気は無いがね」
 
 …さ、次々。
 
 「…お前…。で、私は妊娠した」
 
 …相手誰だよ…つーか、話がみえん…
 
 「別に相手が誰か…何てのは関係ないから捨てていくよ」
 
 捨てるなよ…旦那だろ。
 
 「で、産まれた途端にお前はジャンプしちまった」
 
 無視か………は? ジャンプ? 産まれた途端?
 
 「あぁ、で、お前が出た所が…」
 
 ヤマサキの研究所…か…
 
 「そうだ、それを見たヤマサキがお前を使って跳躍戦士とやらを作ろうとしたわけだ」
 
 …じゃあ、イツキは?
 
 「あの子は………まぁ、気にするな」
 
 …おい。
 
 「お前がジャンプしたってのは理由が一応ある」
 
 ほう。
 
 「お前は…先天的天才ジャンパーだった」
 
 …えーと……天才ってのは…常に先天的なモノかと…
 
 「ウルサイ黙れ…先行くぞ、お前らはA級だのB級だのとランク付けしてるな」
 
 あぁ、俺はA級だったはず…
 
 「A級ってのはジャンプするのにチューリップクリスタルとか名付けたアレが必要だったろ」
 
 うむ。
 
 「お前はソレが必要ないんだ」
 
 …でもジャンプした時には消費したぞ?
 
 「あぁ、例えるなら…外部電源ってヤツだな」
 
 …は?
 
 「つまり、お前の体の中にあるナノマシン…というか、遺伝子レベルでナノマシンが融合している。故にお前はCC無しでジャンプ出来る」
 
 …うそ…
 
 「マジ。まぁ、ジャンプする毎に体力消費するけどな」
 
 …つまりCCが有ることで疲れなくても済んだ…って事か?
 
 「そう言う事。まぁ、私が変わり種だからね…お前がそういう訳分からない存在になる事もあるだろ」
 
 古代火星人なら出来る芸じゃないのか?
 
 「芸…って、お前。やっぱり私の息子だねぇ。答えは出来ないよ。彼らは…A級って所だろうね。さしずめお前は…特A級かS級って所か」
 
 …また、無茶苦茶な…
 
 「現にお前はジャンプする時にはイメージングの時間が桁外れに短かったろ」
 
 確かに。
 
 「それが、天才たる理由だな。イメージングが上手く出来ないヤツはジャンプすら出来ないんだからな。更に言うなら、お前はジャンプアウト時のズレが0にもっとも近い、まぁ、コレも理由の一つになるか…」
 
 …そう言われてもな…特に気にした事なかったし…
 
 「ま、気づいたのはルリちゃん位だろうけどね…」
 
 …そうなのか?
 
 「まぁ、産まれたばかりのお前が跳んだ理由は…産まれたショックでお前の持つ才能がいきなり起動した…こんな所だな。何か聞きたい事はあるか?」
 
 納得しきれんが…最初に戻るけど、ココは何処だ? それに…俺はどうしてココに居る?
 
 「ふむ、最初に言ったけど、ココが何処か…ってのは、分からない。時空の狭間か地獄か…それとも…天国か…」
 
 …天国だけは無いな…
 
 「? なんで、私が天使に見えないってか?」
 
 いや、殺戮をしたヤツが行けるほど気楽なトコじゃないだろ…少なくとも…さ。
 
 「あぁ、そりゃそうだ。じゃ、二つ目だけど…アンタがジャンプアウトしたからさ」
 
 …ジャンプした記憶ないんですけど…
 
 「無意識で…だろう? 無意識だからこそ、ココに来れた…か」
 
 …親を…求めたって?
 
 「ま、そんなトコだろ。どうせ無意識下じゃ覚えてないだろうし、考えるだけ無駄だな」
 
 …それは…まぁ、いいや。それで俺は…どうすれば良い?
 
 「好きにしろよ。お前の人生だ…とは言え…あの世界に帰るべき場所は無い…か…」
 
 まぁ、帰っても…殺戮を繰り返すだけの様な気もするが…
 
 「ま、あそこでお前と一緒に居た…アカツキだっけ…彼も死んだらしいね…」
 
 ! な…に…
 
 「お前が無意識ジャンプするのと同じ時間に…火星の後継者の暗部に殺られたね…」
 
 ……これで…ナデシコのクルーみんな…
 
 「………そうだ! 遊んでみるかい?」
 
 ? 遊ぶ?
 
 「あぁ、ココからならお前のジャンプ先を指定出来る。さらにお前は今精神体だからね…過去に向かって跳ぶことだって簡単だ」
 
 …遊ぶってそういう意味かよ…大体ジャンプ出来ても体が………つーか、俺精神体だったのか?
 
 「そうだよ、事実お前…喋れなくなってきてるだろ。ココから出れば、一発であの世行きだね」
 
 …まぁ、いいや。それで、何処に行くんだ?
 
 「ん〜何処が良いかね…体があれば前回と同じ様にヤマサキの研究所で良いんだろうけど…」
 
 …それはイヤ…つーか、その…モニターは何だ…
 
 「あ〜、まぁ、コレでココ以外の世界を見れるんだよ。見れるだけだがね」
 
 …あ…そう…
 
 「お! コレなんてどうだ? 戦闘用マシンチャイルド! 火星のクリムゾン研究所だ」
 
 …MCか…まぁ、それはともかく…そんなの居たのか? 聞いた事ないが…
 
 「お前の世界の歴史なら…失敗してるな。ましてや、火星研究所も火事で無くなってる」
 
 …俺がソコに行くとして、ミカヅチは…どうなる?
 
 「…さて…ね…」
 
 なら!…イツキは…
 
 「…あの子は…お前に引きづられるんだ……どうなるかは分からん…」
 
 ………
 
 「…それと…お前のS級ジャンパーの能力がどうなるかも分からん…」
 
 …まぁ、それは当然か…肉体が違う訳だし…
 
 「どちらにせよ…A級のジャンパーで在る事には変わらんがね…」
 
 …さよけ…
 
 ……しかし…やり直すって事…か?
 
 「ま、そうだね。かつての知り合いはお前を知らないし、逆に辛いかも知れないが…」
 
 ………
 
 「やめるか? お前の存在は…可能性でしかない。ある意味…バグなのかも知れないね…お前は…」
 
 …いや、まぁ、可能性でも、バグでも良いけどさ……
 
 「そうか? まぁ、お前が行くのは単純に過去だけどな」
 
 …俺が過去に行ったとして、今まで居た世界はどうなる?
 
 「どうにもならん。…そのまま時間を刻んで行くさ…お前が跳ぶ事で世界が増える…そう考えろ…どうせ、ボソンジャンプでは平行世界に行ける訳じゃないしな」
 
 …そうなのか?
 
 「当たり前だろ…あくまでも跳んだ後に世界が増えるか、増えないか…それだけの差だ」
 
 ? 跳んだ後に出るのは平行世界じゃ…ない?
 
 「ああ。普通に過去に向かって跳んでもソレは正史にしかならん。ただ…過去の自分に未来を教えたら…どうなる?」
 
 …違う行動を取る可能性がある…か…
 
 「そう、違う行動を取った瞬間に歴史が分岐する訳だ」
 
 だが、未来を教えるなんて…
 
 「普通は無理だ…過去の自分に接触するのは…あらゆる事象に置いて…禁忌だからな」
 
 …禁忌?
 
 「正直どうなるか分からん」
 
 …分からないのか…
 
 「うむ」
 
 じゃ、未来に向かって跳ぶと?
 
 「未来に向かって跳ぶのは問題ない…と言うよりも、ソレが正しい使い方なんだよ。…これは噂程度の話だが…過去に跳んだら…」
 
 ………
 
 「自己の消滅もあり得る…らしい」
 
 …消滅かよ…て、さっき“禁忌”とか言ってなかったか?
 
 「ああ、そうだ。故の“禁忌”なんだろう。? それに、私達は決して過去に向かって跳ばないからな。…そもそも、時間ってのが人間にどれほど友好的かは知らん。だから…時間に歪みを与える存在は…」
 
 …消えるのみ…って?
 
 「ああ。どういう訳かは分からんがね。事実、私ら古代火星人もそれで消滅した連中が居るらしい…」
 
 …らしい…って、知らないのか?
 
 「もしかしたら、生きてるかも知れんが、還って来た連中が居ないからな…」
 
 …マテ…じゃあ、俺はどうなる?
 
 「言ったろ…お前は天才ジャンパーだって…たぶんお前は…時間の流れを無視できる…だからこそのS級なんだろうさ…」
 
 …たぶん…かよ…
 
 「ま、良いじゃないか。失敗して、消滅しても失うモノなんぞ有りはしないんだ」
 
 …まーそれもそうか…イヤ…マテ…
 
 「あん?」
 
 アキトさんはどうなる? 彼は過去に向かって跳んだ事が在るハズだ…
 
 「あー、そういやそうだったな。だが、彼は間違った…いや、ジャンプアウトした後の行動で自己消滅に繋がる行動をしなかった…だから…だろうな」
 
 …過去の自分と会ったりとか?
 
 「そうそう」
 
 …だが…さっきの説明から行くと色々破綻が無いか?
 
 「まぁ、そうなんだが…私達も全てを知ってる訳でも無いからな。…まぁ、アレだ。過去に向かうボソンジャンプは使うなって事だ」
 
 適当に言いやがって…
 
 「ま、気にするな。お前は無事に行くから」
 
 …それは、何処から来る自信なんだか…
 
 「私の息子だ。その程度で消滅する訳無いだろう!」
 
 ………何も言うまい………
 
 「さて、話を戻そう…お前はどうする?」
 
 ………過去…か…
 
 「そうだ…もっとも…ミカヅチと呼ばれる存在が私の息子である以上は…お前と同時に存在する可能性もあるが…」
 
 …ソレは、アンタの息子として…か?
 
 「さて…ね。私の息子は恐らく同時間上に多重で存在は無理だろう…どちらにせよ、お前とは別の人間だ。気にする必要あるまい。」
 
 …そう…か………
 
 「………」
 
 ………
 
 
 
 「カイトさん! やくそく…ですよ…ちゃんと守って下さいね♪」
 
 
 
 ………ルリ…ちゃん………そう…だったね………約束…した…から………
 
 「…決まったかい…バカムスコ…」
 
 …あぁ…
 
 「ふぅん……止めとくか?」
 
 …バカ言ってろよ…答え…分かってるんだろうが…
 
 「まぁな…私のムスコだしな…違う答え出したら、この場で殴り倒してるよ…」
 
 …この女は…
 
 「で…良いんだな…」
 
 あぁ…守らなきゃいけない約束があるからな……みんなを…今度こそ…失わない為に…
 
 「…バカムスコ…あくまでも自分の為か…」
 
 …あぁ、俺は…ルリちゃん達の笑顔が好きだから…だから…
 
 「…あいよ…ま、好きにやってきな。次来る事があるならせめて寿命でくたばってからにしな!」
 
 ………それが息子に対して言う言葉か………
 
 「当然! それはさて置き…分かってると思うけどナデシコAの時代からお前が居る事で歴史がどうなるか分からん」
 
 …あぁ…
 
 「だから…好き勝手に暴れてきな! お前は私の子だ…私にはココから見る事しか出来ない。だから…見ててやる…どんな結末でもな…」
 
 
 
―――――それが、私の役目だ―――――
 
 
 
 ………あいよ…テキトーにやってくるさ………ココには二度と来ないだろうけどな………
 
 「…じゃあね! カイト!」
 
 ! あ? …あれ…俺は…アンタを…知って…
 
 「ちゃんと掴むのよ…あの子を…」
 
 …あ…あぁ、それじゃあな…かあさん…
 
 「!」
 
 
 
――――――――――ありが…う………キ…――――――――――
 
 
 
 
 
0話へ
 
 
あとがき(鬼嫁と)対談
 
???:おい…
 
Tasqment(以下Tas):はい?
 
???:死んでるぞ…
 
Tas:…死にましたね…見事に全員…
 
???:鬼か…お前は…
 
Tas:いや、鬼はアナタ……
 
???:あ?
 
Tas:いえ、何でも…
 
???:しかし…良いのかコレで? つーか、掲示板に置いたアレと随分違う気が…
 
Tas:は? 何のことでしょ?
 
???:………
 
Tas:まぁ、とりあえず…走り出して…この後が…続くといいなぁ…
 
???:続けられないの…?
 
Tas:…ネタが続く限り書きますけどね。いや、当分はTV版を追う訳ですが。
 
???:まぁ、せいぜい無い知恵絞って努力して見せなさい…
 
Tas:あい。ま、アンタは2度と出てこないと思うけどね。
 
???:………まぁ、良いけどね。そういや、こういう対談形式ってさ…
 
Tas:?
 
???:大概の作者が殴られるんだけど…
 
Tas:………つ…次のあとがきにも出て頂けますでしょうか(汗)
 
???:ん、期待しとく。それはそうと…本編の中でも言ってるけどな…
 
Tas:ハイ?
 
???:今回でカイトがS級?ジャンパーだって事は分かったが…
 
Tas:ふむ、何か問題が?
 
???:精神体なんだろう? 過去に…と言うか、MCの体に跳んだら…この特殊能力はどうなる?
 
Tas:そのまま継承する。
 
???:出来るのか? だって、DNAレベルでの書き換えされた結果だろ?
 
Tas:まぁ、そうなんだけど。とりあえず、遺跡のユニットはカイトの精神に対してS級の能力を認識してるんですわ。
 
???:それにしても無理がないか?
 
Tas:なにより、肉体は精神に支配されますから、死んで魂の無いMCにカイトが入る事で、MCの体がカイトの体に書き換えられるんです。
 
???:分かりにくい…まぁ、能力は継承される…って事で良いのか?
 
Tas:あい。まぁ、御都合の固まりですから、余り気にしない方がいいかと…
 
???:あ、そ。で、次回が……何コレ…0話って?
 
Tas:いや、プロローグが今回だし…
 
???:………で?
 
Tas:TV版の1話をコレの1話に合わせたいし…
 
???:アホ…まぁ、コレは捨てといて、0話でお会いしましょう(微笑み)
 
Tas:(この人が誰か分かってくれる人居るんだろうか…キャラクターが全然違うけど…)
 
 
ホントにあとがき
 
 とりあえずプロローグ終了ー。
 
 …カイト×ルリなのに…B3Yでユリカルートってどーしたもんよ…。
 
 ま、それはさて置き、鬼嫁につっこまれた通り、すでに無理がでてます…いや、この辺は限りなく御都合なんで、ツッコミは…てきとーにお願いします。
 
 つーか、“ぶらっくほーるえんじん”て何さ自分………。さらには…シャロンて…ジャンプ出来たっけか?
 
 むぅ…ま、その辺はオリジナルって事で……さて、次は火星研究所編…というか、子供編…でしょうか…。
 
 あ〜ミカヅチやらラピスやらどうしますかねー。これで…SS版のシナリオの1つは使ってしまいましたし…。
 
 うぅむ、ま、気長に行きませう。
 
 でわでわ、これより0話を書きはじめますー。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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