ただっ広い墓地に鐘の音が鳴り響く。
そこに彼はいた。
サングラスで顔を隠し白いマントに身を包んだ青年。

「カイト……くん」

「今日は……三回忌でしたよね……」

白百合の花束を抱えイネス・フレサンジュの墓前に立っている青年。
それはルリが間近で見る2年ぶりのカイトの姿だった。




第7話「異端なるモノ達への『挽歌』」





2201年8月20日午前8時 八王子霊園




カイトはカサブランカの花束―どう考えても墓参りに持ってくる花ではない―をイネスの墓前に無造作に捧げてしばし黙祷した。
それぞれ持ってきた花束と線香を捧げルリとミナトもそれにならう。
ややあって、ルリが口を開いた。

「早く気づくべきでした……」

「え?」

「あの時、死んだり行方不明になったのはアキトさんや艦長、イネスさんだけではなかった」

ルリの脳裏にアマテラスでハーリーの入手したデータが鮮明に甦る。

「ボソンジャンプのA級ランク、目的地のイメージを遺跡に伝えることの出来る人、ナビゲーター」

ずらりと並んだA級ジャンパーのリスト。

「彼らはみんな、『火星の後継者』に誘拐されていたんですね」

「誘拐!?」

「そうだ。2年前、木星プラントにも奴等が来て僕も移送された。アキトとユリカにはあいつらの実験施設で再会した。……手放しでは喜べなかったがな」

驚くミナトを尻目にカイトは皮肉げにルリの問いかけを肯定した。

「この2年あまり、カイトさん達に何が起こっていたのか私は知りません」

書かれていたのはことごとく『失敗』、『死亡』、『廃棄』の文字。

「知る必要は無い。あまり愉快な昔話でもないしな」

淡々とした返答、そこに感情を感じ取ることは出来ない。

「私も知りたくありません。でも、どうして……」

一度言葉を切る。かすかな迷いの後、もっとも聞きたかった問いかけをした。

「どうして教えてくれなかったんですか?生きてるって……」

わずかな希望にすがるような質問をカイトにぶつける。
何故すぐにでも自分の元に来てくれなかったのか。
自分達は家族ではなかったのか。
会う事はかなわなくともせめて、生存を伝えることが出来たのではないか
納得は出来なくとも理解できるだけの返答が返ってくることを期待しての質問。
しかし、その期待はあっけなく裏切られた。

「教える義務があるとでも?」

数秒間の沈黙の後に訪れた返答は酷く簡単だった。
自分達は『家族』だと、たとえ半年にも満たないゴッコ遊びのようなものでも。
そう信じてきたルリの想いは簡単に踏みにじられた。

「……そうですか」

ルリの言葉と同時にパァンという肉を叩く音が景気良く人気の無い墓地に響いた。

「あんた、何てこと言うのよ!!」

ミナトの平手が飛んだ。以前から溜まっていたカイトへの怒りが爆発したのだろう。

「それでよくあの時この子のことが好きだなんて言えたわね!」

相当強い力で叩いたのだろう、カイトの頬はおろか叩いたミナトの手すら赤くなっている。

「あやまりなさいカイト君!あやまって!!この子はね、カイト君のことを今でも……」

詰め寄るミナトの眼前に左手で構えたコルトガヴァメントが突き出される。

「カ、カイト君?」

さすがに銃を抜くとは思っていなかったのだろう、ミナトがたじろぐ。
しかし、カイトの意識はすでに別の人物に集中している。
墓参りを邪魔する無粋な敵に。
ゆっくりと体をイネスの墓から真横にずらすとそこに奴は居た。
編み笠のかぶり時代がかった男。

「迂闊なり、ミカズチ・カザマ。我々の手元に戻ってきてもらおう」

左目に義眼をはめた男、北辰がそこにいた。

「な、何アレ?」

「二人ともお墓の前から動かないで」

「へ?」

ミナトのもっともな質問には答えず銃を構えたまま前進するカイト。
ちょうど北辰とイネスの墓の中間地点で足を止める。北辰は動かない。
そのまま無造作に発砲する。
一発、二発、三発……静かな墓地に不釣合いな銃声が響き渡る。
弾丸は全て北辰に命中、しかしことごとく弾かれる。
七発目の弾丸を撃ち終わるとすかさずカイトは弾倉をイジェクト、そのまま左袖から滑らせて取り出した新たな弾倉を器用に空中でセットし太股にグリップの底を叩きつけ装填する。

「重ねて言う、一緒に来い。我らの手元に戻ればいくばくかの余命を与えてやることも出来よう」

「草壁がご執心だった瓢、アレには人の血を吸わせてまで育てる価値は無い。あんな物の為に他者を踏みにじる人間の手駒になるつもりは無いね」

「聞く耳持たぬか……。仕方あるまい、手足の一本は構わん」

その言葉を合図にカイトを中心に突然出現した六人の男が正六角形を描くように彼を取り囲んだ。
しかし、当のカイトは囲まれていても表情を変えずヤレヤレとため息をついた。

「結局、力押しか……」

「ヤマサキ博士直々の御指名でな。……どのみち手足の一本や二本、もがれたところで死ねるほど可愛げのある身体ではなかろう?」

「カイト君!」

背中にミナトの心配気な声がかけられる。
彼は囲まれていても北辰から視線を外さず答える。

「あなた達は関係ない。さっさと逃げて下さい」

「……こういう場合、逃げられません」

「そうよねぇ〜」

ルリの言葉にミナトも呆れながら同意する。

「女は?」

「殺せ」

「小娘は?」

「あやつは捕らえよ」

彼等にしても取り逃がすつもりはさらさら無いのだろう、余裕たっぷりにカイトを包囲しながら話している。

「ラピスと同じく金色の瞳、白銀の髪。人の技にて生み出されし白き妖精、地球の連中はほとほと遺伝子細工が好きと見える」

獲物を前にしたハンターのように嬉しげに目を細める北辰。

「汝は我が結社のラボにて栄光ある研究の礎となるがよい」

彼の表情を見てルリは確信した。

「あなた達ですね、A級ジャンパーの人達を誘拐していた実行部隊は」

「そうだ」

「……ひとつ、質問がある」

ルリと北辰の会話に割り込むようにカイトが口を開く。

「アマテラスで見たとき遺跡とユリカのマッチングはほぼ完璧だった。今更、僕を連れていって何の価値がある?」

北辰は答えない。
しかし、その沈黙がカイトにとって答えになった。

「……なるほど、今度はイツキがごねたか」

「斬!」

北辰の言葉を合図にカイトを取り囲んだ6人が彼を中心に回り始める。

「『傀儡舞』本来は暗殺時に使われる型か……」

さして慌てる様子も無く銃を懐のホルスターにしまう。

「一人の人間を中心に高速で回転し、不規則な動作で何処から攻撃が飛んでくるかわからない。……まさか、これを機動兵器で再現するとは思わなかったけど」

アマテラスでの戦いで六連が見せた一連の動きを思い出す。

「その動きは武闘にして舞踏。傍目から見ているとさながら絹糸傀儡、つまりマリオネットに囲まれているように見える、というのが名前の由来だっけ?」

六人衆の描く円はなおも速度を増し、徐々に狭まってくる。

「ふ!」

刃が届くほど円陣が狭まり波状攻撃を仕掛けようとしたその瞬間、突然カイトが動いた。

「な!?」

六人衆の一人に肉薄、凄まじい音をたてながらカウンター気味に男の喉を掴む。
そのまま相手の足を刈り、地面へ叩きつける!
受身を取ることすら許されず北進六人衆の一人、烈風は後頭部から石畳へと落下した。
相手に先制されるとは思っていなかったのだろう、残りの5人は慌てて足を止め、包囲した円陣を広げたところで立ちすくんでいる。

「うそぉ〜!」

ミナトが声を上げる。彼の機動兵器の腕前は知っていたが、まさか生身でこれほど強いとは思わなかったのだろう。
これでも彼はゴートを投げ飛ばしたこともあるのだ。

「体調が万全なら結果も違ったろうけど、一昨日のダメージが抜けきっていない人間を混ぜておくのは感心しないな」

「そこまでだ。調子にのるな、殺人傀儡」

ゆっくりと振り返るとそこには白刃を突きつけられたミナトとルリの姿が。

「大人しく縛に着け!」

二人を人質に取りながら六人衆の一人が声を荒げる。

「……ひとつ、警告しておく」

包囲され、人質をとられているにも関わらずカイトの声に変化は無い。
それどころか絶対的に優位な立場にいるはずの六人衆の方が圧力を感じていた。

「その娘を傷つけてみろ、お前が彼女を殺す前にオレがお前を殺す」

六人衆には目もくれずルリを見つめたまま言葉を発する。
当のルリは人質になっているというのに表情に変化は見られない。

(この辺の所は相変わらずというかなんというか……)

彼女を見ながらカイトは心の中で苦笑した。
要するに『自分に構わず戦え』というところなのだろう。

「……あたしのことも助けてくれると嬉しいんだけどな〜」

冷や汗を垂らしながらミナトは控えめに自己主張した。
状況に反して口調に焦りの色は見られない、やはりナデシコクルーは色々な意味で常人とは違うようだ。

「止めておけミカズチ、未完成品たる貴様では人質を見捨てるほど非情にはなれん。我々は『火星の後継者』の影。人にして人の道を外れたる外道」

『全ては新たなる秩序のため!』

勝ちを確信した北辰の台詞を六人衆(一人は石畳にめり込んでるけど)が一斉に言葉を繋いだ。

「ハッハッハッハッハッ!」

彼等の台詞を嘲るような笑い声。

「何!」

北辰の振り返ったその先に居た人物は……。

「新たなる秩序、笑止なり。確かに破壊と混沌の果てにこそ新たなる秩序は生まれる。それ故に産みの苦しみ味わうは必然」

白い優人部隊の制服を身にまとった長髪の男。

「しかし、草壁に徳なし」

「久しぶりだな、月臣元一郎。木星を売った裏切り者がよく言う……」

「そうだ。友を裏切り、木星を裏切り、そして今はネルガルの犬」

言葉と同時に出現するその数30は楽に越えるだろうという黒服の集団。
ネルガル会長室警備部第三課。通称ネルガルシークレットサービスの皆さんだ。
一斉に拳銃と日本刀を構えるシークレットサービスの面々。

「隊長!」

「慌てるな、人質はいまだ手元にあろう」

取り乱す部下を一喝する北辰。

「ミカズチにこだわり過ぎたのが仇となったな、北辰。ここは死者が眠る穏やかなるべき場所。おとなしく投降せよ」

「しない場合は?」

「……埋葬の手間が省ける」

あくまで余裕の態度を崩さない北辰に月臣はきっぱりと言い放った。

「そうかな?」

北辰の意図を明確に汲み取った部下の一人がルリとミナトに凶刃を振るうべく迫る。
しかし、それと同時にイネスの墓がせり上がった。
墓の中から出現した大柄な男は迷うことなく六人衆の一人にマシンガンを発砲、弾丸自体は弾かれるも衝撃を完全に緩和することは出来なかったようだ。
苦悶の表情で後退、今だ石畳ににめり込んでいる一人を引き抜きつつ他の4人と共に北辰の下へ集う。

「久し振りだなミナト」

「そ、そうね、ハハハ……」

墓から出現したのはゴート・ホーリーその人であった。
信じられない面子との再会が三連続で続くとさすがに笑うしかないミナトだった。

「形成逆転、というやつだな」

月臣の言葉には勝ち誇るような感情は無い。淡々と事実を伝えているだけだ。

「そうでもない」

突如、北辰の周りの景色が歪む。
歪みが収まった時、そこには彼の愛機、夜天光が出現していた。

「光学迷彩か!」

ゴートが苦々しげにつぶやく。

「なにも貴様等の専売特許というわけでもあるまい?形成逆転、この言葉はそっくりお返ししよう」

再び勝ち誇る北辰。
シークレットサービスの面々にも動揺が走る。
あくまでも得物は対人戦装備で機動兵器を相手にするには火力が足らなすぎる。

「止めておけ、北辰」

一人、まったく動じていないカイトが呼びかけた。

「『火星の後継者』は決起から一月と経たずホシノ・ルリ少佐率いる独立ナデシコ部隊に鎮圧される。これは推測でも予言でもない……『歴史』だよ」

「戯言を……」

この状況ではカイトの台詞も負け惜しみと取られても無理もないだろう。
だが、罠を仕掛けたのは何も月臣や北辰だけでは無い。

「ジャンプ!」

今、自分の立っている場所をイメージ。そのまま全身にナノマシンパターンを浮かび上がらせカイトは叫んだ。
しかし、何も起こるはずが無い。CCも無しに跳ぶことなど出来はしないのだから。

「あ……」

ルリが空を見上げるとそこに光が集中し始め、中空からブラックサレナが出現。
ゆっくりとブラックサレナがカイトの横に着陸した。

「ミカズチ、迎えに来た」

「ご苦労さんラピス」

ハッチを開き出てきたのはルリと全く同じ外見を持った少女であった。
一瞬、ルリと少女の目が合うが次の瞬間にはラピスが視線を逸らした。

「どうする北辰。ここで決着をつけるのは少々無粋だと思わないかい?」

挑発するようなカイトの口調。

「ククク、確かに我らの方が不利なようだな」

「北辰!投降しろ!」

再度、月臣が呼びかける。

「……跳躍」

北辰がマントの下に着こんでいたジャンプユニットを起動。
そのまま光が彼等を飲み込んでいく。

「何!」

「ボソンジャンプか!」

「フハハハハハ!ミカズチ・カザマ、また会おう!」

高笑いを上げつつボソンの光芒と共に消滅した。



「A班は警戒体制。残りは散会しつつ撤収!」

ゴートが指示を出す中、ルリは呆然と北辰の消えた場所を見つめていた。

「単独の……ボソンジャンプ」

すでに彼等が遺跡を使いこなしたことの証明であり、地球側に時間が残されていないということでもあった。

「ヤツラはユリカを堕とした」

「え?」

「草壁の大攻勢も近い。だから……」

「だから?」

「君に渡しておきたい物がある」

ルリを見ながら淡々とカイトは言葉を紡いだ。



同日昼 新東京臨海国際空港 宇宙滑走路B




いかにも旧式な親子シャトルがエンジンを吹かしている。

『いやー久し振りだねぇ、諸君。忘れちゃいないと思うけど念の為言っておくと……』

どこかの誰かが何やらシャトルの乗員に話しかけているが誰も聞いちゃいない。
それどころかそれぞれ好き勝手にやっている。とても作戦行動中とは思えない。

「ウリバタケ班長の穴は俺達で埋めるぞ!」

「整備魂を見せてやる!」

「整備班ファイト!」

「おー!」

『今回の任務、期待しているからね。じゃ!』

結局どこかの誰かはみんなを激励したつもりのようだ。……誰も注目して無かったけど。
やはりナデシコクルーというやつはどうにも緊張感とは無縁のようである。

『行動予定を簡単に説明すると親機のジェット推進にて高々度まで上昇、子機のロケット点火打上、成層圏を脱出。地球日本時間14時に月面着陸、以上だ』

「アカツキ君も落ち目だね、カゲ薄いし」

「落ち目になって……おちめぇ……へへ」

ゴートの説明を聞きながらヒカルとイズミは先程の人物へ好き勝手に感想を漏らした。
……あ、今の人アカツキだったんですね。
そんな周囲のやりとりを気にせずルリはクシャクシャになった小さな走り書きのメモを見つめていた。

「ルリルリ?」

「はい」

「カイト君から貰った物って何だったの?」

努めて明るく話しかけるミナト。

「レシピです」

「レシピ?」

「テンカワ特製ラーメンの」

そこまで言われてようやく彼女にも合点がいった。

「ああ、屋台のだね」

「ええ」

答えながらわずかに顔をほころばせるルリ。昔を思い出したのだろう。



「私、こんな物もらえません!」

墓地から少し離れた小高い丘。
そこにカイトとルリの二人が対峙していた。

「それはカイトさんがユリカさんを助け出した後、アキトさんに直接手渡せばいいじゃないですか!」

「もう必要無くなるんだ」

カイトの差し出した物、それは一枚のレシピであった。
『火星の後継者』の研究施設に囚われていた時、アキトの書き残した物である。

「君の知っている『カイト』は死んだ。彼は今も遠い木星で永久の眠りについている。ここに居るのは『ミカズチ』と呼ばれた人殺しの人形が一体あるのみ」

「私にとってカイトさんはカイトさんです!2年前と同じ事を言わせるつもりですか!?」

ルリは声を荒げる。彼女にしては珍しく相当怒っているようだ。
つくづく女性を怒らせてばっかりだな、と苦笑しながら言葉を続ける。

「彼の確かに存在したというわずかばかりの証、受け取って欲しい」

天河特製ラーメンの大部分はアキトが独力で作り上げた物だが、少しだけカイトやルリの意見が反映されていた。そういう意味では間違いなく『カイト』の居た証だ。

「それ、カッコつけてます」

「違うんだよルリちゃん」

「……?」

「ヤツラの人体実験の悪影響もあったんだろうけど……」

ゆっくりとサングラスに手をかけるカイト。

「!!」

「もともと試作型の人工生命体である僕らは、耐用年数がどれほど持つか当時の木連技術者にもわからなかったらしい」

彼の瞳は光を映してはいなかった。

「左目は完全に失明、右目もぼんやりとしか見えない。右半身の感覚は麻痺していて、既に右肘から先は自力で動かすことすらできない」

まるっきり他人事のような口調。いや、『ミカズチ』にとって『カイト』の事は他人事なのだろう。

「でも以前よりも戦闘能力は上がってるんだ。既に身体の三分の一は死にかけてるというのに。……要は燃え尽きる直前のロウソクみたいなもんなんだろうね」

止めてください、そう言おうとした。しかし、ルリの口から出た言葉は別だった。

「……どうして?」

「ん?」

「どうしてそこまでして戦うんですか!?あなたには何の関係も無いじゃないですか!」

カイトは優しく微笑む。自嘲では無い、2年前と同じく優しい笑顔。

「全てはただの幼稚な自己満足、身勝手なワガママさ」

「そんなの理由になってません!」

「結局、どこまでも独り善がりなのさ僕は。2年以上も前に君自身が指摘したことだろう?」

「……」

ルリはうつむいてしまう。もう彼の顔をまともに見る事が出来ない。

「そんなに悲しむことはない。もうすぐ全てが終わる。アキトも直に目覚めるさ」

「アキト……さん?」

「今の君には何の事だかわからないだろうが僕は本来のアキトを踏みにじっているにすぎない。彼の努力や執念を」

「何を言っているのかわかりません……」

「だろうね……。ひとつだけ、お願いがある」

「え?」

「君に、触れてもいいかい?」

「……はい」

カイトはゆっくりと膝を折り、彼女の目線までしゃがみこもうとする。
時々、痛そうに顔をしかめる。すでに、身体を動かすだけでも苦痛なのだろう。
たっぷり5分はかけてルリの目の前にしゃがみこんだ。
大切な宝物を扱うようにカイトは彼女を抱きしめた。

「……ん!」

苦痛に声を漏らすルリ。少々力が強すぎる。

「ゴメン、痛かった?」

「いえ……」

「五感の中でも触覚はほぼ全滅で力加減が出来ないんだ。こうして君がそばにいるのにそれを感じることすらかなわない」

ルリはもう何も言わなかった。ただ黙って彼の首に腕を伸ばし、強く強く抱きしめた。
少しでも自分の存在が彼に伝わればいいと願いながら。
最後にカイトは一言だけルリにささやいた。

「もう、僕のことで君が心乱される必要は無い……」



青空へ向けて飛翔するブラックサレナ。ボソンジャンプし、虚空に消えてゆく。

「あのまま、彼に抱きついて一緒に行っちゃえば良かったのに……」

「私には、あの人を止めることは出来ません。2年前からわかっていたことです」

「……ホント、意地っ張り」

ミナトは抜けるようなを青空を見つめたままつぶやいた。
その言葉は誰に向けて発せられたのだろうか。

「……空港まで送っていこう」

一部始終を見届けた月臣が二人に声をかけた。



大きなエンジン音を響かせ雲の向こうへと消えていくシャトル。
空港の屋上ではたった二人の人間が見送っていた。

「祝勝パーティー楽しみにしてて下さいよォー!」

「今度は、見送る側になっちまったね」

感慨にふける二人の背中に声がかけられる。

「プロスさーん!ホウメイさーん!こんにちわー!」

そこにはメグミとホウメイガールズの計6人が揃っていた。

「おやおや、みんなはもう行っちまったよ」

「いや、彼女達は別の任務が」

「別?」

問いかけるホウメイに構わずメグミ達に向き直るプロス。

「さあ、皆さん行きますよ!」

「はい!」



空港より少しばかり離れた場所。
そこにも飛び行くシャトルを見送る人物がいた。
編み笠にマントを着こんだ男、北辰の部下だ。

「間違いない、アレだな」

「ああ、秘密工作船の出発を確認。至急『イワト』に連絡」



飛行するブラックサレナ。指定された合流地点へと向かう途中、通信が入った。

『やあやあ、名無し君。ゴクローサン』

「会長。申し訳ありません、みすみす北辰達を取り逃がしてしまいました」

『いいっていいって。そうそう、ルリ君達は無事シャトルに合流、さっき月へ出発したよ』

カイトと会話している人物。それはネルガル会長アカツキ・ナガレその人であった。

『『彼女』の方もちゃんとゴート君に伝えておいたからしっかりシャトルに潜入できたみたいだよ』

「一番安全なのはそちらに匿ってもらうべきなんでしょうが真相を知れば暴れ出すこと請け合いですし、これ以上複数の女性の怒りを買うのは少々遠慮したい所です」

そう言って肩をすくめる。

『ハハハ!まあ、ナデシコCなら宇宙で一番安全だよ。会長直々に太鼓判を押しても良い』

「それでは会場でお会いしましょう」

『まったく、多忙だね君も』

「2年分のツケを払っていると思えばしかた無いでしょう」

『なるほど。……それじゃ地球連合総会議場もとい、特設コンサートホールで会おう名無し君』

そう言って通信が切られた。

「どうしたんだい、ラピス?」

先程から一言も話さない少女に話しかける。

「……いいの?ルリの所に戻らなくて」

「ああ」

アカツキと談笑していた時とは別人のような強く冷たい声。

「ナデシコに合流する戦略上の必要性は無い。ホシノ少佐とナデシコCだけで事足りる」

彼が無理をしているのは明らかだった。

「私は『ルリ』の代用品なの?」

「何を言い出す?」

「私ではあなたにとってルリの代わりにも成りきれないの?」

「ラピス……」

「ミカズチにとって私は何なの!」

ラピスの感情が爆発した。

「少なくとも僕は君を何かの代わりだとは……」

「ならば何故、私を助けたときに『ラピス・ラズリ』なんて名前をつけたの!?」

「それは……」

「答えてよ!私は結局ミカズチとって何なの!『ルリ』?『ユリカ』?それとも『イツキ』!?」

答えてよ、と最後に弱々しげにつぶやくとそれきり彼女は黙ってしまった。
カイトは少しだけ考えた後、彼女に精神同調した。

「あ……」

ラピスが小さく声を上げる。
自分が彼に接続することはあっても彼から自分に繋がることは極めて稀であった。

「確かに、僕は君をいろんな誰かに重ねてみているのかも知れない」

言葉と共に感情そのものを流し込む。

「だけど、君自身も僕にとっては大切なことも本当だ」

「……うん」

少しだけ落ち着きを取り戻すラピス。
カイトが滅多に自分から同調しない理由がここにあった。
自我が極めて希薄なラピスに直接感情を流し込むと強制的に思考すらコントロールできてしまう。
彼女を都合の良い人形にすることだけは避けたかったからだ。

「なーに、もう少しですべてが終わる。それからの事はその時考えればいいさ」

まるで口説いてるみたいだな、と考えながら明るく笑いかける。

「うん。一緒に考えよう」

安心したように笑うラピス。
カイトは彼女に聞こえないように一言だけ喋った。

「すべてが終われば、君が悲しむ理由である僕も消滅するのだから……」



一方そのころ シャトル内部




成層圏を飛行するシャトル。
窓の下には雲が広がっている。

『しばらくの間、おくつろぎ下さい』

スチュワーデスの機内放送が入る。
……というかこのシャトルは秘密工作船なんでアナウンスは入らないだろうが。
クルーがそのことに気がつく一瞬前に後部の扉が開いた。

「お飲み物はいかがっすかぁー!」

「えー!?」

シャトルに乗り合わせたクルー全員、その声に聞き覚えがあった。

「ジュースにコーラ、ビールに水割り、おせんにキャラメル、おつまみもありますよ」

その口調はどちらかと言うと野球場の売り子ですよ、ユキナさん。

「おおー!」

「かもしかー」

「なまあしー」

各々好き勝手に感想を述べる。すかさずデジカメで録画している者もいる。

「ちょ、ちょ、ちょっとユキナ!何であんたがここにいるの?もォ!」

たまらずミナトは席を立つ。

「わたし、冷やし飴」

「はい」

「ドリアンジュー……」

「そんなことはどうでもいいの!」

マイペースに注文する二人を遮ってユキナに詰め寄るミナト。
最近怒ってばっかりで心労が絶えませんねぇ、あなたも。

「あんたは学校があるでしょ、早く帰んなさい!」

「今、夏休みだよ〜」

ミナトの怒りなぞ何処吹く風。まさしく『柳に風』である。

「部活は!?インターハイがあるでしょ!」

「それはさ来週。第一、作戦が成功しなきゃ中止でしょ、きっと」

いちいち挑発する口調のユキナ。

「バカ!帰りなさい!!」

「あっかんべろべろべっかんべー!」

まったく堪えないユキナ。旗色悪しと見たミナトは怒りの矛先をもう一人に向ける。

「ちょっとジュン君!あんたまで何やってんのよ!!」

何故かユキナと同じペアルックを着させれているジュン。
ご丁寧に名札には『ジュン君』と書かれている。
すでに女性クルーに慰み物にされていた彼は名前を呼ばれるとピシッと姿勢をただす。

「あ、いや、その僕は……」

「そのカッコじゃ何言っても説得力ないよね〜」

すかさずヒカルに突っ込まれた。

「……うん」

「きゃーカワイイー!」

「ハハハハ」

彼のリアクションに盛り上がる一同。
3年たってもやはり彼らは相変わらずのようだ。
取り敢えず場を収めるべくルリが口を開いた。

「ミナトさん、とりあえずこの話、月までお預けにしましょう」

「うん、そうそうお預けお預け!」

彼女の言葉の尻馬に乗るユキナ。

「あんた、いつか痛い目に会うよ」

「はいはい」



そんなこんなのミニコントを繰り広げている間にシャトルは親機を切り離し成層圏を離脱する。

「静止衛星軌道に到達」

「ヤレヤレとりあえずここまでは」

「順調じゃなーい!」

シャトルのコックピットのゴートとリョーコの会話を遮ってミナトが入ってくる。

「どうした?トラブルか?」

計器類からまったく目を離さず聞くゴート。彼のポーカーフェイスも相当な物である。

「フン!知ってたんでしょ?あの子が乗りこんでたこと」

「白鳥の妹か?まあな」

「ひっどーい。どうして教えてくれなかったの?」

「出発前に無用なトラブルを避けるためだ」

「無用ォ!?」

「まあ、聞け」

更に加速するミナトの剣幕。ようやく彼はミナトに視線を合わせる。

「あの子は木連の英雄、白鳥九十九の妹だ。奴等が狙うとしたら次はあの子かもしれん。一人置いておく方が危険だ」

「あ……」

「これはミカ……カイトの指示だ。文句は今度奴に会ったら言うんだな」

「……そっか、やっぱりあの子変わってない。2年前と同じ優しいままだ」

「俺だって優しいぞ?」

「フフフ、だから女に逃げられるってか?」

憮然としたゴートの台詞に応えるミナト。

「護衛艦隊、合流するぜ」

シャトルの前方にはリアトリス級戦艦と駆逐艦からなる宇宙軍の艦隊が出迎えていた。



『当艦隊を指揮するアララギです。よろしく』

「ナデシコ艦長ホシノ・ルリです。こちらこそよろしくお願いします」

『いえいえ、妖精の護衛など正にナイトの栄誉』

「は?」

突然のアララギの発言にクルー一同キョトンとしてしまう。

『宇宙に咲きし白き花、電子の妖精ホシノ・ルリ。少佐の事を兵士達が『電子の妖精』って呼んでるんです。うんうん正に可憐』

「はあ、どうも……」

臆面も無く美麗字句を並べ立てるアララギの言い様にさすがに照れるルリ。
頬がわずかに赤らんでいる。
「ばか」の一言で切り捨てないだけ成長したのだろう彼女も。



『それでは兵士の方たちにもよろしくお伝え下さい』

少し照れながら通信を切られた。
ライラックのブリッジではアララギ以下護衛艦隊の面々が余韻に浸っていた。

「電子の妖精、カワイかったッスねえ〜」

「うむ、正に宇宙の宝」

「今の映像、バッチ録画できてました!」

「よし、あとでみんなに見せてやろう」

世界的に有名人であるルリには民間、軍人問わず大勢のファンが存在していた。(もちろん本人の預かり知る所では無いが)アララギや部下も彼女の熱烈なファンであるどころか自分たちで独自にファンクラブを運営しているほどだ。
彼のファンクラブの活動や形態を仔細に説明すると一冊小説が書けそうなので今回は割愛させていただく。
突如警告音がブリッジに響きオペレーターが素早く反応する。

「ボソン粒子反応前方、5000キロ!」

「何だと!?」



次々と宇宙空間に実体化する積尸気。

「我が部隊の前方に船団あり!」

「戦艦、駆逐艦、民間シャトル……これだ!」

奇襲部隊の隊長がデータ照合を行っている。

「諜報部からの連絡にありし秘密工作船とは正にこれなり!各小隊、戦艦ではなくシャトルを叩け!」

『了解!』



「各艦最大戦速!菱形陣形で中央突破!!」

素早く指示を出すアララギ。彼が護衛艦隊の任務を授かったのは伊達や酔狂ではない。

『シャトル先行します』

「え?」



「はいはーい、これからは本職にお任せね〜」

バキバキと指を鳴らしながら満面の笑みのミナト、ゴートは副操縦子の席に移り計器類をいじっている。

「各員シートベルト着用、対ショックに備えよ」

「よーし、要するにうまく敵を突っ切ちゃえばいいわけね」

「はい、とにかくぶっ飛ばして逃げちゃって下さい」

「はーい!」

ルリの簡単極まりない説明にミナトは元気よく答えた。
急激に加速しシャトルが護衛艦隊から突出する。
奇襲部隊の積尸気による一斉射撃が始まった。
飛び交う弾丸をあるいは交わし、あるいは弾きながら直進するシャトル。

「フィールド出力80%。まだいける!」

「もうちょい、もうちょい」

撃ちまくる積尸気部隊の脇を民間シャトルとは思えぬ速度で走り抜ける。
一瞬あっけにとられた隙を逃さず護衛艦隊が攻撃を開始する。
成す術無くやられていく奇襲部隊。



「目標を失い、敵は棒立ちだ。このまま敵を撃破、後にシャトルの壁となる!」

戦力分布図を見ながらアララギは冷静に動いていた。

「死中に活あり。さすが妖精……」

「シャトルの進行方向にボソン反応!」

「何!」



切り抜けた先から次々と新たな積尸気が出現する。

「まずい、並走される」

「ちょっとォ話が違うわよ」

《状況予想 並走されつつタコ殴り》

「武器とかねえのか?」

「偽装するときに外した」

「そりゃ律儀」

「ハハ……」

攻撃が当たり激しくシャトルが振動する中、どうにも緊張感の欠落したやり取りが続いていた。



火星極冠遺跡セントラルポイント『イワト』




『これは明らかに宇宙規模の反乱である!地球連合憲章の見地から見ればまさしく、平和に対する脅威であろう』

高々と掲げられた『火星の後継者』の旗の下、草壁が熱弁を振るっていた。

『我々は悪である。しかし、時空転移は新たなる世界!新たなる秩序の幕開けだ!』

パイロットやそれぞれの艦の艦長は一様に聞き入っている。

『さあ!勇者達を導け!』

「イメージ!」

「イメージ!」

「イメージ!」

草壁の言葉と共にイメージングを開始するナビゲーター達。
遺跡全体が反応してボソンの光に包まれる。

「目標!地球連合本部ビル!」

「目標!統合軍本部ビル!」

「ナビゲーター、イメージング続行!」

「イメージ伝達率50%」

ヤマサキは遺跡の制御室で指示を出す。手にはユリカの『想いで』の詰まった日記帳が。

「伝達促進プログラム入力開始、モードはマルチ」

「マルチモード入力」

『AKITO』と書かれたウインドゥが次々とハートマークに埋まる。

《イメージ伝達率96%》

《イメージ伝達率97%》

《イメージ伝達率98%》


遺跡に取り込まれたユリカに光が集まる。



2199年11月16日 曇りのち晴れ




私は窓から静かに空を見つめている。
どんよりとした雲がゆっくりと流れていく。
まるで今の私の様だ。
アキトとカイト君はいま、材料の買出しに行っている。

「ただいまー」

カイト君が帰ってきた。

「あ、おかえりなさい」

「どうしたの?元気ないけど」

「ウン、ちょっとね」

私は少し言葉を濁す。

「なに?結婚やめたくなったとか?」

「うーん、惜しい」

「惜しい!?」

物凄く驚いている。無理もないけど。

「アキトがね、どう思ってるのかなあって」

「『アキトはユリカのことが大好き』……じゃないの?」

「それはそうなの」

「じゃなんなの!」

少しだけ迷ってから、彼に相談した。カイト君ならいいよね。

「でもね、アキトは私に『くっつくなー』とかよく言うでしょ、それが不思議。何でそんなこと言うのかな、って」

カイト君は真剣な表情で聞いている。

「アキトは昔から私の王子様だったけど、アキトにとって私はそうじゃなかったみたいなの。だからなのかなあ?」

何故か彼は大きくため息をついた後、優しく私に笑いかけた。

「それは照れているだけだよ」

「照れてる?そう言えばそっかあ……そうだね!ユリカってば気にしすぎだよね!」

彼にそう言いきられると次第にそんな気がしてきた。

「ありがとう、カイト君。お礼に何でも言うこと聞いてあげる」

「え?いや、たいしたことしてないよ」

「いーの!何か言って!」

「うーん、そうだな……」

両腕を組んで考え込んでしまった。

「じゃあ一回だけ、僕とデートして」

「えーとね……」

「なーんちゃ―――」

「うん、わかった。いいよ!」

彼の言葉を遮って私は答えた。

「ホントにいいの?」

「ウン、今度の日曜あたりに!アキトには内緒ね!」

何故だかドキドキする。

「じゃあ、約束だよ」

「一回だけね、参ったなぁ……ユリカ、モテモテ!」

顔が赤くなっているのを悟られないようにおどけて見せる。

「それじゃあ何処行く?」

「うーん『何でも言うこと聞く』っていった手前、デートコースもカイト君の好きでいいよ」

「そうだなーそれじゃ―――」

「カイトは何処に行きたいのォ?」

カイト君が私のほうに向き直る。



ナビゲーター総勢20人のイメージングが一斉に遺跡に入力された。




月宙域付近 偽装シャトル『ヤタガラス』内部




後ろに食いつかれながらもギリギリで積尸気の攻撃を避けていくシャトル。

「甘い甘い!」

コントロール端末を叩きながら無茶苦茶な軌道で突き進む。

「くううううう!」

「ひょーひょーひょおー!」

ヒカルとイズミの二人が機体の制動に合わせて体を動かす。

「何やってんだあの二人」

「昔のアニメ風急加速Gゴッコだそうです」

二人はなおもGに耐えている。

「急加速ゥ!」

「じー!」

「さらに加速してぇ!」

「じー!!」

「もひとつおまけにぃ!」

「ずぃぃぃぃー!」

そんなやり取りを見ながら彼は簡単な感想を述べた。

「さすがパイロットは余裕だねぇ〜」

……充分アンタ達にも余裕があるように見えます。
再び大きい振動が機体を襲った。

「ボソン反応、前方50キロ!」

「何!」

シャトルの前方、今まさに巨大な物体がジャンプアウトしようとしていた。

「でかいぞこれは……」

「うわーまずさの二乗倍」

思わず顔が引きつるミナトとゴートの前にウインドゥが出現した。

『グラビティブラスト、いっきまーす!』

「え?」

実体化してゆくナデシコC。それと同時にナセルを展開する。
スレスレの所でシャトルがすれ違いグラビティブラストの砲門が火を吹いた!
莫大な重力波の奔流が宇宙空間の僅かな水素分子を揺らし発光させる。

『緊急跳躍、逃げ……』

次の瞬間、積尸気部隊は捻れ、爆発した。

『艦長!見てくれましたか!?』

『ムフ』

嬉しそうなハーリーのウインドゥの横手から人影が入ってくる。

「えー!!!!」

「は、班長ォ?」

『おーう、お前ら元気かァ!』

驚く一同に対し元ナデシコ整備班班長、ウリバタケ・セイヤは懐かしそうに挨拶した。

「セイヤさんどうしてここに」

『おールリルリ!懐かしいな!ったく変な気の使い方しやがって』

「え?」

『カイトの奴が誘いに来てよ。『親代わり』ってのはさしでがましくともお前さんが困ったら何を置いても駆けつけるに決まってんだろーが!』

「カイトさんが……」

『ご都合主義だと笑わば笑え!しかし、見よ!見よこの燃える展開!見よこのメカニック!こんなニューテク謎テク満載な展開は技術者魂が黙ってられねえってもんだ』

ガハハハと何故か高笑いを上げるウリバタケをヒカルとイズミはしみじみと見ていた。

「顔の引っかき傷。ありゃ奥さんだね」

「ご都合主義も大変だね」

「どうでもいいですけどセイヤさん、ハーリー君」

ウリバタケが高笑いを上げ続ける中、落ち着きさを取り戻したルリは至極もっともな質問をした。

「どうやってボソンジャンプしたんです?ご都合だけじゃちょっと……」

待ちかねたかのようにもう一人、下からウインドゥにフレームイン。
彼女は嬉しそうにこう言った。

『説明しましょう』









おまけ・対談式あとがき いきなり最終回


作 者「長らくご愛顧頂いたこのコーナーも遂に最終回!今回のゲストはテンカワ・アキトさんです!」

アキト「……」

作 者「おっと本作では意識不明でしたね。ウリバタケさんから拝借した『バクバクドリーム』を繋げて……」

アキト「おお!?どーなってんだ、これは?」

作 者「おはようございます、テンカワさん」

アキト「あ、ああ、おはよう。ていうかアンタ、誰?」

作 者「さあ、この作品も残すところラスト3話!」

アキト「おーい、ちょっとー?」

作 者「この先がさっぱり書けていないがタイトルだけは決まっている!」

アキト「ユリカは?ルリちゃんは?」

作 者「果たして地球の命運は如何に!?第8話「見果てぬ野望の『果てに』」」

アキト「そもそも今は何年何月何日だー!?」

作 者「ホシノ・ルリ率いる独立ナデシコ部隊の作戦の成否は!?第9話「『ばいばい』マーズ」!」

アキト「しかも、本編に俺の台詞が一行も無いってどういうことだー!」

作 者「すべては火星に始まり火星に終わるのか。それとも……最終話「『アナタノオモイデニ、サヨナラ』」」

アキト「それ以前に俺は元に戻れるのかー!?」

作 者「毎回こんな落とし方だけど気にするな!」

アキト「聞いてるのかよ、オイ!」

作 者「それでは最終話の打ち上げ座談会でまた逢いましょう」

アキト「これで終わりなんてイヤだー!」

《この空間が削除されます》



続くんだってば!



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