私たちは実験中に眠り続けていたカイトさんが目を覚ましたあと、これまでの事を話してあげました。

実験が失敗したことを聞いたときのカイトさんはなぜか驚いていました。

(意識を失っていたときに、何かあったのでしょうか?心配です)

カイトさんはエリナさんのことを許したようですがわたしはまだ少し納得がいきません。

カイトさんが危険な目にあったのですから・・・。

でもカイトさんがやさしい顔で私に頼むので許してあげることにしました。

(あんな顔で頼まれたら・・・断れません・・・)(ポッ

 

その後アパートに帰って宴会をすることになりましたがその前にカイトさんにもう一度イツキさんのことに調べて欲しいと頼まれたので、もう一度調べてみました。

すると、イツキさんの情報が増えていました。

生まれた場所が・・・

その事を聞いたカイトさんが次の日に情報にあった場所、浜松へと向かう決心をしたので、私もカイトさんの力になりたくていっしょについていくことにしました。

 

浜松について情報にあった家の場所を調べるとイツキさんの写真が出てきました。

その事実は、そこが彼女の生まれた場所であることを証明しているのと同じようなものでした。

カイトさんはそれを知って愕然としていました。

 

浜松からの帰り道にカイトさんが私にいろいろと話してくれました。

実験中にイツキさんに出会ったことなどを・・・

カイトさんはその出来事が夢だと思って悲しんでいました。

私はカイトさんのその話を聞いて、カイトさんの話が嘘だとは思えませんでした。

(私はカイトさんのことを信じていますから・・・)

私は反対に、いつのまにかイツキさんの情報が増えていたことに疑問をもちました。

 

 

いったい誰がそんなことをしたのでしょうか・・・

 


 

 

機動戦艦ナデシコ

〜妖精の微笑み〜

 

エピソード12:掛け金はユリカ?

 

 

浜松から帰ってきた私たちを迎えてくれたアキトさんにユリカさん+おまけのウリバタケさん。(エリナさんは用事があるとかでもういませんでした)

急にいなくなってたので心配してたようです。

(アキトさん、ユリカさん、心配かけてすみませんでした)

私は心の中で謝ります。

でも、行き先を伝えたら笑って許してくれました。

帰りの途中も少し暗い顔をしていたカイトさんですが、お二人の笑顔を見てようやく元気を取り戻したようです。

(やっぱり、カイトさんには笑顔が一番ですね)

私はカイトさんの顔を見てそう思いました。

で、その日は前日の宴会の続きになりました。

「あんなんじゃ、もの足り〜〜〜〜〜〜ん!」

などと、ウリバタケさんが叫んでいたのが原因です。

結局、昨日の分を取り戻すように今度は一日中、宴会が続きました。お酒を浴びるように飲むウリバタケさん、そのウリバタケさんに無理矢理飲まされているアキトさん、そしてアキトさんの横にくっつきながら楽しそうにお酒を飲んでいるユリカさん。もう三人の周りはお酒オ〜ラ全開で、ちょっと近寄れません。

あ、私とカイトさんはジュースですから。勘違いしないで下さいね。

まあ、宴会ですからお酒を飲むのはいいですけど。カイトさんにまで飲ませようとするのは止めて欲しいです。カイトさんはまだ未成年なんですから。

まったく、この人達は・・・バカばっか。

 

次の日

予想どうり、アキトさん達は二日酔いで潰れてました。

(無理もありません、あれだけ飲めば・・・)

ウリバタケさんはふらふらしながらも家の方に帰っていきましたが、ウリバタケさんの場合は帰ってからの方が大変でしょうね。

アキトさんとユリカさんは今も布団でうなってます。ちょっとうるさいですけど・・・。

それを見たカイトさんが

「二人をゆっくり寝かせてあげたいから、外に行こうか?」

と私に話し掛けてきました。

「はい」

私も笑顔で答えます。

(こんなお酒臭い部屋にいるのは、ちょっと辛いですから・・・。それにカイトさんとお出かけできるのは私も嬉しいですから)(ポッ

 

その後、私とカイトさんはいつもの公園に来ました。

「う〜ん!気持ちいい風だね!」

カイトさんが伸びをしながら言います。

「そうですね」

私もいっぱいに空気を吸い込みます。

時刻は朝の9時、清々しい風が吹いています。

「アキトさんもユリカさんも大丈夫かなぁ?」

「大丈夫ですよ、多分。それにウリバタケさんがいた時点でこうなる事はなんとなく分かってましたから」

「ははは」

私の答えに、カイトさんが苦笑いを浮かべます。

「お二人とも、一日ゆっくりと寝れば元気になりますよ」

「それもそうだね」

私とカイトさんはお互いに笑い合います。

「とりあえず、どうしようか?」

「そうですね、もう少しここでゆっくりとしませんか?」

私はカイトさんの問いにそう答えます。

(もう少し二人だけでいてもいいですよね、町に出ればいっぱい人がいて二人きりになれませんから)(ポッ

「うん、いいよ」

私の気持ちが通じたのかどうかは分かりませんが、カイトさんが笑顔でそう答えてくれます。

結局、私たちは、お昼過ぎまで話をしました。

 

お昼ご飯を食べに街に出てきた私たち。

「なに、食べようかルリちゃん?」

「そうですね・・・」

そんな私たちに声をかけてきた人がいました。

「あら〜、ルリルリにカイト君!」

振り向くとそこにはミナトさんとユキナさんがいました。

「久しぶりね」

「二人とも元気してた?」

ミナトさんとユキナさんが挨拶をしてきます。

「お久しぶりです、ミナトさん、ユキナさん」

「二人とも、元気そうですね」

私とカイトさんも挨拶を返します。

「ルリたちは何してるの?もしかしてデート?」

「えっ、べ、別にそういう訳では・・・」(

いきなりのユキナさんの言葉に私は顔を赤くして俯きます。

「い、いやそうじゃなくて、ただお昼を食べようと」(

カイトさんも赤くなってます。

「なによ〜、別に恥ずかしがる事ないじゃない」

カイトさんの言葉にユキナさんが笑いながら答える。

「ほ〜ら、ユキナちゃんもからかわないの」

「は〜い」

ミナトさんの言葉にユキナさんがちょっと舌をだして笑います。

「二人とも、お昼食べるなら私たちといっしょに食べない?」

「それいい!二人ともそうしなよ!」

「はあ・・・どうするルリちゃん?」

「私は別にかまいませんが」

「なら決まりね、私、いいお店知ってるからそこにいきましょ」

私たちはミナトさんに連れられて『いいお店』に案内されました。

 

いいお店

「ここがミナトさんの知ってるいいお店ですか」

私は店の中を見回します。

レストランというよりも、大衆食堂といった感じだ。

(なんとなく、ナデシコの食堂を思い出しますね)

「へ〜、なんかナデシコ食堂を思い出しますね。ルリちゃんもそう思わない?」

「そうですね」

カイトさんが私と同じように思ったようです。

「ふふ、やっぱり二人にはわかっちゃうか」

そんな私たちを見てミナトさんが笑います。

「ふっふ〜ん♪」

ユキナさんの顔がニヤけてます。

「どういう事ですか?」

「いらっしゃい」

私の言葉に答えたのはミナトさんでもユキナさんでもなく別の人でした。

「あっ!」

隣にいたカイトさんが驚きの声を出します。

「どうかしましたか?」

私もカイトさんと同じように声の方に顔を向けます。

「あっ」

同じように驚きの声を上げた私の目の前には、以前ナデシコでコックをしていたホウメイさんがいました。

「「ホウメイさん」」

私とカイトさんの声がハモリます。

その後、テーブルに案内された私たち。

「ホウメイさんが、お店を出してるなんて知りませんでした」

「そう言えば、ルリたちにはまだ知らせてなかったっけね」

私の言葉にホウメイさんが笑顔で答えます。

(変わっていませんね、ホウメイさん。ホウメイさんの笑顔はナデシコに乗っていた時のままです)

私は少し嬉しくなりました。

「ミナトさん達は知ってたんですか?」

カイトさんがミナトさんに訊ねます。

「私たちも、偶然このお店に来た時にはびっくりしたわ」

「そうそう」

ユキナさんが相づちをつきます。

「で、それ以来ちょくちょくこのお店には来てるのよ」

「へ〜、そうなんですか」

そんな私たちにホウメイさんが話し掛けます。

「さて、注文は何にするんだい?」

「私はチキンライスを」

(久しぶりにホウメイさんのチキンライスを食べてみたいです)

「僕は味噌ラーメンと餃子を」

(ホウメイさんのラーメンを食べて僕ももっとラーメンの研究をしないと)

「じゃあ私はヤキソバを」

(ここのヤキソバおいしいのよね)

「私はオムライス!」

(あ〜、オムライスのあの味が忘れられない♪)

「はいよ、ちょっと待ってておくれ」

ホウメイさんがそう言って厨房の方に入っていく。

 

20分後

「へ〜、ルリルリ達今はラーメン屋台を引いてるんだ」

「はい、アキトさんのラーメン屋さんの資金調達のために」

ミナトさんに答える私。

「あんた達も苦労してんのね〜」

「そうでもないよ、やってみると結構楽しいし」

ユキナさんに答えるカイトさん。

そんな話をしているとホウメイさんが料理を持ってテーブルに近付いてきました。

「何の話で盛り上がってるんだい?」

「アキト君達のことを聞いてたの」

ミナトさんがホウメイさんに答える。

「あ〜、テンカワ達の。そう言えばテンカワや艦長は元気にしてるかい?」

「元気・・・といえば元気なのかな?」

カイトさんが少し苦笑しながら私に聞いてくる。

「アキトさんとユリカさんは現在二日酔いで寝込んでます」

「へ〜、アキト君ってそんなにお酒飲むんだ。意外だな〜」

ミナトさんがちょっとびっくりして答えます。

「いえ、ウリバタケさんがいましたから」

「あ〜、なるほど・・・」

納得するミナトさん。

(ウリバタケさんの名前を出すだけで納得できるのはナデシコのクルーなら当然ですね)

「それで、テンカワ達は今何してんだい?」

「今アキト君達ラーメン屋台を引いてるんですって」

ホウメイさんに答えるミナトさん。

「へ〜、屋台かい。テンカワもコックとして頑張ってるんだねぇ」

「アキトさんのラーメンは結構人気あるんですよ」

カイトさんが嬉しそうに言う。

「カイトさんのラーメンだって美味しいですよ」

それを聞いた私はカイトさんにそう言います。

「カイトもラーメン作るのかい?」

「あ、はい。アキトさんに色々と教えてもらいましたから」

少し恥ずかしそうに答えるカイトさん。

「へ〜、テンカワがね〜」

アキトさんの成長に嬉しそうな顔をするホウメイさん。

「ねえミナトお姉ちゃん。今度食べに行こうよ〜」

カイトさんの話を聞いて、ユキナさんがミナトさんにおねだりしてます。

「そうね、久しぶりにアキト君達にも会いたいし」

「決まりね!」

「それなら、後で場所をお教えしますね」

「ありがと、ルリルリ」

「ホウメイさんも一度食べに来て下さい。アキトさんも喜びますから」

「ああ、わかったよ」

カイトさんの誘いに笑顔で答えるホウメイさん。

「さ〜、冷めないうちに食べとくれ」

「「「「いただきます」」」」

その後もいろんな話をしながら、私たちはホウメイさんの料理を楽しみました。

(やっぱりアキトさんの師匠なだけあってとても美味しかったです)

 

昼食を食べ終わった私たちはミナトさん達と別れて街をブラブラしていました。

「さってと、ルリちゃんそろそろ帰ろうか?アキトさん達もお腹空かせてるだろうし」

「そうですね」

「じゃあ、買い物して帰ろう。確か宴会の時に料理の材料をほとんど使っちゃったはずだから」

そう言って私に笑い掛けるカイトさん。

(もう帰らなくちゃいけないのは寂しいですけど、お二人をこのまま放っておく訳にはいきませんからね)

私は心で溜め息を吐きながらカイトさんとスーパーに買い物に行きました。

買い物を済ませて家に戻ると、アキトさんとユリカさんはまだ眠っていました。時々うんうんとうなされてます。

(お酒の飲み過ぎはやっぱり毒ですね)

私は二人を見てそう感じました。カイトさんもそう感じたのか苦笑しながら私に話し掛けてきます。

「さ、今のうちに準備しよう」

「はい」

私とカイトさんは二人を起こさないように料理をはじめました。

トントントントン

カイトさんが包丁で野菜を切る音が隣から聞こえてきます。

私はそのお手伝いです。

(こうやってカイトさんと二人だけで料理するのははじめてですね・・・)

私は横目でカイトさんを見ながら少し嬉しくなりました。

普段はカイトさんとアキトさんの二人が料理を作っています。女性が二人もいて料理ができないのはちょっと恥ずかしいですけど・・・

私はカイトさんの手伝いを続けます。

(私も料理ぐらいできないといけませんね。そして何時かカイトさんに私の料理を食べてもらいたいですね)

料理するカイトさんを見ながら私は思います。

料理を続けて30分ぐらいして寝ていたはずのアキトさん達が目を覚ましました。

「う・・・ん、なんだかいい匂いがするな」

「ほんとだ・・・」

「お二人とも目が覚めましたか?」

私は布団から上半身を起こした二人に話し掛けます。

「あ、ルリちゃん」

「外に出てたんじゃなかったの?」

「もうお昼すぎですし、お二人がお腹を空かせてると思って帰ってきたんです。今カイトさんがお昼ご飯を作ってますから待っていて下さい」

私がそう言うと二人は台所に目をむけます。

「カイトが?」

「ほんとだ、いつのまに」

台所からカイトさんの作っている料理のいい匂いがしてきます。

グ〜〜〜〜〜〜

その匂いにつられてアキトさんとユリカさんのお腹がなりました。

「ははは」

「う〜ん、いい匂い」

すこしして、おぼんを持ってカイトさんが台所から出てきました。

「おまちどうさま」

「待ってました〜」

ユリカさんが笑顔で言う。

「さあ、どうぞ」

おぼんから二つの器をとり二人に渡すカイトさん。

「へ〜、おじやか」

「こんな時はこれがいいかなと思って」

アキトさんの言葉に返すカイトさん。

「いただきま〜す」

ユリカさんはさっさと食べ始めてます。

「おいし〜」

「ほんとだ」

二人ともおいしそうに食べています。

そんな二人を見ていると私も食べたくなりました。

「あ、そうだ。明日はお父様の家に新年の挨拶と結婚式の報告に行く事にしたから」

ユリカさんが私たちに話し掛けます。

「本当ですか?」

「ああ、簡単には許してもらえないかもしれないけどそろそろハッキリさせないといけないから」

カイトさんの言葉にアキトさんが答える。

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫!」

私の言葉にVサインを作り自信満々に答えるユリカさん。

(ふ〜、その自信は何処から来るんでしょうか・・・。まあユリカさんの事ですから何とかするんでしょうけど)

 

次の日

私たちは昨日のユリカさんの言葉通りユリカさんの実家に来ていました。

ユリカさんがいない間に雇っていたお手伝いさんに案内されて提督のいる部屋に案内されます。

並んで座った私たちの前に提督が腕を組んで座っています。

「・・・・・・」

黙ったままの提督。

(どうしたんでしょう、いつもの提督らしくないですね?)

「「「明けましておめでとうございます」」」

「お父様、明けましておめでとうございます」

私たちが挨拶をすると

「・・・・・・ユリカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、会いたかったぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

さっきまで黙っていた提督が、いきなりユリカさんの手を握り滝のような涙を流しました。

「きゃっ」

びっくりして声をだすユリカさん。

「心配してたんだぞ〜〜〜〜。お前がいなくなって、わしはな〜〜〜〜〜〜〜〜!」

(やっぱり提督は提督ですね・・・)

私は呆れた顔をしてとなりのカイトさんを見ると、カイトさんはまだ慣れていないのかやっぱり固まっていました。

「あ、あの」

そんな時ユリカさんの隣にいたアキトさんが提督に声をかけます。

「お父様、今日は大事なお話があってきたんです」

提督の手を放しながらそう話し掛けるユリカさん。

「大事な話、何かな?」

「て、提督・・・いえお義父さん。俺とユリカの結婚を認めて下さい!」

アキトさんがはっきりとした声で提督に話し掛けます。

「んなっ!」

その言葉を聞いて引き攣った顔になる提督。

「お父様、お願い!私とアキトの結婚を認めて!」

ユリカさんもアキトさんの隣に寄り添いながら言います。

(な、なんかいきなり深刻な雰囲気になりましたね)

「んむむむむむ〜〜〜〜」

提督が難しい顔をして二人の事を見ています。

「な、なんか居辛いね・・・」

私の隣にいたカイトさんが私に小声で話し掛けてきます。

「そうですね」

「隣の部屋に行ってようか?」

「それがいいかもしれませんね」

私たちはお互いに頷くとそろそろと隣の部屋に移動する事にしました。

「ふ〜、これは少し時間がかかりそうだね」

「まあ、なんとなく分かってた事ですからゆっくりと待ちましょう」

私たちはお手伝いさんにお茶を入れて貰ってゆっくりと待つ事にしました。

時々隣の部屋から怒鳴り声や、なだめるような声が聞こえてきます。

(ユリカさん、アキトさん、頑張って下さい)

私はそう心の中で応援しながらお茶を啜ります。

 

きっかり2時間後。

この部屋と隣の部屋を繋ぐ扉が開かれました。

そして出てきたのはユリカさんでした。

「二人ともこんな所にいたんだ」

「終わったんですか、ユリカさん?」

「う〜ん、終わったといえば終わったのかな?」

私の言葉に不思議な答えを返すユリカさん。

「お父様が二人を呼んでるの、こっちに来て」

「僕たちを?」

カイトさんが不思議な顔をして私の方を向いてきます。

「何でしょうか?」

私も同じような顔をします。

その後、私たちはユリカさんの後に続いて提督とアキトさんのいる部屋に戻ります。

部屋に入るとまじめな顔をした二人が私たちをじっと見ています。

その視線になんとなく嫌な予感を感じます。

「連れてきたよ」

そう言ってアキトさんの隣に座るユリカさん。

私たちもその隣に並んで座ります。

「それで僕たちに用ってなんですか?」

カイトさんが提督に聞きます。

「うむ、用というのは他でもないユリカとアキト君の結婚の事についてなのだが」

「「?」」

私たちはその言葉に不思議そうな顔をします。

(お二人の結婚の事でどうして私たちがでてくるのでしょうか?)

「いったいそれはどういう・・・」

「わしとしては二人の結婚には大いに不満があるのだが、かといってかわいいユリカの頼みごとを断るのは辛いのだ」

私の言葉を聞いていないのか提督が話し始める。

「わしとて、娘の幸せを願わない訳ではない。ただこのまま結婚をしてユリカが幸せになれるのか心配なのだ」

提督は難しい顔をしながら話し続ける。

私とカイトさんは「はあ」と曖昧な返事をしながらとりあえず聞くしかなかった。

「そこでアキト君が本当にユリカを幸せにできるか試験をする事にした」

「試験・・・ですか?」

カイトさんがその言葉に反応します。

「そうだ、アキト君がラーメン屋の資金集めのためにラーメン屋台をやっていると聞いたが本当に店を持てるかどうかどうかわからない。だからこそアキト君がラーメン屋台で資金を溜められるぐらい美味しいラーメンを作れるのか試させてもらう」

「ちょっと、お父様!アキトのラーメンは宇宙1なんだから大丈夫に決まってるじゃない!」

聞き捨てならなかったのかユリカさんが提督に文句を言います。

けどそんなユリカさんをアキトさんが手で制します。

「という訳で提督の紹介する料理人とラーメン勝負をする事になったんだ」

アキトさんが私とカイトさんに向き直って話を続けます。

「そうなんですか、でもそれと僕たちがどんな関係があるんですか?」

カイトさんが私の思っている事と同じ事を訊ねます。

「二人にはラーメン勝負の審査員になって欲しいのだ」

「僕たちがですか!?」

提督の言葉にカイトさんが驚いた声を上げるのも無理はありません。

「何故私たちなんですか?」

「それはな、わしが審査員をやればその・・・あれ・・・だしな、かといってユリカにやらせれば確実にアキト君を選ぶのは目に見えている。というわけでふたりに頼みたいのだ」

「けど、僕たちだってアキトさんの方を選ぶかもしれませんよ?」

「君たちの事は二人から聞いたが、君たちならわしも安心だ。いやむしろ君たちだからこそ頼みたいのだ」

提督が私たちの事を真剣な目で見ながら話してきます。

「ふ〜、どうするルリちゃん?」

「やる・・・しかありませんね」

私たちはお互いに小さな溜め息を吐きながらそう答えるしかありませんでした。

「そうか、引き受けてくれるか!」

提督が声を大きくして聞き返します。

「はい。・・・それでアキトさんの勝負の相手は一体誰なんですか?」

「おお、そうだったな。アキト君の勝負の相手は・・・」

私の質問に提督が答えます。

「君たちの良く知っている人物・・・」

アキトさんもユリカさんも固唾を飲んで次の言葉を待っています。

「元ナデシコ食堂のシェフ、ホウメイさんだ」

「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」

その言葉を聞いて私たちの時間が一瞬止まりました。

そして・・・

 

「「「「ホウメイさん(ですか)!?」」」」

 

ミスマル家の一室に奇麗に重なった私たちの声が響きました。

 

 

〜続く〜

 


後書き:どうも皆さんあけましておめでとうございますS=DASHです。今年もよろしくお願いします。前の投稿から時間が空いてしまいましたが”エピソード12:掛け金はユリカ?”をここにお送りします。いや〜さすがに親ばかのミスマル提督だけあって素直に結婚を許しては貰えませんでしたね〜。これからどうなるのでしょうか僕にも分かりません。(爆)

ルリ:バカ。

S:うおっ、いきなり馬鹿はないじゃないですかルリちゃん。

ルリ:それじゃあ、アホ。

S:いやそういう問題じゃなくて。

ルリ:ほんとにいつもいつもくだらない事を思い付きますね。

S:いや〜、それほどでも。(テレッ)

ルリ:だれも誉めてません。(ジロッ)(−−)

冷めて目でSを睨むルリ。

S:す、すいません。

さっきまでの勢いは遠くに消し飛んだのか小さくなるS。

カイト:Sさんもそんな意地悪しないで二人の結婚を素直に認めてあげればいいのに。

ルリを援護するように現れるカイト。

ルリ:あ、カイトさん(ハァト

S:いや〜、でもねあそこですんなりと認めるのもどうかな〜って思って。

カイト:相変わらず意地が悪いですね(−−;

S:まあまあ気にしないで、ちゃんと結婚はするんだから。

ルリ:意地が悪いというよりは性格が捻じ曲がってるんですよ。(−−)

S:な、なにもそこまで・・・

カイト:まあアキトさん達が結婚できるのならいいんですが。・・・あ、そうだ、そろそろ夕飯の買い物に行かないと行けないんだった。

ルリ:あ、私もお手伝いします。

カイト:うん、ありがとうルリちゃん。(^^)

ルリ:い、いえ(ポッ

ルリ・カイト:読者の皆さん、今回のSSも読んで下さってありがとうございました。性格の捻じ曲がった作者が書いてますが、私たちは精一杯頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。感想や意見などメールにて送って下さい。作者に返事もきっちり書かせますので。それでは次のお話でまたお会いしましょう。(ペコリ)

カイト:それじゃあ先に用意してくるから。

ルリ:はい。

先にその場を後にするカイト。

ルリ:さて、私も準備しないと。Sさんあまり意地悪ばかりしてるとその内自分の書いたキャラ達に刺されちゃいますよ。

S:う、それは嫌かも。

ルリ:まあ、あんまり意地悪しないようにして下さい。

S:わかったよ、ルリちゃんとカイト君が結婚する時は意地悪しないようにするから。

キュピーン。

その言葉を聞いてルリの目がきらめいた。

ルリ:それ、本当ですか?

S:う、うん。僕の中ではルリちゃんとカイト君は最終的にはそういう風になるから・・・。

ルリ:ふふふ、そうですか。やっぱり私とカイトさんは・・・。(ポ〜

嬉しそうにニヤけるルリ。

ルリ:そこまで考えてるんでしたら他の人達にはあんまりSさんをいじめないように言っておいてあげますね。これからの話に支障が出てはいけませんから。(^^)

S:はあ、どうも・・・。

ルリ:あ、いっけない。そろそろ行かないとカイトさんを待たせちゃいます♪(^^)

そう言ってスキップしそうな雰囲気で去っていくルリ。

それを半ばボーゼンとしながら見ていたSのなにげない一言で彼の今日の運命が決まった。

S:う〜む、やっぱりさすがに結婚式まではこの作品も続かないだろうな・・・

小声で言ったのでルリには聞かれないと思ったのだろう。

ルリ:ピクッ

しかし超地獄耳のルリにはしっかりと聞こえていた。

S:まあルリちゃんが喜んでるし別にいいか言わなくても。

そう言って後ろに振りかえるS。

そのSの背後には黒い影が立っていた。

影はバットのようなものを振り上げている。

・・・・・・

そしていつも通りに地面に這いつくばっているS。

Sは泣きながらも今の状況に納得のいかない顔をしていた。

S:なんで僕がこんな目に・・・?(TT)


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