屋台を始めて数ヶ月・・・

今では人気も出てきてこの辺りでは有名になってきました。

その日も沢山のお客さんが来てくれて私たちは忙しくも充実した日を過ごしていました。

そこに、現れたプロスペクターさん。

彼はカイトさんの事に付いて色々と話してくれました。

カイトさんの遺伝子データが見つからなかった事や、カイトさんが何かの計画に関係しているという事・・・

”ヒサゴプラン”に”NH・プロジェクト”・・・これらの言葉の指す意味は何なのか分かりませんが少しだけ嫌な予感がします。

でもきっと大丈夫です。カイトさんは一人じゃないんですから。

それから、カイトさんも正式にテンカワさんの義弟になる事になりました。私はユリカさんの義妹ということになっているのでテンカワさんとユリカさんが結婚すれば私たちは本当に家族になります。その事はとてもうれしかったです。

 

その出来事から数日後、働き疲れたカイトさんが間違って私の布団に入ってきてそのまま寝てしまいました。

わざとじゃないんでしょうけど、その時にはすごく驚いてしまいました。

しかも抱き着かれた時には頭の中真っ白になってどうしたらいいか分かりませんでした。

(でも、カイトさんの腕の中・・・とても暖かったです)(ポッ

その後カイトさんが気が付いて体を離した時は少し寂しかったけど、まだ私にはこういうのは早いですよね・・・私、少女ですから。

(でも、いつか・・・・・・はっ、いけません私ったら何を考えているんでしょう)(真っ赤

 

 

と、とにかく、色々ありましたがこれからも平和な日々が過ごせたらいいですね・・・

 


 

 

機動戦艦ナデシコ

〜妖精の微笑み〜

 

エピソード8:二人の時間

 

 

最近、この辺で強盗が出るという噂が流れてきた。

店じまいの時に、その日の売り上げを狙ってくるのだそうだ。

今日はアキトとユリカは早めに上がって、ルリとカイトの二人で屋台の後片付けをしていた。

「最近、この辺で強盗が多いらしいよ」

カイトが器を洗いながら、隣で器を拭いているルリに話し掛ける。

「人通りのなくなった屋台なんて狙い目でしょうね」

「そ、そうかもね」

(ル、ルリちゃん・・・相変わらずきつい事言うな〜〜)

カイトはルリの言葉に少し顔をヒクつかせる。

ルリの言葉どおり、最後のお客が帰ってからはこの通りも全然人がいなくなり。まさに話の通りの状況になっていた。

そんなこともあって、カイトが今日の売り上げを早めにポケットに仕舞っていると・・・

「あそこに怪しい人影が・・・」

ルリが通りの暗闇を見ながらカイトに話し掛けてきた。

「またまたあ・・・」

カイトがルリの見ている方に目を移すと、確かに遠くに人影が・・・

しかも二人。なんだかぼそぼそと話しをしながらこっちに向かってきているようだ。

(なんか怪しいですね・・・)

ルリはそう思いつつも作業を続けながらカイトに聞く。

「どうしますか、カイトさん?」

「う〜ん」

カイトは少し考えるような顔をして、ルリの方に顔を向けて話し掛ける。

「念のためルリちゃんは屋台の下に隠れてて、僕たちの勘違いかもしれないけどもしかしたらってこともあるから」

「分かりました。でも、もし強盗だったらカイトさんも危ないですよ?」

「ははは、大丈夫だよ。これでも男だからね。ルリちゃんは僕が必ず守るから」

カイトは笑いながらルリの頭を撫でる。

(カイトさん・・・私を守るために、やっぱり優しいですね)(ポッ

ルリは少し顔を赤らめてカイトの指示通り、仕事を辞めて屋台の下のスペースに隠れる。

「でも、気を付けて下さいね」

「うん。心配してくれてありがと」

屋台の下から見上げるように話し掛けるルリにカイトが答える。

それから1分もしないうちに二つの影が近付いてくる。

カイトは緊張した顔で影が通り過ぎるのを待った。

ルリは目の前にあるカイトの手が少し震えているのに気が付き、ゆっくりとその手を握った。

(大丈夫ですよ、カイトさん)

カイトは自分の手の感触に気付きルリの方を見下ろす。

(ルリちゃん・・・)

ルリの気持ちに答えるようにカイトはルリの手を優しく握る。ルリはカイトの手の震えがおさまったのを確認して安心した。

段々と影が近付いてくる。

カツカツカツカツ

カイトは尚も緊張した顔でその音の方向を見る。

(大丈夫、そんな都合よく噂の通りになる訳ない)

 

「お疲れカイト」

「お疲れ〜」

「ア、アキトさん、ユリカさん」

半ば覚悟を決めたカイトの耳に聞こえてきたのはアキトとユリカの声だった。緊張の糸が切れてほっとしたカイトに二人が聞いてくる。

「あれ、ルリちゃんは何処行ったんだ、いないけど?」

「ほんとだ、ルリちゃ〜〜ん?」

「ち、ちゃんといますよ」

カイトは慌てて、隠れているルリの方を見る。ルリもゆっくりと出てくる。

「なんでそんなとこから出てきたの?」

「あ〜やしいんだあ!」

アキトとユリカが訊ねる。

「い、いや、別に・・・」

カイトは口篭もってしまった。

「さっきカイトさんと最近この辺りで強盗が出るって話をしていたんですが、その時にお二人の影を見て勘違いして強盗かと思ったんです。それでカイトさんが私に隠れるように言ってくれたんです」

ルリはカイトの代わりに説明する。

「そうなんだ。そういえば確かにこの辺りで強盗が出たって話は聞いてたけど」

アキトは考えながらそう言う。

「ふ〜ん、じゃあカイト君はルリちゃんを守ろうとしたんだ。さしずめ、カイト君はルリちゃんの王子様って所かな!よかったねルリちゃん、カイト君が守ってくれて!」

ユリカの言葉にルリが少し顔を赤くする。カイトは照れくさそうに笑っている。

「はは、でも安心しましたよ。実際に強盗だったらどうしようかと思ってましたから」

「よかったですね、カイトさん。強盗じゃなくて」

「そうだね」

二人はお互いに安心して笑っていたが、アキトとユリカは二人が手を繋いでいるのに気が付いてニヤリと笑った。

「おや〜、二人とも手なんか繋いでどうしたのかな〜?」

「「えっ」」

ルリとカイトはユリカの言葉を聞いて、自分達がまだ手を繋いでいた事を思い出した。

「いや、これは・・・」(

「こ、これはカイトさんが・・・」(

二人は顔を赤くしながらオロオロしている。アキトとユリカはその姿を見ておかしそうに笑いながら言う。

「ははは、まあ、とりあえず片づけるの手伝うよ!な、ユリカ」

「うん」

二人はとりあえず話が変わったのでほっとしていたがそれはすぐに間違いだと気付く。

「詳しい事は帰ってから聞かせてもらうからな」

「そうそう。二人とも覚悟しててね」

またニヤリ顔でそう言う、アキトとユリカ。

「ははは・・・」

カイトは渇いた笑いを浮かべている。

(ふぅ、強盗じゃなくてよかったですが、ある意味強盗よりも厄介ですね・・・)

ルリも半ば諦めモードで片づけの続きを始めていた。

その後家に帰った後、二人から質問攻めにあったのは言うまでもない。

 

 

カポーン・・・

いきなりですが、私は今銭湯に来ています。

「ふぅ」

一日の疲れを癒すのにお風呂に入るのはとても大事な事ですね。

この時間はお客さんも少ないので銭湯も広々と使えてちょっと得した気分です。

一緒に来たユリカさんは先に帰ってしまったので一人でゆっくりしています。

私は体を洗い、湯船に使って今までの事をぼんやりと考えます。

(カイトさんがナデシコに飛んできて、もう半年以上経つんですね。短いようでとても長く感じます・・・。思ってみれば、カイトさんに出会ってからの私はナデシコに乗る前の私とずいぶん変わりましたね)(クスッ)

私は自分の変化に驚きつつも、小さく笑います。

(でも、私は、昔の私よりも今の私の方が好きです。ナデシコの皆に出会えて、テンカワさんやユリカさん、それにカイトさんと出会えて変わった私が好きです。きっとこれが幸せ・・・なんですね・・・)

私は目を瞑り自分の素直な気持ちを確認します。

(でも、カイトさんは・・・どうなんでしょう。カイトさんには過去の記憶がない。それは今まで自分が出会った人、今まで感じていた幸せをなくしてしまったということ)

「カイトさん・・・あなたは今の自分をどう思っているのでしょう・・・」

私はしばらくそんな事を考えていましたが、ゆっくりと立ち上がり銭湯を出る事にしました。

 

火照った体に外の夜風が気持ちよく感じます。しばらく歩いているとかすかに水の流れる音が聞こえてきました。

(そう言えば川の近くでしたね・・・この音、懐かしいです)

私は側を流れていた川の音に引かれるように堤防に座っていました。私がぼ〜っと川を見ていると

「ルリちゃん・・・?」

と、私の名前を呼ぶ声が聞こえました。私が少し驚いたように振り返るとそこには同じように銭湯の帰りのカイトさんがいました。カイトさんは私の側に来て座りました。

「何してるの?」

カイトさんが私の方を向いて話し掛けてきます。

「水の音・・・」

私は視線を川の方に戻して答える。カイトさんにも耳を澄ますと川の流れの音が聞こえるはずです。

「カイトさんは今でもナデシコに現れる以前の記憶がまったく何もないんですか?」

「うん、何にも」

「寂しく・・・ないですか?」

ほんとはこんな事は聞きたくなかった。最近のカイトさんは良く笑ってるし、もう立ち直ってると思っていたから。

でもほんとはすごく寂しかったら・・・私たちと一緒にいても寂しかったら・・・そう考えるとやっぱり辛いです。

「最近はそうでもないかなあ、でも最初は死ぬほど寂しくなる事もあったよ。ただナデシコの人達との出会いや、ルリちゃんやアキトさん、ユリカさんとの生活の中で少しずつ心の空間が埋められていっているような気がするんだ」

カイトさんは川の方を向いたままゆっくりと話します。私は少なくとも自分がカイトさんの寂しさを癒せている事に嬉しく思いました。

「でも、記憶が戻った方がいいですよね?」

「それはそうだね。自分がどんな奴だったのか知りたい」

「もし、それがとても辛い悲しい記憶だったとしたら、どうですか?」

それは私の正直な気持ち、私の記憶も辛い悲しい記憶だった。もしかしたら思い出さない方が幸せだったのかもしれない。

だけど辛い悲しい記憶だけじゃなかった。私だけの記憶、そう、この水の音は私の辛い記憶の中で唯一私を救ってくれたもの。それだけでも思い出してよかったと思っている。だからこそ過去の記憶は自分にとって大切な物になった。

(カイトさんも私と同じように考えてくれたら嬉しいです)

「それでも思い出したいよ」

「そうですよね」

私はカイトさんの迷いのないその答えに少しだけ嬉しくなった。

(この人も私と同じ考えなんだ・・・)

私はカイトさんが、思った通りの答えを聞かせてくれた事に満足して話し掛ける。

「そろそろ帰りますか」

「そうだね」

私が立ち上がるとカイトさんも立ち上がり、二人で夜の下町を歩き始めました。

しばらく歩いていると

ブル

お風呂から出て長い間夜風に当たっていたので少し寒くなってきたのか、私は体を震わせました。

「ルリちゃん、大丈夫?」

カイトさんが心配して話し掛けてきます。

「はい、大丈夫です。少し体が冷えただけですから」

私がそう答えるとカイトさんは少し考えるような顔をすると私の手を優しく握ってきました。

「カ、カイトさん」(ポッ

「手を繋いでるだけでも結構違うもんだよ」

カイトさんは照れながら私に笑いかけてきました。

「そうですね・・・」

私はカイトさんの好意を受け取る事にしてカイトさんの手を握り返しました。

「さあ、風邪を引かないように早く帰ろう」

「はい」

私とカイトさんは手を繋いだまま並んで歩きました。

(不思議ですね・・・手のひらの温もりだけでこんなに体中が暖かくなるなんて・・・)

私は少しだけ顔を赤くしながらその温もりを感じていました。

家に着いてからも手の平の温もりがまだ残っていました。

 

そして月日は流れて今日はクリスマスです。

その日はユリカさんの

「クリスマスは皆で町に出て過ごしましょう」

という提案のもと、屋台はお休みになりました。

「まあ、しょうがないか」

テンカワさんも苦笑しながらその提案を飲む。

「クリスマスか・・・」

「カイトさんはクリスマスは初めてですよね」

「うん、記憶を無くしてからは初めてだよ。楽しみだなぁ。ルリちゃん、楽しいクリスマスにしようね」

「はい」

カイトさんが私に笑顔で話しかける。私も笑顔で答えます。

(カイトさんといっしょの初めてのクリスマス・・・すごく楽しみです)(ポッ

という訳で、私たちは揃って町に出かけました。

まずはお昼ご飯を食べてから、映画を見に行きました。

前回の映画はゲキガンガーの映画でしたが今日は違う映画を見ました。

「やっぱりクリスマスに見る映画といえば恋愛物よね〜」

ユリカさんがウットリとしながら声を出す。

「う〜ん、俺ってあんまりそういうのわかんないんだよな〜」

テンカワさんはユリカさんとは反対にあんまり乗り気じゃないみたいです。まあ何と無く分かりますけど。テンカワさんは熱血物が好きですから。

「カイトさんはどうなんですか?」

私は隣に座っているカイトさんに聞いてみる。

「僕もあんまり見ないからね、何とも言えないよ。ルリちゃんは?」

「私は別に嫌いじゃありません」

最近は私も小説で恋愛物はよく読んでいるので嫌いじゃありません。

なんで恋愛物を読んでるのかって?

それは、カイトさんとの予行演習・・・ハッ、何を言わせるんですか!(ポッ

とにかく私たちはユリカさんに連れられて映画館の中に入りました。

「”クリスマスの奇跡”ですか」

私はパンフを見て題名を確認する。

「う〜ん、なんかすごくベタなタイトルだね」

「そうですね」

確かにクリスマスの日にこのタイトルはすごくベタな気がします。

私たちがそんな事を話している隣ではユリカさんがテンカワさんに映画の内容を色々と話していました。

「ユリカ、お前この映画見たことあるのか?」

「ううん、ないよ。でも友達から恋人同士でこの映画を見たら絶対幸せになれるって聞いたから、これは絶対にアキトといっしょに行かなきゃって思って!」

ユリカさんが少し興奮気味に答える。

「ははは・・・」

テンカワさんが少しあきれ気味に答える。

(絶対幸せになれる・・・ですか。もしかしたら私もカイトさんと・・・)(ポッ

私もユリカさんの言葉を聞いて顔を赤くしてしまいました。

「・・・ん」

「・・・ちゃん」

自分の世界に入っていた私の耳に何か聞こえてきました。

「ルリちゃん」

ハッ

私はその声で我に返りました。どうやらカイトさんが私を呼んでいたようです。

「何ですか、カイトさん?」

「どうしたのさっきからボーッとして」

「いえ、何でもありません」

私がそう答えるとカイトさんは不思議な顔をしていましたが、気を取り直して

「ジュースを買ってこようと思ったんだけどルリちゃんは何がいい?アキトさんとユリカさんの分は聞いたから後はルリちゃんだけなんだけど」

「私は・・・オレンジジュースでいいです」

「うん、分かった。ちょっと待っててね」

カイトさんはそう言うと席を立ちジュースを買いに行った。

「ルリちゃんほんとに大丈夫?」

隣のユリカさんが私に声を掛ける。

「大丈夫です」

さすがに何を考えていたのかは言えません。

その後ジュースを買ってきてくれたカイトさんが戻ってきて、映画が始まった。

映画の内容はまさに恋愛物の王道で”結婚を誓った二人がそれぞれの身分の違いから親に反対され、そのまま駆け落ち、それを知った親が二人の仲を認めてクリスマスの日に結婚式を挙げてハッピーエンド”という物だ。

(なんかテンカワさんとユリカさんに似ていますね・・・)

「何かアキトさんとユリカさんに似てるね・・・」

同じ事を思ったのかカイトさんが話し掛けてきます。

隣ではテンカワさんやユリカさんもそう思って笑っていました。

 

 

映画館から出てから私たちはショッピングに行く事にしました。

しばらく歩いていると

「ねえ、ルリちゃん」

ユリカさんが私に話し掛けてきました。

「なんですか、ユリカさん」

「これからちょっと付き合ってくれないかな」

「私がですか?」

「そう」

「それなら、テンカワさんの方がいいんじゃ」

「今回はルリちゃんの方がいいの」

「はあ・・・私はかまわないですけど」

「ありがと!」

ユリカさんはそう言って笑うとテンカワさんの方に振り向いて

「ねえ、アキト。これから、少しだけルリちゃんと買い物してくるから、一時間後にここで合流しましょう!」

「いきなりどうしたんだ、ユリカ」

テンカワさんが不思議そうに聞く。

「とにかくそういう事で、また一時間後に会おうね。さっ、ルリちゃん行こう!」

「はい、それではカイトさんまた後で」

「うん、分かったよ」

私はカイトさんに挨拶してユリカさんの後に付いていった。

その場に残ったテンカワさんとカイトさんは不思議そうな顔をして私たちの後ろ姿を見ていました。

 

「ユリカさん、何処に行くんですか?」

しばらく歩いてから私がそう訊ねるとユリカさんが私の方を向いて笑いました。

「ふふふ、これからアキトにクリスマスプレゼントを買いに行くのよ」

「クリスマスプレゼントですか?」

「そう!アキトの妻としては愛する旦那様にプレゼントを贈るのは当然の事よ」

ユリカさんはウットリとした顔で語っている。

「はあ、そういうものですか」

私が少しあきれ気味に言うとユリカさんが私に言ってくる。

「何言ってるのルリちゃん。ルリちゃんもカイト君に何かプレゼントしてあげないと」

「えっ、私がカイトさんにですか?」

私は少し驚いて聞き返しました。

「もちろん!ルリちゃんからプレゼント貰えればカイト君すごく喜ぶと思うよ」

ユリカさんが笑って答える。

(私がプレゼントをあげれば・・・・・・カイトさん、喜んでくれるのでしょうか・・・)

少し顔を赤くしながらそんな事を考える私をユリカさんが嬉しそうに見ていました。

「分かりました、ユリカさん」

私は赤い顔のままそう答えました。

「それじゃあ、そうと決まればさっそくプレゼントを買いに行きましょう!」

その後私たちはクリスマスプレゼントを買いに辺りのお店を渡り歩きました。

 

その頃カイト達は・・・

「どうしたんでしょう、二人とも?」

「う〜ん、これは何かあるな」

二人して考えながら道を歩いているとオモチャ屋のウインドウに”お子様へのクリスマスプレゼントは当店で!!”とデカデカと書いている張り紙を見つけた。

「「なるほど!」」

二人はユリカの行動を理解した。

「アキトさん、僕たちもプレゼントを買いにいかないと行けませんね」

「そうだな、俺達だけもらう訳にはいかないからな」

二人はお互いに頷き合うと

「それじゃあ、行きましょうアキトさん」

「よし!」

二人並んでプレゼントを買いにお店に向かった。

(う〜ん、ユリカに送るとして何がいいかな〜)

(ルリちゃん、プレゼントをあげたら喜んでくれるかなぁ)

二人はそれぞれ考えながら歩き出した。

 

それから一時間後・・・

「お待たせ!」

「お待たせしました」

私たちは待ち合わせの場所でカイトさん達と合流しました。

「お、来たな」

「お二人とも買い物は済んだんですか?」

カイトさんが笑顔で聞いてくる。

「うん、バッチリ!ね、ルリちゃん」

「はい」

私たちはお互いに笑って答えました。

(カイトさん・・・喜んでくれるといいですね)

「それじゃあ、夕食を食べに行くか」

テンカワさんの言葉に皆頷いて食事に行きました。

 

食事を楽しんでから私たちは以前行った公園にいました。

(以前はこの公園に来て眠ってしまったんですよね私・・・その時にカイトさんにおぶってもらって・・・皆さんが私の事を大事に思っている事を知る事が出来てとても幸せでした)

私はあの日以来、この場所が好きになっていました。

「ねえ、アキト。私、なんだか喉が渇いてきちゃった」

ユリカさんがテンカワさんにそう言う。

「なんだよ、いきなり」

「だって、喉渇いたんだもん」

「それじゃあ僕が飲み物、買ってきますよ」

ユリカさんが尚もそう言うと、カイトさんがユリカさんに話しかけました。

「わ〜、ありがと。カイト君」

ユリカさんが嬉しそうに笑う。

「いいのか?カイト」

「ええ、かまいませんよ」

テンカワさんにそう答えるカイトさん。

その時ユリカさんが私の耳元で呟きました。

「ルリちゃんも付いていきなよ、プレゼントを渡すチャンスだよ」

「えっ」

私がユリカさんの方を向くとユリカさんが笑顔で頷いていました。

(ユリカさん・・・)

私も頷くと歩いていったカイトさんの後を追いました。

「ユリカ、喉が渇いたなんて嘘だろ」

「あっ、ばれちゃった」

カイトは気付いていなかったがアキトは気付いていたようだ。

「まったく、カイトの性格からあいつがああ言うのは分かってるだろ。まあ、今回は別にいいけど。カイト達に気を遣ったんだろ」

「そうそう、二人のためにお姉さんが一肌脱いだのです」

「はは、そういう事にしといてやるよ」

「うん。それに私も二人きりでアキトにプレゼントあげたかったから」

「俺からもユリカにプレゼントがあるんだ」

ユリカがプレゼントを出すと、アキトもプレゼントを差し出した。

「ほんと!やっぱりアキトは私の王子様だね!」

二人は幸せそうにお互いのプレゼントを交換し合った。

 

テンカワさんとユリカさんから離れた私は、前を歩いていたカイトさんに追いつきました。

「カイトさん」

「えっ、ルリちゃん?」

カイトさんは振り向いて答えます。

「どうしたの?」

「あ・・・あの・・・その・・・」

私はカイトさんの笑顔を見て急に恥ずかしくなりました。

(どうしたんでしょう私・・・”クリスマスプレゼントです”の一言が言えないなんて・・・)

それから私が俯いて黙っているとカイトさんが私の目の前に何かを差し出しました。

私がカイトさんの顔を見ると、カイトさんは顔を赤くして言いました。

「ルリちゃん、僕からのクリスマスプレゼント・・・受けとってくれるかな」(

私は最初カイトさんが何を言っているのか分からなかったけど、その事を理解するとなんだか胸の奥が熱くなってきました。

(カイトさんが・・・・・・私にプレゼントを・・・)

「ルリちゃん?」

尚も黙っている私を心配してカイトさんが声を掛けてくる。私はゆっくりと手を差し出してカイトさんのプレゼントを受け取った。

「ありがとう・・・ございます、カイトさん」

私が笑顔でそう言うと、カイトさんはすごく嬉しそうに笑っていました。

「あ・・・あの、わ、私からもカイトさんに・・・プレゼントが・・・」(

私はカイトさんの笑顔に後押しされるように、さっきから言いたかった一言をようやく言う事ができました。プレゼントを差し出す私の手が少し震えてます。

「僕に・・・かい?」

「はい」(

カイトさんが私に聞いてくる。私は俯いたままそう答える。きっと私の顔は真っ赤になってるから。

「ありがとう、ルリちゃん」

カイトさんがそう言って私のプレゼントを受け取ってくれた。

私が顔を上げるとカイトさんがいつもの優しい笑顔を向けてくれていた。私もそれに答えるように笑顔を向ける。

(カイトさんが喜んでくれてよかった)

私はそう思いながら今の嬉しさを体中で感じていました。

 

その後、私とカイトさんがジュースを持って戻ると、ユリカさんが私の方を見詰めてきました。

私がユリカさんに笑顔を向けると、ユリカさんは優しい顔で頷いていました。

(ユリカさん・・・ありがとうございます)

 

家に帰ってから私は布団の中で今日の事を考えました。

クリスマスがこんなに緊張する物だとは知りませんでした。去年まではこんな風に過ごす事になるなんて思いもよらなかったから。

でも・・・今日は、すごく幸せでした。

来年のクリスマスも、今日みたいに幸せな日になるといいな・・・

 

 

〜続く〜

 


後書き:

S:どうも、S=DASHです。”エピソード8:二人の時間”をお送りしました、いかがだったでしょうか。僕は相変わらずスランプが直ってません・・・フゥ。うう、早く治さないといけませんね。

ルリ:どうも皆さんこんにちは、ホシノ・ルリです。

S:ルリちゃん、今日は何も言わないんだね。

普通に挨拶するルリに少し驚くS。

ルリ:何か言ってほしいんですか?

S:別にそういう訳じゃないですけど。

ルリ:今日の私は気分がいいんです、今回のお話は気に入ってますから。

S:そう言ってもらえると嬉しいよ。今回はルリちゃんとカイト君の二人の話が主なものですから。

カイト:僕もルリちゃんにプレゼントをもらえて嬉しかったですよ。

笑顔でルリの隣に現れるカイト。

ルリ:あ、カイトさん(ハァト

S:カイト君もルリちゃんにプレゼントをあげたんですよね。

カイト:ええ、ルリちゃんも喜んでくれてよかったです。

ルリ:カイトさんからもらった写真立て、大事にしますね。

カイト:ありがとうルリちゃん。僕もロケット、大事にするよ。

見詰め合うルリとカイト。(ちなみにルリからカイトへのプレゼントは飾りの中に写真が入れられるロケットで、カイトからルリヘのプレゼントは薄い青色の写真立てだ)

S:なんか二人だけの世界に入っていっちゃったみたいです。当分帰ってきそうにありませんから今日はこの辺で終わりましょうか。

ルリ:カイトさん。

カイト:ルリちゃん。

まだ見詰め合う二人。

S:・・・なんか、腹が立ってきました・・・独り者の私を差し置いて二人だけでイチャイチャと・・・次の話ではラブラブは無しにしようかな。

Sが少しうらやましそうに見ながらそう言う。

ルリ:(ピクッ)

カイト:どうしたのルリちゃん。

ルリ:いえ、それよりも向こうでユリカさんが探してましたよ。

カイト:そう言えばアキトさんの代わりに買い物を頼まれてたんだ。ルリちゃんもいっしょに行くかい?

ルリ:はい!すぐに用意しますからちょっと待ってて下さい。

カイト:うん、玄関で待ってるから。

ルリ・カイト:SSを読んで下さった皆さんどうもありがとうございました。これからも頑張っていきますから応援して下さい。感想や意見などどんな些細な事でも結構ですのでメールで送ってください。それでは、次のお話でまたお会いしましょう。(ペコリ)

後ろを向いて玄関に歩いていくカイト、それとは反対にSの方に歩いていくルリ。

Sは机に向かって次回のSSを書いているのでルリの事に気付いていない。

ルリ:Sさん(^^)

S:今、忙しいから後にして・・・そうだな今度の話はルリちゃんの失恋話でも書こうかな・・・

声を聞いても、まだルリだと気付かないS.

ルリ:ムッ(−−メ

もはやおなじみのG釘バットを振りかぶるルリ。机に映る影に気が付いて後ろを振り向くS。

S:ハッ、まさか!?ル(ガス)

こちらももはやおなじみのように頭から血を流しピクピクするS。

ルリ:・・・作者の分際で私とカイトさんの中を引き裂こうとするからこうなるんです。(ニヤリ)

ルリはSの書いていたSSを手に取り偶然近くにいたヤギに食べさせる。

メーー、ムシャムシャ

ルリ:これでよし、さあこれからカイトさんと買い物に行くんだから服を着替えないと(^^)

嬉しそうに自分の部屋に向かうルリ、後に残るのはやはりおなじみのS。

S:なんで僕がこんな目に・・・(TT)


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