戦争のきっかけであった火星の遺跡のコアをナデシコの本体ごと宇宙の彼方に飛ばした私たち。
その後、地球に向けて出発したナデシコに新しい仲間が現れました。
ボソンジャンプ後の点呼で発見された、見知らぬ人。
ホウメイさん曰く『変なの』がナデシコに飛んできた理由は分からないけど、そんな事でいちいち慌てる人なんて、ナデシコにはいませんね。
中には若干よからぬ事を考えている人もいるようですけど。(あの人達の考えてる事も何と無く分かりますけど)ただ私にはそれよりも気になる事があります・・・・・・
何処からともなく現れた彼・・・
記憶を無くした彼・・・
そして私の心の中に入り込んできた彼・・・
・・・・・・
私の中でなにかが生まれてくるのを感じます。この気持ちは一体なんなのでしょうか?
私の疑問も解決せぬままに、ナデシコは今日も地球に向けて進みます。
機動戦艦ナデシコ
〜妖精の微笑み〜
エピソード2:初めてのキス?
ここナデシコの厨房では、いきなり艦長の提案で催される事になったパーティーの準備に忙しく動き回るナデシコのコック一同の姿がコミュニケを通して私の目の前に映っています。
ナデシコクルー全員の料理となると生半可な量じゃありません。今もホウメイさんの指揮の下テンカワさんや、ホウメイガールズの皆さんが厨房でせわしなく料理をしています。
私はその様子をブリッジのオペレーター席でボーッと眺めています。ほんとなら私もパーティーの準備をしなくてはいけないのですが、前回の木星トカゲ襲撃のこともあってか、私はブリッジで待機中です。
(暇・・・・・・ですね)フゥッ
基本的に待機中と言っても、とくにやる事があるわけではありません。ただ時々外の状況を確認するぐらいです。はっきり言って暇です。ミナトさんもメグミさんも艦長といっしょにパーティー会場のセッティングに行っていて、ブリッジには私一人しかいません。
(こんな事ならミナトさんに何か本を借りてくればよかったですね・・・)フゥッ
<ルリ、どうしましたか?>
目の前にウインドウが出てきます。
「オモイカネ・・・」
<はい>
「暇です」
<・・・・・・>
オモイカネがいきなり黙ってしまいました。
<そ、それではゲームでもしますか?>
前の私なら暇な時はオモイカネとゲームで暇をつぶしていましたが、最近それにも飽きてきました。いえ、それ以前の私なら退屈など感じる事などなかったでしょう。これもナデシコに乗ってから得た感情の一つなのでしょうか。
「それは飽きました」
<・・・・・・>
オモイカネがまた黙ってしまいました。
「そういえば、カイトさんはどうしてますか」
私はカイトさんのことを聞いてみました。たしか今は、イネスさんのところで検査を受けているはずです。そのおかげであれ以来カイトさんには会っていません。
(そろそろ終わった頃でしょうか?)
<カイトさんの反応はメディカルルームから動いていません>
「そうですか」
<モニターに映しますか?>
「そう・・・ですね。お願いします」
私がそう言うと目の前に新しいウインドウが出てきます。そこには診察用の丸椅子に座ったカイトさんがイネスさんから話を聞いているようでした。
『カイト君だったわね』
『はい』
『結論から言うと、記憶喪失という症状は人為的に直す事はほとんど不可能です。こればっかりは自然に思い出すのを待つしかないわね。さっきの検査の結果からも特に外傷は見つからなかったし、だとすればジャンプによる一時的な記憶の喪失と考えたほうがいいでしょう。無理に思い出そうとすれば脳にどんな影響を及ぼすか分からないわ。まあ、気長に待っていた方がいいわね』
黙ってイネスの言葉を聞いているカイト。
「ナデシコのデータバンクにもあなたの遺伝子データに該当するものは見つからなかったわ、まあ地球に戻ればその辺りは何とかなるかも知れないけど・・・」
『そう・・・・・・ですか』
『そんな顔しないで、あなたの記憶が本当に必要な物ならきっと思い出す事が出来るわ。それに、忘れるって事はその記憶があなたにとって、必ずしもいい思い出であるとは限らないのだから』
『そうですね、どうもありがとうございました』
『とにかく焦らない事。無理だけはしちゃだめよ』
『はい』
少し笑って部屋から出て行くカイト。
私にはメディカルルームから出て行くカイトさんの顔がさびしそうにみえました。
(カイトさん、さびしそうな顔をしていました。無理もありませんね)
その顔を見て私の心もなんだかさびしくなったきました。
『彼の遺伝子データはナデシコのデータバンクにはなかった・・・けど』
ウインドウを切ろうとした私の耳にイネスさんの言葉が聞こえてきました。
『もしかしたら、彼は・・・・・・そんなはず・・・ないわよね』
イネスはさんそう呟きましたがすぐに気を取り直して仕事に取りかかりました。
私はウインドウを切るとさっきの事を考えます。
(イネスさんは、何か知ってるんでしょうか・・・・・・ちょっと気になりますけど、今はカイトさんのほうが心配ですね)
私はカイトさんの居場所を聞こうとオモイカネに話し掛けます。
「オモイカネ・・・」
<カイトさんなら展望室にいますよ>
「えっ?」
私はちょっと驚いてしまいました。
(なんで、分かったんでしょう?)
<今のルリの顔を見れば誰でも分かりますよ>
(顔に出てましたか・・・気を付けないといけませんね。・・・それにしてもオモイカネも妙なところで人間に似てきてしまいましたね)
私はちょっと顔を赤くしながらオモイカネに後を任せると展望室に向かいました。
展望室
座ってボーッと外を見ているカイト。ルリが来た事にまだ気づいていない。
「カイトさん」
カイトはその声に驚きながら振り向く。
「ルリちゃん、どうしたのこんな所に」
「さっき廊下でカイトさんがここに入っていくのを見かけたので」
もちろん嘘です・・・でもほんとの事は恥ずかしくて言えません。私、少女ですから。
「隣、座ってもいいですか?」
私の言葉に笑顔で返すカイトさん。でも私にはその笑顔が何処か無理をしているように感じました。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私たちは何も話さずに外を見ています。まるでそうする事が自然であるかのように、私たちの間に気まずい感じは全然ありませんでした。
「ありがとう、ルリちゃん」
いきなりのカイトさんの言葉にわたしはカイトさんの方に顔を向ける。するとカイトさんが優しい笑顔で私の事を見詰めています。
「何が・・・ですか?」
顔が赤いのを見られないように少し俯くルリ。
「僕の事を心配してくれたんだろ」
「そんな・・・・・・だってカイトさんもナデシコの仲間ですから当然です」
ルリは照れ隠しにそんな事を言う。
(ううん、そんなんじゃない。私はこの人のさびしそうな顔を見たくなかったから・・・だから)
「ルリちゃん、そんな顔しないで。僕はもう大丈夫だから」
どうやら私は不安そうな顔をしていたようで、反対にカイトさんに心配されてしまいました。
「イネスさんに言われたように、今は無理をしないでゆっくりと思い出していくつもりだよ。それに僕にはナデシコの人達がいるから、大丈夫だよ」
私はカイトさんの言葉に安心して、ゆっくりと微笑む。
「それに、僕にはルリちゃんもいるからね」
「な、なにを言うんですか」
ちょっとおどけたカイトさんのその言葉に今度は真っ赤になって俯く私。カイトさんはそれを見て優しく笑っています。
私達はその後もパーティーの準備が出来るまで展望室で外を見ていました。ミナトさん達が私たちを呼びに来るまで・・・
余談だがその時の様子を迎えに来たミナト達に見られたルリとカイトはパーティーの間中、からかわれたのは言うまでもない。
午後11時、パーティーが終わってから私は自分の部屋で考え事をしていた。
それは・・・・
パーティーにて
「ん、おい、胸のポケットに入っているもの、何だよ?」
カイトをからかっていたアキトが左胸のポケットに入っている物に気づいて指差す。
カイトが自分の左胸に視線を移すとそこには紙のような物が入っていた。
「そう、それだよ」
カイトさんが胸から取り出した物は一枚の写真。その写真を見て、テンカワさんが声を上げる。
「その子は・・・あのときの!」
「新入り!」
リョーコさんも横から写真を見て驚いています。そう、その写真に写っていたのは過去にテンカワさんの代わりにナデシコに配属されたパイロット、イツキ・カザマさんでした。
「知っているんですかこの人?誰なんです!ナデシコのクルーですか!」
カイトさんがすごい剣幕で聞いてきます。無理もありません、自分の過去が分かるかもしれないんですから。
「以前、地球で俺と入れ替わりに配属されたナデシコのパイロットだよ」
「地球で」
「ルリちゃん彼女のデータ調べて見てくれる」
私は黙って頷くとオモイカネにデータを検索してもらいます。
検索中・・・・・・・・・・・・・
検索中・・・・・・・・・・・・・
検索終了
「イツキ・カザマ、本名同じ・・・2181年生まれ、・・・国籍日本。宇宙連合に入隊後、ネルガル火星研究所にパイロットとして配属。その後ナデシコに転属。カワサキシティにおいて敵木星トカゲ迎撃に出動。戦闘中、敵ボソンジャンプに巻き込まれ殉職・・・以上です」
「彼女が過去を知っている」
カイトさんが一人呟く。
「知っていたんだの間違いだと思います」
私はちょっとキツメにそう言った。
「そうだね・・・。ありがとう、ルリちゃん」
カイトさんの落ち込んだ顔を思い出して少し気分が沈む。けど私はその事よりも自分の中にあるモヤモヤした感情に戸惑っていた。一度しか会った事がない彼女がカイトさんの過去を知っている。その事実が私の中にモヤモヤを作り出していた。私は頭を振ってそのモヤモヤを取り除く。
その話の後から私は誰とも話していません。なぜだか分からないけど今は一人になりたかったから。
今も私はベットに寝転がって考えてる。でも考えても答えは見つからない。その内に私は睡魔に負けて眠りに就くことにしました。そうする事でこのモヤモヤを忘れるように。
次の日になって私は一晩眠ったおかげでだいぶ元気になっていました。モヤモヤはまだ完全に消えてはいないけどもう考えるのは止める事にします。
(彼女はもういないんですから、考えてもしかたありませんよね)
私がちょうど下着の上に服を着替え終わった時にコミュニケが開いてユリカさんが出てきました。その後ろにはアオイさんやウリバタケさんもいます。
『ルリちゃん、大事な話があるからすぐにバーチャルルームに来てくれる?』
(艦長、いきなり繋ぐのは止めてくれませんか。もうちょっと早かったら見られちゃうところじゃないですか)
私は頭の中でそう思いながらも顔には出さずに答える。
「バーチャルルームですか?」
『そう、カイト君に関する事なんだけど』
ちょっと疑わしげに聞いていた私もカイトさんの名前が出てきたところで興味を引かれました。昨日あんな別れ方をしたのでカイトさんに会いたかったのでちょうどよかったです。
『と言うわけで、急いでね!』
「わかりました」
ウインドウが切れたのを確認すると、私は部屋を出てバーチャルルームに向かいました。今にして思えばなぜ大事な話をバーチャルルームでするのか不思議に思うべきでした。気づいていればあんな恥ずかしい思いをしなくて済んだのに。
バーチャルルーム
「あっ、ルリちゃん」
私が中に入ると皆さんもう集まっていました。私はさりげなく見つけたカイトさんの隣に移動します。本当にさりげなくですよ。なのにミナトさんが笑っています。
(ミナトさん、その笑いは何ですか?)
「さてっと、ルリちゃんも来た事だし本題に入りましょうか」
艦長がみんなに向かって話し掛ける。
(この人は一体何をするつもりでしょうか?)
「あのー、ユリカさん。この部屋って一体なにをするところなんですか?」
カイトさんがこの部屋についてたずねると、いきなりイネスさんのコミュニケが出てきました。
『説明しましょう。この部屋は・・・』
やっぱり出てきましたね、”説明おばさん”。でも・・・
プチッ
私はオモイカネに頼んでイネスさんのコミュニケを切ってもらいました。
「艦長、続けて下さい」
私はしれっとした顔で艦長に話し掛けます。
「ル、ルリちゃん」
艦長は少しひきっつた顔をしていますが、今は”大事な話”のほうが重要です。
「ま、まあ、とにかく話を進めましょう。っと、この部屋についてだったわよね。この部屋は簡単に言えば一種の疑似空間を作ってその世界の人物になって楽しもうって物なのです。主にクルーの精神安定を目的に作られた物なんですが、今回はこの部屋を使ってカイト君の記憶を取り戻そうっていう魂胆なのです!」
「この部屋を使って記憶を取り戻す・・・ですか」
艦長の言葉にカイトさんが不思議そうな顔をしている。
「でも、具体的にはどうするんです艦長?」
メグミさんが私たちを代表して聞きます。
「ふっふっふ。みんな昨日の事を思い出して、彼の過去を知るただ一人の人物がいるのをわすれたの?」
艦長が自信ありげにそう言うと、テンカワさんがなるほどっと頷いて答える。
「ようは、写真のイツキさんに会えば記憶が戻るかもしれないって事だな!」
「そう、そのとおり。その為にここに集まってもらったのです。さっすがアキト、私の考えを一番に気づいてくれたのね。ユリカうれしいっ!」
「それはいいんですが、誰がイツキさんの役をやるんですか?」
暴走しかけた艦長を止めるために私がそうたずねると
「それはもちろんジャンケンで」
「ジャンケンですか?」
「そう。で、勝った人がイツキさん役をやる人を指名するの」
「それじゃあ、とりあえず女性の人だけでジャンケンするわけですよね」
メグミはそう言って辺りを見回す。
「ってことは、艦長、私、メグちゃん、エリナさん、ユキナちゃん、リョーコさん、ヒカルさん、イズミさんと・・・後はルリルリって所かな?」
「私もですか?でも・・・わたし、少女ですから」
私は少し驚いてミナトさんに聞きます。
「もちろん!この際年齢は関係ないわよ。ウリバタケさんが改造して年齢や身長も変更可能になってるしね!」
私の顔を見て、ミナトさんがちょっと意地悪そうに笑う。
「あと、イネスさんもいますよ」
メグミさんの言葉と同時にイネスさんのコミュニケがもう一度出てきます。
「ちょっとホシノ・ルリ、いきなりコミュニケを切らないでくれる。あの後誰もいないのに一人で説明しちゃったじゃない!」
(もっと早く気づかなかったんですか?)
いきり立つイネスの向こうではいつもの三人組が騒いでいた。
「リョーコちゃん、もし私たちが勝ったらリョーコちゃんを指名してあげるからね!」
「私の指名はマキ・イズミ、それは氏名・・・くっくっく」
イズミは何がおかしいのか分からない自分のギャグに含み笑いしている。
「いちいち、っんなことするんじゃねーよ」
相変わらず、ヒカルとイズミにからかわれるリョーコ。
その後は、艦長の説明を受けたイネスさんも交えて、ジャンケンが行われた。話を聞いたイネスさんが私のほうを見て意地悪そうに笑っていたみたいですが私は気付きませんでした。
男性陣は女性陣の間に入る事が出来ずにぼーっと成り行きを見守っています。
「・・・で、ジャンケンの結果勝者は、イネスさんになりました」
「ふっ、当然ね。私の頭脳を持ってすれば、貴方達の出すものなんて簡単に分かるわ」
(あんまり関係ないような気もしますが・・・)
「それじゃあ、選ぶわよ。ふっふっふ、そうねー。じゃあホシノ・ルリにやってもらおうかしら」
「えっ」
「聞こえなかったの、ホシノ・ルリ」
私はその言葉に我に返ると、イネスさんのほうに顔を向けました。・・・・笑っています。
(さっきの事をまだ根に持ってたんですね)
「それじゃあ、ルリちゃんに決まりだね。じゃあ、ルリちゃんこっちに来て」
艦長がさっさと話しを続けていきます。私は仕方なく艦長の言う通りにします。
「ルリちゃん、嫌なら無理しなくていいんだよ」
俯いている私にカイトさんが声を掛けてきました。カイトさんはもうしわけなさそうな顔をしています。
「別に・・・いいです」
私は俯いた顔を赤くしながらそう言った。
(そう、別に嫌なわけじゃなくて単に恥ずかしいだけ・・・。二人だけならまだしも周りにはみなさんが私たちを見てるから・・・)
「そう言えばルリルリがバーチャルルームで遊ぶのなんて始めてみるぜ」
「そう言えばそうですね。ルリちゃんあんまりこーゆうのに興味ないみたいだし」
「ルリルリのことだから結構演技力もすごかったりしてな」
後ろのほうではウリバタケさんとテンカワさんが私の姿を見て驚いていました。
「えーと、設定は従兄弟の家に遊びに来た高校生の男の子とその彼に思いを寄せる同い年の女の子の10年ぶりの再開・・・と。じゃあはじめるよ〜〜」
ヒカルさんが勝手に設定を決めて装置を起動させると私とカイトさんの頭の上にヘッドセットが降りてきてそれと同時に視界が暗転、さっきの部屋でなく何処かの家の玄関にいる私たち。設定により写真の通りのイツキさんの年齢をした私が玄関でカイトさんを出迎えるシーンのようです。
「カイトさん」
「君は?」
「イツキです。やっと、会えました・・・・・・10年間、ずっと待ってました。」
「ごめん・・・僕には君の思い出が何もないんだ」
俯いていたが意を決したようにカイトの胸に飛び込むイツキ。
「イ、イツキさん!」
「あなたが私の事を忘れても、私はあなたの事を忘れた事は一度もありません」
イツキはカイトの胸の中で涙を流す。カイトは黙ったままイツキを見ている。
「・・・・・・」
「もう、私を一人にしないで・・・・ずっとそばにいて下さい」
そう言って目を瞑り、顔をあげるイツキ。カイトはイツキを抱きしめゆっくりと顔を近づけていく。
(カイトさん・・・・・・)
キスと言う物がどんなものかは知識としては知っているが、自分がなぜこんな事をしているのか不思議でならなかった。ただ、寂しそうな顔のカイトさんを見てどうにかしてあげたいと思ったから。
そしてついにその時がきたが、それは自分の思っていた場所ではなかった。つまり、唇ではなく額にキスされたのだ。そして・・・
「もういいよ、ルリちゃん」
耳元に聞こえるカイトさんの言葉と同時に視界が暗転、私が目を開けるとそこはいつものバーチャルルームでした。
周りの人達はルリの演技に固まっている。ルリの方ははなぜ終わってしまったのか分からずカイトの顔を見ていた。
「ルリちゃん、ありがと。僕のためにここまでしてくれて。でもああいう事はやっぱり大事な人にとって置いたほうがいいよ」
カイトさんはそう言うと私に笑顔を向けて頭を撫でる。カイトさんの言葉に気づいた私は耳まで真っ赤にして俯いてしまった。
(わ、私。なんであんな事したんでしょう。いくら演技とは言え・・・)
私は自分の行動に戸惑いました。
「それから皆さんも、僕のためにありがとうございます。記憶は戻らなかったけど皆さんの気持ちだけで十分です。」
その言葉に我に返った周りの人達。
「ざ、残念だったね。記憶、戻らなくて」
ユリカが赤い顔をしながら答える。どうやら周りの人達も予想外のルリの行動に顔が赤くなっている様だ。
「う〜〜む、まさかルリルリがあんな行動をとるとは」
「私、あのまま二人がほんとにキスしちゃうんじゃないかと思いました」
ウリバタケの言葉にメグミが続く。他の人も驚いていた。
ただミナトだけは、顔を真っ赤にしながら俯いているルリの事を見ながら優しく微笑んでいた。
この後も私は顔の赤みが消える事がなく、仕事の間中ミナトさんたちにからかわれてしまいました。とても恥ずかしかったです・・・
夜、ルリの部屋にて
(ふぅ、今日はとんだ災難でしたね)
枕に顔を押し付けて今日の事を考える。あの後のミナトさん達にからかわれたのを思い出してため息を吐くが、一転してその顔が崩れてきます。
(・・・でも・・・)
フフフッ
私は自分でも気づかないうちに笑っていました。おそらく今の私の顔は信じられないくらい真っ赤になってますね。
(あの時のカイトさんの胸、暖かかったですね。そう・・・まるで私のすべてを包み込んでくれるような・・・とても優しいぬくもり)
そして、自分の額に指を持ってくる。そこは始めて私がキスされた場所。あの人の優しさを一番感じたところ。
(あのまま、唇にされてたら。私どうなってたんでしょうか・・・)
その事を考えると胸のどきどきがどんどん大きくなってきました。
(どうやら今日は眠れそうにありませんね。)
私は眠るのを諦めて今日の事を日記に書くために机に向かいました。
その頃ある部屋では、そんなルリの気持ちも知らず気持ちよさそうに眠っているカイトの姿があった。
〜続く〜
後書き:
S:どーも、S=DASHです。”エピソード2:初めてのキス?”はいかがだったでしょうか。なんか途中から妄想全開な内容でしたが楽しんでいただけましたでしょうか?
ルリ:・・・・・・(−−)
S:いやー、それにしてもラブラブは書いてて気持ちいいですね。僕は基本的にこういうほのぼのとした感じの話が好きなので、こういうのを書いてると気分がいいですよ。
ルリ:・・・・・・(−−)
S:それにルリちゃんのお願い(命令?)通りの物も書けたし、もう文句は言われないだろう・・・ってルリちゃんいたんですか?(−−;;
ルリ:Sさん・・・(−−)
S:な・・・なんでしょう。(ビクッ)
ルリ:なんで・・・額なんです。(−−)
S:ギクッ。そ、それは・・・ほ、ほらあんなとこで唇にキスなんかしたらルリちゃんにどんな迷惑がかかるか分からないから。だからカイト君はルリちゃんの事を思って額に・・・。(アセッ)
ルリ:なんで・・・額なんです。(−−)(チャキッ)
S:な、なに・・・かな、その手に持ってるのは?(−−;;
ルリ:釘バット(ボソッ)
S:な、なんでそんな物を・・・
ルリ:カイトさんに作ってもらったんです。・・・・・・それよりも、次こそは唇に”キス”ですよね(ニッコリ)
S:(うっ、その笑顔が恐い)・・・そ、それはちょっと無理じゃないかと思(ガスッ)
頭から血を流してピクピクするS。
ルリ:・・・はっ、私ったらなんて事を・・・。ゴミはちゃんとくずかごに捨てないといけませんね。(ニヤリ)
ズルズルズル・・・・・・
ルリ:重いですね。もう少しやせて下さい。
ズルズルズル・・・・・・ポイッ
カイト:ルリちゃん、何してるの?
ルリ:あっ、カイトさん(ハァト)。そこに転がってたゴミをくずかごに捨ててたんです。
カイト:へ〜〜、ルリちゃんは偉いね。
ルリ:いえ、当然の事ですから。(ポッ)
カイト:あれっ?そう言えば作者がいないけど、どうしたんだろ。
ルリ:さっき用事があるとかで帰りましたよ。
カイト:ふ〜ん。後書きの最中にいなくなるなんてなに考えてるんだろ。
ルリ:まったくです。もう少しまじめにしてくれないとこの小説を読んでくれてる人達に申し訳ないです。
カイト:まあ、いないんならしょうがないか。それじゃルリちゃん帰ろうか。(ニコリ)
ルリ:はい(ハァト)
ルリ・カイト:この小説を読んで下さった皆さん、どうもありがとうございました。こんな稚拙な話ですが最後まで読んでいただければ幸いです。それでは次のお話でまたお会いしましょう。(ペコリ)
二人並んで帰っていくルリとカイト・・・その側にあるくずかごでは・・・
S:なんで僕がこんな目に・・・・(TT)
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