2198年、3月。私たちは飛んだ。
火星から一番反対側の軌道上に・・・
この戦争が同じ地球人同士の争いだと気づいてから今まで、ナデシコはナデシコなりに戦ってきました。地球のためでも、ネルガルのためでもなく自分達のために。その『自分達の戦争』に対するけじめとしてナデシコはボソンジャンプのコントロールシステムである火星の遺跡のコアをその艦の中に乗せたままジャンプしました。
通常生身の人間はボソンジャンプに耐えられませんが遺跡のナノマシンによってジャンプに耐えられる体に作りかえられた火星の人、つまりテンカワさん達のおかげで全員無事にボソンアウトに成功。結局、火星から遠く離れたこの場所でナデシコ本体からメインブリッジを切り離し、遺跡のコアは宇宙の彼方に飛んでいってもらい、私たちの長い戦争が終わりました。
かといって戦争自体が終わったわけではありません、遺跡のコアはあくまでも戦争の切っ掛けであり、木連の人の中には地球に対して恨みを持っている人もまだまだいますから。
まあ、戦争がいつ終わるかなんて今は考えてもしょうがないですね。とりあえずはナデシコのこれからの事を考えなければいけませんし。なんせ両者の欲しがってた遺跡のコアを盗ってきちゃったんですから。これからどうなるかなんてなんとなく分かりますけど。
とりあえずナデシコは地球に向けて進んでいきます。
でも”ナデシコ”ですから何事もなく地球につけるわけないですよね・・・・・・
機動戦艦ナデシコ
〜妖精の微笑み〜
エピソード1:飛んできた『変な人』
ウインドウの中にはアキトとユリカのキスシーンが流れていた。
「あんのオタンコナス!いつまでグズグズしてんの?」
「いいから、あんたが命令しちゃいなさいよ」
「いいんじゃないですか?二人はほっといて……」
エリナの愚痴にミナト、メグミが答える。
「はいはい、どーせ、あたしは馬にけられて死ぬタイプですよってばさ!」
火星からのボソンジャンプ後、ナデシコでは艦長の代わりにエリナが指示を出していた。
「只今から五分後に本艦メインブリッジを緊急分離する。乗組員は所定の方法でブリッジに集合せよ・・・・・・繰り返す・・・・・・」
エリカの指示から5分後遺跡のコアを積んだナデシコの本体とメインブリッジが切り離される。ナデシコ本体はこの後宇宙の彼方に飛んでいく事になる。私は飛んでいくナデシコをじっと見ていた。
「どうしたのルリルリ?」
横からミナトの声が聞こえた。
「いえ、何でもありません」
私はすこし俯き答えます。
(ちょっと私らしくないですね、感傷に浸るなんて)(クスッ)
ミナトさんは不思議そうに私の事を見ています。
その時私の目の前のウインドウから艦長の声が聞こえてきました。
「ルリちゃ〜〜〜ん、あたしの代わりに点呼とって!」
「点呼・・・ですか?」
「そう!前にならえ、いち!」
「に・・・」
ウインドウの中のテンカワさんが艦長に続く。
「・・・・・・さん」
私も仕方なく続きます。
(なにやってるんだか)
私の後にミナトさんが、それからどんどん点呼は続いていく。
そして・・・・・・
「なんだと〜〜〜!一人多いだ〜〜〜〜?」
ブリッジの中からウリバタケの声が上がる。
「提督を数え忘れてるんじゃあ・・・」
「オモイカネはそんな馬鹿じゃありません」
私はジト眼でアオイさんの言葉を切り捨てます。
(失礼ですね。オモイカネがそんなドジなことするわけないじゃないですか、アオイさんじゃないんですから)
ちょっと・・・いや。かなりひどい事を考えているルリ。
その時ブリッジに一枚のウインドウが開きホウメイさんの顔が出てくる。なんか真剣な顔をしています。
「ちょっとちょっとみんな・・・・・・来ておくれよ!食堂に・・・変なのが・・・」
「いるんですぅ!」
新しくユキナのウインドウが割り込んでくる。
「変なの・・・・ですか・・・・?」
私は不思議そうな顔をして繰り返すように呟きます。おそらくここにいる人達も私と同じ顔をしているのは間違いないでしょう。
とりあえず、エリナさん、プロスペクターさん、アオイさん、ゴートさんが食堂に向かいました。私はブリッジ要員としてここから動く事が出来ません。
(変な人ですか・・・ちょっと見てみたいですね)
私はそう思いオモイカネに食堂の映像を出してもらいます。
「オモイカネ、食堂の映像を出して下さい」
<わかりました、ルリ>
そのウインドウと同時に私の前に新しいウインドウが出てきます。ウインドウの中にはエリナさん達に詰め寄られて少しおびえている男の人がいます。
(この人が『変な人』さんですか?)
その男の人は年の頃なら17,8くらいで男の人にしては少し肌が色白のようです。髪型はテンカワさんのように短くて少しハネ気味で、顔を見た感じまじめそうな人に見えます。一番印象に残ったのはその人が木連の制服を着ていた事でした。
ツンツン
誰かが私の肩をつついています。私はハッとしてその人物を見ます。
「ねえ、ルリルリ。なに見てるの?」
ミナトさんです。どうやらさっきから私がウインドウをじっと見ているのに気が付いて声を掛けたようです。
「ちょっと、食堂の様子を見てたんです」
「ほんと?私にもみせて!」
「はい。オモイカネ、ミナトさんにも映像開いて下さい」
「あっ、ルリちゃん。私も!」
ミナトさんの反対側からメグミさんも声を掛けてきます。それと同時にブリッジにいる人が次々に言ってきます。
「・・・・・・」
私は少し面倒になったのでブリッジにいる人全員に映像を開きました。
再び目の前のウインドウに眼を戻すと、『変な人』さんがエリナさんたちに連れられて食堂を出て行くところでした。
「オモイカネ、ウインドウを食堂から『変な人』さんに固定して下さい」
<はい>
食堂の映像が消えて、廊下にいる彼の映像が出てくると共に音声も聞こえてきます。
『あの・・・・・・ちょっとトイレに行きたいんですけど』
『やだぁ、エッチスケッチマイペット』
『ガマンできないの?』
『・・・・・・はい』
ユキナとエリナの言葉に頷く『変な人』さん。
『だったら僕が連れて行きますよ。みんな、ここで待っていて下さい。』
『変な人』さんはアオイさんといっしょにトイレに入っていきます。
「オモイカネ映像カットしてください」
私は少し焦ってオモイカネに言いました。
(さすがにこんなとこまでモニターするわけにはいきません。私、少女ですから)
少ししてもう一度ウインドウを開こうとした時
ドカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
突然、爆発音と共にナデシコ艦内が揺れる。
「きゃ!」
私は突然の事に思わず声を上げてしまいました。
「な、なによいきなり!?」
横でミナトさんが声を上げる。その声で正気にもどって私は急いで状況を確認する。オモイカネにリンクしてナデシコの周りを調べると木星トカゲの無人兵器が取り囲んでいました。
「木星トカゲ、機影数十機確認ナデシコ囲まれています」
「何だって!くっ、こんな時に!」
私の報告にブリッジの上方で副艦長のアオイさんが驚きの声を上げる。
(アオイさん、いつのまに戻ってたんですか?)
私は頭の中で突っ込みを入れましたがすぐに仕事に戻ります。
「直ちにエステバリス隊発進、敵をナデシコに近づけるな!」
「了解、エステバリス隊直ちに発進して下さい」
ゴートさんの命令を復唱してパイロットの人に指示を出すメグミさん。
ナデシコから発進していくエステバリス各機。どうやら一機足りないみたいです。
(アカツキさんの機体がまだのようですね)
今回の木星トカゲは今までの物とは違うらしく、先に発進したリョーコ達は苦戦している。
『どうしてこんな所にまで木連のメカがいるんだよ』
『アキト、危ない!』
『それに、なんだかこのメカたち動きが変だよ』
『まるで動きが読めねー、チクショオッ』
『嫁ない者は独り者・・・・・・けっ』
リョーコさんたちの戦闘を確認した私はまだ艦内にいるアカツキさんにコミュニケを繋ぎました。
「アカツキさんも早く出動お願いします」
ウインドウにはアカツキさんの他にもう一人いたようですが、今はそれどころではありません。私はすぐにウインドウを切って外の状況に眼を向けます。やっぱりリョーコさんたちは苦戦しているようです。たしかに今回の木星トカゲの戦闘パターンは今までのものとは違っていました。
艦の外ではエステバリスと木星トカゲの戦いが繰り広げられています。その時レーダーにアカツキ機が映りました。
『おせえぞ、会長。こっちは俺達に任せて、お前はアキトと艦長の方頼む。ん、なんだ噂の名無しもいるのか?』
『ああ、彼の事は気にしなくていいから』
ウインドウから聞こえてくるリョーコの声にアカツキが返す。
「アキトさんはナデシコの真下で応戦中です」
「テンカワ機、完全に囲まれています」
メグミさんと私はアカツキ機に状況を伝えます。
『こんな展開どこかでなかったっけ。はいよ、まっててお熱いお二人さん』
ウインドウの中からアカツキさんの軽い声が聞こえてくる。良く見ると、アカツキさんの横には『変な人』さんもいるみたいです。私はちょっと驚きつつもオペレーションを続ける。
「アカツキ機到着まであと10秒」
『アキト、どうするのー。これってかなりまずい状況なんじゃない?』
『だまってろユリカ、ここは俺に任せて』
『任せるって言っても全然こっちの攻撃あたらないじゃないー』
『良いから黙ってろ、上手くコントロールできないだろっ!』
『黙れ黙れって、アキト私の事ほんとに好きなの〜!?』
『なに言ってんだよ、好きとか嫌いとかの問題じゃないだろ!』
テンカワさんとユリカさんはこんな時に痴話喧嘩を始めていた。
(この人達は戦闘中に何をやってるんでしょうか?)
私は少しあきれてしましました。するとモニターを通して伝わってくる痴話喧嘩が、不意に静かになりました。レーダーを見るとテンカワ機が完全に木星トカゲに囲まれています、そんな中を真っ直ぐテンカワ機に向かって行くアカツキ機。
『次は前方30度の方向、その次は真下・・・・・・』
『素晴らしい、素晴らしいよ君。相手の動きを完全に把握している。さすが、木連の制服着てるだけあって優秀!』
『次、後ろに2機!』
『うわーすっご〜い、なにも今まで隠す事なんてなかったのに〜』
『ホントー、アカツキさんカッコイイ。ねえ、リョーコ』
『あ、ああ・・・・・・すげーぜ』
『脳ある落ち目は爪隠す、なんて・・・・・・』
聞こえてくる音声と共にアカツキ機は向かってくる木星トカゲをことごとく撃破していく。その姿をみんなが驚いて見ている。ただよく見ると、実際に戦っているのはアカツキと言うよりもいっしょに乗っているもう一人の方のようだ。
「・・・・・・」(ポ〜〜)
私はコクピットの中にいる『変な人』さんの闘う姿に見惚れてしまいました。食堂にいた時の頼りなさそうな眼じゃなく、コックピットの中で真剣な顔をして的確な指示を出す姿はなかなかさまになってます。
「何かどっちかって言うとアカツキさんより隣の名無しさんの方ががんばってる気がしますね」
メグミさんもその事に気づいたようです。
「う〜〜ん、確かに。会長さんにしては妙に動きがいいからちょっと不思議だと思ったけど。」
「それに良く見るとあの人、結構カッコイイよくありませんか?」
「確かに、ちょっとカッコイイかも。ねっ、ルリルリもそう思わない?」
メグミさんと話していたミナトさんが急に私に話を振ってきました。ただ私はそれに返事をしないででウインドウをじっと見ていました。
「・・・・・・」
(確かにちょっと・・・・・・かっこいいかもしれませんね・・・・・・ハッ、私ったら何を考えてるんでしょう)
「ル〜リルリ、じーっとウインドウを見つめてどうしたのかなぁ?」
「あ〜〜、ルリちゃん。もしかしてぇ」
私のその姿を見て、ミナトさんとメグミさんがニヤニヤしながら私に話し掛けてくる。
(うっ。な、なんですかその顔は・・・・・・)
ちょうどその時、アカツキ機が最後の木星トカゲを撃破しました。
「木星トカゲ全機消滅確認しました!」
少しだけ頬を染めながら、私はすこし大き目の声でミナトさん達の言葉を無視して、報告します。
その後今回の事件は宇宙にはぐれた木連メカの暴走と言う事で処理されました。まったく迷惑な話です。戦闘後、とりあえず危険が感じられなくなったので私たちは艦長を迎えるために格納庫に向かいました。
格納庫
テンカワさんのエステバリスからテンカワさんとユリカさんが降りてきます。他の機体からリョーコさんたちも降りてきました。皆さん安心したような顔をしています。
(まっ、当然ですね。やっと地球に帰れるのに、こんな所で死ぬのはイヤですからね)
「アカツキさん、さっきはすごかったですね」
集まってきたテンカワさんがアカツキさんに声を掛けます。
「もーしびれるって感じー。ねえリョーコ」
「それを言うならもう一人の奴だろ」
どうやらリョーコさんもさっきの活躍はアカツキさんのものじゃない事に気づいているようですね。
「そうそう、名無し君に言いなよ。ただそいつの言うとおりにしてたら、敵の動きがバッチリでさっきの通り・・・・・・それよりテンカワ君とユリカ君、先ほどはお熱いところをどうも」
「ヒューヒュー」
「ひゅうひゅう、ひゅうひゅう、おー寒い」
ヒカルとイズミが二人を冷やかす。
「な、なんで知ってんだよ!」
テンカワさんが真っ赤になって否定します。その周りでは他の人達もさっきのテンカワさんと艦長の事で盛り上がっているようです。
「音声、映像流してました。全部筒抜けです。みんな知ってます」
「・・・・・・」
私がそう言うとテンカワさんは固まってしまいました。
「も、もうやだなあ、ルリちゃんったらぁ。そんなことしたら私たち公認のカップルになっちゃうじゃないー」
艦長は口ではそう言いながら顔はまんざらでもないようです。顔がにやけているのが分かります。
「それよりアカツキさん、その名無しって人は」
話を逸らすようにテンカワさんがアカツキさんに話しかけます。
「それならここに・・・・・・おや?」
「ここって何処です」
アカツキさんは辺りを見回しています。
「ルリちゃん、調べてくれる」
「・・・・・・オモイカネ、よろしく」
艦長に言われて私はそう呟いてオモイカネに頼みます。
検索中・・・・・・・・・・・・・
検索中・・・・・・・・・・・・・
検索終了
その言葉と同時に私の前にウインドウが出てきます。
「アカツキさんのエステバリスに乗る前は、色々と艦内を歩きまわっていますね、今もアカツキさんのエステバリスのコックピットの中にいますね」
私は横目で彼のいる場所を見ます。
「じゃあ今までの行動は全部・・・・・・」
間の抜けた声がエステバリスのコックピットの中からしてきます。みんながその声の方向を見ると、そこには棒立ちになっている噂の『変な人』さんがいました。
「だから言ったじゃないの、逃げられないって」
アカツキがやれやれといった感じで声を掛ける。
「まあまあ、これでみんな揃ったみたいだし、堅い事は抜きにして、お祝いでもしちゃいましょう。アカツキさん、名無しさんもお願いしますね」
「なんのお祝いだか・・・・・・」
まあ、今更艦長の言葉に驚く人はこのナデシコにはいませんね。
「はいはい、艦長・・・・・・僕はいつから名無し君のお守り役になったんだか」
「え?この人が艦長?」
追い討ちを掛けるような事実に彼は完全にかたまってしまいました。
あっ、一人だけいました。なんか・・・・・・かたまってますね。まあ、しょうがないですけど。
ナデシコのブリッジにクルー一同が集まっている。
その中には『変な人』さんも混じっています。なぜ自分がここにいるのか未だに不思議そうな顔をしていますが、無理もないですね。
「あーあー、マイクテスト、マイクテスト、えーそれではナデシコ艦長ミスマル・ユリカから一言」
アオイさんが艦長にマイクを渡す。
「えっへん、この度わたくしナデシコ艦長ミスマル・ユリカとアキトのおかげで火星の遺跡も遠くに飛んでいってもらいました。・・・ねえねえルリちゃん、これでよかったんだよね」
艦長が私に聞いてくる。
「なにがよかったんだか・・・・・・」
「それではパーっとやっちゃいま・・・・・・」
「あっ、でもその人はどうするんですか?」
「メグちゃんするどい、すっかりわすれてました。あなたいつまでも名無しじゃアレですから今ここで名前決めちゃいましょう!ええとぉ、家で飼っている犬がポチだから・・・・・・『カイト』って言うのはどうかしら」
「カイト・・・・・・ですか」
「うん、昔飼ってた犬の名前なの。カッコイイでしょ」
(艦長、その自信は何処から来るんですか。いくらなんでも犬の名前はないと思いますよ?)
「は、ははは、いい・・・・・・名前ですね」
(無理してるのがバレバレですね。顔が引き攣ってますよ、まあ本人が良いって言うんなら別にいいんですけど)
「それでは改めて、私は戦艦ナデシコの艦長をつとめるミスマル・ユリカです」
「私はメグミ・レイナード。ナデシコの通信士やってるの、メグちゃんって呼んでね」
メグミがカイトに顔を寄せる。
「メグミさんですか、よ、よろしく」
「そうじゃなくて、メグちゃんでしょ、はいっもう一度」
「メ、メグ・・・・・・ちゃん」
「よろしいっ。こちらこそ、よろしくね」
メグミさんが少し強引に自己紹介をしている後ろのほうではリョーコさんたちが何やら騒いでいます。
「さあさあ、遠慮しないで」
「なんだよ、おまえら。オレがどうして自己紹介しなくきゃなんねーんだよ!そいつの記憶の方が大事じゃねえのかよ」
(ヒカルさんにイズミさん、楽しんでますね。)
「なんだよ、その目つきは」
「ん〜、私ねえ知ってるんだあ。さっきの戦闘で、アカツキさんのコックピットに映る彼の活躍見てから、リョーコちゃん変なのぉ。もしかしてぇ、まさかぁ」
「アキト君に振られたその身を癒すため、新たな恋にまっさかさま〜」
「ば、ばーか、よせよ。オ、オレはアキトに振られるとかそんなんじゃ」
「次は前方30度の方向、その次は下、次っ!リョーコ」
「っるせー、だーってろ」
「じゃあわたし先に自己紹介しまーす。ある時は漫画家、またある時はコスプレイヤー、その正体は・・・・・・ナデシコのパイロットやってるアマノ・ヒカルでーす」
「次、リョーコ!」
ヒカルとイズミの押しに諦めたのかリョーコが口を開く。
「……。こいつはイズミ、オレとヒカルと同じパイロット、腕は確かだから。でも、こいつの言う事気にしないほうが良いぜ。でオレはスバル・リョーコ、よろしくな」
「カイトです、よろしくお願いします」
ニヤリとする、ヒカルとイズミ。
「・・・・・・なんだよーお前ら」
リョーコはヒカルとイズミを焦りながら見ていた。
「俺はテンカワ・アキト。ナデシコでコック兼パイロットをしてる。一応コックがメインだけど、さっきみたいな時はパイロットもやってるんだ。よろしくな、カイト」
「はい、よろしくお願いします」
そう言ってテンカワさんと握手をするカイトさん。なんとなくお二人が似たように見えるのは私の気のせいでしょうか?
「私はハルカ・ミナト、操舵士をやってるの。よろしくね、カイト君。」
「よろしくお願いします」
「・・・・・・」
カイトの白い制服を見て、ミナトの表情が少し陰る。
(ミナトさん・・・白鳥さんの事を思い出しているんでしょうか)
私は少しだけ悲しくなりました。ミナトさんはこのナデシコで私にとても優しくしてくれた人なので辛いです。
「・・・ミナトお姉ちゃん」
「大丈夫よ、心配してくれてありがと。ただちょっとなつかしいなあって・・・」
ユキナの声にミナトは心配しないでといった感じで微笑む。それからカイトのほうに顔を戻す。
「ごめんなさいね、突然」
「い、いえ」
「・・・私の好きだった人も、その白い制服を着ていたの。白鳥さんっていってね、とても純粋な人だったんだけど・・・・・・死んじゃったの」
「・・・・・・」
カイトは黙ってミナトの話を聞いている。
「彼は最初は私たちの敵だったんだけど、地球にも正義を愛する心がある事を知って、地球と木星の和平に協力してくれたの。そのおかげで、双方話し合いの席を開く事が出来たんだけど、その席で和平を快く思っていない木連の人に銃で撃たれて・・・・・・」
「でも、もうこれ以上周りの人達が死んでいくことなんてなくなるかもしれない」
「アキト君・・・」
ミナトの言葉にアキトが続ける。
「地球やネルガル、木連はボソンジャンプのシステムともいえる、火星の遺跡を求めて取り合っていた。そのおかげで俺達の家族や、沢山の火星の人達が消えていった」
「・・・」
「遺跡を宇宙のかなたに飛ばして戦争が終わるかなんて俺にはわからない。でも俺達は自分が守る大切なもののためにやったんだ」
「そう、アキトの言うとおり。この艦は私たちが私たちらしく要られる場所。だから、自分達の思うようにしたいの」
「最初はナデシコを自爆させ遺跡ごと破壊しようって言ってましたけどね」
「そうだったっけ・・・ははっ」
ユリカがメグミの言葉にバツに悪そうに笑って答える。
「でもボソンジャンプするのにキスする必要って本当にあったんでしょうか?」
「それはー・・・もうルリちゃんまで・・・」
私はその時の事を思い出して、艦長にちょっと意地悪を言ってみます。
「うふふっ、ルリちゃんあんな事言って、ごまかしてるだけなの。ほんとは感謝してるはずよ。ナデシコに乗ってから今まで自分が勝ち取った思い出を、なくさずにいられたんだから」
「私たちのいる場所、自分で勝ち取った思い出か・・・」
カイトはその言葉の重さをかみ締めるかのように呟いた。
「でも、キスまでしなくていいのに、ねえルリちゃん」
「・・・」
「ルリルリにはちょっと早かったかしら」
その言葉に一同の表情が和らぐ。
(ミナトさんが元気になるのはいいですけど、私の話で盛り上がらないで下さい)
私は少し俯いてしまいました。
「さっ、次はルリルリの番よ」
ミナトさんが俯いている私の背中を押してカイトさんの前に連れてきます。
「あっ、ナデシコオペレーターのホシノ・ルリです。よろしくお願いします。」(ペコリ)
私がちょっと焦って自己紹介すると、カイトさんは少しかがんで私の目線に合わせて
「カイトです。よろしく、ルリちゃん」
と言って、にっこりと私に微笑んできました。すごく優しいその笑顔を見てなんだか胸の奥が熱くなってきて顔が少し赤くなってしまいました。
「ルリルリったら、戦闘中もウインドウに映るカイト君をじーっと見てたのよ」
「ミ、ミナトさん!」
私は慌ててミナトさんのほうに振り向く。ミナトさんはそんな私を優しそうに笑いながらみています。
「ははっ、ちょっと恥ずかしいな。あの時は、夢中だったから」
カイトが照れたように頭を掻いている。
「そんな事ないって。かっこよかったわよ、カイト君。ねっ、ルリルリ」
(そこで私に振らないで下さい・・・・・・でも)
「・・・・・・・・はい」
私は頬を赤く染めながら素直に小さな声で答えます。ちらっとカイトさんのほうを見るとカイトさんも赤い顔をしているので更に恥ずかしくなりました。
(私、おかしいです。こんな気持ちになるなんて・・・・・・まだ会ったばかりなのに)
私がそんな事を考えている側では、みんなに冷やかされているカイトさんの姿がありました。これが私とカイトさんの出会いです。そして、この出会いが私に本当の『微笑み』を授けてくれる事になるとはこの時には思ってもいませんでした。
〜続く〜
後書き:
S=DASH:どうも皆さんお久しぶりです、S=DASHです。”妖精の微笑み エピソード1:飛んできた『変な人』”をお送りしましたがいかがだったでしょうか。この作品は以前中田さんの『ろうにんナヴァ』に投稿していたものですが、HP閉鎖に伴いRinさんの所へあらためて投稿させてもらいました。さて、この小説はサターンソフト〜機動戦艦ナデシコ The blank of 3years〜を元に書かれていますので似たような台詞などがあるかもしれませんがどうかご了承ください。読んでみてわかると思いますが、僕のSSは三人称の部分と、ルリちゃんの一人称の部分とがごっちゃになってます。そのせいで読みにくいところが多々あると思いますがどうかお許しください。とにかく、今度はちゃんと最後まで書けるようにがんばるぞ〜。
ルリ:まったくです。(キッパリ)
S:うおっ。ル、ルリちゃんいつのまに。
ルリ:中途半端に投稿が止まったままなんですからちゃんと最後まで私とカイトさんのラブラブを書いてもらわないと困ります。(−−)
S:はい・・・すべて僕の責任です。(TT)
ルリ:まあ、こうやって再開したことですし今回は大目に見てあげましょう。でも相変わらず、話のつながりが強引ですね。
ジト眼でSを睨むルリ。
S:いや、まあ・・・それは・・・。でも、そんな簡単にうまく書けるようにはならないですよ。(−−;
ルリ:あなたの努力が足りないだけです。(−−)
S:うう〜、これからも努力します〜。(−−;
ルリ:まったくそんな事でこの話を終わらせる事が出来ると思ってるんですか?今のあなたは素人の言葉が103回あっても足りないくらいのド素人なんですからね。
S:うう〜〜〜、なんか最初のあとがきより数が増えてないかい?(TT)
ルリ:事実ですから。
カイト:ルリちゃん、駄目だよそんなにいじめちゃあ。
ルリ:あっ、カイトさ〜〜ん(ハァト)
カイト:確かに投稿が停止ていたのは許せないけど、こうやって再開するみたいだし許してあげなよ。
ルリ:でもぉ。
カイト:それより、早く帰ろ。アキトさんが夕食の支度してくれてるから。(ニッコリ)
ルリ:はいっ、カイトさんがそういうなら。(ポッ)
カイトの笑顔に頬を赤くしながら、Sのほうに顔を向けるルリ
ルリ:いまさら言うまでもないと思いますけど、私とカイトさんのラブラブな話を早く書いて下さいね。でないと・・・わかってますよね(ニヤリ)
S:は、はひ。
ルリ・カイト:この小説を読んで下さった皆さんどうもありがとうございました、それでは次のお話でもまたお会いできるのを楽しみにしています。(ペコリ)
固まっているSを残して帰っていくルリとカイト。後に残ったのは・・・
S:なんで僕がこんな眼に・・・・(TT)
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