宇宙を高速で疾走する小型高速輸送宇宙艇の中で、ルリが目を覚ましたのと同時刻に、まったく同じ夢を見て目を覚ました者がいた。しかしルリとは違い、その目覚めは静かなものだった。
「・・・・・・・・・・。」
男―――――いや男というにはまだ若すぎるし、女とも見えるその顔は、まだ少年と呼ぶべきか。
―――――少年は着ているフライトジャケットの懐から愛煙している<LUCKY STRIKE>を取り出すと、一本口に咥え火を点ける。ゆっくりと煙を吸い込み、それを吐き出す。口から吐き出したのと、煙草の先から昇る紫煙がゆっくりと流れ空気に混ざり合う。それを眺めながら少年は、ゆっくりと呟いた。
「元気にしているかな?・・・・・・俺の大事な・・・・―――は・・・。」
その顔は、とても優しき微笑みを浮かべていた・・・・・・・・。
機動戦艦ナデシコ異聞録
OLD JULY
AND STAR FIELD
《第1話 水色宇宙で再会?》
「ル〜〜リルリ!!何やってんの?」
「えっ!!」
ナデシコのブリッジのオペレーター席で待機していたルリは、操舵士のハルカ ミナトに声をかけられた。今ブリッジには、この二人しかいない。突然の事だったのでルリは反射的に手に持っていた物をミナトの死角に隠した。だがそれは、ミナトの好奇心を逆撫でする行為だった。
「ルリルリィ、今何隠したの?お姉さんに見せなさい!」
「あっ!」
ミナトは自分の座っていた操舵士席から立ち上がり、素早くルリに近づくとルリの手からそれを奪い取った。
「あら、これは・・・・。」
それは一枚の写真だった。中には二人の子供が写っている。一人はツインテールにした銀色の髪に金色の瞳の少女――ルリである。そしてもう一人はルリの後ろに立ち、ルリの両肩に手を置いている(―――おそらくルリより5歳ほど年上の)赤紫色の髪に、青紫色の瞳の《 少女 》(格好は男っぽいものだが)。二人ともとても嬉しそうに笑っている。ルリに至っては、ミナトが今まで一度も見た事の無いほど美しい笑顔で写っていた。
「可愛いじゃないルリルリ(はぁと)。」
「か、返して下さい!」
ミナトの言葉にルリは顔を真っ赤にして、写真を返してもらおうと懇願する。
「はいはい。そういえば一緒に写ってたのは誰なのルリルリ、お姉さん?」
写真をルリの手に渡しながらミナトが尋ねると、ルリは先程まで真っ赤だった顔が嘘だったかのように白い顔をして俯いてしまった。
「ル、ルリルリ!?」
「だ・・・大丈夫です。」
ルリを心配して慌てて声をかけたミナトだが、ルリはゆっくりと声を返した。だが大丈夫ではないのはその青い顔と震える声で解かった。
「ねえ、ル―――――。」
そんなルリに再び声をかけようとしたミナトだったが、何者かがブリッジに入ろうと扉を開けたエアー音に遮られた。
「皆さん!もうすぐサツキミドリ2号なので自分の席で待機してください。」
入ってきたのはミスマル ユリカ、メグミ レイナード、アオイ ジュンのブリッジ要員と戦術オブサーバーのフクベ ジン、
ネルガル社員のプロスペクターとゴート ホーリーである。
「あれっ?どうかしたんですか二人とも。」
二人の雰囲気が変なのに気が付いたメグミが尋ねる。
「な、何でもないのよオホホホホ―――――・・・・・・・・・・・。」
そう言うとミナトは自分の席に戻っていった。
「すまねぇナデシコォ!そっちにいっちまったぁ!――――ってあっちにはコックしかいねぇ・・・。」
あの後ナデシコはサツキミドリ2号のある宙域に入ったのだが、サツキミドリ2号が何者かの攻撃により爆発。
その時停泊準備のために、ディストーションフィールドを解除していたナデシコに救難ポットが突き刺さり、ナデシコ内部に侵入者が忍び込んだ為、一時艦内警戒態勢になったのだが、それは補充パイロットのアマノ ヒカルである事が判明し、すぐに警戒態勢は解かれた。その直後、接近してきたエステバリス1機と牽引された3機を回収し、搭乗してきた補充パイロットのスバルリョーコ、エステバリスの持ってきたツールボックスの中に隠れていた最後の補充パイロット、マキ イズミを確認した。
――― 補足) その時全員の集まった格納庫の体感温度が10度以上下がったのは言うまでもない(汗)。
その後、サツキミドリ2号に残った予備のエステバリス1機を回収するためにエステバリス隊がサツキミドリ2号内部に入った。
しかしその予備のエステバリスは敵である木星蜥蜴の無人機であるバッタに乗っ取られており、そのまま戦闘に突入。
その時スバル機の攻撃によりデビルエステバリス(バッタに乗っ取られたエステの事――――ヒカル命名)が外壁を突き破り宇宙に出てしまい、さらにその方向がナデシコのある方向であり現在に至る。
先程リョーコが叫んだように、デビルエステが向かったナデシコの近くにいるのはコック兼パイロットのテンカワ アキトだけであった。しかも彼は専業パイロットではないので無重力空間での戦闘は初めてなのだ。
「俺はもうテンカワアキトじゃぁない―――――。」
アキトはコクピットの中で集中していた。周りに複数のウィンドウが開き、皆が口々に叫んでいるがアキトには聞こえない。
アキトが今見ているもの、感じているのは自分の他には唯一つ。―――――――――敵!
「―――テンカワ アキトVだ!!いくぜ!!!」
その叫び声に呼応するように手の甲のナノマシンパターンが輝き、エステバリスのカメラアイが発光する。
その時アキト機の前方が歪む―――――ディストーションフィールドだ。
フィールドを纏いスラスター全開でアキト機はデビルエステに突進する。
「ゲキガンッフレアアァァー―――ッ!!!」
そして2機が猛スピードで交錯した。
―――――― 一瞬の静寂の後、2機が交錯した場所で爆光の華が咲いた。
デビルエステバリスが破壊されたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・だが、
「ッ!!熱源反応有り!敵はまだ生きています!!」
ルリの言葉に皆が反応する。その直後にデビルエステの破片の中から動き出す物体―――――バッタだ。
アキトの攻撃はデビルエステのやや右側に当たったため左腕に取り付いていたバッタは破壊を免れたのだった。
「うわっ!」
アキト機の右足にバッタの放ったミサイルが当たった。アキト機の右足は大破し、アキト機はバランスを崩す。
「アキトッ!!」
ユリカが叫ぶ。エステに取り付いていたそのバッタは、通常のものよりは小型であったがそれでも兵器である。
0距離からミサイルや機銃を喰らったり、コクピットを潰されればお終いだ。
「くそっ、動けっ!動けよっ!!」
アキトの叫びがコクピットに反響する。だがアキト機はバランサーもやられたようでまともに動く事すら出来ないようだ。
「ちぃっ!」
「間に合うのっ!?」
「・・・・・・・!!!」
三人娘は全速力でアキト機のほうへ向かっているが距離が遠すぎる、間に合うかどうか微妙であった。
バッタは体勢を立て直し、再びアキト機に攻撃を仕掛けようとする。もう駄目だと誰もが思い、誰かの悲鳴が聞こえた。
―――――――――――――――――だが、
「本艦後方より高速機動物体、接近!!」
ルリがそれを伝える、それと同時にナデシコのすぐ脇を白い物体がすり抜けていった。
そう思った次の瞬間にそれはバッタと衝突した。衝突したのは、小型の高速輸送艇だった。
その衝撃に耐え切れずにバッタは小規模な爆発を起こし、沈黙した。
だが衝突した白い小型艇も無傷では無い様であちこちで火花を散らしている。
「小型艇から救難信号の発信を確認! 識別信号は・・・・ネルガルのものです!」
メグミからの報告にプロスの眉がピクリと動く。
「艦長、至急あの船の回収を!」
いつもより少し強い口調でプロスが言う。だがユリカは全く気付いていない。
「はい!至急アキトとアキトの命の恩人さんを救助してあげてください!!」
アキト機と小型艇が回収されると、艦内のほとんどの人間が格納庫に集まってきていた。アキトの安否と小型艇に乗ってきたの
がどんな奴なのか、一目見るためにだ。そこにはルリも来ていた。本当は来るつもりは無かったが、ミナトに引っ張られて連れ
てこられたのだ。
「アキトォ〜〜〜〜ッ!!」
エステから降りてきたアキトにユリカが抱きつく。
「うわっ、なんだよ。」
「ふえ〜〜〜ん、良かったよ〜〜〜〜。」
どうやらアキトは無事なようだ。――――と皆が思っていると、ガコンッという音が格納庫に響く。
皆がその音のほうを見ると小型艇の扉がゆっくりと開いていた。
扉が完全に開き切ると中から人影が出てくる。
「 !!! 」
その人影を確認するとルリはあまりの出来事に愕然とする。
ミナトも驚きのあまりただ呆然とするしかなかった。
その中から出てきたのは―――――――、
「お、女の子?」
ルリとミナトを除いた他の人達は驚きの声を上げる。中から出てきたのは黒のジーンズとTシャツの上に茶色い革製のフライジャケットを着た赤紫色の長髪を三つ編みにした、15歳ほどの《少女》一人だけだったからだ。
「―――――――ご期待に添えないようで申し訳ないが、・・・。」
その《少女》がゆっくりと言葉を紡ぐ。
(・・・・・間違い無い・・・。)
ルリは心の中でゆっくりと呟く。
(やっぱりあなたなんですね・・・・・・・・・・。)
「俺は―――――――。」
(―――――あなたは・・・・・・・・・・・・・・。)
「―――――――男だ。」
「ぇ・・・えぇっ!!?」
―――――《少年》の言葉に皆が再び驚きの声を上げると、後に続けるように、そして自分にしか聞こえないほど小さな声でルリは呟いた。
「・・・・・・・・・・・・シスイ・・・さん・・・・・・・・・・。」
あとがき・・・・・・・・かも。
五:はい、やっと出来上がった第1話 「水色宇宙で再会?」 は如何だったでしょうか?いやあ、今回も書いているうちになんか当初より長くなってしまいました。
シスイ(以下 シ):まったく行き当たりばったりな奴だ。
五:おお、君は今回初めて名前の出た主人公!!
シ:お前が書かなかったからだろうが・・・・!(怒)
五:まあまあ、怒らない怒らない。前回の宣言道理書いたんだから。
ル:それは良いんですけど・・・・。
五:うおっ!い、いつの間に?
ル:ついさっきです。だけどあなたは本当に文才が無いですね。
五:う、・・・。
ル:表現が滅茶苦茶です。最初は男とか少年とか書いているくせに、途中からは少女とか子供とかって書いて・・・。同じ人物の事じゃないと思っている人がいるかもしれませんよ。まったく。
五:うぐぐ・・・。
ル:それにシスイさんは私と4歳離れている設定なんでしょう?
五:あ、ああ。
ル:それじゃあシスイさんはこの時15歳のはずです。
五:ああ、確かだけど?
ル:じゃあなんで煙草を吸ってるんですか!?
五:それはだなあ・・・・・・。
ル:それは?
五:かっこいいからだ!!!
ル:は?
シ:・・・・・・・。
五:ハードボイルドなキャラには煙草が必要不可欠!名前だって煙草の紫煙という表現からとって紫翠って名付けたんだから。
ル:・・・・・馬鹿?
五:ぐはあっ!
シ:人の名前を馬鹿にするなよルリ・・・、こんな作者の考えた名前でも俺という存在を証明する名前なんだから。
ル:あっ!ご、ごめんなさいシスイさん。
シ:わかってくれればいい。
五:俺へのフォローは無しかい・・・。
シ:当たり前だ。
ル:きちんとした話も書けない奴にフォローする価値はありません。
シ:話も短いしな。
五:うぐぐぐぐぅ・・・・・・。
ル:と、いうことで。
無言で銃<重力子放射線射出装置>を構えるシスイ。
五:へ?
シ:死ね。
ドンッ!!!
指先などの体の一部を残して消滅する作者。
辺りを爆光が支配する。
ドゴオォ――――ンッ!!!!!
ル:やっぱり凄い威力ですね。
シ:この銃、気に入ったし、後書きでレギュラー化させっかもな。
ル:それもいいかもしれませんね。
シ:ま、あいつは後で復元するからいいとしてそろそろしめるか。
ル:はい。
シ:あ、ちなみにこれを見て『BLA○E!』に興味を持った方がいらっしゃったら『講談○』の『アフタヌ○ンKC』をチェックしてみてください。
ル:次回はやっと私とシスイさんの関係が明らかになるみたいですよ。
シ×ル:次回、機動戦艦ナデシコ異聞録《OLD JULY AND STAR FIELD》
第2話「罪と罰 そして愛」をお楽しみに!!!
五:・・・・・・死んでっ・・・・なる、も・・のか・・・。
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