機動戦艦ナデシコ
真紅の冥王




[Story/U]

‡アマテラス‐廊下‡

三人がアマテラスの警備責任者に会いに行ってから数分が経つ。
さすがに俺がそこまで入れるわけがないので自由に歩いてて良いと言わた。
念のため連絡用に三郎太のコミュニケを借りて。
今更気づいたんだが俺の服装は私服だぞ…よくわからんが起きたらこれを着ていた。

「にしても、俺が戦死とされてから六年も経っているのか…」

「時間を越える代償に記憶が消えた、そんなところか」

「なにやら世間もだいぶ変わったみたいだしなぁ六年も経てば変わるか」

ここまで来る間に三人から色々聞かせてもらった。
初めは全く理解できなかった。
だが、統合軍やらヒサゴプランやらボソンジャンプやら休戦協定やら知らない単語が出てきて認めるしかないようだ。
敵が同じ地球人だというのはまだ信じ切れてないが…。

「はぁ…その辺歩いてくるか」



‡アマテラス‐某部屋‡

「何だ貴様らは!!」

入って早々、机を叩きながら大声を出す警備責任者、アズマ。
ただ、三人は平然と。

「地球連合宇宙軍少佐、ホシノルリです」

「同じく連合宇宙軍大尉、高杉三郎太!」

「そんなことを聞いているのではない!何で貴様らがそこにいる!!」

「いや、聞いただろ…それに許可取ったからいるじゃん」

「何ィ!?」

三郎太の呟きにワナワナと震えながら叫ぶアズマ…いやタコだ。

「い…いや、ただの横浜弁です…じゃんじゃん、ハハ」

苦し紛れな言い訳をするハーリー。
そんな会話お構いなしにルリが喋りだす。

「先日のシラヒメの事件において、ボソンの異常増大が確認されています」

「ジャンプシステムの管理に問題がある場合、近辺の航路並びにコロニー群に影響があります」

「これはコロニー管理法の緊急査察条項が適用されますので、あしからず」

「ま、ガス漏れ検査だと思っていただければ」

懲りずに軽口をたたく三郎太。

「ヒサゴプランに欠陥はない!!」

歳を考えずに叫び続けた為か息切れしているアズマ。
そういえば、暑苦しい親父とか書かれていた気が…。

「まあまあ准将…宇宙の平和を守るのが我らが宇宙軍の使命」

「ここは使命感に燃える少佐に安心していただきましょう!」

側近のヤマサキの取りなしで、渋々、調査を許諾するアズマ。
と、ルリの視線はあるポスターの方を向いていた…。



‡アマテラス‐某所‡

「みなさん、こんにちはーーッ」

「こんにちはーーッ」

ガイドの声に元気よく返事する子供たち。
元気一杯って感じだな。

「未来の移動手段、ボソンジャンプを研究するヒサゴプランの見学コースへようこそ!ガイドは私マユミお姉さんと」

「僕ヒサゴン!」

「うわー」

「え?」

おお、子供たちから歓声が上がった大人気だな。
約一名驚いてるお方がいるが…。

「なんと、今日は特別ゲストです!みなさんと一緒にコースを回ってくださるのは、あの!!」

「そう、あの!」

何か、ためてるけど既に上方にウィンドウ表示されてるんだよな。
『歓迎 星野ルリ様』
って…。

「史上最年少の天才美少女艦長宇宙連合軍のホシノ・ルリ少佐でーす!」

ガイドの人凄いな…あの長さを一息で言った。
さすが、ベテラン。

「よろしく」

「わーーーい!」

子供にも人気あるんだな。
お、やっと進むようだな。
ん?なにやら手招きされちゃった。

「なんですか?」

勿論、可愛らしい声で応答する。

「何やってるんですか?…正人さん」

「…僕、ヒサゴンだよ」

「バレバレです」

「僕、ヒサ……すいません」

諦めずに通そうと思ったが何やらハリセンを握り締めたので断念。
…何処に持ってたんですか?

「で、何やってるんですか?連絡が取れないと思ったら」

「いやぁ実はな…」

警備責任者の部屋を出てから数回コールしたようだ。
…俺も大変だったんだ。



‡アマテラス‐廊下‡

時間は少しさかのぼる。
俺がブラブラと歩いていると…。

「ええ!怪我した!?」

「はい、何でも階段から落ちたそうで…」

「どうすのよ!もう始まるわよ!?」

「…ん?」

男と女が話をしていたのだが、男がコチラに気づく。
その眼は獲物を捕らえた鷹のようで…。

「あなた!ちょっと手助けだと思って!というかやって、やれ!!」

逃げようと思った俺に飛びついてきて…。
後は流れるままに変な人形着せられて、台本持たされて。
コミュニケは鳴っちゃまずいから切れって言われて。
そして…。



‡アマテラス‐某所‡

「これですか…」

「僕、ヒサゴン」

「それは、もういいです」

なんか呆れられてるな俺。
ハリセンも気づけば消えてるし…。

「乗るみたいですよ」

「ん?あ、やべ」

これ、走りにくいんだよな。
後ろからクスクスと抑えた笑い声が聞こえた…。



‡アマテラス‐某部屋‡

「ガーハッハッハッハッ!」

茶菓子を囲みお茶を飲んでいる二人。
一人爆笑しているアズマ。

「子供と一緒に臨検査察か…愉快愉快、ガーッハッハッハッハッ!」

「ハハ…しかしあの少佐さんにはカワイそうなことをしましたな」

アズマのテンションに少し引き気味なヤマザキだった。

「…宇宙群も最近の事件に関しては、メンツもあるんでしょうが……」

「宇宙軍にメンツなどない!なんだ、あの小娘は!?」

「嫌がらせですよ、宇宙軍の…子供の使いだと思えば……」

「使いはとっとと返すに……限る!」

そういいながら菓子を鷲掴みするアズマ。
さて、何も知らずに暢気にお茶を飲んでいるが。
ハッキングされているなど考えてもいないだろうな、この“警備責任者”は…。



‡ナデシコB‐ブリッジ‡

「あー、やっぱり公式の設計図にはないブロックがありますね」

「襲われるなりの理由ってやつかナ?さあ、続けていってみよう」

「ム……」

艦長であるルリとヒサゴンになった正人が子供たちと一緒に見学コースを視察している頃。
ナデシコBではハーリーと三郎太が、アマテラスの極秘調査をしていた。
ハッキングに成功したハーリーは、非公開の情報を幾つか見つけだす。

「ボソンジャンプの人体実験?……これ、みんな非公式ですヨ」

「おいおい、こいつは……」

驚きを隠せない二人。
だが、驚いている暇はなかった。

「あっ!?」

「バレたか?」

「モード解除、オモイカネ、データブロック!」

「侵入プログラム、バイパスへ!」

ハーリーがすぐさま対応する。
その対応には、問題はなかった…問題は表示されたウィンドウ。

「何!?」

「……これは一体…」

『OTIKA』

このウィンドウはナデシコBだけではなくアマテラスにも表示されていた…。



‡アマテラス‐某所‡

「…ハーリー君、ドジった?」

次々に表示されるウィンドウを見てルリが通信をしている。
こっちは子供の対応に大忙し…。

「落ち着いて、皆さん、落ち着いてください!一列に並んで、ほら静かに…」

「「「「キャーーーキャーーーウワーーーー」」」」

一向に静まる気配のない子供。
と…ブチッと何かが切れる音がした気がする。

「静かにせんか、落ち着けオラァ!!」

「「「「…」」」」

さ、さすがベテラン…効果的面です。

『ぼ、僕じゃないです!アマテラスのコンピューター同士のケンカですよ!』

向こうも話が進んでるみたいだな。

「…さ、並んでくださいね」

切り替えも早い…あなたは最高のガイドです。

「ケンカ?」

『そうなんです!そうなんですよ!』

『アマテラスには非公式なシステムが存在します』

『今の騒ぎは、まるでそいつが自分の存在を皆に教えていると言うか…単にケラケラ笑っているというか』

「……」

ハーリーの言葉に考え込むルリ。
なにやらウィンドウを見てるみたいだな…
『OTIKA』…なんだこれ?

「!?」

瞬間、驚いた表情を見せるルリ。
俺を見据える。

「正人さん、行きますよ!」

初めて聞くルリの大声。
というか、俺のことを忘れずにいてくれたか…よかった。

「了解!」

すぐにヒサゴンを脱ぎ捨て既に走り出したルリを追う。
子供とガイドさんが呆気に取られてるが気にしない。

「ガイドさん、あなたは最高のガイドだよ!!」

最後にそう言って走り去る俺。
ついでにここまで乗ってきた乗り物を拝借する。
ルリに追いつくとハーリーの写ったウィンドウが追いかけていて何か話している。

「ルリ!乗るんだ!!」

「え?」

会話を遮り叫ぶ俺だがルリが対応できていない。
ちょっと強引にだがハンドルから手を離し掴んで乗せる。
かなり驚いた表情のルリだがハッと我に返ったようで言葉を発する。

「敵が来ますよ!」

「「え!?」」

その唐突な言葉にハーリーと一緒に驚いてしまった俺…。



‡アマテラス‐管制室‡

「ボース粒子の増大反応!」

「全長10m、幅約15m!」

「識別不能!相手応答ありません」

原因不明のウィンドウで慌てていた管制室にさらに追い討ちがくる。
第一次防衛ライン付近に“起動兵器”がボソンジャンプしてきたのだ。



‡黒い起動兵器‐コックピット‡

光が集まり形を作りだす。
現れた黒い起動兵器のパイロットは…。

「……」

怪しく口端を吊り上げ笑った。

:続く:



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