『もう一度はじめから』



「地球連合宇宙軍統合司令部より艦長研修のため参りました。

 『カザマ・ミカズチ』です。よろしくお願いします。」









果たせぬ誓いほど残酷なものはないとそのとき知った。










――ひとりで木星に行かせてほしい――


あの人はそう言った。



私は行かせたくなかった。

もう…帰ってこないような気がしたから。

二度と逢えない…そんな予感しかしなかったから。





――必ず戻ってくる――

――たとえ…全てをなくしても――

――必ず君のところへ戻ってくるから――





その言葉を笑顔を…信じて見送った。





けれど…

あの人は…帰ってこなかった…。

私たちの目の前で起きた爆発があの人を奪い去っていったから。



誰もが諦めろと言う中で…

それでもあの人の帰還を私は信じていた。



諦められるはずがない。

忘れることなんてできる訳がない…。

あの人は必ず帰ってくる。


――――と。














果たせぬ誓いほど残酷なものはないとそのとき知った。














「初めまして。お会いできて光栄です。どうかよろしくお願いします。」



差し出された右手を握り返すことができなかった…。

身体の震えを抑えるのが精一杯だったから。



プロスさんから話は聞いていたのに…

目の前の真実を受け止めるのがこんなにつらいなんて…。





あの人は忘れてしまった。

あの日々を……想い出を……そして……私を…。





「……カザマ…さん……ひとつだけお聞きしてもいいですか?」


「はい。私に答えられることでしたら。」


「…どうしてこの戦艦に…ナデシコに乗ったんですか?」





『それは上層部の命令』

もちろん命令に従っただけだとわかってる。





それでも聞きたかった。

この人の口から。





――別離の言葉を。





納得したかったのかもしれない。

あの人はもういないのだと。





「それは………。」



口にすることを迷っているように見えた。



「その…うまく……言えないんですが…。
 乗らなくてはいけないと……自分はこの船に帰らなきゃいけないと思ったんです。」



――!?



「はは。変ですよね。乗ったこともないのに。…すみません…失礼なこと言って。」








………。


帰ってきてくれた…。


帰ってきてくれたんだ……。








「っ!? えっ!? あっあのっ…どうかなさったんですか!?」


「いえ…何でもないんです。気にしないでください。」





思わずこぼれてしまった涙を指先で拭う。

やっと…彼の瞳を見て微笑むことができた。





「クルーの皆さんを紹介しますね。

 皆…貴方が帰ってくるのを待ってたんです……ずっと…。」










もう一度はじめよう。






何度離れても

何度見失っても

もう一度はじめから。





だいじょうぶ。

この想いが消えることはない。


































---
<あとがき>
どもども。Rin です。
さてさて今回の甘さ加減はいかがなものでしょうか?

本日のお題は『NADESICO THE MISSION −カイト編』
Rin にはめずらしくルリ×カイトな話と相成りましたが、お気に召しましたでしょうか?

じつはこの話…前に連載のプロローグにしようかと思って書き始めたんですが
その後のプロットがまとまらずにお蔵入りになってました。
ありがたいことに TELMIN さんのリクエスト書き込みで「こんなの前に書いたなぁ」と思い出したので、
今回加筆修正してお披露目しちゃいました。。
(※TELMIN さん、シグさん、今はまだリクエストにお答えできてませんが…いつか必ず!)
今のとこ連載化は考えてません。シリアスだとネタが続かないんだもん(笑)

今年はSS書き始めたり、サイト開いてみたり、転職してみたり…
波乱万丈な一年でしたがずいぶん楽しかったです。
来年も砂糖菓子なSSを日々世に出せるよう精進しますのでどうかよろしくお願いいたします。

では皆さま良いお年を。
それではまた時をあらためて・・・。

(2001/12/30 掲載)
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