『つながる想い』










『誰かいませんか?』


くりかえしくりかえし青い闇に問い掛ける。


『誰かいませんか?』


遥か遠いあなたにつながるその時まで。










沈んでいく。

ゆっくりとゆっくりと。

深い深い水の底。


上も下も右も左もわからないのに

沈み落ちていく感覚だけが私を支配する。


目を開いても見えるのは青い闇。



『誰かいませんか?』



求める想いは声にならずに。

やわらかな波紋となって果てしなく広がっていく。



『私は…ここにいるよ』



今は知らない誰かに向かって。

繰り返し繰り返し呼びかける。



『私はここにいるよ』



少しずつ冷たくなっていく身体。

少しずつ沈んでいく想い。

少しずつ消えていく光。



『誰かいませんか?』



まだ見ぬ誰かに向かって。

伸ばした指先は青い闇に溶けて消える。








想いは…本当に届いているの?








ふいに浮かび上がる感覚。

暖かな気配が私を包む。

身体に染み通っていくやわらかい波。




『ここにいるよ』




目を見開いてたった今受け取った声を追いかける。



あなたは誰?



見えるのは真っ白の光。

伸ばした指先からこぼれ落ちていく優しいぬくもり。



お願い。待って。



あなたは誰?









真っ白な光の向こう側。

ぼんやりとした意識がはっきりしていく。


「ごめん…。起こしちゃった?」


聞き慣れた声。

大好きな音。


「…カイトさん。」


申し訳なさそうに顔を覗き込んでいるあの人の名を呼ぶ。

いつのまに眠っていたのだろう…。

身を起こそうとして自分をくるむ毛布に気づく。


「ルリちゃん,寒そうにしてたみたいだったから…。
 そしたら起こしちゃったみたいで…その…ごめん。」


「いえ。大丈夫です。」


そう言って隣に座っているカイトさんに向き直った途端

カイトさんの左手が私の頬を包みこんだ。


「こわい夢でも見た?」


親指が目尻に少し浮かんだ雫をそっとぬぐう。


「………半分だけ。」


「半分?」


「もう半分は…嬉しい…夢だったから…。」


「そっか…。」


頬を包むてのひらが離れていく。



あ…。



瞬間浮かんだのは

光の中で指先からこぼれ落ちていった優しいぬくもり。



離したくなくて咄嗟にカイトさんのシャツをつかむ。

カイトさんはちょっとびっくりした顔をしていたけどすぐに優しく微笑んでくれた。

恥ずかしくなってうつむいた私は次の瞬間にはカイトさんの胸の中にいた。

そして耳元に届いた言葉。


「大丈夫。…ここにいるよ。」






あぁ…。ちゃんと届いたんだ…。







頭をなでる優しい手のひらと

私を包む暖かな気配を感じながら意識はまた青い闇に落ちていく。







『誰かいませんか?』


くりかえしくりかえし青い闇に問い掛ける。


『誰かいませんか?』


遥か遠いあなたにつながるその時まで。


だけどもうこわくない。


『ここにいるよ』


声はちゃんと届いているから。


想いはもうあなたにつながっているから。






































---
<あとがき>
どもども Rin でございます。
今回の甘さ具合はいかがなもんでしょうか?

本日のお題は『呼び声の行方』。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが,
元ネタは「RURI ― 機動戦艦ナデシコ文庫写真集」(角川スニーカー文庫)の一節よりお借りしました。
あのルリ写真集けっこう好きなんですよ。ルリルリ Voice で読むとなお良し。何気にじんわりきます。

最近,まだまだ砂糖が足りないよなぁと反省中。
おあずけくらってるカイトくんが Rin の頭の中で暴れてまして…
どんなネタ考えても,ルリちゃんに触りたがる抱きしめたがる(笑)
ははは。どっかで一暴れできるといいやね。

それではまた時をあらためて・・・。


(2001/11/27 投稿)
(2004/01/10 転載)




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