『約束』










――僕ができると言ったなら僕はどんなことでも必ずやり遂げる――

――それが誓い――











- 3 -


コックピットの非常灯のわずかな明かりの中。
最低限の電源を残し,全ての電源を落として息をひそめじっと時を待つ。

作戦開始まであと60秒。

神経が研ぎ澄まされ,集中力が高まるのを感じる。
もう一度,要塞内部の構造と突入ポイントを確認する。



戦いの前の高揚感。



――君が僕にできると信じてくれるなら…僕はどんなことでもできる―――



作戦開始。



エステバリスの起動と同時にナデシコから発射されたグラビティブラストが要塞を揺るがす。
要塞の中からバッタが次々に飛び出してくる。
連中を無視して全速力で要塞に近づいていく。



――だから僕の心配なんかしなくていい――



2発目のグラビティブラストが宙を切る。

要塞を囲むディストーションフィールドに取りつくがまだ破れない。

3発目のグラビティブラストが当たるの同時にフィールドランサーを突き立てる。


突き抜けた!


即座にフィールドの隙間に滑り込み
近づくバッタをかわしながらレールカノンで城壁を撃ちぬく。
城壁の穴から内部に飛び込んだ途端,一面のバッタの群れ。



――君が僕を信じてまかせてくれたなら…何があろうと必ずやり遂げる――



「ご丁寧な歓迎…いたみいるね。だが,お前らと遊んでる暇はない!」


要塞中心部へ向かって再びレールカノンの引鉄をひく。

弾のなくなったレールカノンを捨て,周りのバッタを跳ね飛ばしながら次の部屋に進む。

今度はグレネードランチャーで道を作って飛び込む。



――だから君はその先を見て――



とにかく中心部へ!

バッテリーはあと10分!



――僕がやり遂げたその先を。今度は君がやり遂げてくれると信じているから――



「見つけたっ!!こいつかっ!!」


飛び込んだ部屋の奥に演算機のようなマシンが見えた。
僕に残る木星の記憶が,こいつが元凶の制御コンピュータだと教えてくれる。
他には目もくれず,ありったけの弾を撃ち込んだ。


「こいつで終わりだっ!!」


手近なバッタを掴んで制御コンピュータに投げつけた。
ぶつかる瞬間,バッタめがけてイミディエットナイフを放つ。
スパークが走って爆発が起こった。

爆風がおさまった部屋には制御コンピュータの残骸が飛び散っている。




任務完了。




ホッとしたのもつかの間
突然部屋のライトが真っ赤に染まり警報が鳴り響く。


『緊急警報!!緊急警報!!
 メインコンピュータに致命的な障害が発生しました。
 機密保持のため60秒後に全館を爆破します。繰り返します。……』


「なっ!?チッ!!」


考えてる暇はない。
たった今来た道を今度は全速力で逆走する。


『5秒前』

『4』

『3』

『2』

『1』







「クッ!!」













――君ができると信じてくれたなら…僕ができると言ったなら…必ずやり遂げて君の元へ還る――

――それが願い――

















「カイトさんっ!」


整備班のみんなに後を任せて格納庫を出るとルリちゃんが待っていた。


「ルリちゃん!……っとと……艦長!只今帰還しました。」

「あ…はい。お疲れさまです。報告書は後で構わないですよ。」

「了解!……てことで…ただいま,ルリちゃん。」

「おかえりなさい,カイトさん。」




あのとき…ギリギリセーフで脱出を果たした。


が…飛び出した先はナデシコのエネルギー供給範囲外。
バッテリーも底を尽いて…結局…動作不能。
救難信号を発信して迎えに来てもらい,先程やっと帰還できたとこ。



「う〜ん。今回は最後の詰めがちょっと甘かったよなぁ。」

「まぁ…無事に帰ってこれたんですから,良しとしましょう。」



僕を見あげるルリちゃんの笑顔を見ながら
バッテリー切れ直前に通信機から聴こえてきた声を思い出す。



『あの人が帰ると言ったなら必ず帰ってきます。』

『だから…今は…今は私達にできることをするんです。』



自然と口元が緩む。
ちょっと心配かけちゃったけど,少しは役に…立てたかな。



「ルリちゃんの方は終わった?」

「はい。残りはハーリーくんにお願いしてきました。」

「そっか。じゃあシャワー浴びて着替えてくるから,その後ご飯食べにいこうか。」

「はい!」










――イツキ…。君との約束を僕は決して忘れたりしない。――

――君が教えてくれた約束を,僕は彼女のために守りたい。――

――誰よりも大切な彼女のために,君との約束を果たし続けたい――

――彼女を守り続けるために――

――彼女の支えとなるために――

























































---
※この作品はヨシさんのサイト『蛙鳴蝉荘』に投稿しました。


<あとがき>
どもども,Rin でございます。
イツキ×カイトかなと期待された方,ごめんなさい。じつはこの話カイト×ルリです。
カイト×ルリだろうと期待された方,ごめんなさい。今回イツキと甘々&ルリ相手にはまだお兄さん役です。

さてさて今回の甘さ具合はいかがなもんでしょうか?

本日のお題は『頼りになる男』です。
何でもできるすっごく頼りになるカイトくんは,そうあるために覚悟決めて頑張ってるよ〜
なカンジを書いてみたかったのですが上手く表現できましたでしょか?

またしても勝手にストーリー設定作ってしまいました。
設定的には,ミカズチ設定のカイトくんで「うずもれた『恋のあかし』」のルリEND後,ナデシコBに乗艦。
本来のナデシコBクルーでの任務遂行中のできごとという流れです。なわけで,サブロウタさんとハーリーくんもお仲間(^^)v
カイトくんはミカズチの記憶ありますけど木星には行ってません。まだ。
個人的には,イツキ×カイトも好きなんでまたチャレンジしてみたいところです。


いやはや今回は長かった…。
話が固まるまでに3回ネタ変わるし,プロット決まってからも状況説明と戦闘シーンが…書けなくて…書けなくて…いやもう書けなくて…。
すみません,今回の設定&戦闘シーンどっかおかしくても見逃してください。
最後の最後まで3人称に書き直そうか迷いまくった挙句このままにしました。
ルリ側の様子が書けなくてちょっち心残りですけどね。

少しでも気に入ってくださる方がいらっしゃることを心から祈って。
それではまた時をあらためて・・・。


(2001/11/14 投稿)
(2004/01/10 転載)





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