『消えない月』












目が覚めた。
真夜中に理由もなく。


理由はあるのかもしれない。


カーテンの隙間からのぞく蒼い月。
あの光に揺さぶり起こされたのかもしれない。





こんな月の夜…あの人は独り出かけていく。





一度だけ…追いかけて尋ねた。

真夜中の公園で
ベンチに腰掛けて月を見上げていたあの人に。





――月に魅せられたんだ――



やさしく微笑んで。





――月には魔力があるんだよ――

――人を狂わす魔力が――



やさしく微笑んで。





――知ってるかい?――

――満月の夜は特に犯罪の発生率が高くなるそうだよ――



やさしく微笑んで。





――人間の身体は8割が水でできてるから――

――月の引力に影響されるんだって――



やさしく微笑んで。





――不思議だよね――



やさしく微笑んで。






――月は…夜毎現れて人を狂わせる――


――人は…月に魅せられて――


――囚われるんだ――






あの人は立ち上がってゆっくりと私の前に立った。

逆光で顔は見えなかった。





――ルリちゃんは『消えない月』だよ――


――…僕にとっては…ね――





小さな…かすれた声が響く。





肌を刺す冬の夜気と降り注ぐ冷たい光の中で
あの人の視線だけが熱かった。


その視線にからめとられて私は身動き1つとれなかった。







ふいに…あの人は背後の月を見上げた。



――もう…帰った方がいい――

――あの月に魅せられる前に…――



私は逃げるようにその場を去った。









あのとき…あの人は…カイトさんは…どんな顔をしていたんだろう…。









静かに身を起こす。

たぶんあの公園…。





外に出ると冷たい風が足に絡まる。


一瞬浮かんだためらい。





月の光が私を包む。
頭の上でまあるい月が笑っているような気がした。





狂わされてしまったのかもしれない…。

私もこの月に。





いや…初めから狂っていたのか。

あの人に。





もう迷いはなかった。





あの人が待っている。

あの場所で。

あの月とともに。






























































---
※この作品はヨシさんのサイト『蛙鳴蝉荘』に投稿しました。

<あとがき>
どもども。Rin でございます。
さて今回の甘さ具合は……ごめんなさい,甘くなかった?(ある意味甘いか?)

今回のお題は,『月に狂った男と女』 in 「???」(The blank of 3years〜)  です。

唐突に思いついたネタだったはずなんですが…
ヨシさまの『月下の夜想曲』の影響バリバリくらってます(爆)
※ひぃ〜!ヨシさま,ごめんなさいぃ(汗)『月下の夜想曲』のカイトくんカッコイイんだもん(<言い訳)

Rin は月を見上げるのが好きです。
上の方から月の光を浴びてると何だか身体が透明になる感じがして好きです。
満月うんぬんの話…統計上,ホントにそうらしいです。人聞きですが。
引力うんぬんの話…特に女性はそうらしいです。人聞きですが。
Rin 個人的には確かに月に影響くらってるような気がします。
月の光って静かな力に浸されているような感じ。夜型人間のせいかもしれませんが。

少しでも皆さまの目の前に情景を浮かべることができましたら幸いです。

仕事に行詰るとネタが浮かぶのは現実逃避だよなぁと思いつつ
それではまた時をあらためて・・・。


(2001/10/23 投稿)
(2004/01/10 転載)





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