ねえ、私はわかってるの


きっと、最後にはこう悟るはずだって


そう・・・・終局なんて・・・ない

ただ

階段を一段上がっただけ

無限の螺旋階段を


同じ座標にくれば

繰り返すだけ

同じ事を

繰り返すだけ


だから、終局をプレゼントしてあげる

そうする事をあなたも望んでるんでしょ

まだまだ・・・・・ずっと、先になっちゃうかもしれないけど、まっててね。






カイト。

きっかけは些細なことだったのかもしれない。

”ＡとＢどっちにしますか？”

”Ａのほうがいいだろう”

”了解しました”




”ＡとＢどちらににげましょうか？”

”しかたない・・・Ｂに逃げよう”

”了解しました”




このとき世界は４つうまれる

前者の訪れるＡ、前者の訪れなかったＢ

後者が逃げてこなかったＡ、後者が逃げてきたＢ

４つの世界は”同一”であり、”異質”である。

そう、きっかけは些細なことだったのかもしれない。

しかし、事実、世界は無限に広がっていく。

私達は、この世界達を多次元的平行世界・パラレルワールドという。

無限に広がり伸びて行く世界

終局なんてない

この世界に・・・・

ＡＤ　21９８　　　　冥王星宙域　　カイパーベルト

「これより、テストに入ります」

「ええ、やってちょうだい」

戦艦のブリッジをイメージさせる空間。各種計器を前に男は白衣の女性に最終確認を求める。女性も対してこだわることもなくＯＫサインをだす。

『テストタイプパーソナルトルーパー０１、ＴＰＴ０１、ＯＳ起動します』

「・・・・カイト、気をつけてね」

白衣の女性はＴＰＴ０１より聞こえてくる声に、呟くような返答をする。無論だれにも聞かれてはいないようだった。

『ＴＰＴ０１開発担当のカリン・タチバナです。今回限り、カイト少佐と同乗して、データ採集を行わせていただきます』

『聞き及んでおります、カイト少佐のサポートをよろしくね、妹さん・・・』

周りからすれば、少し嫌味の入ったような最後の言葉を気にすることもなく、通信先の女性は”了解”という返事を淡白に返す。

『ＯＳ起動確認、エラーは１２１、十分にいける範囲です』

『了解、一応パッチをあてます。エラーを３０までに押さえた後、本艦より宇宙距離１００ｋのポイントにおいてテストドライブを開始してください』





『機体、ポイントに到達、これよりテストに入ります』

「ポイントに機体確認、カイト少佐。よろしくお願いします」

『了解、これより通信遮断します。カリンの送るデータを参照にしてください』





「量子エンジン始動率８５％、空間歪曲エネルギー臨界まで２０秒、順調です」

「前方に亜空間エネルギーを集中する。各種計器の変動よろしく」

「了解。特異点Ａ充填まで１００秒、目標は火星宙域、空間歪曲場の力線が円周状に収束。安定してます」

「・・・・・・・・相変わらず・・・だな、お前は」

「・・・・・なによ、今忙しいんだから」

緊迫した口調から一変するようにカイト、カリンの会話。兄妹の会話。

「これが終わったら・・・・・・お墓参り・・いかなくちゃな」

「そうね・・・エンジン始動率９８％、波動臨界に到達」

再び緊迫した口調。青年は少しだけ自虐的な表情を前方に向けた。妹には見られることはなかったが、モニターよりわずかに反射して映る自分自身を見て苦笑いする。そして前方の空間が歪み始めることを目視するや、口調を妹と同じく、厳しくする。

「・・・周囲の空間の状況は？」

「完全に”異化”しました」

「亜空間ホールに突入する！！」

「・・・！！兄さん！！エンジン始動率が１２０％をこえてるわ！！このままじゃあ・・・・」

「・・！！駄目だ．．。ホールにすいこまれる・・・・」

「にいさ・・・・・・」

声にならない悲鳴を残しながら・・・・彼等、そしてＴＰＴ０１はこの”世界”からきえた・・

「異常発生です！！宙域全土が”異化”します。・・・エネルギー量が異常です！！」

「ＴＰＴ０１の状況を報告しなさい！！」

「量子エンジンの暴走です。特異点が固定されませんでした・・・・・」

「火星に亜空間通信を送りなさい！！全宙域を隈なく捜索司令を！！」

「それが・・・・・」

「えっ？」




そして、その空間に悲鳴がひびいた・・・・・・

　　　　　　　　　　　　　　　　　　機動戦艦ナデシコ　　　ＡＮＯＴＨＥＲ　ＳＴＯＲＹ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　”ＤＵＡＬ　ＷＯＲＬＤ”

　　　　　　　　　　　　　　　プロローグ　　　the origin　　　(発端)

ＴＯ　ＢＥ　ＣＯＮＴＩＮＵＤＥ