様々な思惑が絡み合い、

             そして、数奇な運命をたどった

               地球連合最強の戦艦。

                        機動戦艦ナデシコ 

                      その航海が終わる時・・・  

              新たなる物語が始まった。        

                  突如現れた、

              たった一人の男によって・・・

            それは、誰も予想だにしなかった

              イレギュラーなストーリー・・・    

 

                        レイラ・A・クオノ

 

           機動戦艦ナデシコ                   

                       ”AからBへの3年間”                    

                     −記憶亡き『来訪者』− 

 

       第2話 旅の終わり、そして始まる『物語』 前編

 

展望室

カイトといた、ユリカに通信が入る。

「艦長。ネルガルのドッグ艦゛コスモス"より通信が入ってます。」

「わかりました。繋いで下さい。」

ユリカの前に、一人の女性のウインドウが表示される。

「はじめまして。カイト・コスモ・スペースのレイラ・A・クオノと申します。ただいまよりナデシコを当艦に収容したいのですが、承認をおねがいします。」

「こちらこそ、初めまして。当艦艦長ミスマル ユリカです。収容の方よろしくお願いします。」

「分かりました。早速収容作業に入ります。作業が終わりましたら、貴艦の皆さんにせつ・・・お話があります。ハッチを開けて、格納庫の方に皆さんあつまってください。」

そう言って、ウインドウが消える。ユリカは、メグミのウインドウにクルー全員格納庫に向かう様に指示し、カイトに、

「地球から、迎えが来ました。収容は、すぐに済むと思いますので、格納庫に向かいましょう。貴方の事も話さなければなりませんから。」

と言って、展望室から引っ張っていく。

 


格納庫

ナデシコのクルーが続々と集まってくる。皆、気分が重く、雰囲気が暗い。冷静に考えたら、それも無理からぬ話ではある。なぜなら、彼らの行った行為は、地球連合からすれば、明らかに反逆罪そのものであったからだ。そんな雰囲気の中、ユリカとカイトがやってくる。するとユリカは

「皆さん心配ありません。私たちは、私たちらしく行動したんですから。きっと皆さんも認めてくれます。」

と、相変わらずお気楽な口調で励ます。最も、実際には何の励ましにもなってはいないのだが・・・。

「カイトさん。落ち着きましたか?」

カイトの姿を見つけたルリは、彼の元に行きそう問い掛ける。

「ありがとう。心配掛けて、申し訳ないです。わたしは大丈夫ですら。それより、髪を下ろした姿もきれいですよ。」

とまたも知らず知らずに、キザなことを言うカイト。ルリは、普段とは違い、髪を纏めていなかったのだが。

「はあ・・・どうも・・・・ついさっきまで、シャワー浴びていた物で・・・。それより、耳、塞いでいた方が良いですよ」

抑揚の無い声で返すルリ。最も、顔が赤かったのだが。

「耳塞いだ方がって・・・」

と、カイトが問いただした直後・・・・・・・・

「ゆぅぅりぃ〜〜かあ〜〜〜〜〜〜」

と、突然の大音響で叫んだのは、ご存知、地球連合軍きっての親バカ提督ミスマルコウイチロウ少将であった。

その突然の音声兵器によって、ユリカと耳を塞いでいたルリ以外、その場にいた全員ぶっ倒れていた。

「お久しぶりです。お父様。」

ユリカは、平然と挨拶する。

「あの〜・・・・大丈夫ですか?」

ルリがうつ伏せでぶっ倒れてるカイトの前にしゃがみこんで、呼びかける。

「ご・・・・ご忠告・・・あ、ありがとうございます。ユリカさんが何で昨日の大音響に耐えたのか、よ〜くわかりました。」

音声兵器の攻撃をモロに食らったカイトは、呼びかけたルリに顔を上げ、そう答えたが、先ほどの余韻が残っているせいか、また伸びた。

ぶっ倒れている皆さんに気付いたコウイチロウは、向き直り、

「大変失礼した。私は、地球連合宇宙軍第三艦隊提督ミスマル・コウイチロウである。地球連合から、君たちの身柄を預かる為に、こちらに出向いた。だがこの件に関して、悪い様には、しないつもりだ。諸君の身柄はこちらのクオノ女史が預かる事になった。レイラ君。おや、レイラ君はどこに・・・」

「提督・・・クオノ女史は、あちらに・・・」

コウイチロウの側近の軍人が、気まずそうに、格納庫の端を指差した。その先では・・・

「すっご〜い。GT-R.それも、R32じゃない。うっわ〜こんなにピカピカ。見事なパール塗装。しかもフルエアロにタイヤも18インチ。しかもブレーキは・・・・」

と言った感じでカイトの車を品定めしている一人の女性がいた。その姿にあぜんとする一同・・・

「相変わらずね。レイラ。」

「シートはレカロで、ステアリングはモモで、めずらし〜、GT-Rなのにサンルーフついてる〜」

イネスがその女性に話し掛けるも相変わらずカイトの車の周りかじりついている(それでも、車には指一本触っていないが)ため、おもむろにスリッパを持ち出し・・・

            スパ〜ン

「あだっ。イッタ〜・・・何すんの。って、あら、Dr.フレサンジュ。お久しぶりです。」

イネスに叩かれて、こちらを向いたのはトレーナーにGパン、そのうえによれた白衣を羽織り、ぼさぼさの髪を無理やりアップにまとめ、顔中煤まみれにめがねを掛けた一見国籍不明な感じの女性だった。

「まったく・・・何しにきたの。あなたは。」

「何しにって・・・ミスマル提督のお話した通り。それに一応、この艦の開発主管ですから、ナデシコの様子を見に。そ・れ・と、ネルガル重工のお偉いさんにくわしく事情を聞こうと思いまして・・・

そちらの契約違反の理由について。

「ア・・・あははは・・・相変わらずてきびしいですねえ・・・。」

冷や汗を流しながらアカツキは答える。

「まぁ、その件については、違約金をたっぷり頂く予定ですし、宇宙軍、ならびに地球連合に対しても、詳しい話を聞かなければならないけど、まず、当事者たるこのクルーの皆さんに最初にお話を聞かなければ話が始まりませんから。まず、その前に地球に帰還するわけなんですけど、地球連合側からの正式な処分が決まるまで、皆さんは、私の指示に従ってください。」

「正式な処分って?」

ユリカがキョトンとしながら答える。あんた、当事者だろうに自覚無しかい・・・

「今回の件に関しては、間違いなく軍法会議を通り越して、軍事裁判物なんだけど、今のこの状況では、とてもそんなことしている暇も無い、しかもナデシコは、木連の正体を世間に知らしめたお陰で世間一般に対して有名になっちゃって、ヒーロー扱い。なんで、下手に処罰しようものなら、世論の突き上げを食らうのは、間違いない。かといって、このままに処分保留にして、再び前線に出すのも問題がある。だから、この件は、しばらくお預け。本来であれば、ネルガルが身元引き受けになるけど、もともと皆さんネルガルの社員なんで、証拠隠滅の恐れがあるってんで、ウチに回ってきたって訳。それでなくてもウチは平和目的以外、勿論戦争に対して、一切の資金、ならびに技術援助はしない方針なんで、それ以外のことを手伝わなければ立場が悪いのでね。ナデシコの建造に関して、ウチが全面的にバックアップしたのも、本来、火星の遭難者救出が目的だったという理由の為のはずなのに、いつのまにか軍に編入されてるし。その辺についての事実関係もはっきりさせたかったし、ちょうど良かったって訳。とりあえず、今の状況では、ろくに事情聴取できなさそうだから、皆さん、自由にしてて下さい。私は、オモイカネにアクセスして、このいきさつを調べます。オモイカネ」

お久しぶりです。リアルマスター

レイラの前にウインドウが現れる。すると、ルリが、レイラに問い掛ける。

「この前、ナデシコが、地球を離れる際、セッティングし直して貰いましたけど、オモイカネとは、どういう関係なんですか?」

ちなみに、この前、と言うのは、ナデシコが、ユキナをつれて、木連に向かう直前の事であり、レイラは、ネルガルからの依頼により、オモイカネの再調整を行なったのだが、あくまで、依頼を受けた再調整のみで、リプログラミングはしなかった。

「ああ、そういえば、この前話してなかったっけ。オモイカネは、元々、私が創り上げたプログラムなのよ。貴方の事は、オモイカネから聞いてるわ。以前、この子、ヘソ曲げた時、あなた方に迷惑を掛けたそうで、ほんと、ごめんなさいね。」

「いいえ、もう済んだ事ですから・・・気にしないで下さい。」

創り上げた人間とはいえ、オモイカネを者扱いしなかったレイラにルリは、親しみをおぼえていた。

「それと・・・あの車、 元々ナデシコに積んでなかったはずだけど、誰の持ち物なのかしら?」

レイラは、カイトの車を指差しながら、問い掛ける。すると、カイトが前に出て、

「私の車ですが・・・」

「あなたですか・・・ナデシコクルーのメンバーに登録されてないようですが、失礼ですがどちら様ですか?」

「この人は、火星で発見した遭難者です。あの車に乗って、ボソンジャンプしてきたんです。」

ルリがレイラにそう答えた。

「ちょっと、何でそこまで言うのよ」

エリナは、ルリに怒鳴りかける。がレイラは、

「どの道、オモイカネにアクセスすれば、すぐにわかること。わざわざ目くじら立てる必要ないでしょ。それとも、何かやましい事でも?」

「う・・・」

レイラの一言に二の句も上げられないエリナ。

「ま、それはおいといて、初めまして。カイト・コスモ・スペース代表取締役、兼技術開発研究所長、レイラ・A・クオノともうします。こんななりからは、想像つかないでしょうけど」

と、カイトに向き直り、名刺を渡すレイラ。カイトはそれを受け取り、

「こちらこそ。カイト・アムネジアと申します。といっても、昨日、頂いた仮の名前なんですが。それと人を外見だけで判断する様では、礼儀知らずもいいところです。察する所、あなたは礼儀を重んじる方の様ですね。名刺の渡し方は勿論、渡すときのその清潔な手。なにより、その肩書きにおごらない態度。そして、あなたの凄さは私の顔を見て、すぐにナデシコのクルーでないと分かったことです。事前に調査済みなんでしょう。」

「・・なるほどね。名刺をわたした時、そこまで見てるとは・・・なかなか洞察力に優れているようですね。それより、昨日頂いた仮の名前というのは・・・」

「実は・・・記憶が無いんです。ここに来る前の・・・。」

「・・・・そうですか、悪い事を聞いてしまって、ごめんなさい。」

「気にしないで下さい。いずれ分かる事ですし、どの道言わなければならない事ですから。」

「それじゃあ、あの車の事も・・・」

「・・・残念ながら・・・」

「あの車から、手がかりが得られるかも。」

「ええっ!!本当ですか!!」

にじり寄るカイトの気迫に圧倒されるレイラ。

「ええ・・・私もあの車と同じ型の車、と言ってもあんな派手な改造してないけど、所有してるんで、オーナーズクラブにも加盟してるから、そのデータを照合すれば分かると思うけど。とりあえず、車体番号か登録番号見せて欲しいんだけど」

そう言われるや速攻車に向かい、ドアをあけるカイト。警報の件もあって。、ロックはしていなかった。そして、ボンネットを開ける。レイラは、エンジンルームを覗き込み、載っているエンジンを見て、再び驚くが、エンジンルームの車体番号を確認して、手持ちの端末に入力する。入力し終わり、結果が表示されると、顔色が変わり、車をもう一度見回し、後ろのナンバープレートを、確認し、つぶやく・・・

「そんな・・・まさか・・・これって、本物・・・?たしかに、RB-X GT2が載ってるし、エンジンルームの色がシルバーだけど、でも、色が違うし、だいだいサンルーフなんてついてなかったはず・・・でもなんで、この車がここに・・・?」

「どうしたんですか?レイラさん」

「あなた、どこでこの車を、・・・と言っても分からないんでしたね。信じられない事だけど、この車、幻の存在なのよ。」

「確かに、1998年で、登録抹消されてますから。でも、幻の存在って、どういうことです?」

幻の存在といわれ、呆然とするカイトを横目にルリが問い掛ける。すると、レイラは、一枚の画像をウインドウに表し、

「この車、GT-R V specVは、さる、チューニングショップが、といっても、実際には、メーカーが開発の為のデータ取りのためにとも噂されているけど、製作した車両で、完成直後に事故に遭い、修復された物の、テスト走行に向かう最中、ある高速道路の多重衝突事故に巻き込まれて、行方がわからなくなった車よ。そして、今日にいたるまで発見されて無いわ。その車がここにある。それだけでも充分謎なんだけど、それ以上に、当時の姿とは、全く違うのよ。」

ウインドウに出された一台の車の画像は、確かにカイトのGT-Rと同じ姿だったが唯一、決定的に違うのは、そのボディカラー。ウインドウに出ているほうは、眩いばかりのシルバーメタリックに彩られていた。

カイトは、その画像を見つめ、呟く・・・

「これが・・・あの車・・・か・・・・・それより、行方が分からなくなったって・・・」

「当時のデータによると、延長予定だった、道路の切れ目から、海中に転落した可能性が高い物の、発見できなかった、と書いてあるわ。最も分かっているのはそれだけ。運転していた人物はおろか、製作したショップが何処か、すら書いてないのよ。メーカーが関わっているのなら企業秘密の絡みがあるのかもしれないけど確証ないし、まあ、200年も前のデータだから、それだけの情報があるだけでも、正直、多いほうだけどね。」

「その車に、なぜ俺が・・・」

「さあ・・・でも、貴方が記憶を失ってる事と、何らかの関係が有るかもしれない。とにかく、、詳しい事は地球についてから、かな。」

重苦しい雰囲気、そんな状況を払拭するかの様にユリカが言う。

「まあ、とにかく、今の段階では、詳しい事、わかんないんですし、地球についたら、きっと全て判るでしょう。地球につくまで時間がありますし、昨日に引き続いて、お父様や、コスモスの皆さん交えて、パーッとやりましょう。」

「オイ、ユリカ、今そんな状況じゃないだろっ!!」

御気楽なユリカに突っ込むアキトだったが、レイラが一言、

「そうね。皆さん逃げるわけでもないですし、木星トカゲも出てくる気配ないですし、正規の任務、ともいえないから、いいんじゃないですか?ミスマル少将、構いませんよね。」

「うっ・・・まあそうだな。どの道、ナデシコの諸君を地球に護送するのが目的で、こちらに乗り込んだ訳だし、この艦に関しては、私の管理下でもない。たまには私の部下も、たまには、羽目を外させてやらんとな。」

二人とも、すっかりナデシコの雰囲気に馴染んでる。そんな訳で、この後、コスモス内は、お祭り騒ぎになりながら、地球に帰還する事になる。

 

この作品は、フィクションです。本作品に出てくる車両”日産スカイラインGT-R”は、日産自動車株式会社の商品名ですが本作品に登場する仕様の車両”v-specV”は実際には存在しません。

Post Script

Morry: 「皆さんお久しぶりです。半年以上あいてしまい申し訳ありませんでした。今回は、本作品の、オリジナル、
       キャラクターである、レイラさんにお越しいただいてます。」

レイラ: 「どうも〜リレー小説以来久しぶりです。レイラ、Aクオノです。それはともかく、ほんとに何やってたの?ア
      ンタ。”風の通り道”にきてくださってる皆さん、すっかり忘れてんじゃないの?」

Morry: 「すみませ〜ん。いろいろ忙しかった上に、このパートの話、考えてなかったんで、纏めんの、苦労して
       て・・・。」

レイラ: 「まあ、このシーン、ゲームでは、語られなかった所だしねえ。そんなんで、完結できんの?」

Morry: 「正直自信は無いけど、物語の進行は考えてはいるんで、まあ、大丈夫でしょう。あまり深く考えると、今回
       みたく、かけなくなるし・・・。」

レイラ: 「ま、それはともかくとして、今回は、あまり進展は無いみたいね。車に関する伏線は出てたけど、これ
      は?」

Morry: 「これも、考えあっての事なんだけど、お楽しみにと言う事で。」

レイラ: 「あいかわらずねえ。とにかく、今度からは、もう少し、ペース上げなさい。ジョンなんか・・・」

ジョン:「俺の出番はまだか〜〜〜」

レイラ:「アンタそんなお茶目なキャラだった?」

ジョン「いや、忘れられてんじゃないかってねえ。ここで印象つけとかないと」

Morry「大丈夫だって。ちゃんと考えてるから。それでは、次回中編で、お会いしましょう。」

レイラ、ジョン:「また来週〜」

Morry: 「いや・・・それはちょっときついって・・・。」


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