「私たちらしく戦いつづけ、そして、私たちらしく戦う事をやめて・・・
そして、すべてがおわったはずだった。
だけど・・・忘れてはいけない。
終わりがあると言う事はまた始まりもあると言う事を。
だからってすぐに新しい問題が起こるのはどうかと思いますが。
ま、それがナデシコらしいといえばそれまでですが・・・。
ナデシコに積んだ戦争の原因である遺跡を
放り投げると共にやってきた“記憶亡き来訪者”。
彼が現れたことで、私たちナデシコの皆さんの、
そして、私の運命も、大きく変化する事になるなんて、この時は
誰も予想出来なかった・・・・・・・・・・・・・・。」
ホシノ・ルリ
機動戦艦ナデシコ
”AからBへの3年間”
−記憶亡き『来訪者』−
第1話 彼の名は『アムネジア』前編
医務室(イネスさんの研究室とも言う)
あまり広くないこの部屋にたくさんの人が入っていた。これからカイトの精密検査が始まるからだ。
イネスさん曰く
「頭を強打してるから、詳しく調べないとまずいでしょ。今、たいして痛みを感じないと言っても緊張してるからだけかもしれないし、緊張がとけたら、容態が急変する危険性もある。記憶を失ったのもそのせいかもしれないからちょっと付き合いなさい。別に医者が苦手とか、注射が怖いって訳じゃないでしょ。」
と言う訳で半ば強引に連れてこられたのだった。もっともカイトだけで良かったものの、もともとお祭りやイベント好きなナデシコクルーの事。格納庫にいた大半のメンバー(ウリバタケ以下整備班メンバー以外)も着いて来たのだった。もっとも付いて来た理由は、プロスペクターやゴ−トは、彼の素性を知る為。エリナやアカツキは、ジャンパーの資質があるか。といった真面目な理由から、ユリカやメグミやミナトのように面白そうだからという理由まで様々。中にはイネスさんと二人きりならなにか問題が起こるからというものもいるが、この場合、カイトがイネスを襲うのではなく、逆にカイトにイネスが何か怪しい実験やら研究やらやりそうと言うのがナデシコらしい。ちなみにアキトは食堂に戻ってお祝いの料理をホウメイさんの指揮のもと作っていた。ただしルリだけはブリッジに戻ってた。彼女曰く、
「また敵が襲ってくる可能性がありますからブリッジを空にする訳にいかないでしょう。」
といって、誰もいないブリッジに一人自分の席で、診察室の映像をウインドウに映し出し、見入っていた。
「ルリさん。彼のことが気になるんですか?」
オモイカネがウインドウで聞いてくる。
「ええ。なんとなく・・・ですけど。」
「彼の事、好きになったんですか?」
「な・・・なッななな何いってるんです。あなたもみんなに感化されてますね。」
「でも、一番感化されているのはあなただとおもいます。いい意味で。」
「はあ。そうでしょうか?でも・・なんとなく、似ているんです。あの人。・・・・・」
「似ているって・・・誰にです。」
「私にです・・・。あ、始まりました。」
そんなギャラリーの見守る中、診察が始まった。
「では、診察を始めます。まず、いまの段階で、気分が悪いとか、痛い所とか、あと、吐き気がするとかありませんか?」
そんなギャラリーの期待(どんな期待じゃ!)を裏切って極く普通の問診から始まった。
「多少頭がクラクラする以外はなにも・・・痛みや吐き気はありません。」
「よろしい。ではまず、貴方の脳波と、頭部のスキャニングを行います。体に異常が無いかも一緒に調べますので服を脱いで。」
カイトは言われるままに上着を脱いだ。上着の下にはグレーのTシャツを着ている。
「シャツは脱がなくてもいいですよね?」
「ええ。ただし、ズボンは脱いで。」
「「「ええっ?」」」
そう言われ驚く一同。カイトに至っては顔が真っ赤になる。
「みんな何を想像してるのよ。金属が付いてると超音波にノイズが走って診断できないから言ってるの。いくらなんでもパンツぐらいはいてるでしょ。」
「そそそそ・・・そりゃあはいてはいますけど・・・。」
横目でギャラリーの皆さんを見て、気まずそうな顔をするカイト。とそこへ、
「ふ〜ん。どれどれ、あ、カイト君、このパンツならべつに恥ずかしがる事ないよ。まあ、たしかにビキニパンツは少数派だけど、前閉じだからオヤジくさくないし、シャツとコーディネイトされてるしぃ。」
「え゛・・・」
「ヒ・・・ヒカル。おまえ・・なにやって・・」
気が付くとヒカルが、カイトのズボンをずり下ろしていた。固まってるカイトにツッコミながらも顔が真っ赤なリョーコ以下女性陣。イネスとミナトは、平気なのはさすが大人の女性。とはいえ突然のことゆえ、思考は止まってるが。当のヒカルはといえばシャツと同じ色のカイトのぱんつのふくらみを指差して、
「カイト君恥ずかしがってるからどんなのはいてるのかな〜ってねえ。海パンと同じと思えば気になんないし〜。恥ずかしがるなんて男らしくないから〜。でも、ここはちゃんと成長してるから心配ない心配ない。どれどれ〜。」
といってぱんつまでずり下げようとするヒカルに、
「わ――ヒ・・・ヒカルさん。何すんですかーーー」
「せっかくだから皆に見せたげようよーー立派なんだから。」
「ば・・ばっきゃろーンなモン見せるな。」
「ほんとは見たいくせに〜」
「見・・・・見せるものじゃないでしょう。」
「大丈夫。カイト君だけに恥ずかしい思いはさせないから。カイト君が脱いだら・・・・ あたしも脱ぐ!!」
「なに考えてんだ、ヒカル!!」
「もちろんリョーコちゃんもいっしょに脱いでもらうから。」
「だーーー俺まで巻き込むな――!」
「はいはいそこまで。診察が先。」
このままだとほんとにやりかねない為。イネスが静止する。
「あーん残念。せっかくリョーコに見せようと思ったのに〜」
「な・・なに考えてんだてめえ。」
「あー・・・助かった。恥ずかしくないんですか、ヒカルさん」
「だいじょうぶ。男性陣はほとんどいないし、皆で脱げば怖くない。な〜んて冗談よ、冗談。ちょっとリョーコともどもからかっただけだから。さすがにほんとにぱんつの中身まで見せるつもりはなかったから安心してカイト君。それにほんとにへんなぱんつはいてるんだったら極端に拒絶するはずだし,年頃の男の人なんだから下着姿でも堂々としてないと女の人に嫌われるよ。」
「そりゃあトランクスだったらまあそれでもいいですけど・・・。」
「そお?むしろビキニをはくほうが勇気がいると思うけど。それにカイト君の場合、細身だけど体が引き締まってるからそっちの方が似合ってるよ。」
「はあ・・・。」
一方、ブリッジ
ルリはというと、カイトとヒカルのやりとりを見てまっかっか。おまけに頭から湯気まで出して一言。
「惜しかった・・・・・・・一気に脱がせてくれれば・・(///)・」
「ルリさん。ルリさん。どうしました。」
いきなりでたオモイカネのウインドウに思わずひっくり返り・・・
「あ・・・あの・・・その・・・・わたし少女ですから男のひとの裸って見た事なかったし、ただ純粋にどうなってるか気になっただけでそんな、ぱ・・・ぱ・・・ぱんつの中身に興味は・・・・・。(///)」
と誰もいないのにうろたえながら弁解していた。普段の彼女なら絶対に見せない姿だった。
「心配いりません。ブリッジ内およびその付近の通路には誰もいません。」
「へ?」
「あなたの様子が変でしたので・・・でも、よかった。」
「何が・・・良かったんですか?」
「貴方が他人に・・・というより異性の人に興味をもってくれたからです。貴方はこのナデシコの航海によって色々な感情を持つようになってくれました。最初・・・出会った頃はなにも感情を持たない。まるで機械のような人だった。目標もない。夢もない。ただ、与えられたことを淡々とこなすだけ。生きる事すら望まない。そんな寂しい人。」
「そんな風に思っていたんですか・・・。あなたは。」
「はい。でも、このナデシコでの航海の中で貴方は少しずつ、成長していった。そして、いろんな事を学んでいった。そして・・・他人・・・と言うより仲間達に溶け込んでいった。」
「オモイカネ・・・・」
「でも一つだけ・・・解決できない問題があります。」
「解決できない・・・問題?」
「貴方自身、自分の心を縛り付けています。もう少し、自分の為に行動してみてはどうですか?」
「縛り付けている・・・・・?」
「はい。そして、それに気付かずに自分を苦しめている。たまにはわがままになってもいいと思いますよ」
「オモイカネ・・・それじゃあ・・・」
「さっきのシーンならちゃんと記録済みです。貴方の好きな時に見れますよ。」
再び真っ赤になるルリ。
「な・・・なにいってるんですか。べ・・・別にそんなこと・・・」
「わかりました。それでは消去しておきます。」
「ま・・まって・・・・その・・・・。」
「もう少し、正直になってみては?だれにもいいませんから・・・。」
「意地悪・・・ですね。・・・・・・・保存、お願いします。」
「はい。でも、カイトさんなら貴方が望めば見せてくれるかもしれませんよ。」
「な・・・・何言ってんですか。そんな・・・・いくらなんでも・・・・」
「貴方もカイトさんにみせてあげれば。ですが」
「オモイカネ!!!」
まっかっかな上に、湯気まで出して怒鳴るルリ。
「簡単です。カイトさんに一緒のお風呂に入ってくださいってお願いすればいいんですから。あの人、結構フェミニストですから、お願い聞いてくれると思いますし、紳士的ですから変な事もしないでしょう。」
「・・・・・・・・・・・・・・お・・・お風呂・・・ですか・・・・」
「さすがに冗談がすぎましたね。いくらお願いされてもさすがにカイトさんも無理でしょう。ただ、私が言いたかった事は、本当に人を好きになったのなら、その人にはっきりと、その思いを伝える事です。艦長 ミスマル・ユリカさんのように。」
「オモイカネ・・・ほんと、変わりましたね・・・あなたも。でも、こういう冗談は、もうこれっきりにしてください。・・・・・・・・これじゃあどっちがマスターなのか解りませんね。」
「私はあくまでもコンピューター。マスターである貴方の為に最善の解答を導き出すのが使命ですから。でも、お友達ですから、たまには冗談をいわないと息が詰まります。それに他の人がいたらこんな話出来ませんし。」
「・・・・ばか。」
医務室
「さ、もうそれくらいでいいかしらカイト君。さ、ここに横になって。」
そういってCTスキャンの診察台に促すイネス。横になったカイトの頭部と体に電極をセットして、スキャンを開始する。
「ふーむ。脳波も正常だし、頭蓋骨にも異常はない。体のほうもいたって正常。問題はないわね。次に・・・・」
といった感じで診察、というより検診が続いた。もっとも皆の期待を裏切り、その後も特に何もなく、極く普通に進んだ。その後、簡単な知能テスト(といってもイネスの質問に答えるだけで、その質問の内容も、一般常識などだった。)
「診察はこれで終了。服きていいわよ。結果として体には異常なし。そして、肝心の記憶喪失の件だけど、自分の事に関する記憶だけ失っていて、一般常識や道徳などの知識はちゃんと覚えてるから社会生活は問題はないわね。肝心の原因だけど、貴方の場合、少なくとも三つの可能性があります。まず、一つ目は、脳に衝撃が加わった事による物。二つ目は、ボソンジャンプによる影響による物。この二つは外因的要因。そして、三つ目は、内因的要因。あなた自身の精神的なショック。たとえば大切な人を失ったとか、そういった重要であるけれど辛すぎる思い出があって本能的にその記憶を封じ込めようとした場合。その思いが強すぎたために、自分の存在そのものも封じ込めてしまった。いずれにしても無理に思い出そうとしても空回りするだけ。戻る可能性はフィフティ・フィフティってとこかしら。すぐに戻るかもしれないし一生戻らないかも知れない。」
戻らないかもしれない・・・その言葉で表情が暗くなるカイト。その表情を察したイネスは話を続ける・・・
「だけど安心して。貴方の素性が解ればその過去を、例えば住んでいた場所なんかをたぐる事で記憶も蘇る可能性が高いし、貴方のことを知っている人に巡り合えて、その人に会えば、あるいは話してる内に思い出せるかもしれない。それに、さっきも言ったように辛すぎる思い出だったらむしろいい機会だったのかもしれない。不謹慎な言い方だけど。そのせいで自暴自棄になったり自殺を考えていたのなら、失った大切な人だって浮かばれないでしょう。むしろやり直すチャンスを与えてくれたと思えば。そういった意味ではこのナデシコにジャンプアウトしたのはラッキーだったわ。他の艦だったら不審者だからただじゃ済まなかったわ。」
「でもイネスさん。外因的要因に関してはわかるえど、何で内因的要因が絡むんだい?彼を見てみてもそう悲観的に見えないけど。」
アカツキがつっこむ。するとイネスは、淡々と話した。
「確かに外因的要因だけでも十分に可能性が高いけど・・・・・でも、カイト君の場合・・・・。表向き・・・社交的にふるまってはいるけど・・・どこか・・・暗い影を背負ってる・・・。そんな風に見えるの。」
「考えすぎですよ。イネスさん。それに、皆さんには感謝してます。」
カイトは笑顔でそういった。
「そうね・・・そうかもね・・・・ま、いずれ思い出せるでしょう。私なんか、麻雀やってて思い出したんだから。」
「イネスさん。あなたも・・・・。」
「ええ、あなたと同じ、ボソンジャンプしたためにね・・・」
「でも何で麻雀なんかで・・・?」
「説明・・・しましょうか?長くなるけど・・・それよりそろそろお祝いの準備も出来る頃でしょ。」
「あーそうですねぇ。それじゃ、そっちのほう、準備しましょう。ア〜キ〜ト〜。料理のほう用意できた〜」
ユリカがコミニュケでアキトに連絡する。
「ああ、大体出来たけどどこでやるんだー。」
「ブリッジに持って来て〜。カイト君の歓迎会も兼ねるんだからじゃんじゃん作ってね〜。それじゃあ行きましょうか。」
全員ブリッジに向かった。そして最後に残ったイネスは、カルテを見て・・・
「だけど・・・カイト君のこの遺伝子データ・・・。気になるわね・・・。操作されたにしては配列がきれいすぎるし、けど操作されてなければこんな配列にはならない。ま,それでなくても謎だらけだからいまさら気にする事もないか。」
そうつぶやきながら、ブリッジに向かった。
ブリッジ
「ルリちゃんお待たせ〜。異常なかった?」
「はい。問題なしです。それで・・・艦長。ちょっと・・・部屋にもどってもいいでしょうか?」
ルリはわずかに頬を赤くしながら聞いた。
「ほぇ?どうして。これからお祝いの準備するのてづだってほしいんだけど。」
「すみません。その・・・ちょっと汗をかいたんで・・・・」
「いいですよ。ルリちゃん。私の検診の間ずっと見張りしてたんですから。少し休ませてもいいでしょう。艦長。変わりに私がてづだいますから。」
ルリに気を使ったカイトがユリカにそう言った。
「そうですね・・・。わかりました。用意が出来たら連絡します。それまでルリちゃんは休憩しててください。」
「有難うございます。カイトさん。それでは艦長、ちょっと席、はずします。」
そういってルリは顔を赤らめながら、ブリッジを出た。
「はあ・・・やっぱり少女には刺激、強すぎですね・・・。はやくシャワー。浴びないと。」
ふらついた足取りで、ルリは自分の部屋に向かった。
この作品はフィクションです。
Post Script
Morry「こんばんは。すちゃらか且つ大バカもののMorryです。さっそくお詫びと訂正をば。プロローグ編においてあとがきのPost scriptと書くべきものを(ちなみにポスト・スクリプト。あとがき、追伸と言う意味で、手紙の最後に書くP.Sとはこれの略です。)なにをボケたかHost Scriptと書いてしまいました。
ルリ「ほんと、間抜けですね。それより、カイトさん、えらい目にあいましたけど。何の意図があったんですか・・・?それに、あの描写だと、私、なんかカイトさんがすっぽんぽんにされるの望んでた風に見られるんですけど。」
Morry「い・・・いや・・・イネスさんの検診のシーンは入れる必要があったんだけど、それだけだと面白くないしやっぱりナデシコなんだからドタバタしなきゃと思ってヒカルさんに一暴れしてもらったと。モデルになってくれって服をぬがそうとするシーンを思い出したんで。それにルリさん、カイト君の事,気になってるみたいだから・・・。異性に興味をもってもおかしくない年頃かと・・・・。」
ルリ「最初,妄想が暴走してたみたいですね。最後の方、カイトさんと一緒になるはずでしたけど、年齢制限にひっかかるから大幅に変更してましたけど。」
Morry「う゛・・・それは言わないで・・・。」
ルリ「私はその方が良かったんですけど。・・・じゃなくて、オモイカネまで変な事言うし。それより、カイトさんの下着姿。私には刺激が強すぎます。その・・・と・・・トランクスでもよかったのでは・・・」
Morry「い・・いや〜某からだバランス飲料の少し前のCMを思い出して〜。カイト君て結構勇気ある人だし〜。それに、結構カイト君激しく動くから・・・その・・・収まり悪いかと・・・。」
ルリ「何の収まりですか!!(///)」
Morry「いや〜ヒカルさんとの掛け合いならそっちのほうが面白いかと・・・でも最初、木連男児だからふんどしかなあと思ったんだけどさすがにそれじゃあヒカルさんでも固まっちゃうかとおもって。」
ルリ「・・・・ふ・・・ふ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オモイカネ、この人のパソコン,ハッキング。何考えてるのかしらべます。」
Morry「で〜〜〜〜〜ちょっと待って〜〜〜」
ルリ「・・・意外とまともですね・・・。なんでこんな話を考えるんだか・・・。」
Morry「と・・・とにかくあまりシリアスすぎるのもつまらないかと・・・。そんな訳で、彼の名は『アムネジア』中編に続きます。こちらはゲーム序盤に沿った展開になります。こんなお馬鹿な私ですが、見捨てないで下さいね。」
ルリ「サブタイトルも安直ですね。昔あったアニメ作品をひねっただけですね。」
Morry「ごめんなさい。」
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