機動戦艦ナデシコ                   

                       ”AからBへの3年間”                    

                     −記憶亡き『来訪者』− 

                  Text by Morry

 

            プロローグ:出会いは『ボソン・ジャンプ』と共に(中編)

 

 

食堂

 「う・・・・・。ここは・・・・?。」

気が付くと見たことの無い部屋だった。

(自分は・・・。寝ていたのか・・・それとも・・・。痛っ!・・・あ・・・頭が・・・。)

食堂の出入り口近く、ディスプレイケースの真向かいの壁際にある長椅子(食堂が混んでる時順番待ちのために置いてある)に寝かされていた青年は、意識を取り戻した。額には濡れたタオル。そのタオルを左手でもち、ゆっくりと、上半身を起こし、右手で頭をさすりながら周りを見回した。

(ここは・・・。食堂?)

半ば朦朧とした意識のなか、靴をはき、食堂の奥に歩いていく。中には誰もいない。いや、厨房の方から音がする。良く見ると机の上には料理が並んでいる。

「すみま・・・」

意を決して厨房の方に声を掛けようとすると・・・。

「ちょっとー。その料理は大切な人の為に作ったんだから、食べちゃ駄目だよー」

「へっ?」

不意に後ろから声を掛けられ間抜けな返事をしてしまう。振り向くと・・・

「あっ。驚かせちゃった−。てっきりあなたがその料理を食べようとしたのかと思ってー。・・・ってわたしったら失礼なことを。・・・どうもすみません。」

と、お団子頭の少女−サトウ・ミカコ−に謝られた。

「ああ、いえいえ。こちらこそ。ところで・・・。あなたはここの食堂のひと。」

「はい。」

(ここの食堂の娘か・・・。って、ここって・・・どこの・・・?)

もっとも根本的なことを忘れてるのに気が付いて、目の前の娘に聞いてみた。

 

すみません・・・・・。思いっきり間抜けである意味、失礼な事を伺いますが・・・

           ここって・・・。どこですか?

 

 

 

 「・・・どこって・・・、戦艦の中じゃないですかー。

                 機動戦艦ナデシコの・・・

 目の前の少女は一瞬きょとんとしたが当たり前のようにそう答えた。

 

「 機動戦艦ナデシコ・・・・・・?」

青年は、力なく答えるしかなかった・・・。すると・・・。

「ホウメイさーん。侵入者さん目がさめましたよーーー」

「し・・・侵入者・・・?侵入者って・・・。」

「はい。あなたのことです。」

「はあ・・・・・・・」

青年は唖然としていた。

(ふつう侵入者なら、身柄を拘束したりとかするだろうに・・・)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいんですか?。」

「ま、あんまり良くはないんだけど、あんたなら女子供を人質にしないだろ。」

と、不意に後ろから声をかけられた。振り返ると大柄な女性がたっていた。

「あたしはホウメイ。ここのシェフをしてるもんだ。あんた。頭のほう、大丈夫かい?」

「すっかりこんがらかってます・・・。頭の中。でも頭のねじが抜けた訳では・・・。それに善悪の区別ぐらい出来ますし。」

「いや、そうじゃなくて、頭の怪我のことを言ってるんだ。あんた、あたまをもろに打ち付けて、ここに寝かされてたんだ。へたに動かすとやばいってんで。」

「大丈夫・・・、と言いたいとこですがまだ、ズキズキします。正直、立っているのもつらいですけど・・・。」

「だったらほれ。ここに座りな。おとなしくしてるんだ。」

そういって席をすすめてくれるホウメイ。青年はおとなしく座った。

「あ、すみません。」

「ところで・・・、あんた。名前はなんてんだ。」

「なまえ・・・?」

「そう、あんたの名前、名前ぐらいあんだろう。」

「なまえ・・・。俺の・・・いや、私の名は・・・・」

「まーさか、忘れちまったってんじゃないだろー。」

「その・・・まさか・・・のようです。」

(思い出せない・・・・名前も・・・、どこから来たのかも、今まで何をやってたのかも)

あせりと不安、そして怪訝な色が入り混じった青年の顔を覗きこんだホウメイは、

「あんた、何飲む?」

「え?」

「とりあえず、一息ついたほうがいい。あんたの飲みたいモンは。」

「あ・・ええと。それじゃあ。」

といって青年は、財布をだそうとするが・・・財布はおろか、何も持ってない事に気づいて、

「すみません。お金をもってないんで。」

「なーにいってんだい。そんなもんこっちでおごるよ。それより、どうすんだい。」

「それでは、コーヒーを・・・。」

「それじゃあ、ミカコ、コーヒー2つだ・・・。いや。あたしを含めて7つだな。」

「はーい。」

ミカコが厨房へ戻ると同時に食堂へ5人の男女が入ってきた。彼らは、二人の座ってる対面の席にすわった。

「ホウメイさん彼の様子はどうでした。」

最初に、5人の中央に座ったプロスペクターが話し掛ける。

「見た通り、体の方はたいした事はないんだが・・・」

ホウメイは言い辛そうに口ごもる。

「なにか問題でも?。」

プロスペクターの質問に青年が答える。

「突然こんな事をいっても、信じてもらえませんが、・・・わからないんです。自分がどこの何者で、どうしてここにいるのか・・・。」

「あーだめだめ。記憶喪失ってのは、あたしが前に使った手。」

そういって青年から向かって右端にいる少女−白鳥ユキナ−が答える。

「あなたの場合、バレバレでしたけどねえ。それより、ユキナさん。この方に見覚えはありませんか。」

「じーっ・・・ううん。たしかに木連優人部隊の制服きてるけど。この人・・・。始めて見る。いままで会った事も無い。」

「そうですか・・・。木連側の人間でないとすると・・・。ああ、申し遅れました。私ネルガル重工のプロスペクターと申します。」

そういって差し出された名刺を受け取った青年は、

「はあ・・・。めずらしい名前ですねえ・・・会計監査官・・・ですね。本名ですか?」

そう聞くと、プロスペクターは、

「いえいえ。ペンネームみたいなものでして。でもよくご存知でしたねえ。その名の意味が。それより、あなたの身元を調べますんで舌を出して頂きたいのですが・・・。」

「はあ・・・。ん・・・・・・痛でっ!

思わず口を塞ぐと・・・

「あっなたの、おっなまえ、さっがしましょ〜っと。おや?該当者、なし・・・?はて・・・。いやはや、困りましたなあ〜」

「どうゆうことです?」

青年は、不安にかられながらプロスペクターに聞いた。

「今の段階では、なんとも〜・・・。地球に戻らないことにははっきりわからないんですよ〜」

「そうですか・・・。」

青年も落胆の色は隠せなかった。そこへ、ホウメイ・ガールズが、人数分の水と、コーヒー、そして砂糖とミルクのポッドを運んできた。

「色んな事が起こりすぎて混乱してるんだろう。とりあえず、それ飲んで、落ち着きな。そうすれば自分の事も思い出すだろう。」

そういってコーヒーを勧めるホウメイ。青年は一口飲んで、そばにあった砂糖と、ミルクをいれた。厨房に戻ったホウメイ・ガールズは青年の話題に花を咲かせていた。

「でも、それならこっちとしては好都合。遺跡は誰かさん達のせいで宇宙の彼方。アキト君も実験に協力してくれそうに無い。しかもボソンジャンプであなたが現れたとなれば・・・。」

「エリナさんも、仕事熱心ですなあ。」

「ねえ、あなた。私たちの実験に協力してみない?記憶を失った原因もそれでわかるはずだから。」

プロスペクターとユキナの間にいた女性−エリナ・キンジョウ・ウォン−はそう言った。すると、ユキナは、

「ねえねえ、この人の言うこと信じちゃだめよ。仕事が生きがいみたいな人なんだから」

「ええ。なんとでも言いなさい。子供はもう寝る時間でしょ。」

「何言ってんだかまだ7時よ。同じお姉ちゃんでもだれかさんとは大違い。プイッ」

「どーせミナトさんとは違うわよ。」

とまあエリナとユキナが口喧嘩を始めると今まで黙っていたゴートが怒鳴った。

「静かに。取調べが出来んだろう。!!」

「取調べ・・・してたんですか?」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」」」

 

青年がなにげなく言った。その一言で、その場の空気が重くなる。

そして、青年は、向かいに座っている人たちを見て、考える・・・。

(ここって・・・。ほんとに戦艦の中なのか?この人たち見てると、とてもそうには思えんけど・・・。)

そんな沈黙を破ってゴートは取り調べ、というより事情聴取を始める。

「・・・まず、きみがどこからどうやって来たかだが、このナデシコがボソンジャンプしたと同時に第3倉庫の中に突然現れた。車に乗って。その事について何か思い出せるか?」

「車・・・ですか?」

青年は、車の話題に反応した。

「そうだ。きみが乗っていた車だ。それもかなり古い車だ。それは、君の車なのか?」

(そういえば・・・、さっき車からでて、声のしたほうにむいたとたん・・・。って、その車って・・・)

「それも・・・・わかりません。その車は、今、どこに・・・。」

「今は格納庫で調べている。唯一の手がかりだからだ。だが、車の中から君の身元を記すものは見つかっていない。」

「そうですか・・・。」

落胆した青年を見て、これ以上のことは聞き出せないと判断したゴートは、一言。

「とにかく、君の身柄を拘束させてもらう。」

(まあ、たしかに不法侵入に、変わりはないけど・・・だったら何で最初から拘束しないんだか・・・。)

「待ってください。拘束する理由は何ですか。少なくとも貴方方に危害を及ぼす様な事をした覚えはありませんが。」

「それは、君の服装だ。見たまえ。」

そういって用意された鏡にうつる青年の姿・・・。

「君の服装は、木星圏・ガニメデ・カリスト・エウロパ・及び他衛星小惑星国家間反地球共同連合体、優人部隊の物だ。」

「ま、すなわち、木連の軍服ですな。」

ゴートの説明にプロスペクターが、補足をいれる。

「カリスト・・・って、ルOン3世の映画の・・・?カリオストロのO・・・の略?」

「「「「「・・・・・・・・・・違うわ!!!」」」」」


居住区内廊下

 結局、ろくに取り調べせず(出来ず?)拘束されることのなった青年を連れて、場所を移動する一行。さっきの会話で気になったことを質問する青年。そして、3年前に起こった第1次火星対戦から順を追って、ナデシコが火星からボソンジャンプした所までかいつまんで、説明を受けていた。説明といえば・・・例の人が出て来そうなものだが。

・・・当人いわく・・・

「説明・・・だけど、いまはそれどころじゃないわ。あとでまとめてやればいいわ。」

・・・だそうです。

そして、プロスペクターが、まとめた。

「我々はいわば、裏切り者・・・ですかな。すべては、艦長の意思にしたがったわけですから・・・。」

「裏切り者って・・・それってそんなことをしたらあなた方は・・・。」

そういって心配する青年だったが・・・

「いえいえ、大丈夫でしょう。なにせ、このナデシコのクルーは、みな、腕は、超一流ですから。なにせ、木連の存在を我々が爆露したこともありますし。下手に我々を処罰しようにも、向こうも皆、自分の尻に火が点くことだけは避けたいでしょうから。かんらかんら。」

いらぬ心配だったようだ。

「ところで、さっき車を調べると言ってましたけど、何を、どう調べるんですか?」

「さあ?ウリバタケ班長、すごくはしゃいでいたから、今ごろバラバラに分解されてるんじゃない?」

そう言ったエリナの言葉に青年の目つきが変わる。もっとも1番後ろを歩いていた為、気づく者は、いなかったが・・・。

そして、

「あの、すいませんトイレにいきたいんですが・・・。」

「やだあ〜えっち、すけっち、ガラスマイペット〜」

「我慢できないの?」

ユキナとエリナが突っ込む。

「・・・はい。」

「それじゃあ、僕が連れてきますよ。みなさんはここで待っててください。」

ジュンがそういってトイレまで案内してくれる。そして・・・。

(どうやって巻くか・・・気絶させ・・・いや。)

自分が用をたしおえるとジュンに、

「もしかして、あなたも我慢してませんか?なんでしたら待ってますから用をたしては・・・」

と、進めると、

「いやあ申し訳ない今日1日ずっと忙しかったので・・・それじゃあ・・・」

と、ジュンが用を足し始めると青年はダッシュで駆け出した。

「すいません。」

「ああっ。ちょ・・・ちょっと・・・・。」

廊下に駆け出すと、ゴート達が、やってきて、青年を追い始める。

「まてっ!!」

見かけによらず俊敏な動きで追ってくるゴート。そして青年を捕まえようと手をのばした瞬間!!

                 『ズダ−ン!!』

ゴートの巨体は、宙に舞い、そして、床に叩き付けられる。青年は、ゴートが掴み掛かる瞬間、反転してその手を掴み、投げ飛ばしたのだった。

「すいません!!」

そういって、律儀に謝りながら近くにあった階段を駆け上り、のぼったフロアを見回して、みつけたエレベータのボタンを押す。近くの階にいたのか、すぐに開いた扉に乗り込んで、1番下の階のボタンと、ドアを閉じるボタンを押した。エレベーターは、すぐに扉が閉まり、動き出した。青年は呼吸を整えながら考えた。

(俺は車にのってここに来たと言っていた。とすれば、その車にいけばなんとかなる・・・・車がばらされる前に取り返さなければ。・・・格納庫といっていた。宇宙戦艦なら1番下にあるはず・・・。)

そして、エレベーターが開くと・・・

「うあっ!!」

「おっと、失礼。」

一人のロン毛の青年と鉢合わせした。こっちに気づいてない様で、そのままやり過ごせるかと思いエレベーターから出ようとする。

「あ、いいえ。こちらこそ・・・。」

「あ、ちょっと君、君といったら君だよ。そこの木連の制服を着ている人。」

やっぱりだめだったようで・・・

「それって・・・私のことですか?」

「他に誰がいるんだい。まあいいか。僕はネルガル重工会長アカツキ・ナガレ。決して落ち目じゃあないから。君の事は、エリナ君から聞いてる。よろしく。」

お気楽な口調で、台詞は軽いものの、アカツキの眼は、笑ってなかった。何かを値踏みするような、それでいて鋭い。そんな眼だった。

「は、はあ。」

「君が行こうとしているのは格納庫。そして君の目的はそこにある君の車。そんなとこだろう。」

「ええ、分解しているかもしれないと言われて、」

「それなら心配はいらない。だいじなサンプルだ、傷一つつけてない。もちろん君も含めてね。」

「・・・・・どういうことです?」

言葉使いこそ丁寧で、表情も穏やかなままだったが、青年の眼は、笑ってなかった。たしかにそんな事を言われたら、誰だって気分を害する。むしろその眼は、冷徹で、鋭く、突き刺すような、威圧的なもの。並みの相手であれば、間違いなく圧倒される所だが・・・。

「おいおい・・・そんなにそんなに怖い眼で睨まないで・・・。別にきみをモルモットにしようって訳じゃあない。君は生身でボソンジャンプして来たんだ。そんな事が可能な人間は、君のほかに少なくとも3人しかいない。普通の人間には出来ない。おまけにボソンジャンプそのものが、我々人類にとってオーバーテクノロジー。ついさっき作動原理がやっと解明されたばかりだ。君の記憶が失われたのも、ジャンプした際の何らかのアクシデントによるものだろう。君や、君の乗っていた車を調べれば、記憶を取り戻す手がかりが見つかるかもしれない。」

アカツキは、なだめる様に、青年に言った。青年は、腕を組み、そして、右手で右目の辺りを蓋い、人差し指で額を連続して、突いた。どうやら、かれが、考えるときの癖の様だ。そして、突いてた人差し指の動きが止まるとアカツキに質問した。

「ということは、その車に乗っていたからこそ、ここにそのボソンジャンプとやらをして来れた。とは限らないんですね?」

「どういう意味だい?」

青年は、アカツキの説明に釈然としなかった。なぜなら、彼の説明を信じるならば、ボソンジャンプは、一種の超能力。すなわちテンプテーション。(それは本田美奈子の歌・・・。)・・・もといテレポーテーションの様に聞こえるからだ。だが、その存在そのものが疑わしいのみならず、宇宙戦艦や、車も一緒になど到底信じられない。むしろボソンジャンプの為の装置が有りその装置を使ってジャンプしたと考えるのが、自然だと思ったからだ。

「つまりその車にボソンジャンプをする為の装置が組み込まれているかどうか、という意味です。」

「うーん。ま、たしかにそんな装置があの車に付いている可能性はあるが、もしそうだったら、それこそ世紀の大発明さ。なにせ、さっきも言った通り、ボソンジャンプは作動原理がやっと解明されたばかりだからねえ。そこで、だ。さっきのエリナくんの提案どう?どの道この船から逃げられないんだし、記憶を取り戻すには、悪い話じゃないと思うけど。」

「詳しい話は解りませんが実験の話。でしたよね。しかしその前に自分の存在、身元がはっきりしないことには・・

     どかーーーーん!!

突然艦内に衝撃が走り、艦全体がゆれる。そして、

「うぉあっ!!」

「敵、木星トカゲ、機影数10機確認。パイロットの皆さんは出撃してください。」

突然出てきたルリのウインドウに驚いた青年は、そのウインドウをしげしげと見ていた。が、ウインドウが消えると我に返る。,

「立体映像・・・?それよりその木星トカゲというのは?」

「木連が開発した無人戦闘機のことさ。地球軍もネルガルもそいつらに手を焼いてるんだよねえ。」

「どうしてこんなとこに木星トカゲがいるんだよ!!」

「あ、アキト危ない。」

「なんなんだよ!こいつら全然動きが読めねえ。」

「嫁ない者は一人もの・・・・けっ。」

「このバッタちゃんたち動きが変よ〜ぜんぜんこっちの攻撃あたらない〜」

「アカツキさんも発進してください。」

次々とでてくるウインドウにしどろもどろの青年に向かってアカツキは言った。

「そんじゃ行きますか。女子の皆さん苦戦してるみたいだし。君もいっしょに来る?」

「え?・・・ええ、その木星トカゲ、どんな物か知りたいですから。」

「へ〜言ってくれるじゃない。」

「それはどうも。とにかく、行きましょう。」

 


格納庫

青年とアカツキが、入って来ると、スタッフが目まぐるしく動いている。アカツキのエステバリスの所に来ると、二人は声をかけられた。声を掛けたのは整備班班長、−ウリバタケ・セイヤ−。

「おせーぞ。落ち目の会長さんよー。ラブラブバカップルは出たまんまだし、女子の皆さんとっくに出撃しちまったぞ〜。それと、その名無しのにーちゃん置いてけよ〜。」

「いや。私もいきます。アカツキさんでしたっけ。連れてってください。」

青年の思わぬ発言に驚く二人。その二人を尻目にコクピットの奥に入る青年。

「おいおい。なにも僕のエステに乗らなくても・・・。」

「おおい、一寸待て!! 何もあんたが行く事ないだろー」

「連れてってくれるって言ったじゃないですか。大丈夫ですよ、邪魔はしません。それよりも、早くいかないとまずいでしょう。」

「やれやれ・・・。ま、確かにそう言ったしね。んじゃ、いきますか。乗り心地は保証しないから乗り物酔いしないようにくれぐれもよろしく。」

「ったく。しゃーねーなー。大人しく見てるんだぞー」

確かに時は一刻を争う。アカツキも、セイヤも諦めたようにそう言った。

「了解!!」

「ほんじゃあいきますか。」

 


ナデシコ周辺の宇宙空間

何10機といるバッタの群れに翻弄されるエステバリスたち。特にアキト機に至っては、ナデシコの真下で物の見事に囲まれている。ジュンに至っては、出撃した直後に、たまたま居合わせたバッタと正面衝突。バッタは爆発したものの、その爆風で、格納庫に逆もどり。大破して戦闘不能になり、ウリバタケに・・・

     「おまえは学習能力ないのか!!!」

・・・と、どやされていた。とりあえず、ナデシコ側は、ジュンとぶつかった1機のみしか撃破してない状況。応援に駆けつけたアカツキとて例外でなかった。アキトの所に向かおうにもバッタ達に翻弄され、反撃もままならない。

「おいおい・・・こいつら、一体どうなってんだい?ちょっとは、当たったっていいだろうに・・・」

アカツキ機のなか、苦戦しまくってごちるアカツキ・・・。その直後、後ろにいた、青年は、口を開いた。今までと全く違う口調で・・・。

「そんなんじゃ、やられるのは時間の問題だ!!私の言う通りに!!まず右前方30度の方向から5機接近。こいつらは、ライフルで真中の奴を撃て。次ぎ、左後方60度の方向に逃げて。そう。そして、右から3機来る。一番最初に来た右端の奴を右キック。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

青年の指示に従ったアカツキ機は、連ねてくるバッタの中心にいる奴をライフルで撃ち抜きその爆風による連鎖反応で、廻りのバッタも爆破。次に、接近するうちで、最初にきたバッタを後方からくるバッタめがけ蹴飛ばして、ビリヤードのごとく次々とぶつかり合って順次爆発して、と、最小の攻撃ながら、一度にそして、確実にその数を減らしていく。今までの苦戦が、まるでうそのようにバッタを、ばったばったと、(ふっ。3点。Byマキ・イズミ)なぎ倒し、廻りにいたバッタを片付ける。

「素晴らしい。素晴らしいよ君。敵の動きを全て読んでいる。流石、木連優人部隊だけあって優秀。」

「まだ終わってはいない!!それより、戦況を知りたい。オペレーターの人を呼んで下さい。」

「了解。ルリ君。」

「はい。」

「彼に戦況を教えてあげて。」

(この娘はさっきの・・・。)青年は、出てきたオペレータの娘に驚いた。さっきは、通信してきたので、通信士と思ったのも勿論、良く見ると(当たり前だが、さっきは、ウインドウの存在そのものに驚いてたから気づかなかった。)、まだ少女。ふつう、戦艦において、戦況をオペレートするとなると、そうそう誰でもできる様な物ではない。兵士や、時には、戦艦の運命すら左右しかねないからだ・・・。

「はい。これです。リョ−コさん達が、前方の27機。テンカワさんが真下の35機、完全に囲まれてます。テンカワさんの応援にむかって下さい。」

ルリは、ウインドウを、青年の前に表示させながら、報告した。青年は更に驚く。そのウインドウには、敵、味方の表示は勿論、被弾率の少なく、かつ最短のルートや、バッタの予想襲撃ルートや、特性、弱点などが、解り易く表示されていた。これを見て、彼女が、かなり優秀なオペレーターと判断し、彼女に礼を述べる。

「ありがとう。かわいいオペレーターさん。」

「・・・・・ルリです。私の名前は、ホシノ・ルリです。」

ルリは、顔を赤らめながらそういった。

「わかりました。ルリちゃん。さっそく、応援にむかいます。アカツキさん彼女の指定ルートでお願いします。」

「了解。それはそうと、君もすみにおけないねえ。なにげにルリ君をくどくとは。」

青年の言った事に対し揶揄するアカツキだったが・・・。当人は・・・

「何言ってんです。ただ見たままのことを正直に言ったまで。それより、早くいかないと、ピンク色の味方機がやられる。」

「こんな展開どっかでなかったっけ?ほいじゃいきますか。」

まるで、当たり前のことを言っただけといった感じで、意に介さず。そして、テンカワ機に向かってゆくアカツキ機。その途中、通信が開いた。

「ねえ〜どうするの〜これってかなりヤバイ状態なんだけど〜」

「いいからじっとしてろ。上手くコントロール出来ないだろ。」

「だけどこっちの攻撃当たらないじゃない〜」

「いいからだまってろ!!ユリカ。」

「だまれだまれって、アキトほんとにあたしの事すきなの〜」

「だーっ。すきとかきらいとかそんな事いってる場合じゃないだろー!!」

通信の中身は痴話げんか。それを見た青年は開いた口が塞がらない。

「な・・・なにやってんだ?この。非常時に・・・。っとお!まず左側!!」

だが、すぐに我に返りアカツキに指示を飛ばす。まるで水を得た魚のように次々とバッタをなぎ倒してゆくアカツキ機。

「うっわ〜アカツキさんすごい。」

「た・・・助かった〜ありがとう。アカツキさん。」

アカツキ機の活躍に感嘆の言葉をかける二人。

「うっわ〜今まで隠す事無かったのに〜」

「あ・・・ああ。凄えぜ・・・。」

「能ある落ち目は、ズラかくす・・・な〜んて。」

アカツキ機の攻撃によって統制が乱れた為、ナデシコ上空にいたバッタも、次々と撃破され、殲滅したリョーコ達も、アカツキ機の華麗な動きにただただ驚いていた。

そして。バッタは、一匹残らず撃破した。

 

 

この作品は、フィクションです。

 

Post scripto

懲りずに登場のMorryです。さて、いかがだったでしょうか。プロローグ中篇。ゲームでは、カイト君が登場するお馴染みのシーンなので、いささか変化に乏しいかと思いますが・・・しかも、戦闘シーンの描写に至っては、まるっきり説明不足だし・・・。

ルリ「ほんと、ひねりが無いですね。他の作者の方々に失礼ですよ」

Morry「痛い所をつくな〜って。あ、どうも始めまして。Morryと申します。ホシノ・ルリさん。」

ルリ「こちらこそ、どうも。で、どうして、この作品を書こうと思ったんです?」

Morry「実は、チャットで会った方々にはお話したんですけど、もともと、ナデシコにはまったきっかけが、この”The Blank of 3Years”だったんですよ。それまで、そんなに興味がなかった。TV版もほとんど見なかったし、劇場版も、シートベルトのポスターで、気が付いた程度。とある先輩が、すごくはまってて、嵌められたと言うか、そんなときたまたまゲーム屋にふらりとよって、手にしたのが・・・」

ルリ「その”The Blank of 3Years”だったと。」

Morry「そう。基本的にアドベンチャーゲームは、好きだったから。といっても、推理ものとかの事件がらみみたいな物がね。恋愛物は、逆に駄目だったけど。」

ルリ「いわゆるハードボイルド系ですか・・・。」

Morry「そう。で、このゲームがきっかけで、ナデシコに興味をもったってわけ。といっても当時劇場版の公開が大都市以外の公開が終了した直後だったんで、はめた先輩にTV版を見せてもらい、劇場版は、知り合いにLDの予約を頼んでもらったと。(当時忙しくて自分で予約する暇なかった)そして、劇場版を見て、もし、カイト君が居たらどんな展開になったか。なんて考えた訳。すごくせつない終わり方だったから。」

ルリ「で、なんで、20世紀の車が、出てくるんですか?」

Morry「うーん。基本的においら、車ばかだから。主人公のイメージにぴったりだったから・・・かな。」

ルリ「あのハリウッドの名作『Back To The Future』のパクりですか?」

Morry「そんなつもりは無かったんだけど。言われるまで、気付かなかったし。もしそうだとしたら、優人部隊の制服着ないでしょ。」

ルリ「確かに。だとしたらなんで・・・」

Morry「それは、これからのお楽しみということで。所で、話変わるけど・・・ルリさん・・・カイト君の事・・・好き?」

ルリ「なっ・・・・・なななな・・・・何言ってるんですか・・・・。」

Morry「ま、そうなるかどうかは、貴方の努力しだい。といったとこかな。それでは、次回後編で、お会いしましょう。

すこし遅れるかもしれませんが、お待ちいただければ、幸いです。」

ルリ「(ポ〜〜〜〜〜)努力しだい・・・ですか・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 


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