機動戦艦ナデシコ                   

                       ”AからBへの3年間”                    

                     −記憶亡き『来訪者』− 

                  Text: Morry

 

            プロローグ:出会いは『ボソン・ジャンプ』と共に(前編)

 

 2198年3月 火星極間遺跡上空

 多数の木連の戦艦や機動兵器のいる中に痴話げんかしている一機のエステ。唖然としていた木連の兵士たちだったが話の内容が、ゲキガンガー最終話に移ったとき、だれもがみな聞き入っていた。そして・・・。 

                      「わたし?わたしはアキトの事が大好き」

                            「はじめて聞いた」

                               「うそ

                               「ほんと」

                               「うそ

                               「ほんと」

                              「うそうそ

                             「ほんとにほんと」

                          「う・・・・・」

 

不意を突かれたアキトのキス・・・まるでそれが引き金になったようにアキトとユリカのエステはボソンジャンプフィールドを形成しゆっくりとナデシコへと降り立っていく。そして、その会話の一部始終を見ていたナデシコクルー達もみな、安堵した表情だった。

「イメージして。火星軌道。太陽の反対側へ。」

ナデシコ内展望室。ウインドウに写る二人のキスシーンをみながらイネス・フレサンジュは言った。

「ボソンジャンプフィールド、安定しています。」

イネスのそばでオペレートしていたホシノ・ルリはウインドウに写る二人を複雑な表情で見ながら言った。

「どうしたの?ホシノ・ルリ。・・・・・・・・・・ルリちゃん?!」

「・・・座標、固定します」

考え事をしてたのか、ルリはワンテンポおいて、そういった。

次の瞬間、ナデシコは跳んだ・・・。

 


火星極間遺跡

「逃げるのか、ナデシコ!!」

「逃げるんじゃない。聞いていたろう、月臣よう。彼らは、自分達の知らない『何か』のために戦うのをやめたんだ。」

激高する月臣をなだめるように秋山は言った。

「その通りさ。そして、我々も、終わらせるべき時が来たのさ。この戦いを・・・・・。白鳥の為にも、木連にとっても、そして、全人類にとっても・・・。」

二人の横にいた男−銀色の瞳と銀色の髪の−は、何かを決意するようにそういった。

「我々にとって、本当の戦いが始まるわけか・・・。」

木連優人部隊のトップ達はそうつぶやいた。、消えていったナデシコを見つめながら・・・。

 


無事にジャンプしたナデシコ。

その直後、遺跡をつんだYユニットとナデシコ本艦が切り離されYユニットは宇宙の彼方へと・・・。

「ルリちゃ―ん。私のかわりに点呼とって―」

いつものお気楽な調子でユリカがいった。

「点呼・・・ですか?」

「そう、まえにならえ。いち。」

「に」

ユリカに続いてアキトが言った。

「さん」

呆れながらもルリも続ける・・・。そして、点呼が終わると、オモイカネが、警報を鳴らしながらウインドウをひらいた。

館内に侵入者がいます。」

「オモイカネ。どういうこと?」

展望室からブリッジに戻って来たルリは問い掛けた。

点呼の結果ひとりふえてます。」

提督やカキツバタのクルーを数えるのを忘れてたとか?」

警報が鳴っているにも関わらずお気楽な調子でアオイ・ジュンは答えた。

「オモイカネはそんな馬鹿じゃないです。」

そんな間抜けなことしません。あなたと一緒にしないで下さい。」

ルリは即答しオモイカネもウインドウでジュンに抗議していた。

「オモイカネ、その侵入者は今どこにいるの?」

第3倉庫の中、崩れた積荷に埋もれてます。それも・・・車ごと

「「「「「???」」」」」

全員おどろいたのも無理もない。ここは宇宙空間。機動兵器やシャトルや脱出ポットならまだしも・・・・・・・・・・・・・

なんで車が紛れ込むのか・・・。

「今映像を出します。」

そういってオモイカネはウインドウを特大サイズでだした。

その映像には、ボーズ粒子とともに現れた1台の青いスポーツ・カーが、スピードをだして、壁にぶつかる直前、急にスピンして、倉庫に積まれていた段ボール箱に突っ込んだまま、動かなくなった所まで映し出されていた。

「オモイカネ、この映像は、いつの物?それと、この後の動きは?」

ルリはオモイカネに聞いた。

ナデシコがジャンプアウトしたと同時です。それと、今に至るまで動きはありません。生態反応はありますので念のため、第3倉庫の扉はロックしておきました。」

わかりました。ありがとう。ゴートさん。」

「うむ。各部署第2種警戒態勢を維持のまま待機。保安部の人間は第3倉庫出入り口で私が行くまで待機。」

ルリの言おうとした事を理解したゴート・ホーリーはそういうと第3倉庫出入り口へ走っていった。

「どれ、私も行きましょうか。」

そういってプロスペクターも後を追うようにブリッジを出た。


第3倉庫内、崩れたダンボールの山に埋もれた車の中

「う・・・・。」

運転席にいる一人の青年。その体は、いまだボーズの光が輝いていた。そして、その光はだんだんと薄らいでいきそして消え・・・。

「ここは・・・。」

気が付くと真っ暗な車内。青年は慌てて手探りで、車のライトスイッチを探し出しオンにする。が、ヘッドライトをオンにしたにも関わらずフロントガラスの先は暗いまま。ルームランプもつかない。

いやよくみるとメーターパネルの警告灯もすべてきえ、しかもエンジンの音もしない。恐る恐るイグニッションキーにふれるとキースイッチはオンのまま。一旦オフにしてスタート位置までひねってもうんともすんともいわぬまま。

「いったい・・・。」

不安にかられつつもゆっくりとドアを開けようとする。ドアは、抵抗もなく開いた。光が漏れてくる。

「どうやら水中や土砂に埋もれた訳じゃなさそうだ。」

とそのとき・・・。

「君は完全に包囲されている。大人しくして出てくれば手荒なまねはしない。」

「私どもも乱暴なことはしたくありませんし・・・。素直に出て頂けると助かるのですが・・・。」

「どうやら素直に出たほうが得策か・・・。」

青年は、運転席に体を預け、ため息をつきながらつぶやいた。

 


ナデシコメインブリッジ

 ゴートがいなくなってからも先ほど開いたウインドウは、第3倉庫を映し出していた。もっともリアルタイム表示にかわっていたが・・・。

それを見ているブリッジの面々。ルリ、ミナト、メグミ、ジュン、ウリバタケ。そして、展望室の片付けを整備班に押し付けてきたイネス。

      ちなみにユリカは、アキトともどもナデシコのブリッジの上のエステバリスの中。何していたかは・・・

                   聞くだけ野暮でしょ。」 

 ・・・・ごもっとも。

 「どうやらボソンジャンプできた様ね・・・。」

イネスがそうつぶやいた。

 「そして、問題はだれがどうやってここに来たか・・・。」

それに合わせるようにルリもつぶやいた。

そうこうしていると第3倉庫の扉が開き、保安部の人たちが銃を崩れたダンボールの山にむけ、それと同時に崩れたダンボールの一部が動いた。その直後ゴートがそれに向かって叫ぶ。

「君は完全に包囲されている。大人しくして出てくれば手荒なまねはしない。」

「私どもも乱暴なことはしたくありませんし・・・。素直に出て頂けると助かるのですが・・・。」

そのあとをつぐようにプロスペクターが言う。

少し間を置いて、観念したのか崩れたダンボールの影から車のドアらしき物体が見えたと思ったら、段ボールの山の中から一人の青年が現れ、抵抗しないという意思の表れからか、両手をあげゴートたちのほうを向いたとたん・・

                         ごん!!!

まるでコントの落ちのごとく青年の脳天に段ボール箱が落下。彼は声も出さずにその場にぶったおれた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ゴート以下保安部の面々も、このあまりに間抜けな展開にかたまっていた。

「・・・・・・ばか」

ブリッジにいた少女がそういったのは言うまでもない。

 

「やれやれ・・・ちょっといって見て来るわ・・・。」

そういってイネスはブリッジを出ようとすると・・・

「イネスさん、いまは警戒態勢の最中です。今ここを動いたら・・・」

そういってジュンが止めようとするが

「大丈夫よ、侵入者が気絶してる以上警戒態勢の理由は無くなった訳だし、けが人をほっぽっとく訳にいかないでしょ。どうせ呼ばれるんだろうし。」

とあっさりかわす。

「しゃーねーなー。どの道、倉庫内の清掃に俺らも駆り出されるんだろーから言われる前に行くとしますか。その侵入者の乗ってたってゆう車にも興味あるしなー」

そういってセイヤも出て行った。

「ちょっ、ちょっとー。もーしょうがない。艦長不在のときの船の管理は僕の仕事です。」

そういってジュンも出て行った。

「オモイカネ。侵入者さんの容態は?」

脳震盪をおこしただけのようです。詳しいことはドクターが調べるでしょうが命に別状はありません」

「そう。ありがとう。」

「あれー?ルリルリ。彼のこと、気になるのー?」

青年の容態を気にしたことをからかうミナトだったが・・・。

「はい。出てきてすぐに死なれたら困りますから・・・。」

「る・・・ルリルリ、」

「冗談です。けど私たちのジャンプに何らかの形でまきこまれたのなら、元の場所へかえす責任はありますから。」

冗談でかわしつつも正論を述べるルリ。

そんな彼女にミナトは感心していた。昔と違い、他人を思いやる気持ちをもったことに・・・。

 


第3倉庫内

 「ふーむ。特に外傷もなければ内出血も無いようだいし頭蓋骨にも異常はないようね。ま、不意をつかれて頭をうって脳震盪を起こしただけでしょ。降ってきたのがそんな硬くない物だったからこの程度ですんだ。不幸中の幸いね。」

そういってイネスは、降ってきて、中身の散乱した段ボール箱を指差した。中身は、袋詰の砂糖だった。

「ま、とにかく、下手に動かさずに横にして安静にしとけばじきに目が覚めるでしょ。ホウメイさんにいって食堂で寝かしときましょ。」

「ちょっと待ってくれ、ドクター。食堂に寝かせるのは危険だ。身柄を拘束したほうが・・・。」

イネスの案に即座に反対するゴート。彼の意見ももっともだが・・・。

「大丈夫でしょ。さっきは抵抗する意志はなかったんだし武器の類ももっていない。それにさっきも言ったように下手に動かすと危険な状態になる恐れもある。ここからだと診察室まで遠い上、さっきのジャンプの機材をかたずけてる最中だからとても寝かせておける状態じゃない。それ以前に診察室のベッドも怪我をしたカキツバタのクルーで手一杯。懲罰房にいたっては診察室よりとおいしね・・・。」

「うっ・・・。」

イネスの説明にゴートも何もいえない。更に追い討ちをかけるようにイネスは言った。

「それに・・・。彼の着ている制服が、本物なら食堂の人たちを人質に取るような真似はぜったいに出来ないでしょ。」

・・・そう。彼の着ている制服。それは、木連優人部隊の仕官服だった。

「木連優人部隊だったら、彼が誰か後でユキナちゃんに聞けばわかるでしょ。とにかく食堂に運んで頂戴。そっとね。」

青年は、担架にのせられ、食堂へと運ばれていった。その直後・・・・

「うおおおおおおおおーーーーーっ」

いきなりセイヤが叫びだした。

「こ、これはーーースカイラインGT-R!!しかもR32じゃねーかーこんな骨董品滅多にお目にかかれるもんじゃねーーー」

セイヤは、崩れた段ボールの山から出された青年の乗っていた車に狂喜していた。

「そんなにすごいくるまなの?」

車のことに疎いイネスが聞くとセイヤは、自分の発明品を自慢するときのようにしゃべり出した。

「すげえなんてもんじゃねえ。20世紀の日本を代表する名車なんだぜ。そもそもスカイラインという車はだなあ・・・」

話がやたら長くなりそうだったのは勿論だがそれ以上にセイヤが言った一言が気になったイネスは、

「車のことは後で聞くとして、20世紀の日本を代表する車ってどういうこと?この車を見るととても200年も経ってる風には見えないけれど・・・。」

「うっ・・・。そう言われて見ればそうだよなあ。まるで新車みたいだ。仮にレストアしたとしてもここまで仕上げれるとすればそうとう腕のいいメカニックと、そうとうな金額が掛かるはずだし・・・。でもついてるナンバーは当時のものだしなあ・・・。」

後ろにだけ付いていたナンバーを見ながらセイヤは言った。そして、コミュニケでルリを呼び出し

「ルリルリーちょっと調べてほしいんだけど。」

「なにを調べるんですか?」

「車のナンバーなんだけどよー」

「車のナンバー・・・。ですか?オモイカネのデータベースにありませんから時間かかりますけど・・・。」

「とにかくたのむよー。ナンバーは日本のものだ。湘南 35 す 28−00」

(著者注:この登録番号は架空のものです。"湘南 35"というナンバー自体存在しないはず(分類番号が33あるいは34の途中で300に移行しているため)ですが、もし間違っていた場合及びこの番号が実在しているばあい即刻削除、変更します。)

「わかりました。とにかくやってみます。」

「おう。わかったら教えてくれ。おい、この車、格納庫に持っていくぞ。」

「「「ういーす。」」」

セイヤはそういって整備班で、手の開いている人間と共に車を押していった。

「もしあの車が私の推測通りとするならば・・・。彼は・・。」

イネスは運び出される車を見ながら仮説をたてるが・・・。

「まさかね・・・。だいいちC・Cが当時の地球にあるわけないし。ましてや当時の宇宙技術では火星どころか月に降り立つのがやっと。発掘なんて到底不可能。それについては当人が起きれば聞き出せることだし。それより先に、ここの検証するのが先か。」

と、あっさり否定しながら現場検証を始めた。

 

この作品は、フィクションです。本作品に出てくる車両、及び登録番号は架空のものです。

また、作中でてくる日産スカイラインGT-Rは、日産自動車株式会社の商品名ですが本作品に登場する仕様の車両は実際には存在しません。

 

 

あとがき:”風の通り道”をご覧の皆様、はじめまして。Morryと申します。先日の臨時チャットにて飛び入り参加した際に、SSを書いているとうっかりしゃべったものの、正直めちゃくちゃ悩みました。最大の問題は主人公の愛車としてスカイラインGT-Rという実在の車両を登場させたことで、なんで2198年の時代設定なのに、1994年式の車(この物語で登場する、R32型の最終型の年式)を出したのか。これは、この物語において、重要なキーパーソンになる為で、20世紀を代表する最強の日本車ということで、登場させました。もちろん私がスカイライン・ファンなのも有りますが。実際、名前を借りただけでも無断転載になるのかどうか。これをご覧になられた方で、日産自動車の関係者の方や、スカイライン・ファンの方がおりましたら、どうか、お気を悪くなさらないで下さい。

話は変わりますがこのプロローグ編。書いててやたらと長くなってしまった為、何話かに分ける事にしました。

文章のつながりを見ながら書いてて、読み直したら、読んでて疲れたのと、果たしてきちんと送れるのかと(2/3書いてる現段階で50M超えてる。ちなみに今回は1/3)、プロローグ書き終えるのにまだまだ掛かりそうなのとで、いつまでも待たせる訳にも行かないだろうとおもったからです。

もちろん、本編も書くわけなんですが。文才の全く無いおいらのこと、果たして楽しんでいただけるかどうか不安なんですけど、基本的にサターン版”The Brank of  3years”のストーリーの、ゲキガン・シティ意外の4つのシナリオと、ゲームで語られなかったナデシコ長屋編を構成しながら、進めようと思ってます。正直言って書ききれるかどうか不安ですが。そんな訳でよろしくお願いします。

 

 

 

 


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