この胸の想い




− 前書き −

皆様はじめまして。
このお話はリョーコ×カイトの短編で、セガサターン用ゲームソフト
「機動戦艦ナデシコ The blank of 3years」のリョーコのエンディング見て、
なんとか幸せに出来たらと思い書いたもので、帰って来たのが二人だったという設定です。
え〜なにぶん私の初めてのSSなのでいろいろと不備な点があるとは思いますが、
どうか最後までお付き合いの程、よろしくお願いします。









みなさんこんにちは。


私はナデシコBの艦長ホシノ・ルリです。

現在私たちは地球に向かっているところ。

謎の木星プラントの調査も無事?終わって、みんなホッとしているみたい。

でも・・・・・。

帰還したカイトさんの報告を読んだとき、私は声をかける事ができませんでした。

まさかあんな事があったなんて・・・・・。

なんとか二人とも無事に帰ってきてくれたんですが、

あれからカイトさん、時々悲しそうな顔をしているのを見かけます。

でもまあ大人なんですから大丈夫でしょう・・・たぶん。

それにリョーコさんもいる事ですし。

そんなこんなで宇宙はおおむね平和。

艦長ってたいくつなんですね。



― ホシノ・ルリ ―






ここはナデシコB艦内パイロット用個室。


「ハァ〜・・・」

緑がかった髪をしたショートカットの女性が鏡の前で、大きなため息を吐いていた。

しかしその頬は上気してピンク色に染まり、視線はあちこちさまよっている。

(まったくカイトの奴いったいどういうつもりで・・・・・)

しばらく落ち着かない様子だったが、やがて立ち上がり浴室の方へと向かっていった。




− 時間は1時間程前 −



ナデシコBの展望室に二人はいた。

「カイト・・・もう気にすんなって。」

「もう気にしてませんよ。」

「バカ、そんな顔して言ってもダメだ!」

「ほんとに大丈夫ですよ。」

「だ、だったらなんで・・・・・なんでそんな悲しい目をしてんだよ!」

あの木星プラントの一件以来カイトの様子が変なのは気づいていた。

あの時のカイトの気持ちを考えると、今でも胸が締め付けられそうにる。

戦う為に造られ、しかも自分の半身ともいえる存在を自らの手にかけてしまった

カイトの心の苦しみ。

なんとかその時の苦しみを和らげてあげたかった。

でもその言葉がでてこない、気の利いた台詞も言えない自分が悔しくて

胸に熱いものがいっぱい込み上げてきた。

「な、なんでだよ・・・・・オレじゃ、オレじゃちからになれねーのかよ・・・・ゥゥ」

溜まっていた涙が耐えられなくなり頬をつたう。

「リョーコさん・・・」

「・・・・」

「そんなことない、リョーコさんが居てくれたから僕はここに帰ってこれた。

それにリョーコさんはあれからも何も変わらず僕に接してくれました、なのに・・・

僕は自分の事しか考えてなかった。リョーコさんの気持ちも考えず自分一人が

傷ついてるように・・・・・」

「でも・・・でもカイトが一番辛い想いをしてるんじゃないか!だから、

だからなんとかしてやりたかったんだ、それなのにオレは優しい言葉一つ浮かんでこねーんだ、

それが情けなくて・・・・・・・ハハ、やっぱりオレみてーな女はダメだよな・・・」

そう言うとリョーコは俯いてしまう、そのとたんに涙がまた溢れてきた。

そんなリョーコの体をカイトが優しく包む。

驚いて顔を上げると、そこには優しい微笑みを浮かべたカイトの顔があった。

「いいえ、リョーコさんのおかげです・・・僕の時間はあの時から止まったままでした、

でもそんな僕の背中をリョーコさんは優しく押してくれました。

だからこれからも僕を支えてください、そして僕もあなたを支えていきたいんです。」

「・・・・・カイト・・・」

「リョーコさん、あなたが好きです。」

その言葉を聞いたとたんまた別の涙が溢れてきた。

やがてそれは熱い奔流となって流れ出す。

「カ、カイトぉ!・・・・うわぁぁぁぁぁ」

今まで抑えていたものが一気に爆発する、それは色んな感情が混ざり合っていた。

それがやがて一つ消え、また一つ消え、そして最後にたとえようのない幸せが残った。

リョーコは初めての感情に戸惑いながらも、自分の中のカイトの存在がとても大きなものに

なっていたのに気づいた。

「・・・カイトありがとう・・・オレも・・・好き・・・」

らしくない自分の台詞に耳まで真っ赤になるリョーコ。

カイトの暖かい胸の中で幸せに包まれて、いつしか早鐘のように鳴っていた動悸もおさまっていた。
しばらく静かな時間が流れていたが、やがてカイトの方に向けゆっくりと顔を上げると

そのまま目を閉る。

そして二人の影が一つになり二人の想いも一つに溶け合った・・・・・・。




しばらくして名残惜しむように離れると、カイトはリョーコの耳元てそっとささやいた。

「リョーコさん・・・」

「・・ん」

「 あとで ・・ その ・・ 僕の部屋に来てくれませんか ・・・・」

「うん・・・・・・っえ!」

いまだ夢に中だったリョーコだが、ようやくカイトの言葉の意味を理解すると、

頭の中がパニックになり言葉がちゃんとでてこない。

「だめ・・・・・かな・・」

「いや、え〜と、あの、だから、その・・・」

「・・・・・」

「・・・」

「・・・」

しばらく沈黙が続いていたが、

やがてリョーコは目線をさ迷わせながら恥ずかしそうに・・・

「・・・・わかった・・・あとで・・・行く・・」

それだけ言うと慌ててその場から走り去っていった。




− 再び1時間後 −



ナデシコB艦内パイロット用個室。

リョーコは浴室でシャワーを浴びていた。なぜか何時もより念入りに体を洗ってる。

「別に期待してるわけじゃね〜んだ・・・念のため、そう念のためなんだ・・・」

自分に言い分けするようにブツブツ言いながら浴室から出ると、再び鏡の前に座る。

そこで髪を乾かし下着(スポーツタイプ)を身に着けたところでピタッと手が止まる。

(・・・まてよ、これじゃいつもと変わんね〜じゃねえか、もう少し女らしいのに・・・

それにパイロットスーツじゃなんだかな〜)

そう思うとクローゼットを開きなにやらごそごそとやりはじめる。

が、下着はともかく私服(戦闘中以外は認められている)の数はたかがしれている。

すぐに諦めたようにため息を吐くとまた考え込んでしまう。

(う〜ん、こんな事ならヒカルの言うとうり買っときゃよかったな・・・

ああ困ったな〜・・・どうしよう・・・)

しばらく考え込んでいたが、やがて意を決したように立ち上がった。

(え〜い悩んでてもしょうがない、こういうのは普段どうりでいいんだよ、

それに可愛いの着たってオレには似合わねーしな。)

そう思うとさっさとパイロットスーツに着替え、部屋を出ていった。

(・・・でもどうやら下着だけは、いつもより可愛いのを着ていくリョーコだった )




場所は変わってカイトの個室前。

さっきからドアの前を行ったり来たりしている女性がいる。

(勢いでここまで来ちまったが、やっぱりなんか入りづれ〜な・・・)

そのまま何十回めの往復をした時、前方から聞こえてくる話声に固まってしまった。

(あ、あれはヒカルの声・・・こんなとこ見られたらおしめ〜だ・・・ど、どうしよう・・・)

どうやらカイトの部屋に入るという選択肢は無いらしい。

リョーコの焦りとは反対にだんだんと大きくなっていく話声。

と、その時とつぜん目の前のドアが開いた。

「わっ!」

「きゃっ!」

いきなりお互いが目の前に現れ驚く二人。

がいち早く我を取り戻したリョーコは聞こえてくる話声にもう後が無い事を悟り、

そのままカイトの部屋に飛び込みドアを閉めた。

「フゥ〜、あぶなかった・・・」

「え、なにがですか?」

「い、いや何でもね〜んだ・・・ハハ」

「・・・来てくれてありがとうリョーコさん」

「いや、その・・・・お、遅くなっちまったな」

「いいんです、それよりもこっちにどうぞ」

カイトに勧められるまま椅子に座るリョーコ。

しばらくして目の前にレモンティーが置かれ、その隣にカイトが座った。

「とうぞ」

「あ、ありがとう」

初めて入った異性の部屋に(と言っても造りは同じだが)どうしても緊張してしまうリョーコ。

目線は落ち着きなくさ迷っている。

「リョーコさん、そんなに緊張しないでください。」

「べ、べつに緊張なんて・・・・」

「フフ、だってリョーコさんにはこれから何回も遊びに来て欲しいし。」

「ば、ばか・・・・」

リョーコはそう言うと顔を赤くして俯いてしまう。

「リョーコさん。」

カイトの真面目な口調にハッとして顔を上げる。

「・・・」

「僕は今アキトさんの所でやっかいになっています、でも何時までもって訳にもいきません。

それで・・・その・・・地球に帰ったら・・・ぼ、僕と一緒に住みませんか・・」

「えっ・・・・」

いきなりのカイトの言葉に驚いてしまう。

「今すぐじゃなくていいんです、考えておいてくれればそれで。」

しばらく俯き考えていたリョーコだが、顔を上げるとそこには笑顔が浮かんでいた。

「う、うんわかった・・・ありがとうカイト・・・」

「僕はリョーコさんのおかげで前に進ことができました、そしてこれから進んで行く道を

リョーコさん、あなたと一緒に進んでいきたいんです。」

「カイト・・・・・」

カイトの腕の中でリョーコは再び胸が熱くなっていった。

そして二人の唇が重なる。

だがそれは先程とは違う激しいものだった。

その中でリョーコはハッキリと自分が求められている事を感じ戸惑っていた。

やがてリョーコのほうから離れ、躊躇いながら言う。

「でもカイト・・・オレはがさつで、可愛くないし、料理もできないし・・・・

どうしてオレなんか・・・・・・」

「そんなことありません! リョーコさんはとても可愛と思うしそんなあなたを僕は

好きになりました。それにリョーコさんは今のままで十分素敵です・・・・

だから僕は・・・僕はあなたのすべてが欲しいんです!」

「カイト!」

その言葉を聞いたリョーコの頭はカイトの事しか考えられなかった。

カイトを見たい。カイトの声を聞きたい。カイトのすべてを感じていたい。

そのまま二人はもつれ合うようにベッドに倒れ込み熱い奔流に流されていく。

その中でリョーコは女として求められることの歓びを知り、すべてをカイトの委ねていった。

そしていつしか眠りの中に落ちていった。




どれくらい時間がたったのだろう。

やがて目を覚ましたリョーコはゆっくりと瞼を開け、隣で眠るカイトを見た。

「フフ・・・」

そのあどけない寝顔を見て優しく微笑む。

とその時ピピッという音が聞こえ振り向くと、頭の上に置いたコミニュケの通信ランプが

光っていた。

まだボーッとしていたリョーコはそれを手に取り何気なくボタンを押してしまう。

とたんに目の前に広がるスクリーン。

そこにあったのは、小さな物体、いや小さな生き物、いやいや小さな美少女・・・

ホシノ・ルリ艦長だった。

「あっ!・・・・・・・・」

「えっ!」

素早く状況を飲み込んだルリはそのまま固まってしまい、

しばらくして追いついたリョーコはたちまちパニックになってしまう。

「ルルル、ルリルリルラルロ☆○×△□・・・」

意味不明な言葉を叫ぶリョーコ。

やがて少し申し訳なさそうに言うルリ。

「あの〜お邪魔だったかしら・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

とそこへ状況のつかめないままカイトが起き上がってきた。

「ファ〜・・・おはようリョーコさん。」

そう言ってリョーコの方を見るカイト、だがそのリョーコは前を向いて固まっている。

それを不思議に思い同じように前を向くとそこには、頬を染めたルリの姿があった。

「あっ、おはようルリちゃん・・・・・んん!」

今度はカイトが固まった。

「おはようございますカイトさん。」

「・・・・・」

「あの〜今日のミーティングはお二人ともお休みにしておきますね・・」

そう言うとルリはウィンドウを閉じた。

ルリには少し刺激が強かったのかまだ少し頬が赤い。

( 仲が悪いのはあれだけど、仲が良すぎるのも・・・

今後は艦内の風紀を厳しくする必要がありますね・・・ハァ )

なぜか最後にため息がでるルリだった。



しばらくしてカイトとリョーコは顔を見合わす。

「見られちゃいましたね、リョーコさん。」

「み、見られたな・・・・・」

「どうします?」

「ど、どうするっておめえ・・・こ、こういうのはな、でーんとしてりゃいいんだよ!」

「その割には顔が赤いですよ リョーコさん。」

「ばっきゃろ〜! おめえだって同じじゃねえか。」

「フフフ・・」

「アハハハハ」

しばらく笑いあっていたが、やがてゆっくりとカイトの手がリョーコの肩を包み込む。

それに応えるようにカイトの胸に頭を寄せるリョーコ。

リョーコは素直に甘えられる自分が嬉しかった。

そして思う、これからのことを、二人で歩いていく未来を。

今まではナデシコが自分達の居場所だった。でもこれからは違う。

この人の隣こそ自分のいるべきところ

そう自分が自分らしくいられるところなのだから。



− F I N −






− 後書き −

ここまで読んでくれた皆様、ほんとに有り難うございます。
いや〜思ってた事を文章にするって難しいですね、途中で何度も”う〜ん”と
頭を抱え書き直すこと何十回にしてようやくここまできましたが、あらためて
自分の表現力の無さにほとほと感心?してしまいました。
そんな訳でご指摘や批判でも何でも結構ですので感想を頂けたら幸いです。
( 必ずお返事出します )

最後にこんな私にご指導下さった皆様、ほんとに有り難うございました。






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