機動戦艦ナデシコ
〜Return of the White Knight〜




第10話 南の島の聖少女?



ナデシコ・ブリッジ


「と言う訳で、テニシアン島に落下した新型と思われるチューリップの調査と回収を…
 アタシと!
 アタシのナデシコで!」

ブリッジで熱弁を奮うムネタケ。

「そう…優秀なるアタシ達だからこそ与えられた任務なのよ…。
 なのに、どうゆう事!?」

気持ち良さげに演説していたが突然怒り出すムネタケ。

「誰もアタシの命令を聞こうとブリッジにやってこないってのはどういう事なの!?」

吠えるムネタケの前にウインドウが現れる。
その中にはパジャマ姿のイネス。
その手には何故かクマのヌイグルミ。

「…ちなみに現在、作戦現地時間で午前2時…。
 日本でいう丑三つ時…こんな時間は部屋で寝るのが当然…」

それだけを説明するとウインドウが閉じる。

「キィィィィィッ!
 何考えてるのよ!?
 ナデシコは軍艦よ!
 そんな事でいいの!?」

珍しく正論を叫ぶムネタケ。

「ファァ…」

ムネタケ以外に唯一ブリッジにいたミナトもパジャマ姿、
しかも大欠伸のオマケ付き。
時計を確認するとおもむろにシートから立ち上がる。

「ちょっとアンタ!
 操舵士でしょ!?
 ちゃんと持ち場にいなきゃ駄目じゃない!」

「…だって、交代だも〜ん」

ブリッジに入ってきたエリナとタッチを交わしブリッジを出ていく。

「そういや艦長はどうしたのよ!?
 艦長は!?」

ムネタケが喚くがエリナは何処吹く風、と言った表情でウインドウと向かい合う。

「…赤道直下…テニシアン島…。
 珊瑚礁…そして砂浜…。
 例の物を作っておいた方が良さそうね…」

そしてエリナは真剣な顔でコンソールに向かい、何やら作業を始める。

「それにミカズチ・カザマ!
 アイツも軍人の端くれなら出て来てもいいじゃない!」

だが、それに答える者は誰もいない。
ムネタケの叫びがブリッジに空しく響き渡る。



カイト私室


「ヘックシュ!」

突然クシャミをするカイト。

「…風邪ですか?」

ルリが手にしていたマグカップをテーブルに置き、たずねる。

「んー、違うと思うけど…。
 何かこう…突然鼻がムズムズして…」

鼻の下を擦りながら答えるカイト。

「そうですか。
 でも、風邪は引き始めが肝心と言いますから気をつけて下さいね?」

「そうだね。
 ありがとう、ルリちゃん」

ニッコリ微笑むカイトに頬を染めるルリ。
カイトの自室では恒例のティータイムの真っ最中だった。
"ティー"と言う割りに、二人のマグカップの中身はコーヒーとホットミルクだったが。
ちなみにラピスは自分のベッドで熟睡中。
カイトのクシャミで話が中断してしまい、何となく黙り込む二人。
互いの飲物を啜る音だけが部屋に響くが、ルリはこの沈黙が気になって仕方ない。
とりあえず用意されたお茶受けに手を伸ばす。
今日のメニューは『ナデシコ銘菓エステバリス最中・空戦』。
以前ルリが睨んだ通り、他のバージョンがあったようだ。
最中をかじりながら、このムズがゆさの原因を考えてみる。
それは比較的容易に思い当たる。
北極海での作戦後、キス寸前までいったカイトとルリ。
ユリカの乱入により未遂に終わったがそれ以来、
どうしてもカイトの事を意識してしまう。
普通に話をしている時やブリッジ等にいる時などはそうでもないのだが、
こうして二人きりでいて黙っている時などは落ち着かなくてしょうがない。
そんなルリに対して何事もなかったように振る舞うカイト。
その態度が彼女の混乱に拍車をかけていた。

(…カイトさん、何でこんなに落ち着いてるんでしょうか…)

ルリはチラリとカイトに視線をやる。
カイトは時折マグカップに口を付けながらボーッとしている。

「…ん?」

ルリの視線に気付き、視線だけルリに移すカイト。
慌てて目を逸らし、俯くルリ。

「…変なルリちゃん」

ルリに聞こえないよう口の中だけで呟くと、再びボーッとするカイト。

(やっぱり…経験があるからなんでしょうか…?)

そう思い、再びカイトを覗き見る。
カイトとて17歳の青年である。
ひょっとしたら女性と付き合った事もあるかもしれない。
ルリの中で比較対象がない為、
よく分からないが一般的に見てカイトは『理想の男性』に近い存在ではあると思う。
そこそこ整った顔立ちに優しい性格、その能力を考えれば将来性も十分。
しかもこのうえなく頼りになる。
何よりこの年齢で既に連合軍の少尉である。
カイトの二つ名、"妖精の白騎士"は地球圏ではヒーローでもあったと言う。

(…その前の『白の希望』もそうでしたね…)

火星へ行く前のカイトにもそんな二つ名があった。
"妖精の白騎士"の登場で"白の希望"はどこかへいってしまったが。
そんなカイトである。
本人にその気がなくとも周りが放ってはおかないだろう。
それに例の電信文の件もある。
リリン・プラジナーとアリシア・バイアステン。
彼女らとの関係をカイトは未だ明らかにはしていない。
お仕置きの後、それでも何事もなかったと主張し続けたカイトを信用はしているが。
ルリがカイトと共有した時間はまだ半年と少し。
しかもその間には八ヶ月の空白がある。
自分と出会う前に、もしくは空白の八ヶ月の間に
そういう経験があってもおかしくはない。
そう思うと気分が滅入ってくる。
いつか、カイトが自分から離れていく時が来るかもしれないと思うと…。
途端に締め付けるような痛みが胸中に広がる。

(そんなの…イヤです)

カイトに見られないよう俯いて表情を歪めるルリ。
三度カイトを盗み見るが、相変わらずボーッとしている。
だが、その顔を見ると、胸の痛みがスーッとひいていく。

「フゥ…」

思わず溜め息をつく。
カイトといると自分は非論理的な行動ばかりとってしまう。
しかもそれが心地よいと感じてしまうのだから余計にタチが悪い。

(…私、どうしてしまったんでしょう?
前はこんな事なかったのに…)

ルリはカイトの態度に戸惑うが、彼が冷静なのにはちゃんと理由があった。
それはルリの『年齢』である。
カイトはルリをきちんと女性として愛している。
それは今も未来(むかし)も変わらない。
だが、ルリの12歳という年齢がカイトの理性に普段はブレーキをかけているのである。
木星プラントや北極海の時のように感情を強く揺さ振られない限り、
ルリに対してカイトの愛情が形となって現れる事がないのである。
それゆえ、前時間軸でもカイトとルリが一般的な『恋人同士』といった関係になったのは
火星の後継者事変の少し前の事であった。
それまでは兄妹以上恋人未満という関係が崩れる事はなかった。
筋金入りのロリコンとは前時間軸での評価であるが、
カイトとて一応は倫理感を持ち合わせていたのである。
そのようなカイトの心の内を今のルリが理解できるはずもない。
この二人の間の差が今の微妙な空気を作り出していた。

(…考えていても仕方ないですしね…)

ルリがそう思い、カイトに話し掛けようとする。

ウギャァァァァッ!?

誰かの悲鳴がナデシコに響き渡る。

グオォォォォォッ!?

続いて誰か別人の悲鳴。
カイトとルリは顔を見合わせる。

「カイトさん、今の…」

「…多分、アキトさんとガイさんだね…」

「何があったんでしょう…?」

ルリがたずねるが、カイトに分かるはずもない。

「…ウニュ…、今の何…?」

悲鳴を聞いてラピスも目を覚ます。
ベッドの上に身を起こし、目を擦っている。
三人して目をパチクリさせていると、ウインドウが現れる。

「カイト君!
 すぐに食堂に来て頂戴!
 緊急事態よ!」

険しい表情をしたイネスだった。

「イネスさん、どうしたんです?
 今、アキトさんとガイさんらしき悲鳴が聞こえたんですが…?」

「…!?
 他にも犠牲者が…?
 それにも関係しているかも知れないわね…。
 とにかく手を貸して!」

「はい!」

イネスのウインドウが閉じるとカイトが立ち上がる。
イネスの言葉にあった"犠牲者"という事も気になる。

「私も一緒に行っていいですか?」

カイトは一瞬戸惑う。
が、何か怪しい者が艦内をうろついていて、
アキトとガイがそれに襲われたのだとすれば、
ルリとラピスを部屋に残しておくのは得策ではない。

「そうだね…、行こう!
 ルリちゃん、ラピス!」

「ハイ」

「…ウン…ファ…」

つい先程まで夢の中だったラピスはまだ眠そうにしている。
とりあえずイネスの指示通り食堂に向かう3人。
その時、前方から医療班のスタッフが担架を持ってやってくる。

「…ウ〜ン…ユリカ〜…」

乗せられていたのは青い顔をして目を回しているジュンだった。

「「「…」」」

哀れな姿となった副長を無言で見送る3人。
カイトは何となく事態を把握し始めていた。

(…そういや、アキトさんがユリカさんの料理の破壊力を思い知ったのはこの頃…)

前時間軸で聞いた話をおぼろげながら思い出す。
その時は、ユリカの料理の後にメグミのスタミナジュースの二連コンボだったらしい。
だが、先程の悲鳴から察するに今回メグミの洗礼を受けたのはガイのようである。

「…ねぇ、やっぱり行くの止めない…?」

ユリカ、メグミの壮絶な料理の腕前を体験した事のあるカイト。
食堂に行く事に乗り気ではなくなったカイトがそう提案してみる。

「…どうしたんです、急に?
 私は構いませんけど、明日イネスさんの"説明"を受けても知りませんよ?」

「…すぐ行こう…」

イネスの説明、と聞いて再び食堂に足を向けるカイトであった。



ナデシコ・食堂


3人が食堂に到着すると対毒ガス戦装備に身を固めた医療班スタッフが
厨房を消毒して回っている。

「…イネスさん、これは?」

「ああ、カイト君…。
 あら、ホシノ・ルリとラピス=ラズリも一緒なのね」

スタッフに矢継ぎ早に指示を出していたイネスが振り返る。

「凄い騒ぎですね…。
 一体何があったんですか?」

ルリの質問に険しい表情を作るイネス。

「現状では何とも言えないわ。
 ただ、フライパンとミキサーから致死性の毒物らしき物質が検出されているわ…」

「どく?」

ラピスが"何で"と言った表情で呟く。

「…木星トカゲの新しい攻撃なのかしら…?」

悩むイネスにホウメイがボソリと呟く。

「…ま、恋の劇薬ってところかな…?」

頭に手を当てて苦笑いするホウメイ。

「…ユリカさんとメグミさんですかね…?」

「ま、そんなところだね。
 …昔から好きな男に手料理作ってやるのは女の切り札だからね」

「「…!」」

そのホウメイの言葉にピクリと反応するルリとラピス。

「ま、料理の得意なアンタやテンカワには余り効果ないかもね」

「そんな事ないと思いますよ?
 やっぱり女の子の手料理はグッときますよ」

「おや、そうかい?」

カイトの言葉を聞き、その背後で気合を漲らせる二人の少女に気付くホウメイ。

(…やれやれ、明日から厨房の貸出し希望者が増える事になりそうだねぇ…)

翌日、厨房にルリとラピスの姿があったのは言うまでもない事である。



テニシアン島・ビーチ


「リーフ手前で着水。
 各自、上陸準備!」

「「「「「「「は〜い♪」」」」」」」

ムネタケの号令にクルーが珍しく素直に返事をする。
だが、制服を来ているのはカイト、ルリ、ラピス、エリナ、
そしてムネタケぐらいのものであったが。
他のクルーは皆、思い思いのサマーファッションに身を包んでいる。

「ルリルリ、ラピラピ。
 アンタ達白いんだから日焼け止めはコレ使いなさい」

そう言ってルリとラピスにクリームを渡すミナト。

「すみません…。
 海、初めてなんで…何だか、嬉しい」

ミナトから受け取ったクリームを見つめ、呟くルリ。
その表情はやや微笑んでいるようにも見える。
その隣でラピスも嬉しそうにしている。

「海…♪」

そんなラピスにメグミが話しかける。

「ラピスちゃん、海は初めて?」

「ウン。
 カイトが教えてくれたけど、初めて見る」

「そうなんだ!
 じゃ、いっぱい遊ぼうね!」

「ウン♪」

ナデシコが徐々に島に近付き、着水する。
その途端、クルーが上陸艇に乗り込み、一斉に飛び出していく。

「パラソル部隊、いっそげ〜!」

「「お〜♪」」

先陣を切ったのはリョーコ率いるパラソル部隊…もといパイロット3人娘。

「女子に負けるな!」

「「おう!」」

続いてアカツキ率いるジュン、ウリバタケ。
その後もクルーが続々と上陸するがエリナが皆を呼び止める。

「ちょっと待って、アナタ達!」

その声に振り向くクルー一同。

「アナタ達はネルガル重工に雇われてるのよ。
 だから、遊び時間は給料から引くからね!」

「「「「「「「ええ〜っ!?」」」」」」

一斉にブーイングを浴びせるクルー達。
アカツキもここぞとばかりにその輪に加わっている。

「で、はいコレ」

エリナが懐から取り出したプリントを皆に配る。

(何だろ…?
チューリップの資料かな?)

プリントに視線を落とすカイト。
だが、そこにある文字を見てカイトは自分の目を疑う。

ナデシコ海水浴inテニシアン島・海のしおり

「…」

絶句するカイト。

(…調査任務は?)

遊び時間は給料から引くといっていた本人が遊ぶ気満々である。
なんだかんだと軍人生活の長いカイト。
カイトの思考パターンはどちらかというと軍人のものである。
それゆえ、まだまだ初代ナデシコのノリに驚くことが多い。
同じようにほうけるクルーを前にエリナが注意事項を読み上げる。
しかしそんなものをまともに取り合うような人間はナデシコクルーには一人もいない。
抜き足差し足でエリナの元から離れていく。
もちろんカイトもルリとラピスの手を引いてその場を離れる。
驚く事はあってもカイトもナデシコクルーである。
その辺りの資質はしっかり身に付けていた。

「…サンオイルは自然分解性のもの以外は使用禁止…。
 後…」

やけに静かな事を不審に思ったエリナ。
プリントから視線を上げるとそこには誰もいない。

「もう!
 プリント読みなさいってば!」

エリナが制服を脱ぎ捨てるとその下から現れたのは水着。
そして早くも遊びだしたクルーの元に走っていく。
エリナも南国テニシアンの誘惑には勝てなかったようだ。
ビーチでは皆がそれぞれにバカンス気分を楽しんでいる。
水遊びをする者、日光浴をする者、ビーチバレーに興じる者、将棋に勤しむ者…
はたまた『一子相伝・最後の浜茶屋師』を名乗る者…。
ルリはそんなクルーを横目にパラソルの下でノートパソコンと向き合っていた。

「ヒャッ!?」

突然頬に冷たい物を押し付けられ、悲鳴を上げるルリ。
慌てて振り向くとジュースの缶を持ったカイトが笑っていた。

「ビックリした?」

「…」

ジト目でカイトを見上げるルリ。

「アハハ♪
 ごめんね、そんなに驚くとは思わなかったよ…ハイ」

カイトの差し出すジュースを無言で受け取るルリ。
そしてカイトはルリの隣に腰を下ろす。
その顔は相変わらずの笑顔である。

「泳がないの?」

「さっきクリームを塗ったばかりですから…。
 カイトさんこそ、泳がないんですか?」

制服のままのカイトを見てルリがたずねる。

「ま、おいおいね♪」

そこへユリカ達と水遊びをしていたラピスがやってくる。

「カイト、ルリ、遊ぼう?」

毛先からポタポタと水滴を垂らすラピス。
その顔は楽しくてしょうがない、というように輝いている。

「んー、ごめんね、ラピス。
 僕はちょっとやる事があるから。
 後で遊ぼう?」

「私も、です。
 ごめんなさい、ラピス」

「んー…分かった」

そう言うとラピスはまたユリカ達の所へ戻っていく。
普段ならへそを曲げるところだが初めての海の前にはそれも些細な事のようだ。

「…ラピス、楽しそうですね」

「そーだね♪
 …ルリちゃんは?」

「私もちょっとワクワクしてます。
 海、初めてですから。
 …カイトさんは来た事あるんですか?」

ルリがそう聞いた途端、カイトはスッと目を細め、遠くを見つめる。

「…本物は初めて。
 …昔、バーチャル・ルームで見た事はあるけど」

「…そう…ですか…」

(…また、この目…)

カイトは自ら過去の話をする事は滅多にない。
そしてそれをする時は大抵このような目をしている。
失った時を懐かしむような寂しく悲しい目を。
ルリはこの瞳をしているカイトを見るのが辛かった。
カイトがいつか自分の前からいなくなってしまう、
何故かそんな気がしてしまうから。
ルリがそんな思いに沈み込んでいた時、
カイトは前時間軸で海を見た時の事を思い出していた。
アキトとユリカに連れ出されたバーチャル・ルーム・ボックス。
ルリと二人で見た海はフェイクと分かっていても美しかった。
そこで交わした約束。
演技の中での約束とはいえ、カイトにとって大事な約束には変わりない。

『いつかもう一度、今度は"家族"で来よう』

そして、その約束は果たされる事はなかった。
カイトはそっとルリを見る。
俯いたその表情を伺う事は出来ない。
フッと表情を緩めるカイト。
それでも今ならもう一度約束する事が出来る。
だから、精一杯の笑顔と共に言葉を発する。

「…また…、平和になったらまた来よう…?」

ルリはその言葉に顔を上げる。
カイトは微笑んでいた。
ルリの好きな暖かい笑顔を浮かべて。
思わず頬が熱くなるのを感じるルリではあったが、
カイトに聞こえるようにしっかり返事をする。

「…ハイ」

ルリの返事を聞いたカイトは満足そうに頷くと、立ち上がる。

「…さて、用事を済ませてきますか」

「…?」

カイトを不思議そうな表情を浮かべるルリ。

「ちょっと先行調査をね…」

「…危ない事、しませんよね…?」

「気をつけるよ」

それだけ言い残すとカイトは森に姿を消す。
それを見送ったルリは辺りを見回す。

(…?
テンカワさんとダイゴウジさんがいませんね。
あ、艦長とメグミさんも…)

その組み合わせから、どこかで追っかけ合いをしているのだと納得し、
パソコンに向き直る。
そこにはテニシアン島の詳細を記した画面が呼び出されていた。



テニシアン島・チューリップ付近


(ゲートタイプより小型…輸送用だな)

カイトはチューリップの落ちたクレーターまでやって来ていた。
スコープを取り出し、小型チューリップを観察する。
チューリップの回りにはクリムゾンの紋章をペイントしたバリア発生装置が見える。
どうやらそのバリアを警戒し、中身は出てこないようだ。

(…アキトさんは、と…あれ…?)

チューリップのすぐ側の豪邸へと視線を転じる。
この島の所有者、アクア・クリムゾンの屋敷。
彼女の心中願望に巻き込まれ、ひどい目にあったとアキトから聞いていたカイト。
だが、スコープに映ったのは3人。

(…何でガイさんがいるんだ…?)

テラスで微笑むアクアに、頬を染めるアキトとガイ。
何か言葉を交わし、アクアがそっと二人に寄り添う。

(…ユリカさんとメグミさんがこんなとこ見たら、修羅場に…え゛!?)

スコープの端にテラス目指して階段を駆け上がるユリカとメグミの姿が映る。
案の定、アキトとガイに寄り添うアクアを見たユリカとメグミが切れる。
しかし、アキトとガイはアクアを庇うように叫ぶ。

(『彼女は…俺にとっての…アクアマリン…なんだ…』…はぁ?)

アキトとガイの叫びを読唇術で読み取ったカイト。
アクアをゲキガンガーのキャラに例える二人を見て絶句する。
ここからでは表情は見えないがユリカとメグミも同じような表情をしているだろう。
固まっているのがスコープ越しにも見て取れる。
その時、アクアが何か呟き胸元のブローチを押す。

(…あれがバリア解除のスイッチか…)

再びチューリップへ視線を転じるが、視界の中を一瞬、銀色とピンク色が過ぎる。

(…ん?)

慌ててスコープを戻すカイト。
そこには森の中を歩くルリとラピスの姿が映る。

(何でこんな所に…?
…ッ!)

良く見なければ分からないが、
ルリとラピスを取り囲むように黒服の男達が10人ばかりいる。

(…クリムゾンのSSか!)

カイトはスコープを覗き込んだまま、レトロスペクトを集める。
それと同時にカイトの身体が輝き始める。

「ジャンプ!」

光が収束し、弾ける。
そこには既にカイトの姿はなかった。



少し時が戻って
テニシアン島・ビーチ



相変わらずルリはノートパソコンのキーボードを叩いていた。
テニシアン島の情報を閲覧していたルリはある事に気付く。
「この島は最近になって、個人の所有になったみたいですね。
 …豪州圏最大のコンツェルン、クリムゾン家の…」

ルリがパソコンの画面を覗き込み呟く。

「クリムゾン家?」

エリナがその言葉にピクリと反応する。

「知ってるわ!
 ついこの間、一人娘が社交界にデビューして話題になってたわ」

ネルガル会長秘書の立場柄、そう言った事情にも詳しいエリナ。
だがテニシアン島がクリムゾン家の所有になっていた事までは知らなかったようだ。

「…クリムゾン」

イネスがテーブルの陰からヌッと現れる。

「バリア関係ではトップの、世界有数の兵器メーカーね…。
 あのバリア衛星もここの受注。
 しかし、その財閥の一人娘は多分に問題児らしいわ」

「問題児?」

「いきなりパーティーの全員の料理に痺れ薬を入れたり、
 自分の為だけに少女漫画を描かせると漫画家の誘拐未遂を起こしたり…。
 ま、クリムゾン家にとっちゃ唯一の汚点よね」

空を見上げ遠い目で呟くイネス。
何か思うところでもあるのだろうか。
イネスとエリナが去った後も暫く一人でキーボードを叩いていたルリ。
そこへラピスがやってくる。

「ルリ…カイトは?」

キーボードを叩く手を止め、ルリはラピスに向き直る。

「カイトさんはお仕事です。
 もうすぐ戻ってきますよ」

「…ウン」

遊び疲れたのか、ラピスがルリの隣に腰を下ろす。
暫く空を見上げてボーッとしていたラピスだったが、やおら立ち上がる。

「…カイト探してくる」

そう言って森の方へ歩いていくラピス。

「…え?
 ちょ、ちょっとラピス…」

ルリの制止に耳を貸さず歩いていくラピス。
慌ててノートパソコンを畳み、ルリはラピスを追い掛ける。
森に少し入った所でラピスに追い付く。

「ラピス…、カイトさんはお仕事してるんです。
 すぐ戻ってきますよ。
 …さ、浜辺に戻りましょう」

しかしラピスはイヤイヤと首を振る。

「カイト、遊んでくれるって言った…」

ルリはふと時計に目を落とす。
遊びを打ち切り、チューリップの調査開始時間まで後1時間を切っている。
確かに遊ぶような時間はほとんど残っていない。

「ラピス、後30分だけ探しましょう。
 私達のお仕事もありますから」

「ぅー…、分かった…」

納得した表情はしていないが、渋々了承するラピス。
そしてルリはラピスの手を引き、カイトの姿を探し始めた。


それが少し前の出来事。
30分ではカイトは見つからず、浜辺に戻る途中のルリとラピス。
ラピスはキョロキョロと辺りを見回しながら歩いている。
悪戯好きのカイトの事、不意にその辺りから現れるかもしれない。
驚かされてばかりは悔しいので、
もし出て来たら冷たい目線で出迎えようと思っているルリ。
その時、二人の前方の茂みが揺れる。

「…カイト?」

ラピスがその茂みに足を進めようとする。
ルリも一瞬カイトかと思うが、感じる気配は
穏やかなカイトのものではなく、鋭い敵意。

「ラピス、ダメ!」

繋いでいたラピスの手を引き寄せる。

「…チッ、感の良いガキだ…」

茂みから全身を黒に包んだ男が姿を現す。

「…無様だぞ、ヒュンフ」

その言葉を合図に次々と黒服が現れる。
その数、10名。

「…ルリ」

男達の突き刺すような敵意を感じ取ったラピスがルリに身を擦り寄せる。
自らも恐怖に硬直していたルリだったが、
震えるラピスの身体を感じ、頭に思考が戻ってくる。

(私がラピスを守らなければ…)

自分はラピスの”姉”なのだ。
ラピスを守る義務がある。
そう思うと、頭にいつもの冷静さが戻ってくる。
恐怖心がなくなった訳ではないが、ルリは相手を観察する。
その間にも男達はルリとラピスを無視して話しを続けている。

「しかし、さすがはMCといった所か。
 手を抜いていたとはいえ、俺達の存在を感じ取ったのだからな」

「しかし、アイン。
 資料によればネルガルのMCはホシノ・ルリ一人のはず。
 桃色の髪のガキは…」

「確かに…、だが金色の瞳はMCの証。
 大方、非公式に作っていたんだろうよ…。
 …さて、ホシノ・ルリ」

「…何ですか?」

やや声が震えるがルリは無表情のまま、言葉を紡ぎ出す。
それを見たアインと呼ばれた男が眉をピクリと動かす。

「ほう、落ち着いたものだな…。
 いや、その方が話がしやすい。
 単刀直入にいう、我々についてこい。
 言っておくがお前達に選択の権利はない」

「…私達をどうするつもりですか…?」

ルリはラピスを抱き抱えたまま、ジリジリと場所を移動する。
この時、既にルリはこの場を切り抜ける方法を思いついていた。

「お前が知る必要はない。
 …が、お前達MCにさせる事と言えば一つだ」

意地悪く口元を歪めてみせるアイン。

「…モルモット…ですか…」

「察しが早いな…。
 その通りだ。
 …悪いが、おしゃべりはここまでだ」

そう言ってアインがルリに手を伸ばす。
だが、ルリはその手を避けると、囲みの中でただ一人、明後日の方向を見ていた男に
向かって持っていたノートパソコンを投げ付ける。

「アハト!」

アハトと呼ばれた男が慌てて振り向くが時、既に遅し。
ノートパソコンのクリーンヒットを喰らい、アハトがもんどりうって倒れる。
その隙を衝いてルリはラピスの手を引き、走り出す。

「あのクソガキ!
 追えっ、逃がすなっ!!」

アインの怒声が響き、男達が一斉にルリとラピスを追う。
ルリとラピスは懸命に走るが、所詮大人と子供。
すぐにその距離は縮んでしまう。

「ハアッ…ハアッ…ハアッ…キャッ」

「ラピス!」

ラピスが地面に足を取られ、転んでしまう。
先頭を走っていた男がラピスを捕らえようと迫る。

「ルリ!」

恐怖に駆られたラピスが叫ぶ。
ルリは意を決すると男に向かって走り出す。

…エイッ!

ルリの渾身の力を込めた体当たり。
予想外の行動に男はラピスを掴んでいた腕を離す。

「ラピス、逃げて!
 キャッ!?」

「味な真似してくれるじゃねえか…」

体当たりした男に地面に引き倒されるルリ。
腕を極められ、押さえ込まれる。
思わず目を閉じるルリ。

「ルリ!
 …カイト、助けて!
 ルリが…、ルリが…!」

ラピスが泣きながら叫ぶ。

「はん、いくら泣いたって助けなんてこねえ…ゴフッ!!

その時、辺り一面にボソンの光が満ちる。

「…そのコはお前が触れていいコじゃない…」

静かな声が響き、ルリを押さえ込んでいた男が吹っ飛ぶ。
ジャンプアウトと同時にカイトが蹴り飛ばしたのだ。
男は茂みに頭から突っ込み、ピクピクと痙攣している。

「カイト!」

ラピスが歓喜に満ちた声で叫ぶ。
カイトはラピスに笑いかけるとルリをそっと抱き起こす。
ルリは身体を包み込むその温もりに目を開く。

「…遅くなってごめん」

「…カイトさん…」

ニッコリと微笑むカイトを見たルリの瞳に涙が浮かぶ。

「カイトさぁん!」

ルリがカイトにしがみつく。
カイトはルリを安心させるように一度ギュッと抱き締めると、そっと立たせる。

「…ラピスの所へ」

静かなカイトの声にルリはコクンと頷き、ラピスの元へ駆け寄る。
そしてまだ震えていたラピスを抱き締める。
追い着いてきた男達が吹き飛ばされた男を見て、カイトを見る。
アインは笑みを消さず、呟く。

「おやおや…、騎士様の登場か。
 …殺れ」

「「「おう!」」」

アインの指示を受け、3人の男が飛び出し、カイトに飛び掛かる。
男達のナイフとカイトが交錯した瞬間、3人が吹き飛ばされる。

「…何だと…」

アインの顔から余裕の笑みが消える。

「…弱すぎるな」

カイトの表情が消える。

「僕を倒したいなら全員で掛かってこい…」

カイトが構えを取る。

「…次は殺すぞ…」

「…クッ…。
 ツヴァイ、フィーア、ノイン…行け!」

だが、アインの指示に従う者はいない。

「…む、無理です!」

「アインも見たでしょう!?
 アイツが何をしたのか見えなかった…」

「…引きましょう!」

「…腰抜けどもが!」

アインが怒鳴るが男達は誰一人カイトに向かおうとしない。
業を煮やしたアインがカイトに向き直る。

「お前が来るか…?
 お前達はルリちゃんを傷つけた…。
 その罪、死をもってでも購って貰う…」

「…ク…、死ぬのは貴様だ!」

アインがカイトに突っ込んでいく。
そのスピードは他の男達とは比べ物にならない程速い。

「…遅い」

「…なっ!?」

だが、一瞬にしてアインの懐に身体を沈めるカイト。
その腹に拳を当て、踏み出す。

ガハァッ!!

アインの身体が吹き飛ぶ。
そして背後にあった木にしたたかに叩きつけられる。

「寸打、だと…」

アインが呆然と呟き、崩れ落ちる。
そしてそのまま気絶する。

「…クリムゾンの爺に伝えろ。
 "繋がって"いる事を公表されたくなければ、今後ナデシコに手を出すな、と…」

カイトは振り向くとそれだけを告げる。

「我々の正体を見破っていたのか…?」

「…アクア・クリムゾンの抹殺、ネルガルのMCの奪取、ナデシコの破壊…、
 どれが本来の任務なのかまでは分からんがな」

冷たい表情を崩さず、ツヴァイと呼ばれる男に告げるカイト。

「…確かに伝えよう…。
 オイ、撤収だ!」

ツヴァイの指示でクリムゾンのSSは撤収していく。
カイトは去っていく彼等を見送ると纏っていた殺気を脱ぎ捨てる。

「ルリちゃん、ラピス…うわっ!?」

「「カイト(さん)!」」

ルリとラピスがカイトに飛び付く。
そしてカイトにしがみつき、肩を震わせて泣き出した。
余程怖かったのだろう。
ラピスは声を上げて泣いている。
さすがにルリは声を殺してはいたが。

「…二人とも、良く頑張ったね…」

カイトは優しく囁くとルリとラピスを抱き締める。
ルリとラピスはカイトの胸に顔を埋め、カイトは二人の背中を優しく撫でる。
そんな穏やかな時間が流れる。
だがそれは不意に破られる。
3人のすぐ傍にミサイルが落ちた。

「「「…え?」」」

3人がミサイルが飛んできた方向を見ると巨大なジョロと目が合う。
いつのまにか、チューリップから出てきていたのだ。

「…撤収!」

「「了解!」」

カイトがルリとラピスを抱えて走る。
抱き抱えられたまま、ルリがふと何かを思いつく。

「…カイトさん、さっきみたいに倒せませんか?」

「ルリちゃん!?」

「…頑張って、カイト」

「ラピス!?」

さっきまでのしおらしさはどこへやら、
カイトに生身で巨大ジョロを倒せと要求する二人。
巨大ジョロも手頃な目標を見つけたとばかりにカイトを追ってくる。

「二人とも冗談だよね!?」

カイトが恐る恐るたずねる。

「…本気と書いて…」

とルリ。

「マジと読む♪」

とラピス。

アアアアアッ!!

叫ぶカイト。
ルリとラピスは微笑みを浮かべてカイトにギュッとしがみつく。

((カイト(さん)の腕の中が世界で一番安全な場所(…)(ですから)))

このままでは本当に生身でジョロと戦わせられかねないと思ったカイト。
ルリとラピスの想いに気付く事なく疾走する。

ウォォォォォッ!

驚異的な加速で巨大ジョロを引き離し、砂浜へたどり着く。
そのまま駐機してあったセフィランサスに駆け上がり、コクピットを開く。
そしてルリとラピスをサブスペースへ放り込む。
ルリは初めて乗るセフィランサスのコクピットが珍しいのか
キョロキョロと辺りを見回している。
カイトに振り切られた巨大ジョロは再び屋敷へと向かっていく。
カイトはすぐさまIFSを接続し、飛び上がる。
そして既に出撃しているリョーコ達を援護すべく巨大ジョロに向かう。
だが、既に戦いはクライマックスを迎えていた。
痺れ薬を盛られ、身動きできないアキト(ガイの姿は見えていない)を見たリョーコ。

『アキト!
 テメェ、何やってんだ!』

『リョーコちゃん、後ろ、後ろ!』

『うるせぇ!』

リョーコの怒りに満ちたアッパーが決まり、続いて至近距離からのライフル射撃。
さすがの巨大ジョロもこれには沈黙する。

「「「…」」」

カイト、ルリ、ラピスも同様に沈黙する。

『こえぇ〜…』

アカツキの呟きがその戦いを見ていた者の気持ちを代弁していた。



ナデシコ・食堂


「今日のお礼です」

「食べて、カイト」

カイトはルリとラピスに誘われ、ナデシコ食堂へとやってきていた。

「…これ、ルリちゃん達が…?」

「ハイ、ホウメイさんに教わって作りました」

「ウン」

カイトに出された物はルリとラピスのお手製チキンライス。
少々焦げ目が目立ち、ご飯もパサついてはいるが、立派なチキンライスである。

「…では、いただきます」

カイトがチキンライスを口へ運ぶ。

「「…」」

ルリとラピスは真剣な表情でカイトの様子を見守っている。

「…美味しい」

カイトのボソリと漏らした呟きにルリとラピスの顔がパッと輝く。

「「俺は悲劇の主人公だあ〜!」」

その時、通路からアキトとガイが食堂へ飛び込んでくる。
続いて料理?らしきものを持ったユリカ、メグミ、リョーコ。

「アキト!
 あのコの料理は食べたんでしょ!?」

「ガイさん!
 私の料理は食べて貰えないんですか!?」

「アキト!
 遠慮すんなって!
 俺の飯が食えないってのか!?」

女性陣に壁際に追い詰められるアキトとガイ。

「「誰か助けてくれ〜!」」

カイト、ルリ、ラピスの3人はそちらを見ないようにして、食事に勤しむ。

「「「さあ!」」」

「「ヒィィィィィッ!」」

詰め寄るユリカ、メグミ、リョーコに情けない声を上げるアキトとガイ。

「やれやれ…、今日もナデシコは平和だねぇ…」

笑い声と叫び声が木霊する食堂を眺めながらホウメイが呟いた。



今月のナデシコの標語

『ある者の幸福はある者の不幸…他人の不幸は蜜の味』Byアカツキ・ナガレ





某所


「閣下、地球より大変な映像が届きました」

「…大変な、とは?」

閣下と呼ばれた男が編笠を被った男にたずねる。

「ご覧になって頂ければ」

「…うむ」

古めかしい機械が動き出し、スクリーンに映像を投影する。
黙って映像を見ていた『閣下』がやおら立ち上がる。

「…これは!」

「映像に細工した形跡などは一切見られませんでしたねぇ」

白衣を着た男がニヤニヤと笑いながら付け加える。

「単独での生体次元跳躍…。
 何者なのだ、この男は?」

「協力者からの情報では"ナデシコ"のクルーの一人であると」

「ナデシコ…地球の相転移炉艦の一番艦か…。
 博士、映像はこれ以上は鮮明にはならんかね?」

「…何分、戦闘中の映像ですのでこれ以上は」

「…そうか」

映像を巻き戻し、その瞬間をもう一度見る。
何もない空間が突如光りだし、その光が収束
して弾けるとそこに人が現れる。
巻き戻し、もう一度。
何度見ても同じ事だった。

「…閣下、いかがなさいますか?」

「…この男に関する情報を集めよ。
 場合によっては0069を動かしても構わん。
 博士、生体次元跳躍の研究を急がせたまえ。
 …地球より早くモノにせねば我等に勝機はない」

「…御意」

「そうですなぁ」

編笠の男と『博士』はそれぞれ返事をして部屋から出ていく。
編笠の男はそのまま闇に溶け込むように消えていく。
博士は部屋を出る寸前に振り返る。
閣下はまた映像を巻き戻していた。

『お前達は……ちゃんを傷つけた…。
 その罪、死をもってでも購って貰う…』

映像の中の青年がしゃべる。
その顔はぼやけていて判別できない。
声紋照合も幾度ノイズキャンセラを試しても判別できなかった。

(…消えた"あの子"に似ているねぇ…。
まさか、ね…)

博士は心の中で呟くと、部屋の扉を静かに閉めた。



  続く…




 後書き

村:ども、村沖和夜です。
  RWK第10話『南の島の聖少女?』をお送り致しました!

?:ちょっと!
  私の出番が全然ないじゃないの!
  タイトルが『南の島の聖少女?』なのにどういうつもりですの!?

村:…あんた、誰?(困惑)

?:きいいいッ!
  私を知らないなんて貴方、モグリですわね!

村:…なんのモグリ…?(さらに困惑)

?:ゼイゼイ…、いいでしょう。
  一度しか言わないから、よくお聞きあそばせ!
  私こそ、名門クリムゾン家の一人娘、アクア・クリムゾンですわ!!

村:…ああ、脳内炸薬姉妹の片割れ(納得)

ア:誰が脳内炸薬姉妹かっ!
  それに私に姉妹などおりませんわ。

村:…シャロン・ウィードリンは?

ア:…あんな方、知りませんわ(視線逸らす)

村:しかし、クリムゾンの御大も大変ですね。
  跡取りの一人は妄想爆裂娘、もう一人は反逆者…、心中お察ししますよ。

ア:貴方、天敵(妖精姉妹)がいないからっていい気になってますわね。

村:…ギク(滝汗)

ア:…召喚しますわよ?(ニヤ)

村:貴女に出来るんですか?(ニヤ)

ア:やってみせますわ!
  カモン!!(パチン)

村:ををッ!?(驚愕)

?:はわわッ!

村・ア:…

?:い、いったいここは?
  艦長? サブロウタさん? ミスマル大尉?
  どこですかぁ〜!!

村:…むぅ、確かにルリさんやラピスと同系列ではあるな…

ア:なんですの?
  このチンチクリンは?

?:ムカッ!
  チンチクリンじゃありません!
  いきなり呼び出しておいて失礼な人ですね!

村:そうですよ、アクアさん。
  彼には”針”という立派な名前が…

針:”針”じゃありません!!
  マキビ・ハリです!!!

村:でも名前表示は”針”になってるよ?

針:…(絶句)
  というか、書いてるのは貴方でしょうが!

村:ハイ(即答)
  変換キー押したら一発目はそれなんですよ。
  もはや”針”の名前は運命ですね。
  諦めてください(ニッコリ)

ア:なら仕方ないですわね、”針”クン♪(ニッコリ)

針:…都合の良い時だけ共同戦線張らないで下さい…。

村・ア:大人の知恵(です)(ですわ)

針:…大人って卑怯…(涙)

村:というか調子に乗ってたら、お話の解説をする時間がなくなりそうです

ア:あら、ではささっと解説に移りましょう。
  今回の見所は…やはりルリさんのアクションシーンですわね。

村:お仕置き(第8話余談)や後書きではいかんなく武闘派ですがね(震)

ア:体を張って妹を守る姉…、シャロンにも見習って欲しいですわ。

村:まあ、カイト君が助けに来るのはお約束ですが。

ア:そして最後は…、”あの方達”ですのね?

村:ハイ。
  ようやく登場です。
  まあ、物語が動き始めるのはまだ先ですが。

ア:…そういえば、キノコさんは砂浜に埋まってないんですか?

村:埋まってますよ。
  描写のタイミングがなかったのでカットしましたが。

ア:あら、そうなんですの。
  まあ、仕方ありませんわね、キノコですし。

村:ええ、キノコですし。

ア:さて、それでは次回予告に入りましょうか。
  では、次回RWK第11話!

   『バトル・オブ・クルスク』

     「…まだです。まだナデシコには”あの人”がいます…」

  をお送りします!

村:ここまでお付き合い下った皆様に感謝しつつ…
  第11話でお会いしましょう!!

















針:…僕、何のために呼ばれたんですか…?(号泣)





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