機動戦艦ナデシコ
 〜オリジナルストーリー〜
第六話「いつか僕と君が『歌う詩』」





カイトさん・・・・・。

大丈夫ですよね・・・・・・?

カイトさん・・・・・・。

 

 

 

あれから半舷休息中のナデシコ。

メディカルルームに運ばれたカイトさんは面会謝絶。命に別状はないらしいんだけど・・・・・・・面会謝絶なのが不安です。カイトさん・・・・・また、料理をご馳走してくれますよね・・・・・?

リシアンサスは酷い有様で、右腕は無く、頭部とコクピットの半壊。脚部スラスター、オートバランサーなど壊れているところを言うと凄い数。

ウリバタケさん達、整備班の人たちが頑張って修理してるけど、修理しきれるかどうかわかりません。

艦長は、カイトさんが怪我したり、火星の人たちを助けられなかったのは私の所為だと言って落ち込んでしまいました。

私は・・・・少し気分が悪いです。泣いてしまったところは、オモイカネ以外には見られてなかったみたい。カイトさんの事が心配でたまりません。映像を出そうとしたけど、怖くて出せませんでした。

「ルリルリ・・・・」

「あ、はい・・・・」

ミナトさんが声をかけてきました。

「カイトくんの様子気になるんでしょ?見てくれば?」

「え?む、ムリですよ・・・・面会謝絶ですし・・・」

どうしてわかったのかな?私がカイトさんの様子を気にしてる事・・・・・。

「面会謝絶なら、もう解けましたよ」

「「「「え?」」」」

後ろから声がしました。本来なら聞えるはずのない彼の声・・・・。

「カ、カイトくん、大丈夫なの?!面会謝絶じゃ・・・」

「だから、解けたんですよ」

艦長が名を呼びました・・・。よかった、大丈夫だったんだ。

「すいません、心配をかけてしまって」

「ううん、私の方こそゴメンね!私の所為でカイトくんが怪我をして・・・」

「艦長の所為なんかじゃありませんよ。大体アレは僕の独断だったんですから。自業自得です」

カイトさんと艦長が言い争ってます(?)。この様子からすると大丈夫ですね。さっきまでの気分がウソみたいです。

「艦長もあなたもそろそろやめにしなさい。ホシノルリ、ちょっといいかしら?」

「はい」

いつの間にかイネスさんがいます。なんでしょうか?

「悪いけど、しばらくの間、彼と一緒に過ごしてもらえないかしら?」

「え?」

「簡単に言うと、あなたの一緒の部屋で暮らしてもらえないかって事」

「ど、どうしてですか?!」

こ、声が裏返ってしまいました。いきなり何、言い出すんですかイネスさん!

「理由は三つ。一つ、彼がサブオペレーターをするから。二つ、行動時間が一緒だから。  三つ、歳が近いから。あと面倒を見てほしいのよ」

三つ目、関係ないんじゃないですか?

「でも、どうしてメディカルルームじゃないんですか?!別に私の部屋じゃなくったって自分のだってあるじゃないですか」

「私は四六十中メディカルルームにいるわけじゃないのよ?彼を一人にしたら緊急事態のときどうするの?その所為で重体になったらどうするの?行動時間が一緒で同じ職業。ブリッジにも近い部屋。気兼ねなくいられる相手。あなたしか該当者がいないのよ」

うう、断れる理由がありません。面倒・・・・・この場合、看病ですね。するのはかまいません。一緒にいられるのも嬉しいです。けど・・・・・一緒の部屋っていうのだけはどうにかならないんでしょうか?ああ、でもそれで、カイトさんがまた怪我でもしたら・・・・・・どうしよう・・・・。

当のカイトさんは顔を真っ赤にして俯いてます。頭に巻いてる包帯から血が吹き出そうなくらい真っ赤です。

多分、私も真っ赤だろうな。どうしよう?

 

 

 

 

 

 

結局イネスさんと後から加勢したミナトさん、艦長達の推しに負けてしまった私たちは一緒の部屋に住む事になってしまいました。

トドメは艦長の艦長命令。職権乱用って言うんじゃないのかな?はあ〜。

今、ちょうど私の部屋にカイトさんのベットが運び終わったところ。カイトさんはメディカルルームで包帯とか消毒液等の医療品を取りに行ってます。怪我の方は右足の骨折に頭を切って5針も縫っています。あのコクピットの損傷度からして、アレだけで済んだのはまさに運がよかったとしか言えません。でも、それ以外は何も無かった様なのでよかったです。それにしてもカイトさんは何時からオモイカネとアクセスしていたんでしょうか?聞いてみましょう。

―オモイカネ。何時からカイトさんとお話してたの?

≪カイトさんがナデシコに乗ってからすぐです。あとゼロという友達も出来ました≫

早いですね。それにしてもゼロ・・・・・いったい誰なのでしょうか?

―ゼロっていうのは誰?

≪機動兵器リシアンサス・ブローディア搭載AIゼロです≫

≪僕の事です≫

オモイカネが説明し終わると、また別の声が聞えてきました。

≪こんにちは、初めまして。RPX−01リシアンサス・ブローディア搭載AIゼロです。よろしくお願いします≫

―こんにちは、ホシノ=ルリです。よろしく。

オモイカネより反応が豊かです。オモイカネも反応は豊かな方なのですが、ゼロの方が豊かです。

≪いえいえ、今日のところはこれで。修理中のため長くオモイカネを通して話が出来ませんので、紹介だけさせていただきます。カイトによろしくお伝えください。では≫

―うん、じゃあね。

≪はい≫

そう言うと切れてしまいました。それにしても凄い子ですね。ゼロは。

―オモイカネ。

≪はい≫

―よかったね。いい友達が出来て。

≪はい!≫

嬉しそうに返事を返してくれました。

―あ、あと、カイトさんの怪我って、足と頭以外は大丈夫?

≪はい、所々に擦り傷、切り傷はありますが、今回の怪我は右足と頭以外は大丈夫です≫

―そう、よかった。

≪全治二ヶ月半だそうです。それまではカイトさんと同じ部屋という事になってます≫

―・・・・・はあ〜。

 

 

 

 

 

 

なんでこんなことになっちゃったんだろう・・・・。ただ、黙って見ているだけは嫌なだけなのに・・・・。それで条件がルリちゃんと一緒に行動なんて・・・・。しかも最後には艦長命令が出るなんて・・・・・。はあ〜。

イネスさんも艦長も何、考えてるんだろう?大体、僕だって男ですよ?まあ、襲う勇気なんてないし・・・・先生も余計な事、教えてくれたよな〜。さて包帯もコレくらいでいいかな?

「こらーーッ!カイト!テメェーーー!」

ばっしーーん!!

「ぐはっ!」

か、加速を付けた張り手・・・・。

「カイト!テメェー!ルリルリと同じ部屋になったって言うじゃねぇかー!」

う、ウリバタケさん・・・・・。痛いを通り越して気を失いそうですよ・・・・。

「な、何するんですか・・・・?」

「何するんだ、じゃねぇー!ルリルリとお前が何で同棲するんだー!」

「ど、同棲って・・・・ただ、そのなんて言うか艦長命令で・・・」

そう、艦長命令なんだ!でも、ウリバタケさんの事だから関係ないとか言いそうだなあ。

「艦長命令だと?!んなもん関係あるかー!」

やっぱり・・・。

「大体、契約書の事はどうなったんだよ?!男女交際禁止みたいな事言ってるくせに同棲は認めるってか?ざけんじゃねぇーぞ!」

八つ当たりに近い事されてる気がするんですけど・・・・。つーか、僕、怪我人なんですけど・・・・・。足痛いし。

「ぼ、僕の契約書には男女交際の事は書いてありませんでしたけど・・・・」

「うるせー!こっちは汗水流してる最中お前は美少女とイチャイチャいてるなんて許さねぇー!」

私情、挟みまくりー!?自分が納得いかないだけじゃないんですかー?!

「そんな事、言われたって・・・」

「お前とテンカワばっかしなんでいい思いしてやがるんだー!!」

「関係ないじゃありませんかー!」

「黙れ黙れ黙れー!」

・・・・・もう、嫌!

 

 

 

 

 

はあ、ようやく開放された・・・・・。まさか、あの後、整備班の人全員に囲まれるとは・・・・。

でも、本当にどうしようかな?ルリちゃん嫌がってたし・・・・。

うう、それにしても足が痛い・・・・絶対誰か叩いたよ、これ。

おっとと、部屋・・・変わったんだっけ。う〜ん、なんか変な感じ。

あれ、まだ開けてないのにドアが開いたぞ?

「あ、カイトさん。丁度よかったです。今、ブリッジに呼ばれたところなので呼びに行こうと思ってたところでした」

「そうなんだ、じゃあちょっと、これ置いてくるね」

「あ、いいです。私が置いてきます」

そう言うとルリちゃんは僕の手から袋を持って部屋に置きに行った。あ〜あ、お荷物になっちゃたかな?

そんな事を考えているとすぐにルリちゃんは戻ってきた。

「ゴメンね、迷惑かけちゃって・・・」

「いいんです、気にしないでください。カイトさんのお蔭で私たちは助かったんです。このくらいじゃお返しにもなりません」

僕のお蔭・・・・なのかな?ただ、僕はパイロットだから出撃したんだけどね。

「そんな気にしなくてもいいのに・・・」

「いいんですよ。私は、それでも・・・」

「・・・ありがとう」

「・・・・バカ・・・」

 

 

 

ブリッジに着いた僕達には覚悟はしていたけれど、まさか主要クルーのほとんどから冷やかしが来るなんて・・・・。つらい・・・・。しかも、恋人だとか夫婦だとか聞えたし・・・・。

はあ〜、速く怪我、治らないかな〜・・・。本当に・・・・っと、どんな話してたんだっけ?

あ、そうそう。地球でチューリップに吸い込まれた“クロッカス”て言う戦艦が見つかったんだっけ。

「反応は・・・」

「今、相手から識別信号、来ました・・・・・・記録と一致してます」

「では、アレは・・・・紛れも無く・・・」

皆が床のモニターを見ています。そのモニターにはクロッカスの姿が映っています。

「でも・・・おかしいです」

「そうですよ。アレが吸い込まれたのは地球じゃないですか・・・」

そう、艦長と僕の行った通りおかしい。地球で吸い込まれたはずのクロッカスが地球にある。

「それなのに・・・クロッカスはチューリップに吸い込まれたはずなのに・・・・・どうして火星に・・・?」

「前にもご説明したように、チューリップは木星蜥蜴の母船ではなく、一種のワームホール、或いはゲートだと考えられる」

イネスさんが説明し始めました。頼みますから手短にお願いしますよ?イネスさん。

「だとしたら地球でチューリップに吸い込まれた戦艦が火星にあっても不思議ではないでしょう?」

「じゃあ、地球のチューリップから出現している木星蜥蜴は、この火星から送り込まれている?」

「そうとは限らないんじゃなぁい?だって同じチューリップに吸い込まれたもう一隻の戦艦・・・・・う〜ん、なんだっけ?」

「パンジー」

「その姿がないじゃない。出口がいろいろじゃ使えないよぉ」

さすが、ミナトさん頭が切れますね。

「「「「お〜〜・・・」」」」

みんなも見事にシンクロして感心してます。

「ヒナギクを降下させます」

それが、効果的かな?

「その必要はないでしょう。我々には目的がある」

「しかし、生存者がいる可能性もあります。提督?」

確かに艦長の言う事は最もだけど・・・・人がいるのならこっちに気づいてると思うんだけど・・・・。

「・・・・ネルガルの方針には従おう・・・」

するとブリッジの扉が開きました。アキトさんです。僕達には目もくれず、ただ一人、提督に向かって歩いていきます。

「あ、あの・・・俺、聞きたい事あるんですけど・・・」

「何をやっている、今頃ノコノコと!」

ゴートさんが大声を上げてアキトさんに問います。

そんなゴートさんを無視して提督の前に立ちます。

「提督・・・・第一次火星大戦の指揮とっていたって・・・・」

「まあまあ、昔話はまた今度でも・・・・」

そこに割ってプロスさんが入ります。

「フクベ提督があの会戦の指揮をしていたなんて誰でも知ってるわ。おかしいわよアキト」

この言葉がアキトさんの怒りの引き金だったみたい。

「そうさ知ってる・・・。緒戦でチューリップを撃破した英雄・・・・・でも、その時、火星のコロニーが一つ消えた・・・」

そして、提督の胸倉をつかんで叫んだ。

「ああああーーーーー!!あんたか!あんたか、あんたか〜!!」

「アキトさん!いけない!」

僕は咄嗟に松葉杖を投げた・・・・・。そして、見事に――――――当たった・・・・。

 

 

 

「うぐっ!!うぐっ!!」

縛るのはいいですけど猿轡はやめましょうよ・・・・んなもん何処にあったんですか?

「なにやってんだ?お前らしくもない・・・・」

「はーい、おとなしくしましょうね」

ヒカルさんはあの“ピー”ってするヤツ持ってきてるし。

「カイトさん・・・動けないからって松葉杖は酷いですよ」

「ハハハ・・・」

「当たったところが脇を押さえるところだったから被害は最小限でしたけど・・・・・気をつけてくださいね?」

「うん・・・・努力する・・・」

何で、僕、ルリちゃんに怒られてるんだろう?

「いかなる理由があろうと艦隊司令たる提督に乗員が手を上げるなんて許されない。ユリカ、いや艦長、厳重な罰を!」

ジュンさんも珍しく大声で怒ってます。

「ジュン君・・・・でもアキトにおしおきなんて・・・・何がいいかなぁ・・・」

・・・なんで楽しそうに悩んでるんですか?

「ま、それもありましょうが、まずは、こっちをご覧ください」

目の前に地図が現れる。

「ナデシコが向かう北極冠、この氷原にはネルガルの研究所がありますので、運がよければ相転移エンジンのスペアが・・・・・・」

「提督」

「エステバリスで先行偵察を」

僕はチラッとアキトさんの方を見た。アキトさんは提督を睨んでいました。

 

 

 

 

 

僕達はブリッジで偵察映像を見ながら位置関係図を見ています。

さっき、少しエステ隊がピンチだったけど、さすがナデシコのパイロット。きちんと潜り抜けました。

「周囲をチューリップ五機か・・・」

「キビシイですね」

もし、一つにばれたら一斉に襲ってくるでしょうね・・・・。

「しかし、あそこを取り戻すのが、いわば社員の義務でして。皆さんも社員待遇である事はお忘れなく・・・」

「俺達にあそこを攻めろっていうのか?」

ムチャにもほどがありますよ。プロスさん?

「私、これ以上クルーの命を危険にさらすのは嫌だな・・・」

艦長・・・・・。

「アレを使おう・・・」

「「「「「「「「あれ?」」」」」」」」

僕もつい声を出してしまいました。まさか・・・・。

「戦艦がもう一隻あれば戦力は五分だ」

 

 

 

「考え直していただけませんか?提督!危険です!私が行きます!」

予感的中・・・。本当にクロッカスを使おうとするなんて・・・・。

「戦艦のマニュアル操縦は君には出来まい・・・・それに取り敢えず調べに行くだけだ」

「それはいいスケド、何で、俺が連れていかれるんですか?」

「罰だと思ってもらおう」

不貞腐れてるアキトさんにさらに追い討ちをかける提督。

「・・・・・」

さらに、アキトさんの不機嫌さが増しています。

「フフ・・・・よろしく頼むわね・・・・アキト君・・・」

 

 

 

 

 

なんだろう?嫌な予感がする・・・・。

「どうしたんですか、カイトさん?」

「ちょっと、嫌な予感がして・・・・」

「嫌な予感・・・ですか?」

「うん・・・嫌な予感」

う〜ん・・・なんだろう?

「クロッカス上昇します」

「おおー、十分使えそうじゃないか」

「さすが提督」

ん?クロッカスの艦砲がナデシコに向けられてる?!

「現在の状態ならクロッカスでもナデシコの船体を貫く事は可能だ」

「ほえ?」

また、呆けた声上げてる艦長。

「どうされたんです提督。我々の敵はあっちです、あっち」

「ナデシコの進路を変えてもらいたい」

すると、目の前のスクリーンに地図が映る。

「前方のチュ―リップに入るよう指示しています」

「チューリップに?何のためだ」

「あのクロッカスの船体を見たでしょう。ナデシコだってチューリップに吸い込まれれば・・・」

なんだろう?また、嫌な予感が・・・さっきよりも強く感じる。

「ナデシコを破壊するつもりだって言うんですか?」

「なんのために?」

『自分の悪行を消し去るためだ!失敗は人の所為にしてまた一人で生き残るんだ!』

『だったらまず君を殺すんじゃない?』

―ドーンッ!―

「「「「「「「「わあ〜〜〜!」」」」」」」」

クロッカスから放たれた砲撃がナデシコ手前に当たる。

『くそじじ〜!はっ、見つかったのか?!』

なにがだろう?敵?!

『戻りましょう、ナデシコへ』

「左145度、プラス80度、敵艦隊捕捉」

やっぱりか!

「二つに一つですね」

「クロッカスと戦うか、チューリップへ突入するか・・・」

「じゃ、チューリップかな〜」

「なに言ってるんですか!無謀ですよ!損失しか計算できない!」

くっ!僕は格納庫へ走り出した。

「カイトさん?!」

「ルリちゃん、エステバリスに回収命令を。ミナトさん、チューリップへの進入角度を大急ぎで」

 

 

 

 

 

格納庫に着いた僕は、急いでリシアンサスのコクピットに乗り込む。

―ゼロ、動ける?

≪カイト?!取り敢えずは動けるけどカイトの足の事もある。固定砲台ぐらいしか出来ないよ?≫

―それでいい。クロッカスを援護する!

≪了解≫

右腕とメインスラスターはまだ直ってないか・・・仕方ない。

『カイト!お前なにやってるんだ!』

「クロッカスを援護します!退いてください。怪我しますよ!」

『その機体で何しようってんだ!?やられるのがオチっておい!』

「リシアンサス、カイト、出ます!」

 

 

 

「チューリップに入ります」

「ホントにいいのかナ、入っちゃって・・・?」

「クロッカス、後方についてきます」

どうするんだろう提督は?

『リシアンサス、カイト、出ます!』

「「「「「「「ええ?!」」」」」」」

カイトさん?!どうして?

「カイトくん?!なに考えているの?戻って!」

「クロッカスを援護します」

この中に出て行ってしまったら確実に死んでしまう。嫌・・・・そんなの・・・嫌。

「リシアンサスから通信切れました!」

「そんな・・・」

・・・・カイトさん・・・・!

もう嫌だ・・・・涙なんか流したくない・・・・。あの思いだけは・・・・したくない・・・。

「クロッカス、チューリップ手前で反転、停止・・・・・リシアンサス、クロッカスの横にてライフルを展開・・・・・」

今の私の声、暗いんだろうな・・・・。

「バカな!敵と戦うつもりか?!」

「提督!」

艦長とゴートさんが叫びました。

「自爆して壊してしまえば、ナデシコを追ってくることは出来なくなる・・・・」

私はつい、声に出してしまいました。

「どうしてそんないい風に考えるんだよ!引き返せ、ユリカ!アイツは・・・」

「アキト、黙って!!提督、おやめください!ナデシコ、いえ私には提督が必要なんです!これからどうやっていくのか、私には何もわからないのです!」

艦長がいつもと違う気迫で、テンカワさんを制します。

「私は君に教えられる事は何も無い。私はただ、私の大切な者の為にこうするのだ」

「なんだよそれは!」

艦長達の呼びかけに動じる事もなく淡々と提督は話します。

「それが何かは言えない。だが諸君にもきっとそれはある。いや、きっと見つかる」

大切な者の為に・・・・私の大切な者・・・・大切な人・・・・カイトさん・・・・?

すぐに頭に浮かんでくるはカイトさんだった。きっと間違ってないと思う。

「私はいい提督ではなかった。いい大人ですらなかっただろう。最後の最後で、自分の我が儘を通すだけなのだからな。ただ、これだけは言っておこう。ナデシコは君らの船だ。怒りも憎しみも愛も、全て君達のものだ。言葉は何の意味もない。それは」

提督の映っていたウインドウが消えた・・・。カイトさん・・・・・。

 

 

 

ナデシコ、速く!

『君はナデシコに戻るんだ!』

「しかし、提督!」

『これは命令だ!従わない場合、君も討つ』

「提督!」

『速くするんだ!ナデシコを追え!』

「・・・了解・・・・提督・・・・またお会いしましょう・・・」

チューリップへと入ってゆくリシアンサス。

「・・・また会おう・・・か・・・」

数秒ご爆発するクロッカス。

 

 

 

 

・・・提督・・・・約束ですよ・・・・。

僕はリシアンサスをナデシコに入れる。

「この大馬鹿野郎!そんな機体で出て行きやがって!」

リシアンサスから降りた僕は、いきなり罵声を浴びる。そりゃあ、命令違反したからなぁ。

「ブリッジに行って来い。艦長が呼んでるぞ」

「・・・・はい」

僕は力のない足取りで格納庫を出た。

 

 

 

カツン、カツンっと松葉杖の音を立てブリッジへと向かう。今、僕は頭の中で何を考えているんだろう?

自分でも分からない・・・あっという間にブリッジへと着いた。

「カイトくん・・・・・」

「・・・はい・・・」

気が重く感じる・・・・。なんていわれるのかな?

「・・・今回の事は不問にします。但し、また同じような事があったら其の時は処罰します」

「はい・・・」

「自室で待機していてください・・・ルリちゃん、カイトくんを部屋まで連れて行ってくれる?」

「わかりました」

「いいです。一人で戻れます・・・・・・」

「艦長命令です。いいですね」

「・・・・はい」

「ルリちゃん、よろしくね」

「はい・・・」

 

 

 

・・・何か話す気になれないや。どうして、こんなことで艦長命令を出したんだろう?

ルリちゃんも迷惑だろうに。

部屋についてからルリちゃんが突然、喋りだした。

「どうして、出たんですか?怪我だってしてるのに・・・・」

どうして?何でそんなことを聞くの?

「・・・じゃあ、ただ、提督が死んでゆくのを黙って見てろって言うのか?!目の前で人が死のうとしてるのに怪我なんて関係ない!体の傷なんて生きていれば治る!」

何で僕はルリちゃんに怒ってるんだろう?これじゃあただの八つ当たりじゃないか、情けない。

「死んだら・・・・・死んだら其処までなんだよ!」

「ご・・・ごめんなさい・・・・」

ルリちゃん・・・泣いてる・・・・。僕は何をやってるんだろう・・・・女の子を泣かして・・・馬鹿なヤツ。

自分が人を助けられなかったからって八つ当たりなんかして・・・・。

「・・・私は・・・ただ・・・カイトさんが心配で・・・それで・・・クッ・・・ごめんなさい・・・・」

馬鹿だ・・・・・僕は・・・何が守護だよ・・・・何も守れやしないじゃないか・・・。

こんなご大層な“コード”返上したいよ・・・・。

「ごめん・・・ルリちゃん・・・迷惑だよね?僕みたいなヤツ・・・部屋・・・戻してもらおうよ・・・」

「迷惑なんかじゃありません・・・・・クッ・・・・いいんです・・・迷惑なんかじゃないです・・・」

・・・・・・迷惑じゃない・・・か・・・本当かな・・・?

 

「(・・・・いいかな・・・・?)」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・どれくらい時間が経ったのかな?

ベッドに横になってからなにも聞えてない。腕のコミュニケを見るとまだ10分経ったくらいだ。

「カイトさん・・・・」

後ろから小さな声が聞える。

「ごめんなさい・・・・悲しまないで・・・なんて言いません。ただ、元気、出してください」

僕が“ルリちゃん”と言おうとしたとき頬に柔らかくて暖かいものを感じる。耳元では優しい鼻息が聞える・・・・・。目の前には青みがかった銀髪が・・・・・。

こ、これって・・・どういう状況?!?!?!キ、キス?!

一瞬のうちに離れるその感触。足跡はすぐにドアの向こうに消えていった・・・・。

あ、あの〜、さっきのはいったい・・・・・?い、いやその言われなくても分かってるんだけど・・・。

僕はさっきまでも気分がウソみたいに消えていった。

 

 

 

「・・・・・嫌われないかな?・・・・カイトさん・・・・私は・・・・・」

 

 

「・・・・・・ルリちゃん・・・・・・・僕は・・・・」

 

 

あとがき

 

 

・・・・・えー、宣言しといてなんですが・・・・看病ルリルリを通り越して同居することになりました。

まあ、看病はしますけど・・・・。

・・・・まあ、いっか♪(開き直り)

実はこの回を書いている時、学校テスト期間中です。て言うか、誕生日開けのテストなんて嬉しくない!学校、焼いてやろうかと思っちゃいましたよ♪

馬鹿やってるのでテスト頑張っても無駄なんです・・・・・。カイトくんみたいに頭よくなりたーーーいッ!

ま、そんな事は気にしないでお気楽に逝きましょう!(オイ

さて、次回は会長さんが出てきます。大して使いません。カイトの財布になってもらいましょう♪

では、ルリルリとカイトくんの愛に乾杯♪

 

 

 


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