機動戦艦ナデシコ
〜オリジナルストーリー〜
第四話「ルリちゃん航海日誌?」



 

オモイカネの予想通り、ナデシコは今日も火星に向けて順調に航行中。

木星蜥蜴は出てこないし、本来の目的である救出活動や探査も、火星に着くまではどーしようもありません。

だからというかやっぱりというか、みんなテンション緩みっぱなしです。

パイロットの三人は完全に馴染んじゃいました。

気のせいか、わざと、性格に問題のある人ばかり集めたようにしか思えません。

ホント「バカばっか」

 

 

 

今朝の当番は私だけ。他のクルーはほとんど就寝中ですけど、航行に支障はありません。

「あれ、一人なの?」

いきなり後ろから声がした。振り返ってみると、後ろのドアにカイトさんが立っていました。

「はい。おはようございます」

今、まだ午前五時です。凄い早起きです。

「うん、おはよう」

ニッコリと微笑みながら、メグミさんの席に腰をかけた。

「早いですね、どうしたんですか?」

「朝の運動、トレーニングしてたんだよ」

朝からですか・・・・相変わらず凄いですね・・・・。

「そうだ、ペンダントに写真入れた?」

「いえ、まだです」

写真自体撮ったことがありません。いつか、撮って入れたいです。

「そっか、それにしてもよく似合うね」

「そ、そうですか?」

「うん、ピッタリ」

なんだろう?カイトさんといると不思議な気持ちになります。胸の鼓動が速くなって体が熱くなるような・・・・不思議です。

「ふぅわ〜、まだ眠いな。じゃ、ルリちゃん。またあとでね」

「あ、はい」

大きな欠伸をしながらカイトさんは、ブリッジを出て行きました。

やっぱりこの時間じゃ眠いですよね。私は早めに寝ておいたので大丈夫ですけど。

 

 

 

勤務時間が終わって私は今ナデシコを散歩中です。

ブリッジでずっと座っている事が多い私はこうして運動でもしておかないと太ったりしてしまいます。

「フッ、セイッ、ハッ!」

ふと気づくと何処からか声がします。私は、声が聞える方に歩き出しました。

「テェイ!」

トレーニングルームからでしょうか?トレーニングルームの扉の前が一番、音が大きいです。

―プシュー―

扉を開けてみると上半身裸のカイトさんがサンドバックに向けてパンチやキックを連続で当てていきます。

私はしばらくソレを見てると、終わったのか思いっきりカイトさんが深呼吸をしました。

サンドバックは今にも破裂しそうなくらいギッシ、ギッシと揺れています。

「こんなの見ていて楽しい?」

「え?!えっと廊下を歩いていたら何かの声が聞えて来てみたらカイトさんがサンドバックをえっと・・・」

私は言ってる事に要領を得ません。

「そ、そんなに混乱しなくても・・・」

カイトさんは逆に困ってます。何やってるんだろ私・・・・。

「ごめんなさい」

「いや、何で謝るの?まあ、いいや。ところで晩御飯食べた?」

「まだ・・・ですけど」

「それなら、一緒に食べない?時間も丁度いいし」

どうしよう・・・・食堂に行ってもあんまり好きな物ってないし・・・。もしこれで断ったりして嫌われでもしたらどうしよう・・・・。

「いいですよ・・・・」

取り敢えずOKした。

「よかった。そうだ、食堂じゃなくて僕の作った料理を食べてみない?」

「カイトさんの作った料理・・・・ですか?」

「うん。あ、味のほうは安心して。ホウメイさんにも太鼓判押されてるし、結構自信あるから」

本当にどうしよう。せっかく誘われたんだから行くべきなんだけど・・・・・。

「ご馳走になります」

意を決して私はカイトさんの手料理をいただく事にしました。

 

 

 

「ただいま〜」

「お邪魔します」

「じゃあ、僕はシャワーを浴びてくるから適当に寛いで待ってて」

そう言うとカイトさんは着替えを持ってバスルームに入っていきました。

でも、適当に寛いでと言われても勝手に人の部屋を物色していいんでしょうか?

取り敢えず部屋を見渡します。中身は私の部屋と変わりません。

でも、私と違って本とか楽器か何かがいろいろと置いてあります。

一番目に入るのは物凄く大きな刀みたいなものです。

大きさは私よりも大きくカイトさんぐらい。重さも私よりあると思います。

そんな物がベットの横に立掛けられています。一言で言えばかなり物騒です。因みにベットには抱き枕がありました。意外です。

あとは、本棚に置いてある写真ですね。

真ん中に十歳くらいの髪が長く後ろで結んでる赤い目の男の子、きっとカイトさんですね。

左にそのカイトさんらしき人に抱きついてる同じく十歳くらいの紫色の髪の毛をした女の子。なんでしょう、ちょっと羨ましい様な、憎らしい様な感じがしますってなに言ってるんでしょう、私・・・・。

右に二十代前後の角刈りで微笑んでる白衣を着ている青年。名札に草野(クサノ)と書いてあります。

後ろには和風の家が建っています。表札には風間(カザマ)と書いてあります。

あれ、という事はこの家はカイトさんの家?この人たちは家族?

でも白衣の青年にはクサノと書いてある・・・・どうなってるんだろう?

 

 

 

しばらく考え込んでいるとカイトさんが出てきました。

「ごめん、おまたせ」

カイトさんの格好は青いTシャツに黒い長ズボン、髪は結んでなく少し濡れていてラフな格好です。

「何か食べたいものとかある?なかったら適当に作るけど・・・」

「何でも構いません。お任せします」

「りょ〜かい♪」

オーダー(?)するとカイトさんはキッチンで材料を取り出し始めました。

私は特に食べたいものなどないのでお任せしちゃいました。

こんな事で時間を取るわけにはいきませんし。

カイトさんが作っている最中はまたする事がなく私はまたあの写真を見てました。

何故か抱きついてる少女の事が頭から離れません。

嫉妬・・・・?な、なんで私が嫉妬してるんでしょうか?

それはカイトさんと一緒にいると不思議な気持ちになりますけど嫉妬するような事なんてありませんし・・・・・。

なんだろう・・・・私・・・・カイトさんの事・・・・・・。

「おまたせー。出来たよ」

「え、あ、どうも」

また考え込んでいた私はあわてて返事をしました。

カイトさんはスプーンとお皿を二個ずつとフライパンを持ってきました。

「・・・・チャーハン?」

「違うよ、チキンライスだよ」

すると、カイトさんはお皿を私の前に置きフライパンからチキンライスを手際よく移していく。

「さあ、どうぞ」

「いただきます・・・」

・・・・そんなにじっと見られると食べにくいな。

パクッと一口食べてみる。

「美味しい・・・・」

「ホント?よかった、今回は少し不安だったんだ」

カイトさんは不安と言っているけどそんな事はなく本当に美味しい。

「そんな事ないですよ、美味しいです」

「ははっ、ありがとう」

嬉しそうに微笑んでいるカイトさん。

そのあと、しばらく私達の間には私の「おかわり」の会話だけだった。

 

 

「ご馳走様でした」

「どういたしまして」

食べ終わるとカイトさんはキッチンに行って洗物。私はお茶をいただいてます。

因みに私は二回、カイトさんは五回おかわりしました。

ずずっとお茶をすすって私はまた、あの写真を見ていました。

本当に気になります。誰でしょうかこの少女は?

あれ?この人の目も私と同じ金色・・・・!?

という事はこの人もマシンチャイルド?

「どうしたの、写真なんか見て?」

「えと、この写真に写っている人も目が金色だったから気になって」

「ああ、アサミの事か。そうだよ、この子もマシンチャイルドなんだ」

そのままカイトさんは自分の過去を話してくれた。私の過去とは違って楽しそうな過去。

料理を教えてくれた人、楽器の扱い方や歌の事、自分の能力など羨ましい事ばかりだった。この少女もまた同じような事を教えてもらったりしていたそうです。

私の居た所では無駄な事は一切教えず娯楽といったらボードゲームくらいだった。

非合法な所でも私とは違う楽しそうな所。非人道的な事をされていたわけではないけどカイトさんの居たところが非合法なところとは思えないほどに羨ましかった。

でも、いくつか疑問がある。どうしてカイトさんはネルガルのナデシコにスカウトされたのか?少女はどうなったのか?などいろいろある。

「あの、カイトさんはどうしてスカウトされたんですか?」

「それはね、研究所が襲われてさ。先生と僕は何とか助かってカザマ所長の家にご厄介になってね。二年くらいしたあとゲームセンターに在ったエステの簡易シュミレーターをやってみたら凄い記録を作ってね、それでスカウトがきたんだ。勿論プロスさんだったよ」

おそらくネルガルがパイロットを探すために作ってゲームセンターに置いたんでしょう。それで、ネルガルはカイトさんを見つけスカウトしたのでしょう。

「じゃあ、リシアンサスは?さすがに持って逃げられなかったでしょう?」

「研究所が別だったからね。襲われたのは人間開発研究所だけ。まあ、あの研究所がそう簡単に見つかるはずないけどね」

「アサミさん・・・・・はどうしたんですか?」

「わからないんだ・・・・・行方不明・・・・。でも、生きてるって信じてる・・・・」

―ジンッ―

この言葉を訊いたら何だか胸が痛くなりました。やっぱり嫉妬・・・・してるのかな?

最初、初めてカイトさんに名前を呼ばれたとき何故かさん付けをしなくていいと言った。今でも不思議に思うなぜ言ったんだろう?今更気にしたってしょうがないんだけどな・・・・。

「あの、ひょっとして似ているんですか?」

「え?」

「私がアサミさんに。だから優しくしてくれたりするんですか?」

カイトさんは少し困ったように笑いました。でもどうしてこんな事いったんだろう・・・・。

「全然似てないよ。そうだね、もし二人のどっちかを恋人にしたかったら僕はルリちゃんを選ぶな」

「え??!私ですか?!」

いきなりそんな事を真顔で言わないでください・・・・。困ります・・・・。

「うん、なんか守ってあげたい愛おしい感じがする」

愛おしいって私がですか?!どうしよう、胸の鼓動が激しくなって少し苦しいです。

「あ、あの、どうして私なんですか?」

何とか胸の鼓動を抑えて訊きました。

「ん〜、なんでだろう?なんとなく。でも、本当だよ」

なんだか複雑です。でも、もし此処で『好き』なんて言われたらどうしてたんだろう?

「さて。そろそろ、終わりにしよう」

そう言われてコミュニケを見ると9時を回ってました。

「そうですね、ご馳走様でした」

「どうも。じゃ、部屋まで送っていくよ」

今日はいろんな事が聞けて良かった。

 

「じゃあ、お休み。また明日ね」

「はい、お休みなさい」

ふう、今日はいろいろと疲れましたね。

羨ましかったな。あんなに楽しそうに笑って過去を話せるんだもの。

私じゃ出来ないな。楽しい事なんて一つもないから・・・・。

私もカイトさんと同じところで生まれていたらあんな感じに話せたかな?

・・・・・そろそろ寝よう・・・・お休みなさい・・・・カイトさん・・・・。(///)

 

 

 

それから数日後の事です。私はジャンクフードばかりじゃダメだと言う事に気づいたので朝食は食堂で摂ろうとした時の事です。

「ねぇ〜アキトぉ〜」

「仕事中だから邪魔するなよユリカ!」

またやってますこの二人。よくもまあ、飽きずに同じことを毎日、毎日やってられますね。

すると、そこにメグミさんから通信が入りました。

「艦長、反乱です」

「へ?」

素っ頓狂な声を上げる艦長。テンカワさんも“何で?“って顔をしてます。

「乗員の一部が反乱を起こしました」

武装した人たちに囲まれてるメグミさん。本当みたいです。

「責任者出てこ〜い!」

ウリバタケさんが主犯なんでしょうか?仕方ありませんから艦長たちとブリッジに向かうことにしました。はぁ〜。

 

 

 

この状況はどうしたものかな〜?

なんで僕ブリッジで捕まってるんだろう?オモイカネと喋ってただけなのに武器まで向けられてるし・・・・。

「ごめんねぇ〜カイトくん」

本気で謝られてる気がしないんですけどヒカルさん。

「別に構いませんよ。それに僕に銃を向けるだけ無駄ですから」

「撃つ気はないからね」

当たり前です!本気で撃とうとしてたら怒りますよ。

―オモイカネ、艦長たちは?

≪そろそろ来ますよ≫

「メグちゃんもごめんね」

「ハ・・・ハハ・・・」

メグミさんは本気でビックリしてるじゃないですか。可哀想ですよ。

≪艦長たちが来ましたよ≫

―ありがとう、オモイカネ。

「ど、どうしたんですか?みなさん」

≪攻撃、来ます。迎撃の必要なし≫

―了解。

―カ〜ン―

「この契約書の一番下の文字はなんだ!」

バッと艦長に契約書を見せるセイヤさん。

「うわ〜〜細か〜い」

読まなかったんですか契約書?!

「フワァ〜〜〜〜・・・」

ミナトさんは欠伸なんてしてるし・・・・・。

「そこの一番小さい文字を読んでみな!」

リョーコさんもよくこんなのに乗りましたね・・・・。

「え〜〜・・・、社員間の男女交際は禁止いたしませんが、風紀維持のため、お互いの接触は手を繋ぐ以上の事は禁止・・・・何これ?」

いや、本当に読まなかったんですね。普通読むでしょう、僕だってちゃんと読んで消したいところは消したし・・・・そう言えば僕の契約書に男女交際の事は書いてなかったような・・・・。

「読んでの通り!」

みんなが揉めてる最中にルリちゃんは僕の隣に座った。因みに僕が今座っているのはサブオペレーター席。なんでも、もしかしたらの為らしい。もしかしたらって何がもしかしたらなんですか?プロスさん。

「な、わかったろ!お手手繋いでここはナデシコ保育園か?いい若いもんが、お手手繋いでですむわきゃなかろうが・・・・」

「バカばっか」

「僕もそう思うよ・・・・」

「でしょう?」

小さい声で話をしてる僕達の前ではリョーコさんとヒカルさんの間に入って、手を繋ぐセイヤさんがいる。あ、見事な二人の肘打ちが入った。さすが。

「俺はまだ若い・・・」

「若いか?」

アキトさん失礼ですよ。確かに悩みますけど。

「若いの!若い二人が見つめ合い、見つめ合ったら」

「唇が?」

「若い二人の純情は、純なるがゆえ、不純・・・・・」

「せめて抱きたい抱かれたい!」

以上セイヤさんとヒカルさんの二人芝居でした〜。

あれ、急に周りが暗くなって上にスポットライトが・・・・何処にあるんですかそんなもん。

「そのエスカレートが困るんですナ」

プロスさん・・・・・そこまで雰囲気出さなくても・・・・。

「キサマーーーー!!」

あ〜あ、セイヤさん興奮しまくってるよ・・・・。

「やがて二人が結婚すれば、お金、掛かりますよネ」

余裕で説明してるプロすさん。

「更に子供でも生んだら大変です。ナデシコは保育園ではありませんので・・・ハイ〜」

「黙れ黙れ!」

そっちでエスカレートして如何するんですか・・・全く・・・。

「いいか、宇宙は広い!恋愛も自由だ!それがお手手繋いでだとォ〜〜、それじゃ女房の尻の下のほうがマシだ!!」

身も蓋もない事を大勢の前で言わないでくださいよセイヤさん。

「とはいえ、サインした以上「うるせ〜!」契約は」

急にプロスさんに銃を向けるセイヤさん。

「これが見えねぇか!」

「この契約書も見てください」

余裕で契約書を取り出し見せるプロスさん。

≪前方より重力波反応大多数≫

「「みなさん捕まってくだい!オモイカネ、フィールド最大!」」

見事に僕とルリちゃんの声が一致する。

同時に物凄い衝撃がナデシコを襲う。

「「「「「「「うわあ〜〜〜〜!」」」」」」」

「きゃ」

「おっと、大丈夫、ルリちゃん?」

「は、はい」

傍で倒れそうになったルリちゃんを支える。これって契約違反なのかな?

ルリちゃんを見ると少し顔が赤い。本当に大丈夫かな?

「な、なんだぁ?」

呆然とした声を上げる皆さん。

「ルリちゃん、フィールドはってルリちゃんずる〜い!」

「へ?」

また意味不明な事を言う艦長。何がずるいんですか?

「カイトくんと抱き合って!いいなぁ私もアキトとした〜い!」

「え?こ、これは、その・・・・」

ああ、ルリちゃん困ってるって、なんでそんなに睨むんですか皆さん!ミナトさんは笑ってないで止めてくださいよ!

「と、取り敢えず、今はそんな事を言ってる暇はないでしょう?!速く出撃しないとナデシコがやられちゃうじゃないですか。ネ!」

ルリちゃんから離れて僕はこの場を凌ぐために出撃しようと艦長に言う。というか出撃しないと困る。

「は、そうですよ。羨ましいけど・・・・今はこんな場合じゃありません!契約書の事はこの戦いに勝手からにしましょう!二人ともいいなぁ〜

なんか言ってるけどみんな取り敢えず納得して急いで持ち場に戻った。

これから火星での戦いが始まる。その前にみんなさんからの“いろいろ”な攻撃をかわしながらリシアンサスで出撃しなくちゃ。はぁ〜。

こんなんで大丈夫なのかな?この戦艦・・・・。

 

 

 

 

 

 

あとがき

やっと第四話が書きあがりました!

今回は疑問など結構解けたかと思います。

ルリちゃんとカイトくんの性格が変わっているような気もしますがノリです。

ああ速く「看病ルリルリ」がみたいなあ。果たして、そこまでいけるか不明ですが頑張ります。

ゲストもご無沙汰だあ。一回しかやってない(オイ

こんなダメ作者ですがよろしくお願いします。m(−−)

脱字誤字、感想メールお待ちしてます。

それではまた次回!

 

 

 

 

 


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