機動戦艦ナデシコ

風と共に舞う妖精

 

 

 

いろいろな「さよなら」

 

 

権利と義務は裏表。どちらか一方だけを選んだりはできない。

権利を主張するなら義務を果たせ。義務を果たしたなら権利を与えよう。

ナデシコは選んだ。

権利を行使した後に義務を果たそう。

 

連合はこれをわがままだとみなして徹底抗戦。

大気圏突破はさせない構え。

それはこっちとしても困るのでただいま艦長が連合のお偉いさんたちに通信中。

まあ、それはどうでもいいんだけど他にいろいろね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『あけまして!おめでとうございまぁーーす!』

「「「オオォォーーーフジヤマ!」」」

「「ニッポン!ゲイシャ!キモノォ!」」

ユリカは会議中の連合軍本部に通信を入れていた。会議の主題はもちろんナデシコについて。その最中に当のナデシコから通信が入ったので一同は一瞬混乱したが、そんなことより振袖姿の若い娘に各国のオジサンたちは興奮し、てきとーな日本固有の言葉を意味も知らずに連発していた。

『艦長ぉーー、その姿は・・・・・・。』

『だって、みなさんにちゃんとご挨拶しとかなきゃ!』

プロスの呆れた声にユリカが脳天気に答える。

『どうせみんな外人さんなんだし、何言ってるかわからないって!』

「オホン!君はまず、国際的なマナーを身に付けるべきだと思うがな。」

『・・・へ?あら、ごあいさつ!』

一応日本語を話せるらしい連合総司令がきつめの言葉を浴びせるが、まったく意に介さないユリカ。

『じゃあ、とっとと本題に入ります。WE WOULD LIKE TO-------』

流暢な英語でナデシコの邪魔をしないよう伝えるユリカ。

「うわぁーー・・・・・・、さすが連合大主席・・・。英語上手・・・・。」

「まあ、うちの艦長だもんね。」

フェイの感嘆の声にミナトが答える。

「ユリカさんって今なに言ってるんですか?」

フェイは何を言ってるのかわからないので首をかしげている。ルリが答える。

「簡単に言うと、防衛ラインでナデシコの邪魔をしないで、ということです。」

「ふーーん・・・・・・あれ?もしかしてルリちゃんも英語できるの!?」

「ええ、まあ、一応は。」

「わぁ、すごい、かっこいいなー。」

「そ、そんな大したことじゃないですよ。」

フェイの尊敬のまなざしにあわてて目をそらすルリ。

『・・・・では、お手柔らかに・・・。』

そこでユリカの通信が切られた。

「どうなったんですか、艦長?」

「邪魔する気まんまん!しょうがないから無理やり突破しちゃいます。」

「はあ、できれば金額的な面からも、穏便にことを運びたかったのですが・・・・・・。」

メグミの問いに答えるユリカ。最初からこうなるだろうと思っていたらしく、けっこう淡々としている。プロスはため息をついてる。

「・・・あれ?でもナデシコのフィールドってミサイルぐらい大丈夫なんでしょ?お金って何にかかるんですか?」

「これです。」

フェイの問いに答えるようにルリがブリッジの床に映像を映し出す。

「地球の防衛ラインは六つあってそれを突破していかなければいけません。で、連合との最悪の仲をさらに悪くしたくないネルガルは壊した分の弁償をします。で、お金がたくさんかかるわけです。」

「邪魔してきた相手の被害を弁償するなんておかしいですよね。」

「そういわないの、メグちゃん。いちおう、ナデシコが大人しくしてればこうはならなかった、ってことになるんだから。」

「でもミナトさん!」

「あ、あの、防衛ラインってどんなのなんですか?」

あんまり雰囲気よくなりそうにないと感じたフェイは話題を変えた。それぞれを説明するルリ。

「第六次は戦闘機による防衛。第五次は戦艦による攻撃。この二つは木星トカゲが大規模軍事行動に触発されて邪魔しているのでこちらには来ません。」

「・・・・・・なんかヒミクだね・・・、ルリちゃん大丈夫なの、ほっといて?」

「フェイさん、ヒミクじゃなくて皮肉です。大気圏内なら戦闘機でもそれなりに戦えますし、トカゲが出てくるチューリップの落ちた場所は避難勧告が出されてますから人的被害もありません。」

「まあこんなんでやられてるようじゃ、ナデシコが戦ったって意味ないものねぇ。」

ミナトは頬杖かいてあくびしている。

「第四次は地上からのミサイル攻撃、そろそろさし当たります。第三次は宇宙ステーション「さくら」からの、連合の無重力戦用有人機動兵器、デルフィニウムの攻撃。第ニ次は衛星軌道上からのミサイル。第一次はバリア衛生。こんなんです。」

「やっぱり・・・・・・人と戦わなきゃいけないんだね・・・。」

「・・・そうなりますね、敵の機体情報は後で伝えます。・・・・・・・争うの、嫌いなんですね。」

「うん・・・あんまりね・・・おかしいよね、パイロットなのに。」

表情を曇らせるフェイ。冷静なルリ。だが少し気にしてフェイを見る。

「大丈夫だよフェイちゃん。ちゃんと敵にも脱出装置ぐらいついてるから!それにアキトとヤマダさんにやってもらうから休んでていいよ!」

元気付けるため言葉をかけるユリカ。

「・・・ありがとうございます。でも、戦うって自分で決めましたから、ちゃんと戦います。それに重力が低くなってるとこだと、空戦用のエステよりゼフィルスのが向いてます。」

「それはそうだけど、でも無理しないでいいかーーーきゃっ!」

突然ゆれだす艦内。バランスを崩して倒れるユリカ。

「第四次防衛ラインからのミサイルです。ディストーション・フィールドは対実弾兵器用じゃないんで多少の揺れは我慢してください。」

報告するルリ。こけて立ち上がるユリカを見て声をかけるフクベ。

「艦長、着替えてきたらどうかね?」

「あ、はーーい!・・・・・・あ!着替える前にアキトに見せてこよっと!」

ルンルン気分で出て行くユリカを見送った後、フェイが訊いた。

「そういえばジュンさんどこ行ったんですか?ずっと見てませんけど、病気ですか?」

「あ、そういえばいないわねぇ。どこいったのかしら?ルリルリ知らない?」

そろって首をかしげるフェイとミナト。

「アオイさんは現在ナデシコに乗ってません。」

「「「・・・・・・え?」」」

「いえその、アオイ君がミスマル司令に賛成派で拒否しましてな、置いてきてしまいました、はい。」

プロスが頬をかきながら伝える。それを聞いて混乱するフェイ。

「な、なんで?どうして?たしかジュンさん、ユリカさんと幼なじみなんでしょ!?なのにどうしてユリカさんほっといてあっちに・・・・・・!?」

「え?あの二人幼なじみなの?」

メグミが声を上げる。それにゴートが答える。

「小さいころから家が近所で、家族ぐるみで親しかったらしいな。スカウトの際、ジュンの両親からそう聞いた。」

「で、なんでフェイさんがそんなこと知ってるんですか?」

ルリが疑問を口にする。きょとんとするフェイ。

「・・・あれ?なんでだっけ?なんかの資料で見た気がするんだけど・・・・・・どこでだっけ?あれ?」

「ふーーん?・・・それで、どうしてアオイさん残っちゃったんですか?」

なぜ知ってるか、には興味がないメグミが話を戻す。フェイは真剣に忘れてるらしい、まだ、あれ?あれ?と頭をひねっている。

「俺の考えだが、おそらく艦長を危険な目に合わせたくはない、もしくは軍の敵にさせたくないという心くばりだろう。」

「たぶんそうね、艦長のこと好きみたいだもんねぇ。アキトくんのことすっごいこわい目で見てたし。」

ちょっと苦笑しているミナト。そしてルリ・フェイのきつい言葉が飛ぶ。

「でも艦長はアオイさんのこと、完全にアウトオブ眼中です。あからさまにテンカワさん追っかけてます。」

「それ以前にユリカさん、ジュンさんに会う以前からアキトさんのことずっと好きだったみたい。だからジュンさんずーっと片思い。」

顔を引きつける一同。言っちゃいけないことを素で言った上に、普通な顔してまだ続ける二人。

「艦長は自分の意志でナデシコに乗ってきてるみたいですけど、アオイさんは艦長についてきた感じです。」

「うん、でもエリートの道を捨ててまで来たのに、お友達としか見てもらってないみたいだよね。」

モニターに出したジュンのプロフィールをぼーっと見つめる二人。

「報われませんね、アオイさん。」

「うん、あれだけがんばってるのにかわいそう。」

色恋沙汰の悲しさをよく知らない子供二人は純粋に思ったことを言ってるだけで、悪気がない分恐ろしい。先人曰く、子供ほど残酷な生き物はない、だそうだ。ジュンもジュンで、子供に同情されてどうする。

「・・・・・・あんたたち、ジュン君の前でそうゆうこと言っちゃだめよ?」

念のため釘をさすミナトだった。

 

 

 

 

 

「ア、アオイ君、君は士官候補生なんだぞ?そこまでする必要は・・・・・・。」

「いいから早くやってください!時間がないんです!早くしないとナデシコが行ってしまう!!」

ジュンはコウイチロウと共に第三次防衛ラインの宇宙ステーション「さくら」に来ていた。そこでジュンはパイロット用IFSナノマシン処理をしようとしていた。

「し、しかしだなアオイ君、わかっているのか?IFSをつけるという事は・・・・・・。」

「パイロットなら誰だったやってます・・・!!」

「しかしだな・・・・・。」

パイロットなら、火星でなら、IFSをつけるのは問題はない。だが、地球ではIFSをつけるという事に対してあまりよく見られない。まして士官候補生がつけるのは酔狂だと思われがちだ。

コウイチロウは心配だった。この事でジュンの士官としての将来が危うくなるのでは、と。だがジュンはそんなことよりも、大事なユリカのことで頭が一杯だった。

「ええい!貸せっ!!」

ジュンはコウイチロウを振り切って、医師からナノマシン注射器を奪い取り首筋に注入する。

「・・・・・・・ぐ・・・っ・・・!!」

体内に入ったナノマシンの活動による苦痛で顔をゆがめる。しだいに痛みが引いていき、右手の甲にナノマシンの刻印が浮かび上がる。

「ユリカ・・・・・・!!ぼくは、君を・・・・・・・!!」

 

 

 

「ーーーなので、小一時間は動けるようにしてあります。ベクトル失敗しなきゃ落下はしないんで、なんとかここまで戻ってきてくださいよ?」

「ああ・・・いろいろありがとう・・・・。」

ジュンはデルフィニウムのコックピットで技術士官の忠告を聞いていた。エステと比べるとかなり大型なデルフィニウム。フィールドもない。機動力も低い。エステに遥かに劣るこの機体でジュンは戦おうとしていた。

「では少尉・・・ご無事で!」

コックピットが閉じていく中でジュンはつぶやいた。

「・・・さよなら・・・・・・。」

それは、ジュンの決意だった。だが、何に対してのものだったのだろう。ユリカ?ナデシコ?自分自身へ?いずれにしろ、帰れない、そういう決意。

「・・・・・・・・・・・・。」

ジュンの乗ったデルフィニウムが宇宙空間へ射出される。

「・・・・・・・目標・・・・・機動戦艦ナデシコ!!」

 

 

 

 

 

 

現在地点、ナデシコ格納庫。

「おいこら、フェイ。」

「なんですか?ヤ・・・ガイさん。」

「誓え!!こんっっかいは俺様の邪魔しないってな!!いいな!?」

「え?でもガイさん、足、大丈夫なんでーーーー。」

「い・い・な!!」

「・・・・はぁーい。」

「よーーっし!それならOKだぁ!俺の勇姿をしっかり見てろよ!?」

「はぁ・・・・・・あ、そういえばアキトさんってどこなんですか?」

「へっ!!あいつなら部屋でベソかいてたぜぇ!?ま、しゃあねぇけどなっ!!」

ガイは連合のデルフィニウム部隊が接近してきたので迎撃のため出て行った。ほんとなら全員で出るべきなのだが、最近骨折してたのでいいとこなしのガイが、一人で行くと言い出し、出撃した。足は治ったのだろうか?

「おおっっっしゃゃゃゃああぁぁぁぁ!!!いくぜぇぇーー!!オラオラオラオラァァッ!!」

喜び勇んで飛んで行くガイ機。格納庫で手をひらひらして見送るフェイ。

「ガイ、行ったのか?」

後ろから突然現れたアキトが声をかける。

「あ、アキトさん。・・・・・・・あの、大丈夫なんですか?」

「え?何が?」

「いえ、その・・・ガイさんが・・ベソかいてたって・・・。」

「・・あ、ああ・・・・いや、別になんともないから!」

「・・・ほんとにですか?」

「ほんとにほんと!大丈夫だって!」

さすがに7つも年下の子供に、ゲキガンガー見て泣いた、などとは言えないアキト。

「それで、アキトさん、ガイさんだけで大丈夫なんですか?敵・・・7・8・・・9体はいますけど・・・・・・。」

「うーーん、ルリちゃんの話だと性能にかなり差があるみたいだし、多分大丈夫だろ。いざとなったら助けにいけばいいし。」

「・・・・・そうですか。」

 

 

「エンジン臨界ポイントまで、あと19500KM。」

「どうします、艦長?」

ルリの報告とともに、メグミが指示を仰ぐ。

「行きましょう!」

「おおーーっし!そうこなくっちゃなぁ!!」

ユリカの号令に鼓舞されるガイ。前方にデルフィニウム部隊9機が向かってきている。

『いくぞっ・・・・!!』

「来た来た来たぁっ!!束んなって来やがったぁっ!!」

ジュンは自身を奮わせるため、静かに叫び、ガイは臆することなく向かっていく。

「オラオラオラァー!!正義の味方の戦い方ァ!!とくと見せてやるぜえっ!!」

『・・・・アターーック!!』

ジュン以下デルフィニウム部隊の推進ユニット部の多弾頭ミサイルが一斉発射される。そこに突っ込んでいくガイ。

「あのバカっ!!」

ウリバタケがガイの無茶な行動に舌打ちする。

「おおおぉぉおぉぉぉおおおぉぉぉぉおおおっっっ!!!!!」

高速でミサイルに向かっていくガイ。

「っらああぁぁぁああぁああぁっっ!!!」

接触寸前で方向を急転換。垂直の方向にミサイルをかわす。

「よーし、よーし。ついてきやがったぜぇ!!」

全弾なんなくかわしたガイは敵を引きつけ飛び回っていた。

 

 

 

「わおーーっ、さっすがぁーー!」

「ああ、さすがにネルガルの正規パイロットだな。」

フェイは感嘆の声を上げ、アキトも感心している。

「あれ?でもどうして攻撃しないで敵を引きつけてるのかな?」

「ほんとだ・・・なんでだろ?・・・・・・あ、なんか出ていった・・・・・・重武装フレーム?フレームだけ?」

見てるよこで、アサルトビットなしのフレームが射出されていく。

「あれ?なんかガイさんが、ガンガークロス・オペレーションとか言ってーーーーあ、ミサイル。」

射出されたフレームに敵のミサイルが直撃。フィールドが張られてない素のままのフレームは一撃で破壊された。

「・・・・・・フレーム壊されたな・・・・・・。」

「・・・・・・この前の・・・くろす・くらっしゅ?と同じことしようとしたんじゃ・・・・?」

フェイは、アキトとガイが空中でフレームを換装していたのを思い出した。

「さすがに・・・・・・敵の目の前でやらしてくれないよな・・・・・・。」

「・・・・・・あ!あれじゃないですか?合体時は待つっていうお約束!」

ぽんと手をついて閃くフェイ。かなりのん気にしてる。

「・・・ああ、なるほど・・・・・。」

アニメ好きのガイには有りえそうな気がして顔が引きつるアキト。

「でも、そのおかげでかなりピンチっぽいですね。」

「・・・・・・・しょーーがないなぁ、行ってくる。」

とりあえずピンチになったガイを助けようと自分のエステに向かうアキト。

「あ!ぼくも行きますから。」

「え?いや、でも・・・・・・。」

まっすぐに見てくるフェイに、思わず目をそらすアキト。

「アキトさんもこの前初めて乗ったんじゃないですか。危険なのはお互い様です。」

「・・・??・・・・・・”も”って、フェイも乗ったばっかなのか!?」

驚き訊き返すアキト。

「厳密に言うと違いますけどそーですよ。試運転みたいなことは何度もしてましたけど、せまい屋内で、でしたから。」

「あれだけの動きをしてたのに・・・・・・!?」

「それはゼフィルスがサポートしてくれてるからです。それに、派手に見えるだけでそんなに動いてませんよ。けっこう必死にやってますから。」

「でも、それならなおさら・・・・・・!」

「いーやーです。ぼくは確かに子供です。でも男です。・・・・・・それになんで戦ってるか知ってるでしょ?」

その言葉を聞いて黙るアキト。

「わかってくれますよね?それにぼくだって戦えるんですから。待ってるだけなんて絶対イヤです。」

この子の気持ちを無視するわけにもいかない。そう思ったアキトは息をつき、考えを変えることにした。

「・・・・・・ふう・・・わかったよ・・・・・・でも、無理すんなよ?」

「はーい。”命を大事に!”ですよね。」

途端ににっこりした顔になるフェイ。

「ははっ・・・・・・よし!いくぞ!」

「はいっ!」

アキトは思った。

そう、いざとなったら自分が守ればいいんだ。もう二度と、守れなかったなんて思いをしないためにも。

 

 

 

 

 

「くっそぉーーーっ!!」

『あのーっ、もしかして作戦失敗ですか?』

ガイの作戦、ガンガークロス(以下略)が失敗したとこにユリカから通信が入る。

「ぬ!?ま、まだまだ!!こんじょおぉぉぉっっーーー!!」

追ってくる敵機に急旋回して高速で向かっていくガイ。

「ガァイ!!スゥゥーパァァーーッ、ナアァッパァァーーーッ!!!」

左腕の拳にフィールドを集中させ、敵機に叩きつける。拳は敵にぐしゃりとめり込み、パイロットの脱出とともに爆発する。

「よっしゃあぁっ!!絶好調っ!!はっはっはっはぁーーーーっ!!」

高笑いして隙だらけなところを完全に囲まれるガイ。気づいて回避行動に出る。

「ちいっ!!」

デルフィニウムのミサイル攻撃をかわし、もう一機にガイ・スーパ(以下略)をぶち込み撃墜する。だがそこで敵に背後を取られる。

「なにっ!?」

デルフィニウムの収納腕が開き、ガイ機を羽交い絞めにする。

「ちぃぃっくおぉぉぉーーーっ!!」

善戦はしたが、やはり射撃武器がない上に数の利、捕らえられるエステ。

『これが最後のチャンスだ。ユリカ!!今すぐナデシコを戻すんだ!!』

ナデシコのブリッジに通信が入る。聞き覚えのある声。不鮮明な画像がはっきりしてくる。

「ジュ、ジュンくん!?」

置いてかれたジュンだった。デルフィニウム部隊の隊長機らしきものに乗っているらしい。ゴテゴテのパイロットスーツに身を包んでいる。

『ユリカ!!軍の言ってることは正しい!それは個人が持つべき力じゃない!地球のために使うんだ!!』

いつになく強い口調で迫るジュン。考え込むユリカ。

『エンジン出力50%!!まだまだ上昇中っ!!』

「エンジン臨界まで、あと距離19000km。」

ウリバタケとルリがそれぞれ報告する。それを聞いた後、こちらもいつになくきりっとした顔で受け答える。

「ごめんね、ジュン君。わたし、ここを動けない。」

『ユリカ!!』

「ここは、わたしがわたしでいられる場所なの。地球連合の司令、ミスマル・コウイチロウの娘としてじゃなく、わたしがわたしでいられる大切な場所なの。だから・・・ナデシコは渡せない!」

連合の司令、それはかなりの地位だ。その娘とあれば、当然周りの目もきつい。たしかに司令の娘として、それに見合う成績は残している。だが良家の娘にはあらゆることが望まれる。そして人間は完璧にはなれない。連合大に入ったのもあるいは周りの目があったからなのかもしれない。軽い性格なのも・・・・・・反発で、あるいは。これは関係ない気がするが。

見えない圧迫感に少なからずストレスを感じていただろうユリカは、ネルガルの申し出にあっさりとOKを出した。コウイチロウとのパイプが第一の目的であったかもしれない。それを知ってたかもしれない。それでも選んだ。そして、いまだわずかな時間しか共有していないにも関わらず、ユリカは確信した。

ここのみんなはわたしをわたしとして、”ユリカ”として見てくれる。

こここそが、わたしがわたしでいられる場所なんだ、と。

いまだに迷いが残っているのか、ジュンはしばらく押し黙っていたが、覚悟を決めたように顔を上げた。

『ユリカ・・・・・・・そんなにあいつがいいのかい・・・?」

「・・・・・・え?」

つぶやいたジュンの言葉が聞き取れず、あるいは理解できず訊きかえすユリカ。

『ユリカ・・・・・!!君がどうしても引かないというのなら・・・!まずこの機体を破壊する!!』

ジュンが指し示した先には、二機のデルフィニウムに両腕をつかまれ束縛されたガイのエステがいた。無傷のようで、逃げようと暴れまわっているが、抜け出せない。

『ジュン君!?』

「はぁぁなぁぁせぇぇぇ!!」

叫んでるガイに照準を合わせるジュン。

「ちいっくしょぉぉぉーーーっ!!」

ガイの言葉に聞く耳持たず、発射されようとした瞬間、二つの機影が迫る。

「やめろぉぉぉぉーーーっ!!」

二つの機体はガイ機の両側にいたデルフィニウムを破壊した。ゼフィルスと紫のエステだった。

「ジュンさん!どうしてですか!?なんでこんなことっ!!」

「・・・・・・!!・・・テンカワとフェイか・・・!」

「どうしてだ!?この前まで仲間だっただろ!?なんでこんなことするんだ!?」

「・・・・・・っ!!テンカワ!!ぼくと一対一の勝負だ!!君がぼくに勝てばデルフィニウム部隊は全機引きあげさせる!!」

『無理よ・・・・!!』

ジュンの決闘の申し込みにメグミが声を上げる。いくら士官候補生でも基礎的な操縦訓練くらいは受けている。かたやアキトはちょっと前に初めて乗ったばかり。機体性能差があっても常識で考えればジュンに軍配が上がる。

『ふむ・・・・・・決して損な勝負ではありませんな。』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

何を計算しているのか宇宙ソロバンを弾くプロス。ユリカは無言で見つめているが、少し動揺の表情が伺える。

「なんだと!?ちょっと待て!!おれは戦う気なんてないぞっ!?」

「そうですよっ!!なんで戦うんですか!?どうしてっ・・・・!!」

必死に言葉をかける二人。だが届かない。

「・・・・・・うるさいっ!!・・・勝負だ!!テンカワ・アキト!!」

「・・・!!フェイよけろ!!」

アキトの警告とともにジュンの機体から多弾頭ミサイルが発射される。フェイは少し機体を丸めた後、一気に四肢を伸ばし、背部からレーザーを発射する。二機の真ん中でミサイルとレーザーがぶつかり合い、爆発する。

「くっ!!やるな!!」

舌打ちするジュン。その瞬間爆炎の中からレーザーが飛び出してくる。

「なにっ!?やはり実弾兵器じゃないのか!?」

ぎりぎりでレーザーをかわすジュン。光が機体をかすめるごとに、メキメキと嫌な音を立てる。

「かわせた?追尾性がない・・・!?・・・まさか!?」

横に振り向くと爆炎の陰からゼフィルスが回り込んでいた。

「なっ!?」

驚き声を上げた時にはすでに頭部をわしづかみにされていた。

(は・・・速い・・・!!)

「・・・ジュンさん、戻ってきてください。もし、あなたがあくまで邪魔をするなら・・・・・・このまま破壊します。」

「・・・ぐっ!!」

逃げられる状況ではなかった。レーダーでしかわからないが、味方は近くにいない。メキメキと金属がへこむ音を立てる頭部。

「・・・ぼくには・・・ぼくの目的があります。邪魔するなら・・・あなたがそうであるように、容赦はしませんよ・・・。」

(フェイ・・・・・・・!?いつもと違う・・・・!?)

本気の目だった。頭部損壊だけでは行動不能になるだけだが、この高度では重力圏内、危険なことにはかわらない。

「もう一度だけ言います。お願いです、戻ってきてください。邪魔をしないでください。」

「・・・・・・ぼくは!!退かない!!」

ジュンにはフェイがバイザーをしてるので、フェイが唇を噛んでいるところだけが見えた。そして・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・さようなら・・・・・・・・・・・・ジュンさん・・・・・・・・・・・・・。」

ゼフィルスの手の平のレーザー発射口が開く。

収束していく光。

デルフィニウムの頭部の塗装がはげていく。

「よせっ!!」

爆煙で二人を見失っていたアキトが飛んできて、ゼフィルスの腕を払いのける。

「っ!?アキトさん!?」

「テンカワ!?」

逃れたジュンはいったん距離を取るため離れる。

「どうしてですか!?ジュンさんは戻ってこないって言ったんですよ!?」

「そいつはおれと勝負するって言った。だからおれがケリをつける。」

「・・・・・・でも!!」

「なんとかして連れて帰るから・・・・・・な?」

「・・・・・・わかりました・・・。」

「ありがとう。じゃあ、ガイの手伝いに行ってくれるか?やばそうなんだ。」

「・・・・・・・え?」

「ほら、あそこ。」

「・・・・・・・・・・・・・あああぁぁぁ!!!忘れてたぁぁぁ!!!」

ガイは遠くのほうでジュン以外の残りデルフィニウム全機に追い掛け回されていた。急いで応援に向かうフェイ。

「テンカワ・・・・・・いったいどういうつもりだ!!」

「・・・ジュン・・・・・・・・。」

「答えろ!!テンカワ!!」

「ユリカのことだろ・・・・?」

「・・・・・っ!!それは関係ない!!」

残り少ないデルフィニウムのミサイルが発射される。紙一重でかわす、あるいはフィールドで防御するアキト。

「ぼくは!!ぼくはっ!!」

アキトはフェイをなだめるためケリをつけると言ったが、本気で戦う気はないので逃げていた。

「ちょっと待て!!お前絶対カン違いしてる!!おれとユリカはなんにもねぇんだって!!」

逃げるアキトを追ってくるジュン。

「信じられるか!!それにそんな個人的なことは関係ないって言ってるだろう!!」

「じゃあなんで戦うんだよ!?そんなに戦争したいのかよおぉぉぉっっ!!!」

逃げるのを止め、振り向きジュンに殴りかかるアキト。ジュンはその腕をつかみ、こう着状態で止まる。

『少尉!!』

ガイを追っていた他のデルフィニウム部隊が、形勢が良くないことに気づき、ジュンを助けるためジュンの元へ近づく。

「だめでーーす。ここは通行止めでーーす。他を当たってくださーーい。」

後ろから追っていたゼフィルスが進路をふさぐ。

『くっ!!』

左右に別れようとしたところにもう一機が現れる。

「ちょっと待ったあぁぁっーーー!!」

ガイのエステだった。隙をみてゼフィルスに合流したらしい。

「男の決闘邪魔するなんざ、野暮ってもんだぜ・・・・!!なあぁぁっぁっ!!」

「そーです。ヤボです。ジュンさんはアキトさんが連れ戻すんですから邪魔は無しです。」

なぜか号泣のガイ。アキトとジュンの対決に感動しているらしい。残り4機。一気に攻勢に出るゼフィルスとエステ。

 

 

「ぼくはずっと地球を守る正義の味方になりたかった!そしてその場所が宇宙連合だと信じている!!一時の自由で誇りを失いたくない!!」

こう着状態のままデルフィニウムがエステを押している。さすがに推進力はあちらが上だ。

「おれだってなりたかったさ!!誰でも守れる正義の味方にっ!!・・・でも・・・・・・・・。」

アキトの脳裏に浮かぶ幼い少女。両親に続く、三人目の守れなかった人・・・・・・。

「・・・・・・・・・なれなかった。」

「ぼくは違うっ!!」

さらに加速するデルフィニウム。

「ナデシコを行かせるわけには行かない・・・!ユリカを地球の敵にはさせたくない!!」

「・・・っ!!馬っっ鹿野郎ぉぉぉーーーー!!!」

「ぐあっ!!」

デルフィニウムの顔面に拳を叩き込むエステ。衝撃でジュンのバイザーが砕ける。

 

 

 

「おおおおおぉぉぉーーーっ!!やるじゃねぇかテンカワ・アキトぉっ!!」

「すっごーい、あの体勢から・・・・!!・・・・・・ところでガイさん、いつまで聞き入ってるんですか?いいかげんマズイですよ?」

二機そろって背中を見せて逃走中だった。アキトとジュンの対決が白熱してきたのでガイが魅入ってしまい、ろくに戦わないのでフェイも一緒に逃げていた。後ろからミサイルがやばいくらい飛んできてるが、かわしているようだ。

「わーったわーった!先にぶっ飛ばした後でじっくり観戦したいんだろ!?ほんじゃいくぜぇっ!!」

「そーいうのじゃなくて・・・・・・やっぱそーいうのでいいです。」

振り返り敵に突撃するガイ。今のガイに何言ってもムダと思ったフェイはため息混じりについていく。

「よっしゃオラァ!!本日三機目ぇっ!!」

またもやガイスー(以下略)をぶちこんでで撃墜するガイ。そのまま反転して手近な敵に向かう。

『くっ!!軍人をナメるな!!』

ガイにミサイルを発射するデルフィニウム。ガイは回避するどころか突っ込み、紙一重で見切ってかわし、敵の前でコマのように一回転する。

「右ハイキックだ食らえコラァ!!」

今度は脚部にフィールドを集中させ、回転で加速した勢いで敵の胴体に打ち込み撃墜。

『くっ!!やつは射撃兵器を持っていない!!距離を取れ!!」

残り2機が距離を取り、ガイの背後から敵が残り全ミサイルを発射する。

「あのー、でもこっちは持ってますよ?」

ゼフィルスがエステとミサイルとの間に割って入り、多数のレーザーを発射する。光がミサイルを全弾撃ち落し消えていく。

『なんだと!?ばかな!?』

『こいつは情報にない機体だぞ!?なんなんだこの変な機体は!?』

「ひどいっ!これのどこが変なんですか!?」

敵の声にカン違いするフェイ。意外にも助けられて何も言わないガイ。じーーっと敵機を見つめていたが、突然目が輝きだす。

「これはいける・・・・・・いけるぜっ!!・・・・・・よーーっしフェイ、合体攻撃だ!!」

「・・・・・・はい?」

「いくぜぇっ!!」

「あのっ、ちょっと待って・・・・・・もう!」

意味がわからず訊き返すフェイ。だが本日絶好調のガイは完璧聞いてない。とりあえず接近戦だろうと思い、フェイは急いでついていく。

「オラァァーーッ!!」

完全に浮き足立っている敵の一機をもう一機へ向けて蹴り飛ばすガイ。フェイも見習って、吹っ飛んでくる敵機に向かってもう一機を蹴っ飛ばす。

「オラオラオラァーーッ!!!」

蹴飛ばされて衝突した敵二機に、エステがフィールドをまとって敵の推進部に風穴を開ける。同じようにして、ずらしたポイントに風穴開けるゼフィルス。そしてもう一度それぞれ逆方向から敵に突進する。

「ダァァブル!ゲキガンフレアァァァーーーっ!!!!」

同時に敵胴体部分にストレートを食らわすエステとゼフィルス。挟み込まれたデルフィニウムは完全に胴体が吹っ飛ぶ。

「よっしゃぁっ!!くぅーーーっ!!やりたかったんだよなこれぇ!!」

「・・・・・・別にこんなことしなくても。」

「ばか言え!!合体攻撃はロボットモノの華だろーがっ!!くぅーーっ、パイロットんなってホントよかったぜぇっ!!」

感激してるガイをよそに、フェイはパイロットが脱出したのを確認し息をついていた。

「アキトさん・・・・・・大丈夫かな・・・?」

 

 

 

 

「くっ・・・!何をするんだ!!」

無意識的にまだ仲間への思いが残っていて葛藤しているのだろうか。敵に何を言ってるのか。

「いいかげんにしろよっ・・・・!!好きな人と戦うのがお前の望みなのか!?」

拳を握り締め叫ぶアキト。ジュンはアキトを歯ぎしりしてにらみつける。

「好きな人だから・・・・好きだから!!地球の敵にしたくないんじゃないかァァァッッーーー!!!」

ジュンが叫びながらありったけのミサイルをエステに向かって放つ。後退しつつかわすアキト。全弾かわしきったところで動きが鈍る。

「な・・・なんだ!?機体が動かない・・・エネルギー切れ!?」

機体のフィールドが消えてゆき、出力が下がっていき、ついには完全に停止するエステ。モニターに(残念!エネルギー切れ!)の文字が表示される。

『こっちもエネルギー切れだぁぁ・・・・・。』

ガイからも通信が入る。

 

 

 

「エステ、両機とも、重力波ビーム射程範囲外に出ました。活動停止します。」

ブリッジでルリが報告を入れる。

「ねぇ・・・・・ジュン君・・・どうしてあんなに突っかかるのかなぁ?」

「「「「「えぇ?」」」」」

ユリカの一言にその場の全員がハモって声を上げる。

「いや、艦長、わかるでしょ?男の純情。」

「はぁ?」

プロスがまさか、と引きつりながら訊いてみるが、意味わからんって感じで返すユリカ。さらにメグミが訊く。

「アオイさんは艦長のーーーー」

「大事なお友達よ?」

「「「「「「はぁ?」」」」」」

「エンジン臨界まで距離10000KM。」

ルリはかなり呆れ顔で報告を入れる。11才の子供ですら気づくことに気づかないユリカはかなりの大物だ。

「第ニ次防衛ラインにロックされました!」

「今ミサイルがきたらやばいわねぇ。」

メグミの報告にのん気に笑ってるミナト。間髪いれずルリが報告を入れる。

「ミサイル三方向より接近中。」

 

 

「ジュンさん!?」

フェイが叫び声を上げる。ジュンはナデシコの前で手を広げ、ミサイルの来る方向を見つめていた。

「あの野郎っ・・・ナデシコの盾になるつもりか!?」

「やめろおぉぉぉーーーーーっ!!!」

ガイ、アキトには見ているしかなかった。動けないのだ。

「ジュン!?」

ユリカが悲痛な叫び声を上げる。

「ほんとは・・・わかっていたんだ・・・ぼくは、正義の味方にはなれやしないって。もしかしたら・・・こうするのがぼくの望みだったのかもしれない。ただ、好きな人を守りたくて・・・・・・。」

「死んだら守れません。」

「フェイ!?」

目の前に現れたのはゼフィルスだった。そしてジュンの機体を両側から支えるエステ2機。

「まぁーーったく!!かっこつけすぎだぜ!!」

「どうして!?動けなかったんじゃ・・・・・・!?」

「いや、そうなんだけど。」

「こいつだよ、こ・い・つ!!」

そう言ってガイはゼフィルスを突っついた。

「ご、ごめんなさい。だ、だってしょうがないじゃないですかぁ・・・・・・。」

「いったいどういう・・・・・・?」

事態の飲み込めないジュンにエステの二人が説明する。

「まだ動けたこいつが俺たちを引っつかんでナデシコの方へ投げ飛ばしやがったんだよ!!」

「いや−、グルグル回転しながら飛んでったから目が回って回って・・・・・・。」

「俺様のエステになんてことしやがんだ!!」

「だって・・・緊急だし・・・急いでて・・・必死で。」

「いや、別に気にしなくていいから。な?」

必要以上に気にする性格であるらしいフェイをフォローするアキト。

『エンジン臨界まで300KM.。250・・・200・・・100・・・。』

間近に迫ったのでカウントダウンを開始するルリ。

『来た来た来たぁぁぁっっーーー!!エンジン来たぜえっ!!』

エンジンルームで興奮するウリバタケ。

『4機とも回収!バリア衛生を突破します!!』

ユリカの命令に応じて急いでナデシコに戻る4人。ジュンが少しごねたが強引に連れ込む。確認したルリが報告する。

『回収完了。エンジン出力臨界。フィールド出力、最大へ。』

フィールドを最大出力で展開。第二次防衛ラインのミサイルをはね飛ばしながら、加速した勢いでバリアに突撃するナデシコ。バリア衛生も最大出力で応対するが負荷に耐え切れず損壊。バリアは破られナデシコは地球を飛び立っていく。

 

 

その様子をカタパルトの端でじっと見つめる4機。

「まだなれないって決まったわけじゃないよ。正義の味方にだってなれるかもしれない。ユリカの横だってまだあいてるし。」

「・・・・・・・・ナデシコならそれも自由だって言うのか・・・・?」

ジュンに言葉をかけるアキト。

「だからユリカさんも選んだんじゃないですか?」

「・・・・・・・・・そうか。」

「ま、俺は生まれたときから正義の味方だけどなっ!!」

「「「はいはい・・・・・。」」」

ガイの言葉を受け流し、宇宙を見つめる4人。

「わあぁーーっ、飛鏡がよく見えますね。こんなにはっきり大きく見えたの初めて!」

「飛鏡(ひきょう)?」

フェイの言葉の意味を訊くアキト。

「あ、月のことですよ。空に飛ぶ鏡のごとき、みたいなやつだったと思います。ぼく、火星から地球に来たときは眠ってたから宇宙初めてなんです。」

にこやかに答えるフェイ。

しばらくの間、飛鏡を見つめる一同だった。

 

 

 

 

と、いうわけで。

 

防衛ラインを無事突破し、ジュンも帰ってきたので、今ブリッジにはいつものブリッジクルー、整備が終わってやることのないウリバタケ、そしてパイロット三人がいる。

「かくしてナデシコは地球を突破。地球は衛星の損壊による大規模なブラックアウト(停電のこと)が起こっているでしょうから、軍はその対処で手一杯のはず。ま、自業自得ですな。そういうわけで追ってはこないでしょう。」

プロスが現状報告をしている。

「ご、ごめんユリカ・・・・・・。」

顔を赤くして謝るジュン。きまりが悪いらしい。

「ううん!ジュン君は全然悪くない!わたしのためを思ってやってくれたんだもの!」

「ユリカ・・・・・・!」

目を潤ませるジュン。そして違う理由ですぐ涙目に変わる。

「ありがとうアキト!わたしの大事なお友達を倒さずにいてくれて!!」

「いや、別におれはそういうつもりでやったわけじゃ・・・。」

ジュンに言うだけ言うと、アキトにかけより手を取るユリカ。

「うう・・・・・っ。」

涙が出そうな感じの宇宙連合軍少尉。

「まあまあまあ!いいじゃねぇか、なんだってよお!生きてりゃそのうちいいことあるって!!」

慰めのつもりなのか、かなりごきげんのガイが割って入る。ジュンの目の前でなにか薄いものをちらちらさせている。

「なにそれ?」

「おおぉっーーー!!ゲキガンガーのシールだ!!」」

アキトが感激の声をあげる。100年ほど前に放映されたものなので、かなりのプレミアものらしい。

「おお!敵機を5機も撃墜したんだぜぇ?俺の機体に張ってやんなきゃよぉ!」

「そういえば一回の戦闘で有人機を5機破壊したらエースなんですよね?」

「ああっ!ま、軍隊の話だけどなっ!!」

かなりごきげんに答えるガイ。以前見せ場を取られたことはもうどうでもよくなったらしい。

「そうだ!今度お前にもゲキガンガー見せてやろうか!?」

「え?いいんですか?」

「おう!貸してやるぜぇ!そんかわしちゃんと返せよな?」

「はい!ありがとうございます!」

なんと貸し出しまでOKするガイ。なんだかんだでフェイをかわいがってるらしい。フェイもいちおう男の子。ちょっとはアニメに興味あり。以前食堂でやってたのはよく見てなかったのであんまり見てなかった、ま、いろいろあって。

「見るならわたしのいない時にしてください。」

同室に住んでるのでルリが文句を言う。

「う・・・・・・ルリちゃんは見ないの?」

「興味ありません。」

一言で切り捨てるルリ。

「まあまあ!無理だったら俺とテンカワの部屋来いよ!たっぷり解説つきで教えてやるぜ?な?テンカワ?」

「ああ。たまにでもいいからウチの部屋に来なよ。おんなじパイロット仲間だしさ!おれコックが本職だけど。」

「ほんとですか?じゃあ今度おじゃまします!」

喜んで目を輝かすフェイ。

「ええーーっ!わたしもアキトの部屋行きたぁい!!」

いきなり割ってはいるユリカ。アキトが言い返す。

「お前は前に来たことあるだろ!」

「えーー?だってぇ!」

「今回は艦長は自粛してくれませんか?」

フェイが同じく言い返す。

「どうしてぇ?」

ユリカは不満そうだが、アキトが腕を組んで最後のシメ。

「これは男同士の話し合いだからだ!」

「「「なーーーっ!!」」」

 

「ばかばっか・・・。」

意気投合する男だけの会話がはずむ。それを切り捨てるルリ。

「あれぇ?いいのかなぁルリルリ?」

ミナトがにこっと、いや、にやっとしてルリに笑いかける。よこでメグミもおんなじ顔してる。

「なにがですか?」

女同士の話し合いが始まった。ちなみに男連中がうるさいので他の人は聞いてない。

「ルリちゃん、うかうかしてるとフェイちゃん取られちゃうぞぉー?」

「な、なに言って・・・!」

どきっとするルリ。

「そうねぇ、このままだとあの二人の部屋で寝泊りしかねないわねぇ?」

「え!?ちょっ・・・・!それはっ・・・!!」

「「それはぁぁーーー?」」

「う・・・・・・・。」

ニタニタ見つめるルリ・フェイ恋愛計画実行委員長及び副委員長。

「さて、どうするのかなぁ?このままだとまずいよねぇー?」

副委員長メグミ・レイナード。

「あっち色に染まっちゃうかもしれないわよぉ?」

委員長ハルカ・ミナト。

「・・・・え・・・あ・・・う・・・その・・・。」

ターゲット1。ホシノ・ルリ。

「あはははっ。」

ターゲット2。フェイ。向こうでのん気に笑ってる。

「さあ、困ったわねぇ?」

「困ったなぁ?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

フェイがガイみたいになるのを想像するルリ。結論、拒否。絶対イヤ。

「どうすればいいのかなぁ?」

「どうすればいいのかしらねぇ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ど、どうすればいいんですか・・・?

「ええ?なに、聞こえないなぁ?」

「なんか言ったぁ?ルリルリ?」

「・・・・・ど・・・・・・・どうすればいいか・・・・・・教えてください・・・・・・。」

「「よおーーーっし!!」」

ルリに近づいてこそこそ話する三人。

「まあとりあえずルリちゃんの部屋に居たいって思わすのが大事だよね。」

「そーねぇ。でもいきなりそれは難しいから、ここにいなきゃ、っていう風に持っていくのが先ね。」

「なるほどぉ。で、具体的にどうします?」

かなり真剣に聞いてるルリ。じーっと二人を見つめてる。ミナトは考え中。

(恋愛感情持てば早いんだけどまだ無理ね、あと一押し二押しなんだけど、ということは)

「うーーーん。やっぱあれかなぁ?メグちゃん?」

「やっぱりあれですか?ミナトさん?」

勝手に納得する二人。わけわからないルリ。

「あ、あれってなんなんですか?」

にまぁとする二人。

「「泣き落とし作戦!!」」

「な、泣き落とし・・・?」

「そ!女の涙は最強の武器だよ?」

「ひとたび涙見せれば男の心は揺らぐモノ!」

「まして優しい優しいフェイちゃんなら!」

「そりゃもう一発ノックアウト!」

「で、でもそんな、どうやって・・・。」

その作戦、もしかしていける気がしたルリは戸惑いつつも概要を訊く。

「「フフフフフフッ」」

不気味に笑う二人。

「暗い部屋で泣いてれば!」

「どうしたのってもちろん訊いてくる!」

「そんときがばっと抱きついて!」

「怖いの・・・寂しいの・・・悲しいの・・・。」

「なんでもアリアリ!」

「泣き落とせ!」

「そして上手くいったらば!」

「今度は大胆れっつごー!」

「布団にもぐりこめ!」

「抱きついちゃえ!」

「ゆっくり見つめ合って!」

「顔を近づけて!」

「「重なり合う二人のくちびーーー」」

「なっ!?そ、そんなことまでしません!!」

悪ノリする二人を止めるルリ。でも顔が真っ赤。色の白さも手伝って、普通の人より三割増(当社比)に赤い。

「えーーっ?なんでぇ?」

「いいじゃないルリルリ。いい思い出になるわよぉ?」

「ダメです!わ、わたしは別にフェイさんにそんなことしたいんじゃなくて、ヤマダさんみたくなって欲しくないだけです!!」

「「ふーーーん?」」

「もう!!」

「でもルリルリ、泣き落としまでは使えるでしょ?」

「・・・・・・・・・う。」

「ルリちゃんがんばってねー!」

「まあ、今すぐじゃなくていいわよ?早いに越したことはないけど、あっちに入り浸りになっちゃったらやってみなさい。」

 

固まってるルリから遠ざかって二人で内緒話するミナト・メグミ。

「ルリルリは十分ね。いい感じ。」

「ですね。それじゃ次はフェイちゃんですね?」

「ええ。でもどうしよっかな、ルリルリの行動後でも遅くはないかな?」

「無理にやって逆にこじれたら面倒ですもんね。」

「そうね。まずは様子見。変化なしだったらフェイちゃん揺さぶりに行きましょ。」

「了解でーす。」

弾みまくる女だけの会話。

 

「ミスター、ジュン、これを。」

取り残された人たちの会話。

「なんですか?これ?・・・・・・ルリ・フェイ恋愛計画?」

「・・・・・・これは・・・なんなのですかな?ゴート君?」

意外なものを渡され目を丸くする二人。

「・・・書いてある通りです。・・・ミナトに頼まれて・・・メンバーに誘ってくれ、と。」

「・・・ゴートさんも・・・入ってるんですか?」

おそるおそる訊くジュン。

「・・・・・・無理やりに。」

「・・・・・・大変ですな、ゴート君も。」

「・・・いえ。ミスターも大変になります。」

「・・・そうですな、今日びの女の子を敵に回すのは恐ろしいですからな。」

「ええ。それに会計担当のミスターは絶対に引き込まれます。」

「自分から入ったほうが得策ですかな・・・。」

「ところで、メンバーって誰なんですか?」

「現在ホウメイ、ホウメイガールズ、ミナト、メグミ、ウリバタケ、俺が主なメンツ。他にも生活班や、整備班にも広がりつつある。」

「意外な人もけっこういますね・・・。」

「・・・目的は計画名どおり。ただしあまり介入しすぎず、見守る形で。ルリ、フェイはもちろん、艦長、テンカワ、ヤマダを始めとするメンバーには悟られないように。」

「え?どうしてですか?」

「艦長、ヤマダは余計なことをしそうだからだ。テンカワはウソが下手だから素の方がいいらしい、艦長がつきまとっているせいもある。」

「うう・・・・・・・ユリカ・・・。」

涙目になるジュン。それを無視して話を進めるゴート・プロス。

「ま、なにはともあれ協力しましょう。」

「ミスター、社員規約に反しますがよろしいのですか?」

言っといて訊くゴート。

「フフ、これを。」

そういって小さくモニターを出す。フェイの社員契約書だ。プロスはある場所を示す。

「・・・私個人と、その相手の恋愛は特例として認められるものとする・・・?これは?」

「たまたまこれを見つけたときは驚きました。書き換えられてましたから。」

「・・・違法で?」

「いえいえ。まっとうな物です。ま、おそらく・・・。」

「・・・フェイと会長に接点がある可能性が格段に・・・・・・。」

「ええ高くなりましたな。ま、訊くのはそんな急がなくてもいいでしょう。フェイ君はあれだし・・・・・・。」

フェイを見つめる二人。

「あはははっ。」

笑ってる。どう考えても、っていうか考えなくてもよからぬ事を企む事はないだろう。

「よっし!じゃあ行ってくんぜい!!」

それをよそにごきげんにブリッジから出て行くガイだった。

「いってらっしゃーーい。」

小さく手を振るフェイ。ブリッジ内の三つの会話すべてが、自分中心などとはまったく気づいていない。

かなり、のほほんとした空気の中、次の目的地、サツキミドリコロニーに向かうナデシコ。

その目的は、新しいフレーム、零G戦フレームの回収。及び、パイロット三人の補充。

補充、その意味は、足りなくなったものを補うこと。

足りなくなったもの。

なくなったもの。

なくなった者。

亡くなった者。

 

 

 

 

 

 

しばらく時間が経った後、格納庫で銃声が響く。

かけつけてみると、コンテナが一つ、そして捕縛しておいたはずのムネタケ以下、軍の人間が消えていた。

残っていたのはゲキガンガーのシール。

そして、銃で撃たれ、血を流し、死んでいたダイゴウジ・ガイ。

その表情は、その最期の死に顔は、まるでいい夢を見ながら眠っているように見えた。

眠っているように、穏やかだった。

熱く生きた男、ゲキガンガーを愛した男。ヤマダ・ジロウ。魂の名、ダイゴウジ・ガイ。

あまりに突然で、あまりに若くしてその生涯を終えしその男。

その死に顔は何を語るのか?

彼は何に満足してその死を享受したのか?

誰も何もわかりはしない。

彼はもう、何も語りはしないのだから。

REST IN PEACE

安らかに眠れ。

さよなら。

さようなら。

 

 

 

 

 

 

 

フェイ「ガイさんが死んだ。ぼくは悲しんだ。アキトさんも悲しんだ。みんな悲しんだ。ぼくたちは戦ってる。だから誰かが死ぬなんて、ぼくだって覚悟してた。でも、ダメだった。悲しくて、悲しくて、どうしようもなくて、でも、悲しくなくなっちゃって。大人はこうゆうのを人の死を乗り越えた、強くなった、時が傷を癒した、そんなこと言ってるけどほんとにそうなのかな?ぼくには・・・ガイさんが、みんなの中から消えていくようにみえた。」

 

 

次回、機動戦艦ナデシコ・風と共に舞う妖精

「ときめき」少年少女

・・・ぼくって・・・・・いったい・・・・なんなのかな・・・・?

 

 


 

作者の戯言

 

けい「えー、喋ることは愚痴と、ごめんなさいヘタレで、しかないんで省きます。前回今回(毎回)露骨に失敗。

ダメダメで泣きそうです。もうやだ、シリアス。あー、次のオリキャラ関西弁にしようかなー?

そういう性格だろし。共通語のうっぷん晴らせるし。あ、ごめんなさい、愚痴ですね。

あと、モリスギさんの、本編との量の兼ね合いもあってあんまり長くできません。

でもそうしたら本編が先にいっちゃうんで悩みどころ。

もしかしたら番外編で一気にやるかも。・・・・・・いらない?やったほうがいいかどうかできれば教えてください。

ではでは、モリスギ・ノリアキの日誌です。やっぱり厳密に言うと独り語りみたいな感じ。

まだ核心には近づけません。次から加速していきます。ただ、ナデシコA以前の物語なんで、逆に謎が

増えたりします。そこらへんは本編で。ちなみにモリスギさんのプロフィールは次回。ここで。

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

風と共に舞う妖精

番外編

Aへの5年間

 

 

・・・・・・名無しとの出会い(其の壱)・・・・・・[ネルガル極秘兵器開発部責任者、モリスギ・ノリアキの調査日誌より抜粋]

 

初めて彼と会ったのはいつだったか、あまり憶えていない。おそらく5年ほど前だった気がする。

だが会った時の事は今でも忘れられない。はっきりと憶えている。そう、私の人生が変わった日だ。

 

ネルガルの裏の裏、会長直属の、ほんの一部の人間しかこの施設を知らない。私はそこの責任者だった。

この施設の目的は最先端技術を駆使した、社内専用で使う兵器の開発。つまり、売り物としてのものではない。

まあ、場合によっては改良を加えたり、性能を落として売り込んだりもするのだが、けっこうまれだ。

名目上の私は平社員でしかなかったが、事実上、兵器開発部の真の長だった。私の一存で方針が決まる。

まあ、そうは言ってもほんの一握りの人間しか知らない事ではある。だが会長の絶対の信頼を得ていた。

私は兵器に関しては世界最高峰であると自負していた。事実、私に勝る人間に出会ったことがなかった。

そう、かの科学の第一人者、フレサンジュ女史も、兵器のこととなると私にはとうてい及ばなかった。

まあ彼女は兵器に全くと言っていいほど関心がなかったのだから、比べるのは愚かしい事かもしれないが。

私のわかりやすい実績はエステバリスのプロトタイプだろう。あれは私の作品だ。まあ、いわくつきなのだが。

近々就航予定の相転移炉式戦艦の製造も私が責任者だ。フレサンジュ女史が基本設計をしたものだが。

・・・・・・なにか、もっと私個人のもっとよいものがあればいいのだが。あるにはあるが、地味な気がする。

まあ、自伝のつもりはないのでここでやめにしよう。大事なのはここからなのだから。

 

 

最初は疑問だった。そんなわたしの元へ、会長が直々に会いに来るというのだ。ここはAAAクラスの極秘施設。

ここでは通信一本ですら細心の注意を払わなければならない。まして会長のような重要人物が出入りなどと。

疑問のまま出迎えた時は本当に驚いたものだ。6才ほどの幼い子供を連れて来たのだから。

わざわざ直々に訪問した理由を聞いたときはさらに耳を疑った。彼を預かってくれというのだから。

さらに会長は、白銀の機体を見せてくれた。一目見て今まで積み上げてきた自信が打ち砕かれた。

その機体は私の常識を遥かに超越していてからだ。まったくどうなっているのか、見当もつかなかった。

それ以前に、この頃私はエステのプロトタイプの製造途中だった。にもかかわらず、これほどの機体。

誰とも知れぬ、私を超える人間の存在に、驚愕と、尊敬の念を抱いた。それは今も変わらない。

会長は言った。この機体と子供を調べて欲しいと。当然ながら、私は会長に言い返した。

機体は喜んで調べるが、彼は私の専門外だ、フレサンジュ女史にでも頼んでくれ、と。

そこに会長の子息のナガレ次期会長がやってきた。あの時は未だ高校生ほどだったが後を継ぐ予定だったはずの

長男が亡くなったため次男のナガレ少年にに各地を見回らせていたらしい。この時の訪問もそれを兼ねてたらしい。

正直、会長の体調は深刻、長くは保たない。そのため急いでるようで、自分の世継ぎの育成を第一にしていた。

そのため見るに耐えがたい非合法の研究も関係なく見せているらしい。酷な話だった。遊び盛りだったろうに。

まあ、彼は会長が亡くなった後に、会長の任につき、それらを知りうる限り、全部閉鎖したのだが。

そのナガレ少年が火星極冠遺跡で彼を発見したと言うのだ。そして頼む理由はすぐにわかる、そう言った。

機体に興味のあった私は、その代償としての形で彼を引き取ることにした。

 

 

この幼い少年と、この白銀の機体が、私の人生を変えることになるとは、この時には思いもしなかった。

さあ、ここからが彼との生活の始まりだ。本当に、今までの人生の中で最も不思議で、楽しくもあった5年間。

いや、ここからは次の機会にしようか。私個人の新しい兵器が完成間近だ。完成させて、彼に渡してやりたい。

今彼は、就航間近の戦艦に向かっているはずだ。広い場所であの機体を動かすのはこの5年間で初めての

はずだが大丈夫だろうか。いや、余計な心配だろうな。それより兵器だ。早くしないと渡せない。

ああ、会社の方の兵器も完成させねば。あまりうつつを抜かしているとフレサンジュ女史に遅れをとってしまう。


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