Good-bye my sweet……#1




虚空を漂う『機械の森』。

静寂に包まれた中枢コンピュータルーム。

暗がりに浮かび上がる淡い光。

それは徐々に『砂時計』の形をとっていった。

音もなく滴る光の砂。

『ミカズチ………』

そして聞こえ来る、悲しげな『女』の声。

ガチャリ。

ふと響く、無骨な金属音。

音とともに現われる『紅い』コートの男。右手に握られた長大な太刀。

「何を泣く……眠り姫」

だが、戻り来る言葉はない。

ただ、滴り続ける光の砂。

残された『光』は、もう少なかった。





宇宙。

静寂の中を流れる純白のエステバリス。

呼吸音が響くコクピット内。

下ろされたバイザーに映りこむ星々の煌めき。

ふと、コックピットに灯りがともる。次々と開いていく無数のウィンドウ。

作動を確かめるように両手のライフルを軽く振る。

「行動開始三十秒前。カウントダウン開始」





29。



28。





「各部、最終チェック」






ホシノ・ルリ






24。




23。






「バッテリー残量、確認」





マキビ・ハリ







18。



17。






「重力波ユニット、作動良好」






15。



14。





「駆動系……良好」






11。




10。






『オラオラオラオラァアア!!!!!』

『中尉、陽動が目的なんだぜ』

『うるせぇサブ!!』

「相変わらず……ふたりも良好」

『なんか言ったか!?』





タカスギ・サブロウタ

スバル・リョーコ






7。



6。





『作戦行動開始5秒前です』

「ルリちゃんのモニター写りもいつになく良好」

『え?』





3。



2。





カイト(ミカヅチ・カザマ)






1。



0。





「行動開始、カイトいきます!!!」







IN









機動戦艦ナデシコ

『記憶の彼方に……』






第一話 『栄転』の彼方に……





「は〜い、皆さんほ〜んとうにお・ひ・さ・し・ぶ・り。ナデシコの説明おね〜えさんことイネス・フレサンジュです」

展開変わってナデシコB。カルテを持ってクルクル回るヒトざっと一名。

「さて、今日は年に一度のうれしはずかし健〜康〜診〜断!」

「いやに、いえほんとにイヤですけど高いですねぇテンション」

「まあ、登場久しぶりだからなあ俺ら。といってもアレはちょっと異常だけどな」

ヒソヒソと話すマキビ・ハリとタカスギ・サブロウタ。

「まあ、言いたいことはわかるけどよ」

ふたりの背後からウリバタケ・セイヤ。

「さて、お相手は私、イネス・フレサンジュと…」

イネスの横に現われる看護婦姿の……、

「な、ナデシコの……は、白衣の…天使……カイト…子ちゃん…デス」

描写拒否。

「とりあえず、あっち側にいなくてすんだことを、心から感謝しようぜ……」

「「……はい」」

ウリバタケの言葉に心から頷くふたり。

「って、女の俺がいるのに、なんでカイトにやらすんだ!?」

至極最もなことを問いつつ、イネスに詰め寄るスバル・リョーコ。

「見ればわかるでしょ?」

「なに!」

イネスが指を差す先。

シクシクと泣きつづけるカイト。

「お、おい」

慰めるように肩に手を置くサブロウタとウリバタケ。

「サブロウタさん、セイヤさん」

やっと顔を上げるカイト。

「「う」」

キラキラキラキラ………。

「ちょっとこっちへ……」

「いや、俺が、ぜひ……」

一人の看護婦(注カイト)を奪い合うふたりの男たち。

「ま、そうゆうことね」

「こらサブぁ!!!」

「静かに!!!!!!!!」

リョーコの怒声をさらに上回る声。

一同の視線を受けて立つホシノ・ルリ。

「……コホン。もうこの辺でこの話はおしまいです。イネスさん、さっさとその健康診断をはじめてください」

「は〜いはい」

すたすたとカイトの前まで歩いてくるルリ。

「じっ………」

「…………あの〜」

「……………」

「……………」

「ルリ………ちゃん?」

そして。

「………可愛くなんか、ありませんからね」










「は〜い83センチ」



「どうしたよルリ?」

「ああリョーコさん」



「う〜ん、78センチ」



「考えていたんです、最近の事件のことを」

「事件? いつもの無人兵器のアレか? 火星の後継者の残党とかって」

「ええ」



「92センチ!」 

オオー



「「……ちっ」」

「「え?」」

「いや、事件ったって、最近は散発的なもんだ、とくに今月に入ってからは昨日の一件だけだぜ?」

「そのまま、消えて無くなってくれればいいんですが……」



「80ジャスト!」

「計算どおりよ」



「違うってのか?」

「これは私の、もちろんただのカンですが、むしろこれは戦力が一箇所に集中を始めて……」

「はい、次!」

「え?」

「次、ルリちゃんの番よ?」

メジャーを手に待ち受けるイネス。

「あ、いえ、私は」

「ふふふ、いつまでサイズ不明で押し通す気かしら。そろそろ往生際じゃない?」

「今日は……その……体調が優れなくて」

「関係ないわね」

「ないねぇ」

「ない」

「ないし」

「ないない」

「ないですね」

「ないっス」

イネスの声に応じて次々と挙がる同意の声。

「そうだよルリちゃん。健康診断ってのは年に一度、自分の心身の成長を確認する日なんだ。ちゃんと真面目に受けないと」

「カイトさんまで……って」

「はい?」

走る無数の冷たい視線。

「なんであなたがここにいるんですかぁあぁあぁ!!」

今更だがもっともな指摘。

「は?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………………………。

湧き上がる効果音。

「ほら、あの、その………暴力反対」

ドガドガドガドガッ。

無数の罵詈雑言と凶器によって、そして咎人は楽園を追放された。

「……あんまりにも当然のようにいるから、気づかなかったわ」

「……元はといえばイネスさんのせいです」

そう言いつつ、こっそりほっとするルリ。

理由は、まあ、そういうわけである。










「ハァハァハァ………」

命からがら逃げ延びたカイト(すでに軍服仕様)。倒れ伏した身体に、タイルの冷たさが心地よい。

束の間の安らぎ。だが、更なる恐怖が迫っていた。

「は〜い。カイトちゃ〜ん」

「ほえ?」

顔を上げるカイト。視界に写るナデシコ男性陣一同。

「一人だけおいしい目を見たみたいだなぁあ〜」

「見たんですか見たんですね見たんですよねぇ〜」

「え、え〜と」

看護婦の魔法が解けた以上、彼はただのカイトに成り下がっている。

「まあ、さて置き、死ねや」

もはや恒例となりつつあるカイト君ボコリタイムが始まった。

タイル敷きの床で何故か巻き起こる砂埃。まあ、演出効果である。





で、実際のところ、女性陣のそれは着衣で行われており、まあ、あんまりおいしくなくもなかったのだが、もはやそれは詮無きことである。













どれほどの時が経っただろう、カイトの救いの神は思わぬ形で現れた。

『ウォホン』

咳払いとともに開くウィンドウ。写し出されるミスマル・コウイチロウの姿。

ドガゴガバガ。

『オホン』

バキベキボキ。

『あーあー、君たち……』

連合宇宙軍総司令閣下のお言葉を無視し続けられるボコリ。

ドゴドゴドゴ。

『いい加減にせんかぁあああああ!!!!!』

今日はよく人が怒鳴る日だ。

二つに割れる、ナデシコ男性陣のみなさん。

「ハッハッハッ! ………あ」

約一名、オールバックの少年が気づかずに殴り続けていたが、我に返った。

「……………えへへぇ……」

笑ってごまかせるのはこの年代の特権か。










「にかいきゅうとくしん?」

毎度おなじみナデシコブリッジ。居並ぶいつもの面々のなかで、素っ頓狂なカイトの声が響いていた。

両手の、カイト専用とかかれたバケツがしかし良く似合う。

「ええ」

正面に立つルリは、辞令の書かれたウィンドウを閉じながら応じた。

「前回の『アレ』でカイトさん、コンピュータ上では戦死したことになってますので」

『アレ』についてはナイクロ編を参照されたし。

「戦死……」

「それの影響で、宇宙軍のコンピュータが自動的に昇進を決めてしまったようですね」

「で、でも僕はこうして………って、ルリちゃん、今の今までデータを訂正してなかったの?」

「そ、それは……」

「なんだよカイト、知らなかったのか?」

カイトの肩に肘を置きつつサブロウタが割って入る。

「え?」

「お前が死んじまったって思ってた艦長、それはそれは……」

「んん!!」

ビクっと跳び下がる宇宙軍大尉ふたり(うちひとりは元)。

「コホン。とにかく、カイトさんには昇進とともに異動の辞令も出てます。はい、これ」

展開する別なウィンドウ。ルリの指に弾かれ、カイトの目の前で止まる。

『月面第7訓練学校教官を命ず』

「ほう、俺の後釜ってわけだな」

カイトの肩越しに覗き込むリョーコ。

「え? いや……」

「二階級特進ってことは……おいおい中佐かよ」

反対側からウリバタケ。

「あの、その……」

「そのうえ、教官殿ってこりゃ大栄転だな」

カイトの頭の上からサブロウタ。

「いえ、でも……」

「一応、総司令からの言葉を一字一句正確に伝えます。そう命令書に書いてありますから」

「ルリちゃん……」

「え〜『ウオホン! 手続の都合で少し時間かかるけど、そのうち『ちゃんと降格』させるから、それまでしっかり中佐をやっていたまえ。あ、給料は大尉分しか出さないから、よろしくね♪ コ・ウ・チャ・ンまる』………事前に内容をチェックしておくべきでした」

「みなさん…………出て行けと?」

涙目で訴えるカイト。

「…………」

歪んだ彼の視界に現われるハーリー。

「ハーリー君」

カイトのすがるような眼に、優しげな笑みでこたえる。

「………ハーリー君」

そして、

「おめでとうございます〜。カザマ中佐っ♪」

マキビ・ハリ11歳、いま心の底からの勝利感を噛み締めていた。







この後マジ泣きを始めたカイトのため、ナデシコ主要キャラによる励ましコンテストが開催された。

「女を紹介してやる」のサブロウタ、「秘蔵コレクションの一部」のウリバタケ、「訓練に付き合ってやる」のリョーコらはいずれも(当然)敗退。

結局、周囲に煽られたルリが何かいいかけたところに、「夕食のプリン」で参戦したハーリーが見事泣き止ませ、優勝をおさめた。










 一路月へと向かうナデシコ。BかCかは……もとい、ナデシコBである。

食堂の床一面に茣蓙を敷き詰めてた会場で、延々と行われ続ける『カイト君栄転ざまあ……ゴホゴホ、おめでとう、ああめでたいともさの会』。

とはいえ、お祭りごと大好きな面々が、主賓が誰かを忘れるのにさほどの時間はかからなかった。

飲み比べをはじめる者、カラオケ大会に興じる者、壁に向かって話し続ける者……。

こういった乱戦になったら早々に会場の死角に逃げ込むのが一番なのだが、

「おらカイトぉ! こっちこぉ〜い!!」

見つかった。この男はエステのコクピットにいないときは並以下の要領しかないらしい。

「なに飲んでんだよ?」

すでに出来上がってるウリバタケ。顔が赤いわ息臭いわ。

「いえ、オレンジ……ジュース」

「なにしけたもん飲んでんだ、酒飲め酒ぇ〜!」

「しけたって、それはミカンを作った農家の人と、ジュースを作ったメーカーに人に対して失礼じゃ……」

「わけわかんねぇ! とにかく飲め!」

「え、いや、僕、お酒って飲んだことないですから……」

「うらぁ〜俺の酒が飲めねぇってのかぁ〜!?」

ちなみに、酒の席でのこうゆう人には、

「俺のって、それはウリバタケさんが作ったお酒じゃないでしょ!?」

って言い返してあげましょう。

が、

「ヌフッフフフ! 甘いなぁ! 俺様特製の醸造マシーンが作り上げた特選酒よ!!」

「それって犯罪」

たまにこんな人がいるかもしれないんで、まあ注意しましょう。

「ほれ、飲め飲め」

カイトのコップになみなみと注がれる酒。しかし、オレンジジュースと日本酒のちゃんぽんとゆうのはどうだろう。

「…………」

コップを凝視するカイト。複雑な年齢設定(『眠れる森の美女』第一話参照)ゆえアルコールがOKなのかどうか本人にもわからない。

「………はは」

とりあえずわきに置く、話題もコップも。

と、ついついと誰かが袖を引く。

「ん?」と振り向くとルリである。

「どうしたの?」と聞く間もなく、今度は腕を引っぱられる。

「いいから、早く」

「え、ええ?」








所変わって展望室。やって来たルリとカイト。

利用者のいないこの時間、頭上には一面の星空が広がっている。

コツコツと靴音を響かせながらその下を歩いていくルリ。

「………………」

それを視線で追いながら、ぽつねんと佇むカイト。

「あの〜」

「静かに!」

カイトに背を向けたままピッと指を立てるルリ。

「今は私がしゃべるパートです」

「は、はい(パートって何?)」

「さて……」

ビク。

「一時的にとはいえ………」

くるっと振り向くルリ。

「あなたに階級を追い抜かれるとは、ある意味とても屈辱的です」

「は、はい」

ホシノ・ルリ少佐。ミカズチ・カザマ中佐。

「……正座しましょうか……」

「まだ……私が話すパートです」

「は、はい」

コホンと咳払いをするルリ。のどが痛いわけではなく、間を取り直すためだ。

「まあ、それはあくまで一時的とゆうことで私の中での折り合いをつけるとして……」

「じゃ、じゃあ………」

「ギロ」

「……はい……すみま……せん」

「問題は月基地への転属のことです」

「……が、がんばります」

「じゃなくて!」

ビクぅ!

「コホン……みなさんの手前、さっきは言いませんでしたが、はっきり言ってカイトさんに務まるとは思えません」

「あう」

うなだれるカイト。その様をみて、ふと視線を落とすルリ。

「……心配です」

「え?」

「カイトさんは子どもっぽ過ぎます。ナデシコ以外の環境に適応なんでできません。つまり、その、私の目の届かないところに置いておくのがたまらなく不安なんです」

苛立つような口調のルリ。視線を落としたまま、言葉をつづける。

「いっそ、鎖でも付けて首輪でつないでおきたいです」

「あ……あははは……」

さぞ似合うことでしょう。

「………離れ離れになるんですよ、私たち?」

「え?」

上目遣いでカイトを見るルリ。ある意味反則技だが、二代目朴念仁にはあんまり効果がなさそうではある。

「いいんですか? 心配じゃないんですか? 寂しくないんですか?」

「それは、その……」

「じっ……」

「さ、寂しいです心配ですよくないです」

「…………」

「…………」

「それだけですか?」

「……え?」

「なにか、ないんですか、その……それに続く言葉は」

「え、えと………」

「……………」

「さ、昨年中は大変おせわに………」

「(…………フルフル)」

「じ、人生には三つの袋が………」

「(…………フルフル)」

「な、長い間応援ありがとうございました、○○先生の次回作に………」

バンッと机……はないので床を踏み鳴らすルリ。

「いいんですか別れ別れですよ!? カイトさんがいない間に、他の人になびくかもしれませんよ、私! サブロウタさんだって黙ってれば二枚目かもしれませんし、セイヤさんだってもしかしたら包容力があるかもしれないし、近々合流予定のジュンさんだって意外といい夫になったりしたりするかもしれませんよ!!!」

ルリはもしかしたら彼らのことが嫌いなのだろうか? だがそれ以前に、

『(どうしてそこに僕の名前が出てこないんですか、かんちょぉ〜)』

物陰で涙する少年がいたらしいが、まあストーリー上どうでもいいのうっちゃっておく。

「いいんですかそれでも!」

「え、いや、でも、その、え〜と、転属は命令だし、う〜」

「………ハァ」と深くため息をつくルリ。

カイトにそれを聞いても、ないものねだりなのはよくわかっている。なによりそういうカイトであるからこそ……。

「……わかりました」

「……え」

「私からいいます」

「……う、うん」

頬を染めつつ、ルリは続ける。

「……カイトさんがどうしてもというなら、………私……あなたについていっても……」

「………!」

衝撃、いや、カイトにではなく、ナデシコ全体が衝撃に襲われた。

『正体不明機より攻撃確認』

開くオモイカネのウィンドウ。

「……くっ」

衝撃で叩きつけられたカイト。痛む身体を床から引き剥がす。

「……ルリちゃん!」

近くに倒れているルリを見つける。

「大丈夫!? ルリちゃん!?」

「……………」

「ルリちゃん!? ………ルリちゃん?」

グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

ルリから立ち込める黒いオーラ。

「許しません………」

「…………ゾクッ」

「よりにもよってこんな時に……。絶対に……絶っっ対に許しません!!!!」

ガバっと跳ね起きるルリ。背負ったオーラが一層激しくなる。そのまま大魔神にでもなりそうだ。

「ナデシコ起動!!! エステバリス隊全機発進!!!!」

「りょ、了解!!!」

もしその命令を拒否できるものがいたとしたら、その者は並ぶもののない勇者として、今後数百年はその名を語り継がれたことであろう。ただし故人として。

そして幸か不幸か、勇者はこのときナデシコにいなかった。







で、この時の敵は無人兵器からなる小規模部隊だったのだが、所詮、瑠璃色の魔人が降臨したナデシコの敵ではなかった。










「はなはだ、不安ではありますが……」

月面、宇宙軍港。ナデシコの前に居並ぶいつもの面々と、それと向き合うカイト。

ここからは民間の交通機関での移動のため、スーツ姿だが、せいぜい大学の入学式か、成人式ぐらいにしか見えない。似合わない。

「身体には気をつけてください、カザマ大…いえ、中佐」

いまだけとはいえ、一応上官。

「あはは、月のうさぎさんと記念写真でも撮ってますよ」

少しは威厳を持てよ。

「おお、それなら」

カイトに歩み寄るサブロウタ。カイトの肩に手をまわしつつ、何かの名刺を取り出す。

「俺の月での行きつけだ、ここのウサギちゃんもなかなかのもんだぜぇ」

「「タカスギ大尉!!」」

ハモりつつ怒鳴るルリとハーリー。

「ま、まあ……さておき」

気を取り直して。

湧き上がるやる気のない万歳三唱。

そして、

「いってらっしゃい、カイトさん」

その声がどこか拗ねたような響きを持っているのは、多分カイトの気のせいではない。

「うん。ルリちゃん」

「………む」

「………なに?」

「ちょっと待ってください。ネクタイが曲がってます」

カイトに歩み寄るルリ。ネクタイを直しながら顔を寄せる。

「え?」

「カイトさんのことですから、間違いはないとは思いますが………」

ネクタイを直す手にグイっと力を込める。

「ル…ルリちゃん苦しい……」

「万が一間違っちゃたりしたら………わかってますね?」

「りょ、了解……です」

「はい、よろしい」

表情を緩めるルリ。そのままカイトの頬に唇を寄せ、そして……。

「……あ」

すばやく離れるルリ。

回れ右。一斉に視線を逸らして見てませんのポーズのナデシコ一同様。

そのまま皆の方へ数歩ほど歩き、またカイトの方へ向き直るルリ。

「では、あらためて」

「「「「「「「「「「いってらっしゃい!!」」」」」」」」」

皆の声が合わさる。

「………はい」



ともかくこの日、カイトはナデシコを降りた。







つづく











次回予告




「拝啓ナデシコのみなさん、いかがお過ごしでしょうか。

僕がこの基地に来てから、早いものでもう一月になります

 機動戦艦ナデシコ『記憶の彼方に……』
 
 第二話『日常の彼方に……』

 いろいろありますが、僕はわりと元気です」
 
 










おまけ 




その一 キャラ近況と雑感



カイト

主役のような主役でないような、いなくても話が何の問題もなく成立することに気づいてしまった。そういえば変換も一発で出なくなったし。「会と」「貝と」「買いと」。
本作で一時的にとはいえ昇進かつ栄転、おまけに華麗なるコスプレ遍歴も加わって、まあ、いつにもましてお馬鹿な彼。今回も割りととんでもない目にあわす予定ではありますが、どうなることやら。


ルリ

逆に彼女いないとお話が成立しないような気がする。ナニゲに全作皆勤賞なのは彼女だけである。アキトとユリカのことは吹っ切れているのか、カイトとは実際のところどうなのか、ハーリーのことはどうでもいいのか、まあ、扱い難しいキャラではある。とはいえ、あんまりラブラブさせるのもルリちゃんらしくないとは思うんですが、どうなんでしょう?



ハーリーとサブロウタ

いきなりセット扱い(笑)。ルリやカイトがいなくなるとジュンとあわせた三人でワリと視点キャラみたいなのをやってもらうことが多い。そのせいか、ふたりとも前作のナイクロで結構活躍してくれたと思うんですが。もう少しこのふたりの兄弟漫才みたいなのもやってみたいところではある。



ウリバタケとリョーコ

いつの間にか、ナデシコBに乗ってるふたり組。なんで乗ってるかっていうと、実際のところ人数合わせ(爆)。ルリハリサブ+おバカの四人だけだとどうにも寂しい。
とはいえ、登場さす以上は何らかの見せ場か最低でもストーリーには絡ませなければならないという異界のスタンスゆえ、あんまり増やすと書きにくい(再爆)。その辺を考慮しつつ、一番自然に乗っててくれそうなこのおふたりをスカウトした次第です。妻子はいいのか。サブとはどうなんだ実際。



ミスマル一家

ていってもふたりだけですが、ユリカについてはMissing Link 2ndをご参照ください。コウイチロウ氏は総司令を一旦は辞任を決意するも、結局留任しました。ユリカやアキトを守るためには今の地位が必要なのだと思ったからです。
ちなみに、このふたり、実は全然絡んでない。ってゆうか劇中であったことすならない。



ユーチャリスのふたり

前作の敵役号。ナイクロで異界がナデシコ・エックスなんて阿呆なのをでっちあげたのは、ユーチャリスを壊したくなかったからだけなのは内緒。てゆうか当初構想は『ナデシコVSナデシコ』ただそんだけだった。
ラピスは軍の施設に収容中。時々エリナが会いにいっているようです。
アキトは軍刑務所にて服役中。宇宙軍が身柄を押さえて秘密裏に処理してます。んなアホなですが、笑ってください。異界も笑います。懲役1500年くらいでしょうか。再登場するんでしょうか。なんだかんだ言ってナデシコの主役は彼なんですが。



ネルガルのミナサン

アカツキは懲役3000年(嘲笑)の判決後行方不明。ネルガル本社の地下にシェルターがあるのか、第二の地球を求めてナデシコセブンで旅立ったか。
秘書と元秘書はネルガル再建のために奔走中。ゴートも強力のためシークレットサービスから復帰。月臣もアカツキ同様行方不明です。まあ、この人はいつもそうですが。




その二 パワーバランス

地球連合・連合宇宙軍とも天使事件で脛についた傷から発言権が低下。宇宙軍は最安値更新の模様。前回の事件については何のやましい所のない統合軍も、事件解決に何の貢献もすることができなかったため、三すくみどころか三弱になりつつある。くわえてある意味三者以上の力を持ったネルガルも大きく力を失ったため、その対抗勢力であったクリムゾングループが徐々に台頭。



その三 兵器

次期主力機候補であったアルストロメリアの先行量産機百十余機が行方不明、かつネルガルの衰退にともない、配備計画は事実上頓挫。
代替機として、アルストロメリアとの社内コンペで敗れたエステバリスの発展型の一部配備が検討中。とはいえ機体数が限られるため一部エースへの希望配備となりそうである。
で、ステルンは?



その四 お話

ここからまた楽屋ネタ。今作『記憶の彼方に……』(略称『キオカナ…』う〜ん、いまいち)『眠む眠む』・『ナイクロ』とつづく三部作(Missing Linkは一応外伝扱い)のとりあえず区切りとなるお話になる予定です。話数的には『眠む眠む』くらいか、ちょっと短いくらい。でも書く時間はそれ以上になりそうですが……。


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