fifth angle,fifth victim








───ふざけやがって!! どいつもこいつも!!

───俺は! 俺は! 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は!!!

───うおるらあああ!!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!

───!!

───う!!

───!!!

───ぐおおおお!!!

───フ……フハハハハハ。もう終わりだよ貴様ら! 千載一遇のチャンスを逃しちまったんだからなぁ!!!

───死! ……ね?

ドン。

───き、貴様……。

ガチャリ。

───グフッ!!

───………!

───……この赤は。

───お、思い出した……俺は……ミカズ…チ……。イツキ…イツキはどうした、どこにいる……。



「(!!!………記憶が……流れ込む……?)」






機動戦艦ナデシコ

Missing Link Second

『Darling Darling』





SideB:MIKAZUCHI




──……君は……。

──気がついた途端、災難でごめんなさい。






イツキ……!?






──災難て言われても、状況がよくわからない。とにかくここはいったいどこなんだ?

──状況は刻一刻と変わっているし、無理ないわ。

──あなたの乗っていたシャトルは渓谷へ落下して大破。物資をあきらめて、あなただけ助け出すのがやっとだったから……。






これは……火星の……。

大晦日のジャンプ実験のときに見た、僕の……いや、僕に『刷り込まれた』、ミカズチ・カザマの……記憶?






──

──

──

──

──

──






そうだ、この日、火星で『ミカズチ』と『イツキ』は地球と木連の戦闘に巻き込まれて……。


そして、ふたりで……。

そう、残ったエステに乗って……。






──くっ!!

──数が多すぎるわ!

──イツキ、俺から離れるな!! 敵中を突破する!!






違う……?

この光景は……違う……。 






──このままじゃ!!!

──頑張るんだ! きっと味方が!






いや、違っているのは……僕の記憶?

この光景こそが、本当の……






──イツキ? 

──どうしたイツキ!!

──………イツキ!!!! 

──!! ぐおおおおお!!!!






く!!






──イツキ……返事をしてくれ……。

──眼を開けてくれ……。

──ミカズチって呼んでくれ……。

──くそ………。

──クッソォオオオオオオ!!!!!




これが真実なのか……

これがあの日、火星で起こったことなのか……






──あれか……。

──あれから出てきたのか……。

──あれから出てきた奴らが……。

──イツキを殺ったのかぁああああ!!!! 






……やめろ……。






──……行くぞ、イツキ。

──そうさ、俺たちは一緒だ。

──これまでも。

──そして、これからも。



──うおるらあああ!!!
やめるんだ!!!!!





















──ん〜? 彼らかい、カップルで突っ込んできたバカってのは?







!! この男は……!?






──ええ、地球側の人型兵器に二人乗りで、何考えてんでしょう。

──で、男の方はまだ生きてんの? こっちの跳躍に巻き込まれたってのにタフだね。

──遺伝子情報が跳躍可能な者のそれに酷似していたようです。まさに天文学級の奇跡ですね。

──その奇跡の結果がこのスプラッタかい? ひどいもんだね。

──まったくです。むしろ運・不運でいえば不運の方ですね。






……またなのか? 

また……『あなた』なのか?

また『あなた』は奪うのか? 

ミカズチから!!

そしてイツキから!!!






──女の方は……って聞くまでもないな。

──文字通り息の根が止まってますな。

──……ふ〜ん。記憶を抽出は可能かい?

──は? それは………しかしなぜ?

──いろいろ必要なのさ、我らが『娘』を誕生させるにはね。

──……男の方はどうします?

──う〜ん。よお、どうだい君、まだ生きたいかい?

──…………

──何か言っているようですが……。

──ん〜? どれどれ。






『ヤマサキ・ヨシオ』!!

僕は……あなたを─────!!






──ふほ!?

──博士?

──ふ、ふははははは……

──どうされました博士?

──ははははは、面白いよ彼。気に入った。

──博士、一体?

──あははっははははっはっはは。彼、僕らのラボでもらうよ。

──それでは……。

──生きさせてあげるさ………そう、『実験素材』としてね。






……………ミカズチ……






──ひ、皮肉なものだな………俺に記憶をくれたのが……よりにもよって……貴様だったと……は…………。






──…………。






……………イツキ……






──おい、どうした!? なにがあった!!?






──な、なんだよ。






──なななななっ何を言って…………。






……………そして……






──はい。






──助けてくれたのはあなたの方です。






──ルリです。






──私の名前、ホシノ・ルリです。






!?






コンコン。






「…………?」

午後の陽だまり。

とある施設前に停まった車の運転席。

カイトは、物音に眼を覚ます。

「……あ」

窓の外、ルリがこちらを覗き込んでいる。

「……え、えと……」

何か言おうとするカイトに構わず、ルリは助手席側のドアへと回り込む。

ここで待っていてくださいと言われはや数時間。昼食後の陽気な睡魔に打ち勝つことの困難さはここに記すまでも無い。

「……け、決して待ちくたびれていたわけでは………いえ、ごめんなさい確かに寝てはいましたが……はい」

「…………」

「あ、あの〜、ルリ……ちゃん?」

「ラーメン」

「は?」

「日々平穏のラーメンが食べたいです」

「……い、イエッサー」

目一杯ぎこちなく車を始動させる。

車。

あの事件のあと、アカツキの使いだと名乗る人が置いていったものだ。

慰謝料代わりだとしたら、高いのか安いのか。

最近の流行である、20世紀末のスポーツカーのレプリカ。

名前はもう忘れてしまったが、確かアルファベットと数字だけの型番のようなのをしていた。

返そうにも返す相手がわからず、かといって人手に渡すわけにもいかず、結局今日の今日までカイトの手元に留まっており、その用途はもっぱらルリの御用車だ。






流れる景色。

すれ違っていく車の列。

ぼんやりと、先ほどの夢を思い出す。

「(……夢、いや……記憶、か)」

あの日、真なるミカズチから受け継いだ真実の記憶。

それはイツキとミカズチという、どこにでもいるであろう恋人たちの悲しい結末。

「(僕は……一体、いくつ奪えば……)」

たとえそれが自らの手で行ったものでないとしても、その身にある全ては、所詮他人から奪い取った幸せのカケラ。

そうまでしても、人は生きなければならないのか。

そうまでしても生きるだけの価値が、人にはあるのか。




だが、それでも、かけがえの無いものがあるからこそ。





脳裏を母とも姉ともそして、──とも慕う女性の姿が過った。

会う資格はなく、そして資格もなく会う勇気もなかった。

ルリを待つ間、ただ彼女のものと思しき部屋の窓をぼんやりと眺めていた。

ただそれだけだった。





そっと横目でルリを伺う。

ルリは黙ったまま、窓の外を見るともなしに見ている。

「………」







エピローグ


Side Blank:RURI






「……あ、あのさ」

「!」

ルリはカイトの声に身を震わせた。

わかっている。

カイトはユリカのことを聞きたいのだ。

わかっている。

カイトをユリカに会わせなかったのは自分のわがままだ。

そして嫉妬、だ。

アキトという支えを失ったユリカ。

彼女はきっと別な支えを求める。

そしてそれは、かつてルリが、自分のアキトへの淡い気持ちに気づいたルリが、カイトに求めた……。

「…………ええ、ユリカさんは………」

「辛いのなら……」

「……え?」

「辛いことがあったのなら………泣いてもいいんじゃないかな?」

「……………カイトさん」

虚を突かれた思いだった。カイトはルリの身を案じて、言葉を掛けてくれていたのだ。

「……………」

グイ。

「………っ痛ぁ!! 痛い痛い!! ルリちゃん痛い!!!」

「生意気言うのはこの口ですか。この口が言いますか」

「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさあ〜い!!」

素直じゃ、ない。

そう思う。

臆病なのかもしれない。

ただただ、優しさに甘えて、甘えるだけの存在になるのが怖かった。

それでも、

「………まあいいでしょう、許してあげます」

いまは少しだけ、この暖かさに浸っていたい。




「カイトさん」

「え?」

カイトは腫れた頬をさすりつつ横目を向ける。

「………いなくならないで……ください」

「…………」

「もう、何処へも行かないでください……。ずっと…ずっといてください」

私のそばに。

心の中でそっと付け加える。

「…………」

カイトは何も言わず、

「………カイトさん?」

そして、ただ微笑んだ。

それは何故か、とても悲しそうな笑みだった。






うららかな午後。

そして静かな街並みの中を、ただ車の音だけが響いていった。
















予告







「おめでとうございます〜。カザマ中佐っ♪」

「『赤備え』! 我につづけ!!!」

「これは……彼の身体は……」

「バカヤロっ……何のために……艦長の騎士の座を譲ってやったと思ってんだよ……っ!」

「男性は校長と中佐だけですよ?」

「バレたら……お仕置きされる……」

「どもども〜! 出戻り艦長で〜す!」

「わかるさ……もう一度ヤツを殺してみればな!!」

「ん〜? フレサンジュ博士? 初めてかねぇ、こうして会うのは?」






「ミカズチ………」





「ずっと一緒にいてくれないなら………なんで優しくなんかしたんですか!!!」






機動戦艦ナデシコ


『記憶の彼方に…』






COMINGSOON






「さらばだ………『妖精』」








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