機動戦艦ナデシコ 異伝 風の行方




かわいそうな子

あなたはだまされているの

わるいわるい魔女に

目を覚まさせてあげる

思い出させてあげる

あなたが誰なのか

本当の居場所はどこなのか

わたしの

わたしのかわいい

ミカズチ



第4話「裏表」

「お久しぶりね、泥棒猫」

ナデシコBの真正面にボソンジャンプをした私は泥棒猫に対してそう挨拶をした。

「いったいあなたは何なんですか!」

ナデシコBの坊やがそう叫ぶ。あれは確か、マキビ・ハリ。あの泥棒猫と同じマシンチャイルド、そう考えただけで吐き気がする。

「イツキ・・・・カザマ」

泥棒猫は顔を蒼白にしながらそう呟いた。

「そう、私の名前はイツキ・カザマ。そしてミカズチを愛するもの」

泥棒猫は「ミカズチ」という言葉に体を震わせ反応する。

「あの人はミカズチではありません、ミスマル・カイトです」

泥棒猫は私を睨みつけながらそんなことをほざく。生意気ね、やっぱりあの時殺しておけば良かった。

「いいえ、あの子はミカズチよ。あの子は騙されてるだけ、汚らわしい泥棒猫にね」

私は侮蔑を込めて泥棒猫を睨みつける。

「艦長は泥棒猫なんかじゃないし、汚れてなんかいません!」

マキビ・ハリが叫ぶ。なにも知らないようね、なにも・・・

「それじゃあ教えてあげるわ、あなたの尊敬する艦長が汚らわしい泥棒猫だって事を」

「ふざけたこといってんじゃねぇ!!!」

その時、ブルーのエステバリスがナデシコBから発進し私に向かってきた。

「あら、義父とよろしくやっているような売女は汚れてないのかしら?」

「うるせぇ!!!それ以上言うんじゃねぇ!!!」

タカスギ・サブロウタが大音量で叫ぶ。うるさい声ね、無駄に声が大きい人は好みじゃないのよ。

「あなたは否定はしないのね。そっか、認めてるんだ、それともあんな売女のことなんかどうでもいいのかな?」

私は子供をあやすように喋りかける。

「うるせえ!!黙れ黙れ黙れ!!!」

我を忘れて叫びながら私に向かってくる、ホントにうるさいわね。

エステバリスはレールガンを私に向かって放つ、そんなもの私に当たるはずがない。私は向かってくるエステバリスを「腕で刺し貫いた」、ちゃんとパイロットを殺さないようにね。

「サブロウタさん!!」

マキビ・ハリは信じられないといった表情で叫ぶ。タカスギ・サブロウタは信頼されているようね。でもこの程度で我を忘れるならたかが知れてる。

「教えてあげるわ、あなた達の艦長がどれだけ汚らわしいかをね」

そして私は開始する。ナデシコBへのハッキングを、私の復讐を、泥棒猫への罰を。

ナデシコBに、泥棒猫に、タカスギ・サブロウタに、マキビ・ハリに、私が送り込んだ『映像』が流れ込んでいく。





薄暗い部屋、そこに蠢く二つの肉の塊。

舐め合い、擦りつけ合い、濡らし合い、絡み合う二つのイキモノ。

それは堕ちた者の繰り広げる淫らな慰め合い。

ただひとときの虚ろなる温もりを求める負け犬たちの宴。

なにも必要はない、人としての尊厳も、育むべき愛情も、何もかも。

長い長い艶やかな瑠璃色の髪を振り乱し快楽に惚けて喘ぎ悶える。

そこにはなにもなかった、艦長としての威厳も、女神としての美しさも。

そこにあるのは女としての、雌としての情欲。

義父との情事という背徳感にさえ悦びを感じるほどの。



まるでその場にいるほどの現実感をともなう映像、それを私は送り込んだ。

「嘘だっ!!!こんなの艦長がするはずない!!!」

「いいえ、これがあなたの尊敬する艦長の本当の姿よ」

私は事実を認めようとしないかわいそうな子供に真実を教えてあげる。優しく、ね。

「違う違う違う!!!艦長は・・・僕の艦長はっ・・・」

それっきり啜り泣く声しか聞こえなくなる。虐めすぎたかしら?

「黙れ、消えろよ!!!」

「何をそんなに熱くなっているのかしら?」

「うるせえよ、消せよ!!早く消せって言ってんだ!!!」

「あら、もしかしてあなた興奮しているの?」

びくっとして反応してそれきり押し黙るタカスギ・サブロウタ。どうやら図星らしいわね。

「うふふ、そうなんだ。こんな浅ましい売女をみて興奮したんだ」

私は嘲りを込めて笑いながら呟く。

「黙れ」

何か呟いているけど構わず私は続ける。

「それとも前から想っていたのかな?この売女を抱きたいって」

私は子供をあやすように呟き続ける。

「黙れ!黙れよ、黙ってくれよ・・・」

まあこの位にしておこうかしら、次は・・・泥棒猫。

泥棒猫は顔を蒼白にし虚ろな目で「自分」を眺めていた。私は泥棒猫の視る「映像」に細工をする。

「久しぶりだね、ルリちゃん」

泥棒猫は目を見開き反応し、震える声で言葉を紡ぐ。

「カイ・・・ト・・・さん?」

「知らなかったなぁ、ルリちゃんがこんなに風に喘いで悶えるなんて」

ミカズチに私が声を吹き込む。もちろん偽物だが今の泥棒猫には関係ない。

「違う、こんなのわたしじゃ「関係ないよ」」

泥棒猫の言葉を遮って言う「カイト」。

「こんなの見せられたんじゃあ何を聞いても関係ないよ。だってそうだろう?こんなに気持ちよさそうな顔をしてたんじゃあね」

「違う・・・私は・・・違う!」

泥棒猫は泣きじゃくり両手で頭を抱え込みながら呟く。

「何が違うんだい?こんなの薄汚れた売女そのものじゃないか」

「それで愛される資格があると思っているの?」

「そんなあなたには臆病者がお似合いよ」

泥棒猫は言葉にならない言葉を呟き続けている。

まだよ、二度とミカズチを見れないくらいに・・・コワレテシマイナサイ

「そのぐらいにしておいてもらえませんか?」

その声と同時に私が送り込んだ映像が全て猫をデフォルメしたマークに変わる。

このマークはたしかミカズチの艦の・・・

「これ以上はやりすぎです、この人たち壊れちゃいますよ?」

コミュニケに現れる、ルナ・エヴァン。気がつけばすぐ近くの所までユーチャリスが近づいていた。どうやら集中しすぎたようね、もう少しの所を。

「ええ、壊すつもりでやっていたから」

不機嫌さを隠さずに私はルナ・エヴァンを睨む。

「それは残念でしたね〜、でももうそんな暇ありませんよ」

その瞬間センサーが異常なスピードで進む反応を確認した。まちがいない。

白き翼をはためかせ近づいてくるナイツ。私は笑みがこぼれるのを堪えきれなかった。

「ミカズチ!!!」

「イツキ!!!」

私に応えるように叫ぶミカズチ。やっぱり私たちは繋がっている、泥棒猫など入れないほど。

私はすれ違いざまのナイツの斬撃を避けながらグラジオラスの「腕を変化」させる。

「ナデシコに何をした!!答えろ、イツキ!!」

ミカズチは斬撃を繰り出しながら叫ぶ。

「教えてあげただけよ、泥棒猫が薄汚れた売女だって事をね」

ミカズチは顔を歪める。失礼ね、あなたのことを思ってやってあげたのに。

「今日はこのぐらいにしておくわ、ミカズチ。またね」

私はそう言い放ちナデシコBに向けカノン砲を撃つ。案の定ナデシコBをかばうナイツ。私はその隙にボソンジャンプのイメージングを完了し、ジャンプする。

・・・これでいい、これで・・・





私のかわいいミカズチ

どうしてしまったの

なぜ私を見てくれないの

どうして帰ってきてくれないの

わるいわるい魔女は私が倒してあげる

二度と現れないくらいに

だから帰ってきて

私のかわいいミカズチ

強き想いは裏表

ふとしたことから裏返る

風が吹き荒れれば

裏返る



あとがき〜
どもども星風です〜。
第4話お送りしました〜。
はぁ〜、ルリルリがあんな事に・・・私のせいですけどあんまりひどいことしなグチョ・・・
<神様の攻撃!  神様は天罰を使った! なんと!星風の足の小指はタンスの角と運命の友なった!星風は悶えている!>
ではでは星風でした〜







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