機動戦艦ナデシコ
                   E I V E   L O V E
〜 The blank of 3years 〜
記憶のかなたで逢った人たち






 第6話 あなたのラーメンの『味』はどんな味?



 2099年1月2日

 

『くぉらぁぁぁぁ!!! もう一度いってみろぉぉ!!!』

 

『何度でも言わせてもらいます。お義父さん、ユリカを嫁にください!』

 

『誰がお義父さんじゃ。それに、それに、どこの馬の骨ともしらん奴にユリカを、ユリカをだとぉぉ!!』

 

『お義父さん、うちは馬の骨じゃないっす! トンコツっす!』

 

『そうだよ。アキトのラーメンは美味しいんだよ』

 すさまじい声がとなりの部屋から聞こえてくる。普通の人間なら、ダッシュで逃げたいほどだ。

 「年始早々、ご苦労様です。ミスマル・コウイチロウの代理ミスマル・カイトと申します」

 「代理の方ですか。ご苦労様です。私、宇宙軍大佐……」

 2人はそのまま社交辞令を繰り返すが、徐々に口調が早くなっていき、顔の縦線も増える。

 その間も、隣からの怒声は続いていた。

 「ほんと、よく飽きないわね」

 カイトの隣にいるルリは、なにくわぬ顔でお茶をすすりながら呟いた。





 数時間前のぼろアパートテンカ・ワアキトの部屋

 「よし。今から、お父義さんの所に挨拶に行く!」

 何か決意したようにアキトが立ち上がり拳を突き上げる。気合い十分だ。

 「アキトの両親は確か……死んだんじゃなかったけ?」

 「ええ。死んでいます。それに、そのお父さんじゃないと思います」

 「じゃあ、だれ?」

 「ミスマルおじさまのことだと思いますよ」

 のほほんとしているカイトにつっこむルリ。

 「そっか、そういえば忙しくて年賀状も出してなかったな」

 「それも兼ねてだよ。このまま、ユリカとお義父さんがもめてるのもいやだしな。それにそろそろ……ごにょごにょごにょ」

 拳を振り上げたまま、照れる姿は非常に間抜けである。

 「どーしたのアキト?」

 お手洗いからでてきたユリカが、アキトを不思議そうに見た。

 「と、とにかく行くぞ。今から、お父義さんの家に」

 このあと、ユリカが「あんな、分からず屋のお父様になんか」と多少もめたが、ともあれ出発した。





 「おお。ユリカ、ルリ君、カイト君。明けましておめでとう。いやあ、ユリカは当然で、ルリ君も振り袖姿がよく似合っているよ」

 「「「「明けましておめでとうございます」」」

 コウイチロウは、愛娘の姿に表情をだらしなく崩しつつも露骨にアキトを無視する。

 「これは少ないがとっておきなさい。

貧乏

は辛いだろう」

 そういって、お年玉袋を差し出す。

 「ありがとうございます」

 「どうも」

 カイトとルリは無難に感謝をのべるが、

 「お父様、さっきから何でアキトを無視するんですか!」

 とうとうと言うか、やっとと言うかユリカが切れた。

 「うっ。そこまで言うなら無視はしない」

 迂闊だったとはいえ、家に招き入れてしまった以上、多少は大人のコウイチロウはひかざるをえなかった。

 「で、誰だね、彼は」

 それでも、多少の抵抗はするみたいだ。

 「テンカワ・アキトです。今日は新年の挨拶とお父義さんの娘、ユリカのこと出来ました」

 「ユリカのこととは?」

 コウイチロウが眉をひそめ聞き返す。

 「はい。ユリカとの結婚を認めてもらいたくやってきました」

 きっぱりと言い切るアキト。

 「ゆ、ゆ、ゆ……」

 サリーちゃんパパヘアーがぶるぶると震える。

 「ゆ? ゆって何だろうね、ルリちゃん分かる?」

 「さあ、雪のゆじゃないですか?」

 「2人とも、マジぼけですか?」

 比較的常識人のカイトが2人につっこむ。

 アキトも予想できているのか、次の一言を「ごくっ」と、つばを飲み込んで待っている。

 「えっ。カイト君は分かるの?」

 「いわずとも。親馬鹿のコウイチロウさんを考えれば……」

 「なるほど、そう言うことですか」

 ユリカだけよく分からないようにコウイチロウを見、あとの3人はこれから起こるであろうことに構えた。ルリだけは用意がいいのかさらに耳栓まで取り出した。

 「ゆっゆっゆっゆっ……」

 耳栓をしているルリを見て、カイトも聞かざるになる。

 

「ゆるさーーーーんっ!!!!!!!!」

 コウイチロウの怒声に、構えていたカイトは後ろにずっこけ、ルリは少しだけ表情を変え、ユリカは眼をぱっちりとして驚いた。その中で、アキトだけがひるみもせず視線をじっとコウイチロウに向けていたのは驚嘆に値する。それだけの覚悟を決めていた、ということなのだろう。

 「許さん、許さん、許さん。馬の骨ともわからん奴に大事な娘をやれるかぁ!!」

 「馬の骨。素性の解らない者を罵るために使う言葉。この場合はアキトさんでしょうか?」

 通訳よろしく、ルリが耳栓を外しながら説明する。

 「いや。それだと違うよ。アキトはちゃんと火星出身とか履歴ははっきりしているし、何よりユリカさんの幼なじみでしょ。お隣だったコウイチロウさんが知らないのはちょっと」

 カイトは、頭をふりながら余計なことをつっこむ。

 「なら。誰が馬の骨ですか?」

 「それは間違えなく、僕だろ。何しろ記憶がほとんどないからね」

 「それだと、カイトさんはユリカさんに求婚しているのですか?」

 「なぁにぃ……カイト君、それはホントかね?」

 「えぇっ。困ったなぁ。あたしにはアキトって言う人がいるから。きゃっ。ユリカモテモテ。こまっちゃう」

 「べ、別にそう言う意味じゃ」

 カイトが地雷を踏みつつ場は少しずつ和んでいくが、話はずれていく。

 「カイト。場を和まそうとしなくていいよ。俺はお義父さんと本音で話したいんだ」

 アキトはぽんっとカイトの肩に手をやるが、視線だけはコウイチロウがから離していなかった。

 (ほぉ。確か、ユリカより2つ下の歳なのにあの眼光。挑むようでもなく脅えるわけでもなく、全てを受け止めるようにか。ふっ、面白い)

 コウイチロウは今の今までアキトをただの娘を奪いに来たくせ者ぐらいにしかみていなかった。だが、家に来てから替わらぬ視線。年に見合わぬ落ち着いた態度が興味を引いた。それにしても、ちゃっかり調べているものである。

 「あの、旦那様。お取り込み中申し訳ありませんが、宇宙軍少将ムネタケ・ヨシサダ様が年賀の御挨拶にお見えになっておりますが、いかがしましょうか」

 静かになったのを見計らったのか、お手伝いさんが来客を告げる。

 「ふむ……カイト君、悪いが儂の代わりを勤めてくれないかね? 儂はもうしばらくこの青年と話をしたい」

 先ほどの手前もあり、頼まれると断れないカイトは承諾した。

 だが、この後の話し合いはけして穏便なものでなく、コウイチロウの一言は、表面上は怒鳴り合いで水面下では互いを見極めようとする熾烈な戦いの始まりのゴングだった。





 時間的には一番はじめより少し進むが、場面は変わってアキトVSコウイチロウ。

 アキトのセコンドにユリカがついているが、今回限りは親の甘い顔をせずに、テンカワ・アキトという1人の男を見定めようとしている。

 ただ、ノンストップで6時間を超そうとしている。

 隣の部屋でぱたっと倒れる音がする。疲れ切ったカイトが倒れた音だろう。もしかすると、すでに寝ているのかも知れない。

 しばし、沈黙が続く。

 「テンカワ君。君はラーメン屋だな?」

 ぽつりとコウイチロウが呟く。

 「はい。まだ屋台っすけど」

 多少恥ずかしそうにアキトが答える。

 「収入も不安定だろう。未来もだ。ユリカを幸せに出来るかどうかも解らない。なのになぜ結婚しようとしたのだね?」

 今までの態度からは考えられないような、静かな口調でコウイチロウは最後の質問をする。

 「あたしはアキト……」

 ユリカが何かを言いそうになったが、アキトが視線で黙らせる。

 「正直、ユリカを幸せに出来るかどうかなんてわかんないっす。もしかしたら、このまま普通にお見合いをして結婚する方がユリカのためなのかも知れない。けど、俺はユリカと結婚したら幸せになれると思います。そして、その思いに答えてくれたユリカの眼を信じたいです。俺はユリカと一緒に幸せになれるって。そして、ユリカもオレと一緒になったら幸せになれると」

 静かにだがアキトは一番にいたかったことを言え、今日一番のすっきりした顔をした。

 

「メモしとこ……」

 「そこまで言うなら、考えんこともない……」

 アキトの気に押されたのか、つい本音がでてしまう。

 

「何考えてるんですか?」

 「なら、お父様。あたし達結婚……」

 「だが、しかぁし。儂にラーメンを食わせて旨いと言わせてからだ」

 最後の抵抗か、一筋の汗を浮かべながら不適な笑みを浮かべるコウイチロウ。

 「望むところです、お義父さん!」

 ふふふふっとアキトも負けずに怪しい笑みを浮かべ、2人の間に火花が散る。

 「アキトなら大丈夫」

 ユリカはいつの間にか取り出した日の丸をふりながら、アキトを応援している。

 その姿にコウイチロウは表情をゆるめ、アキトの後方にあるふすまに視線を向ける。

 「話はここまでだ。ここからは正月らしく行かせてもらおう。そこで覗いている2人、入ってきなさい」

 「「えっ?」」

 アキトとユリカが後ろを振り返る。そこにあるふすまはほんの少しだけ開いていた。

 

「これだと間抜けだね……」

 

「覗こうと言ったカイトさんが悪いんじゃないですか」

 

「そんな。ルリちゃんだって同意したでしょ?」

 2人とも、間抜けさをよほど自覚しているのか、出辛くその場を動かずにいた。

 「おい。何やってんだよ、2人とも」

 何も知らないアキトがふすまを開ける。

 「や、やあ」

 「ど、どうも……」

 そこには、寝そべったカイトの上にちょこんっと座ったルリがいた。

 「な、何やってるんだよ。2人とも……」

 「ぷっ。親亀の上に子亀。この場合は兄亀の上に妹亀かな? あはははっ」

 堪えきれなくなったのか、ユリカが笑い出す。

 「ほっほっほっ。これから食事にするとしようか」

 コウイチロウはそう言うと手を叩き、食事を運ばせた。

 ただし、これよりカイトは悪夢を見ることとなる。





 「んっ……ふぁ〜っ。もう、朝か……」

 というより、昼である。

 カイトは上半身を起こし部屋を見回す。

 そこら辺中に散らばる酒瓶、テーブルの上には豪華なおせち料理の入っていたお重とおつまみが散乱していた。

 (ふっ。悪夢だったな……)

 カイトは昨晩のことを思い出す。

 始めの頃はまだよかった。みんな普通に談笑して、お猪口でお酒を飲んでいた。ただし、ユリカが出来上がってしまってからは違った。ユリカが酔った瞬間、同席していたお手伝いさん達がくもを散らすように帰りはじめた。カイトは玄関まで送っていき戻ってきたときに事の次第を理解した、"逃げたな"と。そこにはなぜか2人で涙を流しながら語り合うアキトとコウイチロウ。目がすわって黙々とお酒を飲んでいるルリ。それを見ながらけたけた笑っているユリカがいた。カイトは必死に逃げようとしたが、ルリに袴を捕まれ"飲め"と言われ逃げ場を失った。それからあとのことはぼんやりとしか覚えていなかった。

 カイトははっきりと冷めない頭をさますために水を飲みに行こうと立ち上がろうとするが、小さな手が服を掴んでいた。

 小さな手に掴まれた服を脱ぎ、眠り姫にかけ、誰も起きないように静かに部屋を出る。

 「コウイチロウさん、いないと思ったらここだったんですか」

 「おや、カイト君。起きたのかね」

 コウイチロウは、縁側に座ってお茶を飲んでいた。カイトもそれにならい座る。

 「目覚めはどうかね?」

 「そうですね。さすがによくないです……」

 そう言うと、コウイチロウはお茶をカイトに差し出す。よく見ると湯飲み茶碗はあと3つあった。

 「素直じゃないですね」

 「何のことかな……」

 2人はこれ以上何も語らず座っていた。

 この後、アキトも加わるが会話らしい会話はなく、眠り姫達が起きるまでただ座っていた。





 「退屈ですね……」

 「もぉ。ルリちゃん、家にいたっていいじゃない。アキトのじゃまをするわけじゃないんだから」

 「何もちょっかいを出さないって、自信ありますか?」

 「う゛っ」

 今は昼下がり。そろそろ2時になろうかという時間。

 ここPiaキャロットでは一番退屈な時間。ちょうど、お昼のラッシュは終わり、3時のおやつにとよるお子様連れの若奥様達や学生の授業終了時間には早い時間。その時間に、ユリカとルリがいる。あとでカイトとエリナが合流する予定だ。

 「お客様、お待たせしました。苺パフェとダージリンをおもちしました」

 「あ、カイト君ご苦労様」

 ウェイター姿のカイトが、ユリカに苺パフェをルリにダージリンを配る。

 バイトを始めて三ヶ月とちょっと、かなり様になっている。時折見せる営業スマイルでない心からの笑顔が売り上げを1割り増しさせたとか、させないとか。

 「カイトさん、休憩はまだなんですか? そろそろエリナさんが来る時間ですけど」

 「これで、休憩だよ。ちょっとまってて」

 カイトは軽く返事をすると、控え室に戻る。そして、服を着替えて戻ってきた頃にはちょうどエリナも来ていた。

 「ご注文の品ですが、以上でよろしいでしょうか?」

 エリナには、コーヒー。カイトにはハンバーグセット。

 「ありがとアズサちゃん」

 カイトが気楽にウェイトレスに声をかける。

 「今日は3人ですか。相変わらず、もてるんですね」

 「それじゃ、アズサちゃんも一緒にお茶する?」

 「お客様、お戯れは困ります。というより、そんな事しているとあとで刺されますよ。ふふふっ。それでは、ごゆっくり」

 アズサは、そう言うとふわっとスカートをひるがえして仕事に戻っていった。

 「今日はですか……」

 ルリの冷たい視線がカイトを射抜く。

 「そ、そんな。仕事中にそう言うことはしてないよ」

 「仕事中ですか。なら、仕事以外ではそう言うことがあるんですね」

 「たまに、お茶にさそわ……はっ」

 冷たい視線が1つ増える。あとの1人はよく分かってないようだ。

 「あの……ここの支払いは僕のおごりかな?」

 引きつった笑みを浮かべながらカイトがたずねる。

 「「あたりりまえです(でしょ)」」

 この後、さらにクッキー、アイスクリーム、ケーキなどを注文された。木ノ下店長が、「いやぁ〜。いつも売り上げに貢献してくれてありがとう」と、いったとか言わないとか。

 溜飲が少しは下がったのだろうか、エリナは3つ目のケーキを食したあとカイトに依頼されていたことを話し出す。

 依頼されていたこととは、カイトの過去である。

 あの逃亡劇のあと、帰りの電車の中で、カイトはあのときのことを全てみんなに話した。実験結果、跳べなかったはずであるが、カイトが熱心に頼むので再度調べてみたのである。

 「もう一度調べてみた結果なのだけど、データベースにはあなたが死んだ年と場所しか書いてなかったわ。関連系統も調べてみたのだけど、ほかには全くなし」

 「けど、不自然でした。1人分ぬけていると思われるデータも数多くありました」

 エリナの手伝いをしたルリが言葉を続ける。

 「まっ、そんなことで地道に聞き込みをした結果、カイト・ミナヅキという人物がいたのはたしかよ」

 「ふぅん。どんな人だったんですか?」

 ユリカが不思議そうにスプーンを加えたままたずねる。

 「半ば、伝説の人ね。だいたい15歳頃から戦場にでて、総撃墜数が300超えるって話。ちなみにそれは火星会戦前の話。あと、上官命令を無視してでも部下を生き残らせ、敵を徹底的に殲滅させるその姿から"死を舞う者"とも呼ばれていたらしいわ」

 実感が全くないのか、カイトはきょとんとしている。

 正直、エリナもこの話を聞いたとき冗談が過ぎると思った、いや今でも信じがたい。この人畜無害(女性関係を除く)のほほん男がそこまで出来るとは思えなかった。しかし、調査結果から容姿の面ではほぼ同一人物であることは揺るぎもない事実だった。

 「撃墜数300以上ですか。というと絢爛○踏ですか?」

 「こらこら。ルリちゃん、それはG○M」

 すかさず、カイトがつっこむ。それ以前になぜこの2人は知っている?

 「ふぅん。で、ルリちゃん、信じられる?」

 「今のカイトさんからは、想像できませんね」

 「まっ。普通そうよね。私だってまだ半信半疑なのだから」

 「あの。当人の前でそう言いますか?」

 多少頬を引きつらせながら、カイトが言う。

 「なら、カイト君は出来ると思うの?」

 「無理、だと思いますよ。何しろ、火星会戦までに大きな戦争があったわけじゃないですし、それだけの記録を作ろうとしたら、かなりの内紛に参戦しないと不可能ですよ」

 「それって、論点がずれていますよ」

 「うんうん。まるで舞台がそろったら出来るって聞こえるよ」

 少しひいた調子で、ルリとユリカが言う。

 「そんな。できるわけないよ。2人とも過大評価だよ」

 引きつった笑みを浮かべながら、頬をかいてカイトはごまかす。

 一瞬、あのタイプCで機体強度が高く、武器の使用に耐えられるなら可能と思ってしまった。それも、どれだけ不利な戦場下でも敵の数さえいれば……

 「どうしたの、カイト君。もしかして、出来るなんて本気で思ってないでしょうね? あなたでもいくらなんでも無理よ」

 「また、エリナさんまで」

 苦笑気味に笑ってごまかす。

 「ま、冗談はこのくらいにして。分かっているのはこのくらい。で、アキト君がミスマル提督とラーメン対決をするって聞いたのだけど、どうなの?」

 これ以上ふれられたくないのがわかったのかエリナが話を変える。

 「アキトが"これはお義父さんとの約束だから"って言って手伝わせてくれないの」

 「納得してたんじゃなかったんですか?」

 「それとこれとは別。ラーメンを作る手伝いが出来なくても、今のアキトに何か出来ることがあるんじゃないかなって」

 「だから、ここ2・3日うなっていたんですね。安心しました、新手の病気かと思っちゃいましたから」

 「ルリちゃん、あのね」

 「僕はつわりかと……」

 「もぉ、カイト君もって、えっ!?」

 カイトの言葉を理解したのか、いやんいやんいいながら頬を真っ赤に染めて身もだえるユリカ。

 ようやく気付いたのか、ルリとエリナも赤くなる。

 「カ、カイト君。そう言うことはこういうところでは……」

 「僕が変なことを言いました? ルリちゃんもうつむいて………………はっ!?」

 ようやく自分のいったことを理解したのか、カイトはばつが悪そうに、頬をかく。

 「けど、それは深読みしすぎなんじゃ……僕はそう言う意味でいったじゃないよって、ルリちゃん何頼んでるの!?」

 「いいんです、このくらいの仕返し。エリナさんも何か頼みます?」

 カイトは店長に頭を下げて翌日の給料の前借りをしようかと真剣に検討したそうな。





 ラーメン対決当日。ミスマル邸には、大勢の人でいっぱいだった。

 それもそのはず、結婚パーティーの券を送ってくれたのはいいが、肝心のコウイチロウを説得できていなく、ようやく今日決着が付こうというのだ。ナデシコクルーが集まらないわけがない。この日のために、有休を取った者もまでいる。

 ぴんっと張りつめた空気の中、今日の日のためにユリカが隅々まで綺麗にした屋台で、アキトがラーメンを作る。

 ごくっ

 誰かが唾を飲む音がする。

 「へい、ラーメン一丁、お待ち」

 ことん

 ぱちんっ

 ずずずっ……

 コウイチロウがラーメンをすする音だけが、この場を支配する。

 ずるずるっ……ごくごく……

 「ふぅ……」

 コウイチロウの次の一言を待って皆緊張するなか、1人だけはのほほんとその光景を見ている。

 「テンカワ君……」

 「はい!」

 「おかわりだ」

 「は、はい。少々お待ちを」

 (おいおい、「旨い」か「まずい」だろ)

 (いや。もう一度味を確認するためでは?)

 予想外の言葉にナデシコクルーの間でどよめきが走る。

 だが、それを無視するように、コウイチロウは無心に2杯目のラーメンを食べ終えた。

 「ふぅ……おか……」

 「もぉ。お父様、いい加減にしてくださ〜〜い。さっき、おかわりしたでしょ」

 しびれを切らしたユリカが、答えを催促する。

 「おかわりするってことが、無言の答えじゃないですか?」

 「……そっか、ルリちゃんの言うとおりだね。で、お父様どうなんですか?」

 少し間をおいて、

 「そのだな……うん、うまい……」

 その一言にユリカの顔が輝く。

 「やったー。アキト、お父様が結婚していいって♪」

 喜びをあらわにしてアキトに抱きつく。

 アキトは、ユリカを落ち着かせると頭を下げて自分のラーメンのことを認めてくれたことに感謝する。

 「ふっ。なら、はっきりともう一度言おう。

う〜ま〜い〜ぞぉ!!

 だから、おかわり」

 「「「「だああ!!」」」」

 おかわりをしたのは、単にアキトのラーメンが美味しいからおかわりをしていただけ、という真実に皆ずっこけた。

 「そ、それじゃ、僕らもアキトのラーメンをご相伴しようよ!」

 「あ、カイト悪い。今日は5玉しか持ってきてないんだ……」

 アキトはばつが悪そうに頭をかく。

 「その心配はないよ! あたしがちゃんと持ってきてるから!!」

 ユリカがアキトに抱きついたまま得意そうに答える。

 「どこにだよ。いつもの棚には朝俺が入れた分しか」

 「うん、いつもの棚以外にちゃんといれてあるよ。だって、ルリちゃんやカイト君どころか、あたしにも味見させてくれなかったんだから」

 コウイチロウは、目の前で愛娘が元馬の骨といちゃいちゃしているのを、ラーメンをすすりながら横目で複雑そうに見ている。

 「さあ。お父様も認めてくれたアキトのテンカワ特製ラーメン、みんなも食べよ!!」

 真冬の冷たい風がふいているが、そこだけは暖かい湯気に満たされた。












 雑談会その6

 ひ〜ろ:さてさて、今回ようやっとアキトとユリカの結婚式が正式に決まりました。そのことに関して、振られたエリナさんどう思いますか?

 ばきっ!!! どかっ!!!

 ひ〜ろ:痛い・・・ヒールは反則だ・・・

 エリナ:そんな呼び出しのされ方をすれば怒るわよ!

 ひ〜ろ:ごめんなしゃい・・・

 エリナ:とにかく、結婚を認められてよかったわね。

 ひ〜ろ:以外と普通の反応・・・ごめんなさいごめんなさい。ヒールは勘弁して。(泣)

 エリナ:ふんっ。ADが早く進めろって言っているからやめてあげるわよ。

 ひ〜ろ:ありがとうございます(しかし、ADなんかおったのか)。結婚も決まったし、カイトの過去もちらほらでてきてるし。いい進みだ。

 エリナ:そう言いつつ、どさくさに紛れてGPM(ガンパレード・マーチ)ねたを出してるんじゃないわよ。

 ひ〜ろ:あれはいいゲームだ!! やらないのなら、PSを捨てろ。(w

 げしっ!!

 エリナ:何を言っているの!! 読者様に失礼でしょ。

 ひ〜ろ:いたひ・・・でも、楽しいんだ。

 エリナ:あ〜。はいはい。それはいいから、カイト君の過去の話にはいるわよ。

 ひ〜ろ:はいはい。って、調べてるんでしょ?

 エリナ:元シュトゥールのメンバーは4人だけは居場所が分かったのだけど、全員地球圏にいないのよ。そうしたのはあなたでしょ!?

 ひ〜ろ:そうだ。全部ネタばれしたら面白くないでしょ?

 エリナ:見もふたもないことを・・・けど、次回から火星に行くのでしょ?

 ひ〜ろ:そのとーり。そのときに会えればいいね。

 エリナ:なんだか会えなさそうね・・・

 ひ〜ろ:ともあれ、次回の「久しぶりに訪れる「故郷」にて 〜始まりと終わりの地〜」に期待せよ。

 エリナ:その前にちゃんと就職を決めなさいよ。

 ひ〜ろ:ぐさぁ!!! ごぶっ・・・










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