機動戦艦ナデシコ・妖精達の行進曲




第二話

格納庫にテンカワ・アキトはいた。勝手にエステバリスに乗ったことでどのような処罰を受けるか、聞いていたのだ。しかし、パイロットが少ないこともあり、臨時パイロットとしてエステに乗ることになった。
「俺はコックなんす。」
アキトがひとり言を言っていると、何か声が聞こえた。
「あのー、すいません。」
アキトが声のした方を向くと10才くらいの少年が立っていた。
「あの、その、ぼ、ぼくは、艦長の弟でミスマル・カイトといいます。先ほどは、その、姉さんが迷惑かけて、すいませんでした。」
ふかぶかと頭を下げるカイト。
「でも、姉さんは悪気があったわけではないんです。ただ、少し勘違いしただけなんです。だから、嫌いにならないであげて下さい。」
「いや、いいけど、どうしてカイト君がやったわけじゃないのに、謝るんだい。」
「姉さんは、昔からテンカワさんのことをよく話していたんです。アキトは私の王子様だって。そんな人に嫌われたら、きっと姉さん悲しむから。」
話を聞いたアキトは笑顔で答えた。
「別に嫌いになってないよ。」
その答えを聞いて明るくなるカイト。
「あいつの暴走は昔からだしな。それに、」
急に暗くなるアキト。
「俺はあいつに聞きたいことがあるんだ。」
「聞きたいこと?」
「え、何でもない、何でもない。」
カイトをごまかすように笑顔に戻るアキト。
「あ、俺、食堂に行かなきゃ。」
「あ、時間取らせてすいませんでした。」
また頭を下げるカイト。
「ああ、じゃあな。」
「はい、さようなら。」
そう言って二人は別れた。

数分後、カイトはブリッジに到着した。
ユリカを探しにきたのだ。
「失礼します。」
きちんと挨拶をして入るカイト。しかし、そこにユリカの姿は無かった。
「あれ、姉さん居ないのかな。」
「艦長ならテンカワさんの所に行きましたよ。」
カイトが声のした方を見るとそこには、ホシノ・ルリがいた。
「ほ、ホシノさん。」
ルリを見つけた瞬間、顔が真っ赤になるカイト。
「なかなか帰ってこないと思いますよ。」
「あ、ありがとうございます。」
顔を真っ赤にしながら答えるカイト。
「あれ、そういえば、ホシノさん一人なんですか。」
「皆さん部屋の片付けがまだとかで部屋にもどりました。」
それから、しばらく真っ赤なカイトとルリが話してしていると、プロスぺクターが入ってきた。
「すいません、皆さんを呼んでくれませんか。重要な話がありますので。」
「あの、重要な話なら、ぼくは居ない方がいいですか?」
「いえいえ、カイトさんにも関係のある話なので、居て下さって結構ですよ。」

そして、数分後、主要メンバーがそろった。そこで発表されたことは、本当の目的が火星ということだった。プロスペクタ−の話によると、これからは軍とは、別の行動をとり、火星の人々の救助に向かうというのだ。しかし、その話に反対する者達がいた。ムネタケ一味がそれだった。またたく間に占領されるナデシコ。
そしてナデシコの前に現れた戦艦。
「こちらは連合宇宙軍第三艦隊提督、ミスマルである。」
「お父様。」
「父さん。」
コウイチロウを見て、驚くユリカとカイト。
「お父様、これはどういうことですの。」
「おー、ユリカ、カイト元気だったか。」
「「はい」」
「これも任務だ。許しておくれ、パパも辛いんだよ。」
親子ばかトークが続くなか、プロスペクタ−が割り込んだ。
「困りましたなー、連合軍との話し合いは済んでいるはずですよ。ナデシコはネルガルが私的に使用すると。」
「我々が欲しいのは、今、確実に木星蜥蜴どもと戦える兵器だ。それをみすみす民間に。」
「いやー、さすがミスマル提督。わかり易い。じゃぁ、交渉ですな。そちらに伺いましょう。」
「よかろう。ただし、作動キーと艦長、並びにボディーガードのミスマル・カイトは統監が預かる。」
「へ?」
「え?」
急に話をふられたミスマル姉弟。
周りは抜くな、とか抜くべきだとかいたが、「抜いちゃいました。」と結構あっさり抜くユリカ。そして、ナデシコのエンジンは、止まった。

その後、ユリカ、カイト、ジュン、プロスペクタ−の四人はヘリでトビウメへ行くことになった。
ジュンとプロスペクタ−は交渉へ、ユリカとカイトは、コウイチロウの部屋に入れられた。
「ジュン君達遅いなー。」
「まあ、落ち着きなさい。それより、ユリカ、カイト、少しやせたんじゃないか?」
「お別れしてまだ、2日ですわ。ねえ、カイト。」
「う、うん。」
何か不安げなカイト。」
「まあ、それはそれとして、お腹空いたろう?たーんとお食べ。フタバのケーキだ。ショートもチョコレートもチーズもたくさんあるぞ。」
しかし、ユリカはケーキに興味がなさそうだった。
「ねえ、お父様、テンカワ・アキト君を憶えていますか?」
「え。」少し驚いてような顔をして、ユリカを見るカイト。
「はて、誰だったかな?」
「火星でお隣だった子です。」
「火星。」
「私、アキトに会いました。」
「アキトのご両親は亡くなられそうなのですが、何かしりませんか?」
「さ、さあ、わしは何も知らんが。」
そんな会話をしていると、急に艦が大きく揺れた。
停止していたチューリップが動きだしたのだ。
コウイチロウが急いで、ブリッジに着いたときには、護衛艦二隻がチューリップに吸い込まれていた。
「ナデシコ発進準備、さあ、ユリカ、キーを渡しなさいって、あれー???」
そこにユリカは居なかった。
「ここですわ、お父様。」
「ユリカ。」
「もう一度、お訪ねします。アキトのご両親の件ですわ。」
「ユリカ、何いってんだよ。」
驚くジュン。
「私には、大事な問題なの。」
そうしている間にも、活動し続けるチューリップ。
「お父様、本当のことおっしゃって。」
「ユリカ、確かにそんな話も聞いたかもしれん。しかし、お前に聞かせるのは、しのびなくて。」
「わかりました、行きましょう。」
「はい。」
「なに。」
驚くコウイチロウ。動き出すヘリ。
「またんか、どこに行く気だ。」
「ナデシコです。」
「え。」
「ユリカ、提督に艦をわたすんじゃ。」
「私は、ただアキトの話を確かめにきただけです。」
「ユリカー!」叫ぶコウイチロウ。
「艦長たるもの、たとえどんな時にも艦を見捨てるようなことはいたしません。それを教えてくださったのは、お父様じゃありませんか。それにあの艦には、私の好きな人が乗ってるんです。」
「な、なにー!!!」えらい顔で驚くコウイチロウ。しかし、その目がユリカの後ろに座るカイトに向けられた。
「カイト、お前からもユリカに言ってくれ。」
カイトは何かを決意したよにこたえた。
「ぼくは、ぼくはナデシコに戻ります。」
「なに!」
「ぼくはまだ、自分のしたいことを何もしてません。だから、だから、ナデシコに戻ります!」
自らの決意を伝えるカイト。
それを見てうれしそうな顔をするユリカ。
「それでは、お父様、さようなら。」
「ま、まて、ユリカ、カイト!」
コウイチロウの叫びを無視して飛び立つヘリ。
しかし、その時、小さな影がユリカたちにバレないようにヘリに飛び付いた。ユリカ達は何も気づかずナデシコに戻っていった。

ユリカ達が戻った後のナデシコは凄かった。アキトとガイによる、少し変わった合体(カイト談)、そしてチューリップに入った状態からのグラブティブラスト。チューリップは破壊された。さらにそのまま、にげて行くナデシコ。
「提督、追撃は。」
「追撃?今から行っても勝ち目はない。作戦は失敗だ。」
「提督、大変です!」
「どうしした。」
「パイロットがマシンチャイルドのパイロットが居ないんです。」
「なに!どういうことだ!」

一方、そのころナデシコは、めちゃくちゃ落ち着いていた。というかみんなもう疲れてだれていた。そんな、ムードの中、
「艦長、大変です。」
全然大変じゃ無さそうにいうルリ。
「どうしたの?」
「侵入者です。」
「「「「えー!」」」
いっきに緊張がブリッジを包んだ。
「今、どこですか!」
そくざに侵入者のいる場所を尋ねるカイト。
「ここから、一番近い自動販売機です。」
すぐさま、走っていくカイト。しばらく走って自動販売機の前でカイトが見たものは、
モップみたいな髪型をした少年が、自動販売機の下に手を突っ込んでいた。
「あのー、何をしているんですか?」
「ん、ああ、こういう所ってさ、小銭とか落ちてんじゃん。」
さも当然のように答える少年。しばらくして、少年は、手を抜き取ると、
「俺は、シバハラ・エン。元宇宙軍パイロット。ナデシコに乗りたかったから、さっき辞めてきた。ま、よろしく。」
と言って手をだす。
「は、はあ。」
とまぬけな声を出しながら、握手するカイト。これが後に、「守護妖精」と呼ばれるカイトと、「狂った妖精」と呼ばれるエンとの初遭遇であった。


あとがき
すいませーん、こんなに待たせちゃって。次からはもっと早く書きます。そして、オリキャラ登場どうでしょうか?次回にエン君の詳しい情報を書きますので、よろしく。



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