機動戦艦ナデシコ
〜The chronicle of a bond〜




――そこは、不思議な場所だった。

――戦艦らしくない戦艦。そんな変な場所だった。

――けど、そこで得たものは僕にとって、みんなにとって、とて
  もとても大切なものとなったんだ。

――誰かが言っていた。そこは、「自分達が自分達でいられる場所
  なのだ。」と。

――そう、その名は・・・・『ナデシコ』。



第壱話 『「出会い」の集う方舟』



<2196年、地球、サセボドック>

(急がなきゃ・・・・。)

爆音の鳴り止まない軍事施設の中を、一人の少年が走っていた。

黒目に黒髪。年齢は10代の半ばほど。どこにでもいるような普通
の少年だったが、この場所ではそれが逆に異様だった。

右手の甲に、何かの模様がある。それは体内にナノマシンを注入し
た者が持つ、IFSのインターフェイス部であった。ただ、その形
は一般的なものとは違った形状をしていた。

(急がなきゃ・・・・!)

少年の視界の隅に、バッタやジョロなどの群れに突撃していく、ピ
ンク色のエステバリスが見えた。

出てきてからの最初の行動からすると、囮役だったのだろうが、あ
の行動はどう見ても無謀だ。

地下ドックの入口に辿り着く。

「!!」

不意に一機のバッタが少年の前に着陸する。

バッタは少年を捉え、目からレーザーを放つ。少年は咄嗟に横に跳
んでそれを回避。地面を転がりながら懐から大型拳銃を抜き、うつ
ぶせ状態でバッタへ発砲する。

頭部に命中。バッタがよろめく。

すかさず少年は体を起こして片膝を立て、銃をがっしりホールドし
て続けざまに数発発砲。そのすべてがバッタの頭部に命中し、バッ
タは活動を停止した。

「ふぅ。」

少年の銃の名はデザートイーグル.50AE。かの44マグナム弾
の約1.5倍もの威力を持つ50AE弾を使用するバケモノ拳銃で
ある。もうすでに大昔の銃なのだが、オートマチック・ハンドガン
としては、未だにトップクラスの威力を持つ銃であった。

その分、2s近い重量と並外れた反動で扱いが難しく、そんなもの
で精密射撃を行うことは、ほとんど神技に近かった。

少年は急いで銃を懐にしまうと、地下ドックへと向かって走り出し
た。

(急がなきゃ!・・・・ナデシコへ。)

<ナデシコ、ブリッジ>

「ドック内、注水準備を開始します。」

オペレーター席で、ホシノ・ルリは素っ気なく言った。

ナデシコの中枢コンピュータ「オモイカネ」を経由して、地下ドッ
クの注水を外部から操作していく。

「相転移エンジン起動。出力順調に上昇中♪」

ルリの右側、一つの空席を挟んだ操舵席にいるハルカ・ミナトが明
るい声で言った。こんな状況なのに、緊張感が見られない。

「ドック内の人達の退避、完了しました、艦長。」

今度は、ルリの左側の通信席にいるメグミ・レイナードが、こちら
は打って変って真面目な声で言い、上にある艦長席を振り向く。

だが、当の艦長、ミスマル・ユリカは

「頑張れ!アキト!」

だの

「アキト!危ない、避けて!・・・・上手い上手い!」

だのと、地上で囮になっているピンク色のエステバリスに夢中で、
話をまったく聞いていない。何でも、それのパイロットは「私の王
子様」だとか。(本人は否定していたが。)

「あの、艦長・・・・?」

「あ、はい。何でしょう?」

「・・・・注水、開始します。」

ユリカの指示を待たず、ルリは注水を開始する。

(ホント、バカばっか・・・・。かんべんして。)

先のミーティングで、現状で最も有効な作戦を即座に提案したのに
は感心したが、これを見るとそれも薄れてくる。


そもそも、昨日ルリがこのナデシコに着任して以来、彼女が出会う
人は、ことごとく彼女曰く「バカ」ばかりであった。エステバリス
で大立ち回りを演じたあげく、左足を骨折したパイロット(今はブ
リッジの下で、モニターに向かって何か叫んでいる)、情操教育に
悪そうな格好の元・社長秘書、自販機を始め、艦内のものを勝手に
改造するメカニック、ウサギの着くるみを着て廊下を徘徊する元・
声優、極めつけが脳天気でハイテンションな艦長だった。

スカウト役だったプロスペクター曰く「性格に問題があるが、腕は
一流」なのだそうだ。

しかし、この現状を見る限り、ルリが「ホントに大丈夫なのかしら
?」と思うのも、無理はなかった。

ふと、服の下から、あの瑠璃石を出す。

昨日、乗員リストを確認したところ、「カイト」という名はなかっ
た。

カイトは言っていた。「ナデシコで会おう。」と。

しかし、彼の名が無いとなると、彼が言っていた「ナデシコ」は別
のものだったのだろうか。

それを知りたくても、もう戻ることは出来ない。仮に戻れたとして
も、あのセンターに戻る気にはなれなかった。

「ハァ・・・・。」

ルリは小さなため息をつき、石を服の下にしまった。

ふと、艦内状況を表すウィンドウに目が行く。

(あれ?)

おかしな所があった。確認してみるが、間違いない。

(おかしいですね・・・・。一人増えてる?今日までに乗艦予定だ
った人は、足を骨折したヤマダさんを例外とすると全員乗艦してい
ますし・・・・。どういう事でしょう?)


(格納庫は・・・・こっちか!)

(ここだな・・・・。!エステがあった!よし・・・・。)

一気にそこまで走る。こちらに気づいたメカニックが、何か叫んで
いたが、それを無視。メンテナンスベットに横たわっていた白いエ
ステバリスのコックピットに入る。

(IFS、接続開始・・・・。起動!)


一方、地上では、
「いい加減にしろよー!」

囮役のエステバリスのパイロット、テンカワ・アキトが突如、機体
を振り返らせ、敵群の真っ只中へ突撃し、ワイヤード・フィストを
放った。

それは見事にジョロに一機に命中。爆発するジョロ。

「すっげーっ!ゲキガンパンチみたいだ!・・・・よーし。」

最初の一撃に気を良くしたのか、アキトは機体を大きく跳躍させ、
上空のバッタの群れへと向かっていった。

「食らえ!」

続けざまに、両腕からワイヤード・フィストを放つ。いずれもバッ
タに命中、光球へと変化させる。

「なんだ・・・・。俺って、けっこうやれるじゃん。でも・・・・
今さら・・・・。」

脳裏に浮かぶ火星での光景。迫り来るバッタ、救えなかった少女の
笑顔、そして・・・・。

その一瞬をつき、二機のバッタがアキト機の背後に取り付き、動き
を封じる。

「うわっ!?」


「テンカワ機、敵に捕えられました。」

「アキト!!」

ユリカが叫ぶ。

「!艦長。格納庫より通信は入ります。」

ウィンドウに慌てた顔の整備班長、ウリバタケ・セイヤの顔が映っ
た。

「艦長、大変だ!どっかのガキがいきなり走りこんで来て、エステ
に乗っちまった!」

彼の後ろで、白いエステバリスがゆっくりと起き出す。

「!オペレーターさん、あのエステに通信開いて。」

先程とはうってかわって真面目な表情で、ユリカが言う。その顔に
は、どことなく艦長らしい威厳がある。

「了解。あ、それと私の事はルリでいいです。」

ウィンドウが開く。

少年がいた。黒目黒髪の少年が。

ルリはそれを見て、はっと目を見開いた。火星で会った、あの人の
イメージが浮かぶ。

(この人は・・・・まさか。)

「誰だね、君は。」

フクベ・ジン提督が静かに聞く。

「カイト、カイト・ブルー。サブオペレーターです。本日付けで、
ナデシコ配属になります。」

その名を聞いて、ルリの期待は確信に変わる。

「ちょっと!何でサブオペレーターがエステに乗ってるのよ!?」

オカマ口調のムネタケ・サダアキ副提督がわめきちらす。

「そんな事言ってる場合じゃないでしょう!このままじゃあの人、
やられますよ!」

少年の勢いに押され、思わず口を閉ざすムネタケ。

「心配ならいりません。操縦経験ならあります。任せて下さい。」

「分かりました。ルリちゃん、彼に進路ルートの修正データを。」

「ユリカ!」

副長、アオイ・ジュンが抗議する。

「まあまあ、彼の事なら、心配御無用ですよ。」

ジュンをなだめるプロスペクター。何か知っているのか、静かな微
笑を浮かべる。

「ちょっと待ったぁ―!」

ウリバタケのウィンドウが再び開く。

「カイトと言ったな。いいかよく聞け。お前の乗ってるエステは、
組み上げたばっかなんだ!IFSの調整も、バランサーの調整もロ
クにしてなく、バッテリーの充電の方も完全じゃない。そんな状態
じゃ、機体スペックの半分も出ねぇぞ!」

その事はカイト自身も分かっていた。現に起動してからずっと、I
FS接続にノイズが走っている。

だが、彼は意気込んで答える。

「大丈夫です。囮くらいなら、十分にやれますよ。バッテリーの方
も十分持ちます。」

「しかし・・・・。」

「艦長!・・・・やらせて下さい。」

「・・・・分かりました。ルリちゃん。」

「了解。データ。送ります。」

その声が微かに、本当に微かに震えていたことに、この時誰も気づ
かなかった。

カイトのコックピットに、ルリのウィンドウが開く。

ウィンドウ越しのルリの顔を見て、突然、カイトは驚愕の表情を浮
かべた。

「君は・・・・。」

「えっ?」

「君は・・・・確か・・・・。」

少年の声が、明らかに震えている。

「君は・・・・僕を知ってるの?」

「え!?」

カイトの言った言葉の意味が分からず、ルリは困惑する。

カイトが続けて何かを言おうとした時、

『うわあぁぁぁぁぁ!』

アキトの叫び声がブリッジに響く。

「!出ます!ハッチを開けて下さい!早く!」

カイトが急かす理由は、他にもあった。現在ドック内は注水中。早
くしないと、ハッチの開放自体が不可能になる。

「くっ、どうなっても知らねぇぞ!」

ウリバタケが部下にハッチ開放の指示を出す。

コックピット内に、突如ユリカのウィンドウが出る。

「カイト君・・・・でいいかしら?」

「はい、何ですか?艦長。」

「アキトを・・・・アキトを、お願い。」

「・・・・その人は、あなたの大切な人ですか?」

「え?・・・・えぇ!」

心持、頬を赤くして答えるユリカ。

「了解しました。必ず、助け出します。」

そう言って、少年は笑った。

その笑顔をみて、ルリの確信はますます強いものとなった。

(この優しい笑顔・・・・。あの時と同じ。じゃあ、この人はやっ
ぱり、けど、なら何故・・・・。)

「ハッチ開くぞ!」

「了解。カイト、出ます!」

ナデシコから出撃していく、白いエステバリス。


――君は・・・・僕をしってるの?

(あの人は何故、あんな事を・・・・。)

ルリは、無意識に自分の胸に手を当て、石の感触を確かめる。

瑠璃石。あの人がくれた石。不安を払う幸運の石。

あの時以来、不安を感じた時に行う、彼女の癖だった。

「でも、今エレベーターは使えないでしょ。あの子、一体何処から
地上へ出るつもり?」

ミナトがぼそりとつぶやいた。


スラスターを吹かして、カイトは今、地上へと続く唯一の道、エス
テがぎりぎり二機通れるくらいの広さしかない通気口を上昇してい
く。

だが、陸戦フレームのスラスターでは、地上まで到底足りない。

「ふっ!」

ディストーション・フィールドで包んだ脚部で、通気口の壁を蹴り
つける。そうして出来た窪みを足場とし、さらに上へ。反対側の壁
を同様に蹴り、けっして広くはない通気口を三角跳びの要領で登っ
ていく。

「すごい・・・・。」

メグミが思わずつぶやく。

ブリッジ全員が、その光景を呆然と見つめていた。


地上に出る。

「あれか・・・・。」

見上げると、上空にバッタに捕えられながら攻撃を受けている、ア
キト機の姿がある。

腰から大型のイミディエット・ナイフを取り出し、スラスターを全
開にしてジャンプ。

「うおぉぉぉぉぉ!」

アキト機に体当たりを仕掛けようとしたバッタを、勢いのままナイ
フで一閃。一刀両断のまま、爆発するバッタ。

そのまま機体を反転させ、頭部のバルカン砲でアキト機に取り付い
ているバッタ撃ち抜く。

バッタを振り払い、落下していくアキト機。体勢を整えて着地。カ
イト機もその隣に着地する。が、着地した直後、機体が大きくよろ
めく。今までの一連の行動が、かなりの負荷となったらしい。

必死に機体を制御しつつ、カイトは隣のエステに話しかける。

「そこのエステバリス。聞こえますか?」

「あ、あぁ。」

「あんな突撃をするなんて無謀ですよ!無茶のいいところです!そ
んな事を続けていると・・・・死にますよ。」

その静かな迫力に息を呑み、落ち着きを取り戻すアキト。

「今から、進路ルートの修正データを送ります。僕と一緒にそのル
―トを走って下さい。いいですか。僕達はあくまで囮なんです。」

「わ、分かった。」

並んで走り始める二機。

「ルート上の敵だけを狙って。他はなるべく無視して下さい。
・・・・来ます!」

前方に四機のジョロ。

「この!」

アキトがワイヤード・フィストを放つ。

ジョロの一機に命中。隊形が崩れる。

「ナイス!」

カイトは機体を加速させ、残ったジョロをナイフで全て一刀両断に
する。

「!」

機体のバランスがまた崩れる。これも必死に制御し、立て直す。

「おっ、おい!大丈夫か!?」

「え、えぇ。大丈夫です。」

そうは言うものの、警告を知らすアラームがさっきから鳴り響き、
機体状況を映すモニターが赤く変わっていく。

(やっぱり、最初の無理がたたったか。・・・・もう、そんなに持
ちそうもない。)


二機が海へと続く崖にさしかかる。

「そろそろ、合流地点ですね。・・・・!」

「な!?」

前方の崖の下から、約十機のバッタが姿を現した。

(先回り!?進路を読まれていたか。)

「ど、どうする!?」

「くっ・・・・。」


「海底ゲートを抜けたわ。これより浮上するわよ。」

「合流地点まで、あと30秒。」

(間に合わない!)

誰もがそう思った。

(カイトさん!)

ルリが胸に手を当てる。

不意に、新たな反応が入る。

「!高速で接近する機体あり。機種・・・・不明。」

「「「「えっ!?」」」」

「来たようだな。」

ゴートがつぶやく。

「えぇ、『亡霊』のお出ましですな。」

プロスペクターがニヤリと笑った。


『二人とも、そこを動くな。』

「「えっ?」」

突然の通信と共に、謎の機体が接近して来る。

先程まで二機を追っていたジョロやバッタが振り返り、その機体に
一斉射撃。

だが、次の瞬間には、その機体は敵からの火線はもちろん、敵群ま
でも突き抜け、崖にいるバッタ達にラピッド・ライフルを斉射。四
散していくバッタ達。

二機の前に着陸したのは、紺碧色のエステバリスだった。だが、そ
の全長は二機よりも一回り大きい。

驚くアキト。

それとは打って変って不満顔でカイトがいう。

「遅いですよ、アークさん。」

「すまない。こいつの調整に時間がかかってな。さて、と。」

アークは使い捨て用のブースターを排除し、両肩に付けているマイ
クロ・ミサイルポットを射出する。ポットからミサイルが次々と発
射され、ジョロやバッタに命中していく。

「(時間だな・・・・)よし、二人とも、海へ飛び込め。」

「「へ?」」

今度はカイトまでもが驚く。

二人の機体は、アキトの方はあちこちに被弾しており、カイトの方
は目立った損傷は無いもの、既に限界に近い。海に飛び込んだりし
たら、着水の衝撃に機体が耐えられそうになかった。

だがアークは

「いいから飛び込め。」

と二人を急かす。

「「い、いや・・・・でも・・・・。」」

「早くしろっ・・・・ての!」

痺れを切らしたアークが、カイトの機体を蹴っ飛ばし、空いている
方の腕でアキトの機体をど突く。

二機は空中で一瞬、停止し、

「「う、うわあぁぁぁぁぁ!」」

仲良く落下していった。

海面に衝突する直前、二機の脚が何かを捉える。

二機を頭上に乗せ、海中から浮上していくナデシコ。

丁度上り始めた朝日の光を浴びて、その白い艦体が映え渡る。

アークはその様子を確認すると、敵機へのライフルの射撃を中断、
自らもナデシコに飛び移る。

「おまたせ、アキト!」

「おまたせったって、まだ合流時間になってないぞ。」

「あなたのために急いで来たの。」

「敵残存兵器、グラビティ・ブラストの有効射程に全て入っていま
す。」

「目標、敵まとめてぜ〜んぶ、てぇ〜!」

ナデシコから黒い閃光が放たれ、ジョロやバッタを全て巻き込み、
ことごとく爆発させていった。


「戦況を報告せよ。」

「バッタ、ジョロとも残存ゼロ。地上軍の被害は甚大だが、戦死者
は奇跡的に皆無。」

ブリッジから歓声が上がる。

「そんな。偶然よ、偶然だわ。」

うらたえるムネタケ。

「認めざるを得まい。よくやった、艦長。・・・・艦長?」

「ありがとうアキト。また私を助けてくれたのね。」

「別に、お前を助けたわけじゃ・・・・って、それはともかく、な
んでお前そんな所にいるんだよ?それって、軍艦だろ?」

「うん。ユリカはこのナデシコの艦長さんなのだ。エッヘン!」

そう言って胸を張るユリカ。先程のフクベの言葉など、聞いてもい
ない。

「アキトこそ、どうしてここに?そっか、愛の力でユリカのピンチ
が分かったのね!」

「バッ、バカ。俺はただ、これを見て・・・・。」

アキトは幼い頃の自分とユリカが写っている写真立てをだす。

「それをわざわざ届けに?アキト、優しい!」

ずっこけるアキト。

「違う!俺はただ――。」

「ううん、何も言わなくていいの。アキトの言いたい事はわかって
る。だから、これからの事は二人で話し合いましょ?」

再びずっこけるアキト。話を聞きそうにない・・・・。

他の人も、「やはり、私の人選は間違っていなかったようですな」
「こんなの、私は認めないわ。ただの偶然よ」「みごとだ、艦長」
「何か、先行き不安です」「俺のゲキガンガー返せよな!」「そぉ
?何か楽しそうじゃない」とめいめい好き勝手に騒いでおり、何が
誰のセリフか分からない。

ルリはそんな状況に「ふぅ。」とため息をついた。

モニターの隅にあるウィンドウに目が行く。

そこには、カイトが映っていた。

また会えた。そう思うと嬉しさがこみ上げてくる。だが、それと共
に、さっき彼に言われた言葉が気にかかる。

自然に、胸に手が行った。

(・・・・それにしても。)

「とりあえず勝ったんだし、いいんじゃない♪」「俺の話を聞けー
!」「んなことよりゲキガンガー返せー!」「アキトは私が大大大
好き!」「宇宙へ行っても、転職願い出せるのかなぁ」「人の話を
聞けー!」

(この騒ぎいつまで続くんだろ。ホント)

「バカばっか。」

一方、ブリッジの人達に忘れ去られた(一部除く)二人は、その様
子に顔を引き攣らせていた。

「あの、アークさん。」

「何だ。」

「ここ、ホントに戦艦なんですか?」

「言うな、頼むから・・・・。まったく、ネルガルもなに考えてん
だ?」

「僕達、これからここで働くんですよねぇ?」

「まあ、な・・・・。貧乏クジ引いたかもな、これは。(それより
俺の着艦許可、いつになったら下りるんだ?)」

二人は大きなため息をついた。

(でも・・・・。)

カイトは改めてブリッジのウィンドウを見る。そこには未だ収まら
ない騒ぎにうんざりしている、ルリの姿があった。

(この子・・・・確か・・・・。)

・・・・物語は、まだ始まったばかりである。


―あとがき―
第壱話、お送りしました、Gバードです。

何と言うか、しんどい〜。そんだけです。長期投稿しているみな
さんがすごい。

零話の時点で、もう辛口感想をいただき、とくに前述の方はグサ
ッときました。そうだよね・・・・冷静に考えるとね・・・・。

まだまだ素人の私です。ご指導、よろしくお願いします。

感想は甘口辛口、ダメ出しや質問など、なんでもどうぞ。では!


〜次回予告〜

カイトの言った言葉が気になるも、そのことを聞きだせずにいるル
リ.軍の妨害により、活動停止となるナデシコ。消沈の中、アキト
は、アークは、そしてカイトは、自らを語りだした。

次回、機動戦艦ナデシコ 〜The chronicle of a bond〜
第弐話 『宇宙(そら)へ、火星へ』

アーク「さ〜てっと・・・・派手にいきますか!」


〜人物紹介〜
カイト(カイト・ブルー)
出身不明、年齢15(推定)
木星蜥蜴火星襲来後、アークと共に地球で倒れていたところを発見
された、謎の少年。名前以外の全ての記憶を失っており、その名前
も本名かどうかは確かではない。ネルガルに保護され、アークと共
にエステバリスのテストパイロットをやっていた。高い身体能力と
器用さを秘めており、学習能力は人一倍高い。エステの腕も一流
(未だ、アークには勝てないらしいが)。パイロット用とオペレー
ター用のIFSを足して割ったような形の、特殊なIFSをしてお
りナデシコのオペレーティングも可能だったため。ネルガルの指示
で、パイロット兼サブオペレーターとしてアークと共にナデシコに
配属された。黒目に黒髪、髪の長さはアキトより多少長い程度。基
本的に明るく、優しい性格なのだが、記憶が無いせいか、時折寂し
げな表情をみせる。なお、性がブルーなのは、アークが彼の身柄を
引き取ったためである。

アーク(アークライト・ブルー)
出身地球(らしい)、年齢18(推定)
木星蜥蜴火星襲来半年前に、突如火星でエステバリスのテストパイ
ロットに志願してきた少年。それ以前の経歴は不明。木星蜥蜴襲来
時には、防衛部隊としてエステで出撃し、数多くのシャトルの脱出
に貢献している。その後、何故かカイトと共に地球で発見され、ネ
ルガルからの要請で、エステバリスの実践データの収集を目的とし
て、木星蜥蜴を相手に、世界各地の戦場を渡り歩いていた。突破不
可能と言われる敵陣をいとも簡単にかいくぐり、敵に大打撃を与え
る戦闘スタイルから、D.B(Deep Blue)ファントム(
:紺碧の亡霊)の異名を持ち、その並外れた能力からマシン・チャ
イルドでは、と噂されているが詳細は不明。ネルガルからの突然の
要請で、試作型のエステバリスのパイロットとしてナデシコに配属
される。黒目(実際は多少紫がかかっている)に黒髪。髪の長さは
カイトよりも長く、うなじあたりまで伸びている。冷静沈着な人物
だが、内心は優しい。
元ネタは某大戦ゲーム64のリアル主人公から。顔も彼をイメージ
してくれると分かりやすいです。


〜機体解説〜
カイト用エステバリス
基本的に他のエステバリスと変わらないが、基本装備として刃渡り
が通常の2倍もある大型のイミディエット・ナイフと頭部にバルカ
ン砲を備えている。中〜近距離戦を得意とするカイトにとって、こ
れらは勝手のいいものらしい。カラーはホワイト。

アーク専用エステバリス
ネルガルがアークの意見を取り入れて開発した試作機。グラビコン
・ システム(重力制御装置)というものを搭載しており、ナデシコ
からの重力波ビームのエネルギー効率が格段に上がったため。高出
力のジェネレーターを搭載し、高い性能を持つ。出力が増した分、
それに耐え切るための装甲やフレームが必要とされたため、必然的
に機体は巨大化し、7m近い全長となってしまった。そのため、エ
ステバリスの最大の特徴であるフレームの換装が不可能となり、機
体各所に設けられたハード・ポイントに、さまざまなオプションパ
ーツを装着することで、いろいろな作戦に対応できるようにしてい
る。他にも、特殊な装置を積んでいるらしいが、詳細は不明。
グラビコン・システムは某大戦αから、ゲーム内では重力障壁を発
生させることも出来ましたが、この作品内ではディストーション・
フィールドがあるので必要なし。エネルギー効率を飛躍的に向上さ
せる装置、と考えて下さい。


〜補足〜
「カイト君の年齢(推定だが)が零話と違う」と思った人がいると
思いますが、これはミスではなく意図的なものです。だったら零話
のカイト君は・・・・。分かる人は、もう分かったでしょう。作中
でそれが明かされるのはもっと後のほうになります。まだまだ先は
長いので・・・・。






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