温泉

ホシノルリは悩んでいた

この扉を開けるか否か?

何故そこまで悩むのか・・・

ここは混浴。想い人に気持ち伝える絶好の場所と親友から聞いた

『ここで戸惑ったら、一生後悔することになるわよ!』

(そう、ここで戸惑っていたら・・・)

ただでさえラピスに出し抜かれてばかりいるから、危機感は大きいもの

意を決して扉に手をかけ、

一気に開ける

 

 

しかし

 

可能性

追走曲

 

湯船につかる二人。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

お互いは無言であった。

雰囲気からして気まずい、とは感じられない。

なにしろカイトにとってラピスとのすっぽんぽんの極至近距離状態でのお風呂は日常茶飯事なのだ。

カイト一人ではいっていても、

「背中ながしてあげる〜」

な感じで何時の間にか二人で入るのが当たり前になってきている。

 

 

 

二人は背中合わせで天井の無い夜空を見上げる。

先制はカイト、

「いい天気だねー」

こくん、と頷くラピス。

立ち上る湯気に額を湿らせながらも、夜空を見上げる二人。

その夜空に、何を思うのか・・・

 

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

「なに?ラピス」

背中合わせのまま、

「いろんな事があったよねー」

「・・・・・・、そうだね」

ただ、ゆっくりと頷き返すカイト。

「・・・アキトに連れられてきて、ユリカに会って、ルリにも遭って・・・」

「?あれ、僕はいないの?」

ラピスはただゆっくりと、

「不安、だった。みんな、みんな!・・・ラピスと違った」

「ただ、黙ってて判んなくなって・・・、いられないって思った」

静かに、

「ラピスは、ラピスの事が分かんなくなって・・・」

「だったらそれは僕も同じだよ」

カイトは、

「自分が誰かも分からない」

「右も左も分からないまま、ただ流されて・・・」

「・・・でも」

「いつの間にか、誰かを信じて、そして・・・」

カイトは振り返り、ラピスの肩を掴み、

「・・・いっしょにいたい、って思ったんだ」

ラピスを後ろから抱き締める。

「・・・ラピスも」

ラピスは抱き締めているカイトの手に触れる。

 

 

「へっくしゅ!!」

 

小さなクシャミがした。

それを聞いたカイトは、

「風邪引くよ、ルリちゃん?」

と隠れているルリに言った。

ぴょこんと不安そうにドアから顔だけを出すルリ、

カイトはその仕草を見て微笑みながら、

「ほら、早く」

その言葉にルリは、

「・・・・・・・」

不機嫌そうに湯船に近づき、温泉に体をつける。

「・・・で、何時まで抱き締めてるんですか?」

カイトを睨む。

「んー。何だったら僕を抱き締めてみる?」

その言葉にルリは顔を真っ赤にし、

「ね?」

恐る恐る、カイトの首に手を回すルリ。

「ここにいるのは家族だけなんだから。ね?」

「「・・・・ハアー」」

ルリとラピスは同時にため息をつく。

 

 

「ねえ、二人とも」

 

「ん?」

「なんですか?」

 

「思い出は思い出だよね」

「だからさ、何時までも過去を追い続けて悩んでないでさ」

 

「前に?」

「進め。ですか?」

 

「うん、僕は・・・そう思うよ」

 

 

 

 

 

 

メインはラピスー。

ラピス「うん、一番」

ルリ「何・・・て言えばいいんですか?私は」

ラピス「うーんと、デバガメだったけ?」

カイト「そうなの?ルリちゃん」

ルリ「うー、違いますよー」

ルリ「それにしても、私最近冷遇されてません?」

・・・・・・ま、これも可能性だから。

ルリ「・・・カイトさんー(泣)」

カイト「まーまー(汗)」

 

 

 

今回のタイトル、追走曲:カエルの合唱のような歌の事、

            過去を追い続けるのはやめようって意味のこんなお話?

 

 


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