ぼろ汚いマンションの一室。

人気アイドル二人とそのマネージャーが仲良く暮らしていた。

そう・・・

その時までは・・・

 

可能性

支える気持ち

大事な思い

 

その時を壊したのは一本の電話だった。

「で、でもだからと言ってそんなことさせる訳にはいきませんよ!」

今時珍しい黒電話の受話器に怒鳴るカイト。

「ええ。はい、そんな気はまったく有りません」

(そうだ、これでいいんだ)

そう考え受話器を置こうとした時、

「・・・・・・・・・・」

受話器から流れてきたその人の名前に驚愕する。

「それ・・・本当なんですか」

受話器を持ち直し確かめる。

カイトにとって、カイトの家族にとって・・・それは忘れてはいけない名前。

「・・・少し考えさせてください」

そう言って電話を切るカイト。

溜息がこぼれる・・・。

(伝えなくちゃ・・・いけないのか)

カイトは愕然とする。

二人の妹に伝えなければいけない事実に・・・。

 

 

 

「ただいまー」

「今帰りました、ってあれ?」

アサミとルリが買い物から帰ったときすでに夕方、

部屋に明かりはなく、夕日が部屋を赤く染める・・・。

「・・・・・・」

自分たちのマネージャー、そして兄をも言える人物は壁を背に塞ぎこんでいる。

「カイトさん?」

「・・・・・・」

アサミは声を掛けるが、ルリは何かに気付く。

「電話が・・・あったんですね」

「電話?」

アサミは首を傾げるがルリは応えない。

「・・・ルリちゃん知ってたんだ」

「・・・ええ」

カイトの言葉に頷くルリ。

「・・・昼間電話があったんだ」

「「・・・・・・・」」

カイトはゆっくりと辛そうに語りだす。

「・・・先日のアマテラスの事件は知ってるよね」

カイトの言葉に頷く二人。

「火星の後継者、謎の黒い幽霊ロボット、・・・そしてナデシコ」

カイトは言い辛そうに、

「・・・・・・アキトさんが関わっている」

「・・・!!」

アサミにとって色々な意味でお世話になった人物。

「・・・・・・」

ルリとそしてカイトにとって大事な存在。

「今ナデシコにいるオペレーターじゃ経験不足らしい」

「・・・・・・」

ルリにとっても重い事実である。

「アサミちゃんには通信士をやってもらいたいらしい」

「・・・私は・・・別にかまいませんけど?」

アサミは軽く受け止めている。

「・・・カイトさんはパイロットですか?」

「・・・うん」

ルリの問いに頷くカイト。

「・・・何かあるんですか?」

「・・・・・・」

アサミはカイトに聞く・・・。

 

 

 

「・・・不安なんだ」

「・・・不安ですか?」

カイトの答えを聞き返すルリ。

「・・・君達をあの船に乗せることが」

「私たちをですか?」

カイトは目頭を押さえながら搾り出すように呟く。

「・・・アキトさんが関わっている。アキトさんは生きていた。どうして教えてくれなかったんだって思う。

 その答えが・・・僕は聞きたい」

「「・・・・・・」」

アサミとルリにとってそれは同じ思い。

「・・・我侭だって事は良く分かる。でも、怖いんだ。君達をナデシコに乗せて、僕もナデシコに乗って・・・

 何が起きるかが・・・」

「カイトさん」

アサミはカイトに近づく。

「・・・僕は・・・臆病だ」

「カイトさん!」

「・・・え?」

カイトが顔を上げた瞬間、

アサミはカイトの唇を奪っていた。

アサミはカイトから唇を離し、

「・・・勇気、出ました?」

アサミの問いにカイトの顔は真っ赤だ。

アサミも真っ赤。

ルリは固まっている。

「・・・間違わないでください。私、ううん私達はカイトさんがいるからこの生活を続けていけるんです。

 カイトさんがいるから私たちは・・・」

「ちょ、ちょっとアサミさん?」

ルリはアサミを呼びかける。

「なに、ルリさん?」

「抜け駆けは無しのはずですよ!」

何やら協定があるらしい。

「そんなこと言ったってー」

アサミは頬を膨らませ、

「・・・・・・」

ルリは無言で睨む。

「「っうわ!」」

「「ちょ、ちょっとカイトさん?」」

突然カイトはアサミとルリを抱き締め、

「・・・守るから。絶対に守ってみせるから」

「・・・カイトさん」

泣きながらカイトはそう呟く。

アサミはカイト抱き締め、

「大丈夫です。私たちもあなたを全力で守りますから・・・。

 あなたも・・・私たちを守ってください」

ルリもそう呟き、カイトを抱き締める。

 

 

 

 

 

この作品は星風 刃さんの設定をお借りして書き上げた一本です。

ルリ「今のナデシコのオペレーターは経験不足ですか・・・」

ハーリーの事ね。艦長は三郎太。

アサミ「遠回しに言わないでさ、役に立ってないって言っちゃえば?」

それがカイトの優しさだと思うよ。

「うわあああああああああん」

ルリ、アサミ「「・・・・・」」

・・・・・・。

はてさて今回の設定。

     シナリオ4「君がめざす『遠い星』」の後のお話。

     アキトとユリカの事故後、ルリはカイトに引き取られアイドルになる。

     ルリとアサミは親友同士。

などなど。詳しくはSSネタ掲示板をご覧ください。

 

 

 

青年カイト

     20ぐらい。

     長身。

     アキト並みに鈍感。

という設定

次回はリクエストにあったこの鈍感に振り回される彼女のお話・・・。

 


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