機動戦艦ナデシコ 時に抗いし者




機動戦艦ナデシコ
〜時間に抗いし者〜








第五話   料理バトル開催!《後編》


















「さて、それでは料理勝負のお題を発表いたします!

今回、2人に味を競ってもらうのは・・・・・・・・チキンライスに決定致しました!!


司会のジュンの進行により進んでいく料理大会

ステージの上には並んで立つホウメイとカイトの姿がある





初めてになる今回(次回があるかは不明)の大会では

シェフであるホウメイの得意分野での勝負という事で

お題の決定権はカイトに与えられたのだ







カイトにしてもチキンライスだけが、唯一ホウメイに勝つ可能性のある料理であった



カイトが人前に出しても大丈夫と自覚している料理がラーメンとチキンライスだけなのだ

ラーメンはホウメイに教わったアキトから教えを受けている

言わば孫弟子といった存在である

もちろんホウメイの腕は承知しているのでそれでは勝てない事は分かっている



ならチキンライスならどうか・・・


これはカイトがルリの為に試行錯誤して、作りあげたカイトオリジナルなのだ

これなら教わった料理の模倣ではない、自分の味で勝負が出来る・・・

可能性は0ではない








何よりルリの事もある



(約束もそうだけど・・・僕の作った方が美味しいって言ってくれてるんだ・・・

ルリちゃんに恥はかかせられないからな!)





「本当は料理をこういった見世物に使うのは御免なんだけどね」



カイトが自分の中で決意を新たにしていた時、横からホウメイの声がかかった

それは観客などに聞こえるようなものではなく、明らかに自分に話しかけているものだった





このホウメイの言葉を聞いて、カイトもそういえばと思った


カイトの知るホウメイはこのような大会に好んで参加する人ではない

例え自分と同様、急に言われたとしても、それを彼女が望まなければ

今ホウメイはこの場には立っていないだろう





「あの子がチキンライスをよく頼むのは知ってるからね

1人の人間に、いくら自分で料理を選ぶ事が出来るとは言え

何度も同じものを食べたいと思わせる料理を作るなんてそうそう出来る事じゃない

この話を持ちかけられた時にそういった話も聞かせてもらったからね

相手がアンタじゃなかったら断ってたところだよ」


「えっ?」


カイトの疑問の言葉に前を向いて喋っていたホウメイがカイトに顔を向ける


「アンタが作る料理にアタシも興味があるって事さ

ガッカリさせないでおくれよ!あの子の為にもね」







「さて、それでは料理バトル・・・・始めて下さい!!」







「ちょっ・・!」


ちょうどホウメイが言い終わった後に

今回のバトル内容を観客に説明していたジュンからスタートの声がかかる


ホウメイはさっそく料理に取り掛かる為、腕まくりをしながら持ち場へ向かう

その場に取り残された形のカイトはホウメイの歩いて行く背中を眺めるが

今言われたホウメイの言葉を思い返し、自分も持ち場へと向かう


(結果なんて関係ない・・・今僕に出来る最高のチキンライスを作る・・・それだけだ・・・)



そしてカイトもホウメイと同じく、料理へと取り掛かる




































「さて、それではこれよりお待ちかねの審査に入りたいと思います!」


そのジュンの言葉に、審査員5人の前に2人がつくったチキンライスが並ぶ

それには冷めないようにきちんと蓋が被せてあり、配慮が行き届いている



「さて、クジ引きの結果、最初に食べてもらうのはホウメイさんの物からになりました

それでは、どうぞ召し上がってください!」



「ちゃんと味わって食っとくれよ!」




ホウメイの声を合図に、ホウメイの料理の蓋が取り除かれる


「特に見かけは変わった所はねぇな〜」


ウリバタケの言葉通り、そこにはいつも食堂で出される物と同じチキンライスがあった

違いと言えば、少し量が少ない事とポテトが付け合わせでついている事くらいである



当ったり前だろ!あたしゃいっつも自分に出来る最高の料理を作ってんだ

食堂の料理だからって手を抜いた事なんか1度もありゃしないよ


ま、今回はこれだけなんでおまけは付けといたけどね」



まさに料理人の鑑的な発言を聞きつつも一同は食べ始める







その反応は・・・・



「おっほぉ〜、やっぱうめ〜な!」


「うん、きっとアキトが作る次に美味しいね♪」


「いやいや、チキンライス1つ取ってもここまで美味しく作れる人はそうはいません

全くもって雇った甲斐があるというもんですね〜、はい」


「さすがホウメイさんです!わたしじゃこんなに美味しいのは作れません!

この炒め具合と味加減はまさに熟練の業ですよね!!」


「美味しいです」









「そう言って貰えると嬉しいねぇ」






「おぉ〜っと、流石はこの艦、ナデシコの文句なしのNo1シェフ、ホウメイさん

審査員の評価もバツグンだ〜!対するカイトくんに勝機はあるのか〜?」




ジュンの解説の通り、5人の評価は皆、一様に高いものだった

だがまだ勝負が決まったわけではない

全てはこの後に出されるカイトの料理次第なのである





「さて、それでは次はカイトくんの料理を召し上がっていただきます

どうぞ、蓋を開けて下さい」



「お願いします」


ジュンの言葉を受けて、カイトも食事を促す




審査員の5人は早速、テーブルに並べられたもう1つの皿の蓋を持ち上げる


蓋を外すと温かい湯気が立ち昇り、美味しそうな匂いが広がる

その皿の上にはホウメイのものと同じく、特に変哲の無いチキンライスが置かれていた


違いと言えば、若干カイトのチキンライスの方が色が薄い事と

後は付け合わせのポテトが有るか無いかであった




「よっし、んじゃ〜早速いただくぜ〜」



そしてウリバタケが一番にスプーンを口に運び、他の審査員も食べ始める


そして・・・







「うめぇな・・・いや、こりゃよく出来てるぜ、あのカイトがな〜」


「ホントだ〜、カイトくんのもスッゴク美味しい〜

あっ!そうだ、カイトくんもアキトみたいにコックさんになれば良いよ〜

うんうん、ユリカが保証するよ♪」


「これはまた意外な才能ですな〜、まさか料理までこなせるとは・・・」


「これ美味しいです、パイロットなのにこんなに美味しい料理が作れるなんてスゴイです!

わたし尊敬しちゃいます!!」


「・・・美味しいです」





5人の審査員の評価はホウメイと同じく、かなり好感触であった







「おぉ〜、なんとカイトくんもホウメイさんに負けず劣らずの好評価だ〜!

だがしかし審査員は5名で持ち票は1人1票、もちろん勝者はどちらかだ〜!

さて、勝つのはホウメイさんか、それともカイトくんなのか!


審査員のみなさん、どちらに投票するかお決まりでしょうか?」



ジュンの促した先、審査員達のテーブルの上には1人1人に

(カ)と書かれた物と(ホ)と書かれた物の2種類の旗が用意されている




審査員席ではウンウン唸りながら両方の旗を交互に見ているもの2人と

既に決まっているのか、黙って座っている3人の姿が見て取れた



しかしそれも1分程経って

「うん、オッケー、決まったよ♪」


という審査員の1人のセリフの元に審査に移る事になった












「さぁ、いよいよ判定となります

勝者は、やはり大本命の料理長ホウメイさんなのか?

それともダークホース、君に出来ない事は無いのか?カイト君なのか・・・

それでは審査員の皆さん、一斉にどうぞ!!


司会の掛け声と同時に5つの旗が持ち上げられる・・・・

その結果は!?


































「判定の結果は4対1で、料理長ホウメイさんの勝利となりました〜!

しかし敗北したカイト君も頑張ってくれました

シェフであるホウメイさんに一歩も譲らない白熱した料理バトルを見せて貰いました

彼には今後、大きな期待を抱かせて貰うとしましょう

それでは審査員の方々にそれぞれ、選んだ決め手の方を聞いてみたいと思います

ではお1人ずつお願いします」



またもやのジュンの問いかけに座っている順に答えていく







「そうだな〜、カイトのは確かにかなり美味かったんだがちっと薄味でな・・

どうもオレには物足りなく感じたんだよ

後は料理の完成度っていや〜言いのか?

それを比べるとやっぱりカイトの方には粗があるんだよな〜

まっ、うちのカミサンのよかは数十倍美味かったけどな」




「えっとね〜、私はどっちも同じくらい美味しかったと思うよ♪

だから、選んだ理由はホウメイさんのはオマケがついてたからです♪」



「そうですね〜、私もウリバタケさんと同じく少し薄く感じましたね

もちろん料理自体はすごく美味しいものだったんですが・・

今回は相手が悪かった・・と言った所でしょうか?」



「私はどちらも違った個性があってすごく良かったと思います

薄味だって言ってる方も結構いますけど、私は好きな味でした

ですんでホウメイさんを選んだのは総合的な評価で上だと思ったからです

カイトくんのもすっごく美味しかったです」


ウリバタケ、ユリカ、プロス、そしてミカコの順にそれぞれの感想を伝える


感想を聞く限りでは男性陣の評価は覆りそうも無いが

それでもかなり高い評価をカイトも貰っているのが分かる






「なるほど〜、貴重なご意見ありがとうございます

それではカイトくんに票を入れてくれたホシノさんにも聞いてみましょう」


そして先ほどの4人の審査員と同様マイクを向けられるルリ


ルリは数瞬ためらった後、マイクに向かって自分の素直な感想を伝えた



「私はカイトさんの方が美味しいと感じました

先ほど言っていた味も私はちょうど良いと感じましたし

確かに、料理の完成度という点に置いては一歩及ばないとは思いますが・・・でも・・・」



そこでルリは言葉を一度区切る、ほんの少し考える様に俯く


ギャラリーも料理を作った2人も、他の審査員と司会のジュンも・・・

全員がルリの次の言葉を待って視線をルリに向ける




そんな中、考えが纏まったのか、顔を上げたルリはカイトを見据えてハッキリと言う



「でもカイトさんの料理は『あたたかい』って感じたんです

料理の温度とかじゃなく、なんとなくそんな風に感じたんです

ですから私はカイトさんの料理を選ばせてもらいました」
















そのルリの深みのある言葉に辺りがシンと静まり返る





その静寂を崩したのは今回の料理を作った主役の1人だった




「あーっはっはっはっはっ、こいつは1本取られたね

あはははははははっ」



突然のホウメイの笑い声に辺りはざわめく



「あはははは、予想以上にやりがいがあって楽しかったよ

さって、それじゃあたしは仕込みがあるからそろそろ行かせてもらうよ」





言うが早いか、ホウメイは呆然とするギャラリーを尻目に特設会場を去っていった




















これを受けてギャラリー達がざわざわと騒ぎ出し始めたのだが

既に勝敗は決していた為、一時的な混乱はあったものの

その後はつつがなく終了を向かえ、第1回大会の勝者はホウメイという事で幕を閉じた
































・・・・・その日の夜・・・・・







利用時間が終わり、食堂の明かりも非常灯のみとなっている中

厨房では1人ホウメイが明日の仕込みの準備を行っていた






シュン



カカッ



シュン





カツ  コツ  カツ  コツ







そんな時、普段のこの時間には開ける者などいない扉を開け

厨房へと近寄ってくる足音が食堂に響き渡った







ホウメイもその誰かが入ってきたのにはもちろん気付きつつも

敢えて近づいてくるまでは声をかけなかった





カツ  コツ  カツ  コツ     カカッ






そして下を向いて包丁を使っていたホウメイのカウンター越しでその足音が止まり


ホウメイも包丁をゆっくりと置き、その来訪者に声をかけた



















「おやおや、子供はもう寝る時間だよ。明日も早いんだろ?」

極めて優しくかけられたその声には反応を示さず

来訪者はしばらく俯きがちに黙ったままだった





ホウメイも無理に追求するのではなく

手を止めたままジッと来訪者が話し出すのを待っていた




そして1分程が過ぎた頃、来訪者は未だ俯いた姿勢のまま話し始めた






「私は・・・・・・・味覚がおかしいんでしょうか?」


その来訪者、ルリの問いは言わずもがな今日の料理勝負に関しての事だった






彼女以外は全てホウメイが作った方を支持した今日の料理勝負



しかし、ルリは


『どちらかと言えばカイトさんの作った方が美味しい』


と思った訳ではない







『間違いなくカイトさんの作ったチキンライスの方が美味しい』



そう判断してカイトの旗を挙げていたのだ

その意見が少数派になってしまったのは自分の味覚がおかしいからではないか?

・・という結論に辿り着いてここにやってきたのだ





無論彼女が個人的にこう思うだけなら態々こんな事を聞きに来たりはしない



だが今回は自分が発端でカイトを巻き込み

しなくても良い料理勝負とやらを引き起こしている









今のルリは納得出来る、ハッキリとした答えを探していた


















「ふ〜、全く突然来て何を言い出すかと思えば・・・・・

良いかい?味の好みってのは人それぞれ違うもんなんだよ

子供の頃は嫌いで食べられなかったものが

大人になったら好きになったなんてよくあることさ〜

反対に子供の頃に大好きだったものが

大人になってからだと、昔程の魅力を感じない・・・なんて事もね」



ホウメイの説明を聞いても、ルリは未だ俯いたままであった


体験に基づいていない為、仕方ない事とも言える




そんなルリの変わらない様子を見て、ホウメイは少し悩むが

小さく頷くと再びルリに声をかける


「だったら逆にアンタに聞くけど

料理にとって一番大事なものって何だと思う?」



その問いかけに戸惑いつつではあるが、ルリは答えを返す


「・・・味だと思います。」


その答えにホウメイは若干大袈裟に頷いてみせる


「そうだね・・・確かに味は料理にとって大切さ・・・


でもね、一番大切なのは味じゃないとアタシは思うんだよ」



自分の考えと違う答えにルリは顔を上げてホウメイを見る




対するホウメイの方はルリの反応が予想通りだったのか

笑顔を浮かべ、1つ頷くと話し始める




「料理には色んな大切なものがあるのさ

味、見た目、匂い、食感、後味なんてのもあるね〜


けどアタシが真に大切だと思うのは・・・そうさね〜・・・・・って言えば良いかね〜」



「・・・こころ・・・ですか?」



ルリの返答に再びホウメイは頷く


「そう、心さ・・・

『あの人に食べて貰いたい』『美味しく食べて貰いたい』

そういった気持ちが、料理の最高のアクセントになるのさ」



「心なんて・・・本当に料理に関係あるんでしょうか?」



それを聞いてホウメイは呆れたといった風に態度で表す




「おやおや、作ってもらった本人が何言ってんだい

ちゃ〜んと結果が出てるじゃないか


カイトの料理を食べた時のアンタの顔・・・・本当に美味しいって顔してたよ」




笑顔で話すホウメイに対して、聞かされたルリはキョトンとする

自分では意識していなかったがそんな顔をしていたんだろうか?



「あの子はアンタの為に一生懸命、心を込めて作ってくれたんだ

カイトに感謝するんだね

正直うちに欲しいくらいだからね、アァ〜ハッハッハッハッ!


さってと、子供はもう寝る時間だよ、さぁ帰った帰った!」



ホウメイはそう言うと厨房から出て来て、ルリをドアの外まで案内し

見送る形で食堂のドアは閉められる






唐突に提供された情報にルリはイマイチ考えが纏まらず、困惑した状態で

ホウメイに半ば追い出される形で食堂を後にする


















途中、頭を冷やす為にジュースを飲んで、自室へと戻ってきたルリだが

部屋の前には今、彼女を悩ませている要因のカイトの姿があった


思わず近くにあった自動販売機の陰に隠れた為、気付かれなかったようだが

カイトはと言うと、部屋にルリが居ると思っているのか

ドアをノックしようかどうか迷っているようだった





だがそれも1分程そうしていたかと思うと、結局やめたようで

自分の部屋のドアを開け、中へと入っていった










(なんだろう・・・この感じ・・・どうして私は隠れたりしたんだろう・・・

別に理由なんか無いはずなのに・・・)


対するルリの方はと言うと、思わず隠れてしまった自分の行動に疑問を抱いていた





が、聡明なルリでもこの答えは出なかったらしく

部屋の前にカイトの姿が無い事を確認してから、静かに部屋へと戻っていく








「カイトさん・・・か・・・」








その日のルリは中々眠りにつくことが出来なかった


































ども〜、遅れに遅れましたEXEです

もう返す言葉もありません、言い訳的には私生活が忙しかったってのもあるんですが

何はともあれ申し訳ない




で、今回の話なんですが、どうにも上手く纏まらず、イマイチな感じです

特に料理バトルの所・・・、全く緊張感が無く、淡々と進んでしまいました・・・(涙)




分かっています・・・分かってはいるんです

が、経験に基づいていないため全く描写できないんです


修行が足らなかったです・・・無念!




一応次話の予定も出来てはいるんですが・・・

いつ出来るかは本人にも未定です(常に変更の嵐ですから〜♪)

稚拙で遅筆ではありますが、楽しく読んでいただけたらと思います







それでは、読んでくださった方々、ありがとうございました♪

今後もよろしくお願いします m(_ _)m











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