機動戦艦ナデシコ

〜時間に抗いし者〜








第三話   秘められし真実《前編》






(・・・・・・・・誰か助けてくれ・・・・・・・・・・)



『ジョ〜〜〜〜〜!!』



「オレのジョーが〜、それにゲキガンガーが死んじまった〜〜!!」


「そうか〜、分かるか〜分かってくれるか〜!!」


ここはアキトさんとヤマダさんの相部屋、

そしてモニターにはゲキガンガー3、第27話が映し出されている。

僕はゲキガンガーは嫌いではないが、ハッキリ言って関心は薄い。

記憶を失ってるときに夢中になったのは潜在意識で知っているものを求めていた為だと思う。

だが、記憶が完全に戻っている今はそれも無い。




その為この異様な盛り上がりには到底ついていけない・・・・・


そもそも何故こんな事になったかというと、少し前にさかのぼる。













ここは格納庫のエステバリスのハンガー前



「よ〜し、それはこっちだ。後、そこのパーツも持ってきてくれ〜。」

「え!?あれを僕が一人でですか?いくらなんでも大きすぎるんじゃ・・・」

「この間のエステは直すのにかな〜り時間が掛かったんだよな〜。」

「うっ、分かりましたよ、スグに持ってきます・・・・・・はぁ〜・・・」

僕は先日のチューリップとの戦闘で壊してしまったエステの埋め合わせの為に

数日間、整備班でこき使われていた。

壊したといっても、外傷はカスリ傷ほどで全く問題は無かった・・・見た目は・・・

僕が壊したのはエステバリスのIFS関連全般であった。

久しぶりの本格的な戦いという事もあったし、

僕自身もアールナイトの性能が頭にあったから上手く加減が出来なかった。

僕の速度にエステバリスの性能が追いついていないのが原因だったが

そんな事は整備班の皆にとっては言い訳にもならないので、結局僕のせいとなった。

なんでも直すのに手間がかかる所らしい・・・・・・

その為ウリバタケさんなどは、徹夜で作業にあたっていた。
(僕もしっかり手伝わされた。)

その修理も何とか昨日で終わり

今日ようやくアールナイトの組み立てをする事になった。



「おっしゃ〜、ここまで組めば後は楽勝だな。

カイト、お前もご苦労さん。お陰で作業が速く済んだぜ、助かったよ。」

「そんな、エステを壊したのは僕ですし

それにアールナイトは大事なパートナーですから。」

実際僕が動かしたせいでエステが壊れてしまったので

それを手伝うのも、その為遅れたアールナイトの組み立てに付き合うのも当然だ。

というより早くアールナイトを復活させないと、僕としても大変困る。

もしもの時にナデシコを護ることが出来なくなったしまうから・・・・・

まぁ、本当にもしもの時はまたノーマルエステに乗る事になるが

そうなるとまたこんな事を繰り返すことになる。



・・・・・・・それはさすがに・・・・・つらい・・・・・・・・





「なんだかんだ言っても機体を修理するのが整備の仕事だからな、

本当はパイロットはンナ事気にしなくていいんだよ。」

結局最後まで手伝わせておいて今更だが、ウリバタケさんの事は良く知っている。

これは彼なりの感謝と優しさなんだって。

「そう言ってもらえると助かりますよ。

まぁでもアールナイトが使えるようになればこんな事は無いですから。」

アールナイトの話を出した途端、ウリバタケさんが困った顔になった。

「あ〜、その事なんだけどよ〜。ありゃ〜いったいなんなんだ?

オレは前に『今の技術じゃ作れない部品がある』って言ったがな

ありゃ〜そんなもんじゃねぇ。

何て言や〜良いかわかんねぇが、これだけはハッキリしてる。」

そこまで言ってウリバタケさんの顔がすごく真剣な顔になる。



「ありゃ〜、人の造れるものじゃねぇ。」



「・・・・・・・・・・・・・・」

そう、この組み立ての最中に僕も見たが、そこには普通とは明らかに違う

特殊な部品もいくつかあった。

僕はそれを見たとき、それが何か分かった。いや感じた。

何故機体にまで遺跡のコピーを使ったのか・・・・・

答えはおそらくウイングにあるのだろう・・・・・

まだ使った事が無いので正確な事は言えないが、まず間違いないと思う。


「・・・・・・やっぱり話せないのか?」

その声で思考から帰ってきたが、対するウリバタケさんの表情はやはり暗かった。

「・・・すみません・・・それと・・そのパーツにも手は出さないようにしてもらえますか?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

今の僕にはこう言うしかない・・・・・

まだ全てを話すわけにはいかない・・・・・でも・・・・・

「いつかきちんと話しますから・・・この機体の事も・・・・僕のことも・・・」

そこまで言った時に、ウリバタケさんが僕の背中を強くたたいた。

バッキャロ〜!分かったからそんなシケタ面するなって!

まだ会ってから少ししか経ってないけどな・・・結構信頼出来るって思ってんだぜ。

オリャ〜、人を見る目はあるからな♪」

「・・・ウリバタケさん・・・」

僕は心の底から嬉しかった。

自分の事をほとんど語ろうとしない奴に、ここまで言ってくれるなんて・・・・



「ところで本当に弄ったらダメか?」

「ダメです!!」

せっかくの感動の最中に突然いつものウリバタケさんに戻ってしまった。

でもこれがウリバタケさんでもあるからなぁ〜


断られたウリバタケさんは少し残念そうにしていたが、その表情は笑っていた。

おそらく雰囲気を和らげるために意図的にふざけたんだろう。(・・・多分)

素直じゃないからなぁ〜、ウリバタケさん。


そんな事を考えて作業に戻ろうとしたら、ウリバタケさんに声をかけられた。

「おぉ、カイトォ〜。後は大丈夫だからお前はもう休んでいいぞ〜。」

「えっ、いいんですか?」

「ヘヘッ、あんまり頑張られると俺らの仕事が無くなるんだよ。

飯でも食って休憩してな

もうじき地球脱出でパイロットは今しか休めないしな♪」

僕はありがたくウリバタケさんの好意を受け取る事にした。

「はい、ありがとうございます!

じゃあ皆さん、後はよろしくお願いします。

その僕の言葉に整備班の皆がこちらを振り向いて



「「「「「「任せとけ〜〜」」」」」」



それを聞いて再度みんなにお辞儀をして僕は格納庫を後にした。









そして食堂について、ラーメンを食べてる所にヤマダさんが現れて話しかけてきた。

「あぁ〜、そこにいるのはカイト!

この前はよくも人の見せ場を次々と奪ってくれたな〜!

ふっ、だがもはや貴様の出る幕は無い!

何故ならこのダイゴウジガイ様が復活したからな!!」


そう言って骨折しているはずの左足を高く上げる。

どうやら本当に治ってるようだ・・・・確か4日前に折ったばかりなのに・・・恐ろしい・・・

「オイオイ、ガイ、あんまりカイトくんに突っかかるなよ。

ごめんね、カイトくん、悪い奴じゃないんだけどさ。気を悪くしないでね。」

さっきまで厨房の中にいたアキトさんが僕達の所にやって来た。

エプロンをしていないところを見ると、どうやら今日はもう上がりのようだ。

「いえ、大丈夫ですよ、アキトさん。

ところでこの方、確か名前はヤマダさんじゃなかったでしたっけ?」


「ちっが〜〜〜う!!」


そこで僕達二人の間にヤマダさんが割って入ってきた。

「それは世を忍ぶ仮の名前、ダイゴウジガイは魂の名前、真実の名前なのさ!!

だから俺を呼ぶときはガイと呼ぶがいい!!」


「・・・・・・・・・・・」

あっけに取られてヤマダさんの向こう側にいるアキトさんに目をやるが

僕の視線に気付いたアキトさんは苦笑を浮かべるだけだった。

「ふぅ〜、分かりました。これからはガイさんと呼びます。」

それを聞いたヤマ・・・ガイさんは心底嬉しそうだ。

たぶん最初突っかかってきた事などもう忘れているだろう。

「それにしてもお二人はズイブンと仲が良いんですね、まだ会って間もないのに。」

それを聞いたガイさんが何かを思い出したのか、手をポンと叩いた。

「おぉ、そうだった。ここにはアキトを連れに来たんだった。

ほっとくとなかなか食堂から帰ってこないからな〜。」

アキトさんの方を見ると、ガイさんと同じ様にその顔は笑顔だ。

「今日はすぐに戻るつもりだったよ、昨日の続きが気になってたからな。

今日は25話からだよな?」

「オウ、こっから先がまた燃えるんだよなぁ〜!!」

そこまでの会話を聞いて僕の脳裏にある一つの答えがよぎった。

「もしかして二人が急激に仲が良くなった理由って・・・ゲキガンガー・・ですか?」

それまで周りが見えないほど話に夢中になっていた二人が突如すごいスピードで僕の方を振り向いた。



その表情は・・・



・・・・形容できないほどの笑顔だった・・・・・












「「『ジョ〜〜〜〜!!』」」



(・・・・あそこであんな不用意な発言さえしなければ・・・・・・)


断る僕をなかば無理やり部屋に呼び、三人での上映会が始まり、

現在二人はアニメのキャラとものの見事にシンクロしている。

間違いなく僕とウイングとのシンクロ率を凌駕している事だろう。



(どうにかしてここから逃げ出さないと・・・)


しかしそれがまた難しかった。

僕のいる位置は部屋の奥、その間に涙を流しながら抱き合う二人がいて、

それを越えたところにやっとドアがある。

先程脱出を試みたが、残念ながら失敗してしまった。

今は先程よりつらい立場に立っているといえよう・・・



なんとかして脱出出来ないかと考えていたその時、

(!!そんな・・・うそだろ・・・)

僕はあるものを見てしまった。

それを見た以上は最早ためらう事は出来なかった。

(こうなったら最後の手段だ。)

そして僕はコミュニケを使い、ある人にメールを送った。


《お願いだから助けて!!

助けてくれたら僕に出来ることなら何でもするから》



それだけ入力して僕はメールを送信した。

(後は助けてくれる事を祈るしかないな・・・・・)

ある種、覚悟を決めた僕の目の前には再びゲキガンガー第27話が映し出されていた。



(まさか巻き戻すなんて・・・・これ以上は耐えられない・・・

ルリちゃん・・・助けてくれ。)













そしてここはナデシコのブリッジ、


今はちょうど艦長ミスマルユリカによる連合軍の挑発、もとい説得が行われていた。

「あけましておっめでとうございまぁ〜す!!」

何故か戦艦に乗るのに自分で持ち込んだ振袖に身を包んだユリカが

今現在ナデシコ対策会議の行われている連合軍作戦本部に通信を入れる。

『『『『『おぉ〜〜〜〜』』』』』

ウィンドウの向こう側はいろんな意味で騒がしくなっている。


(ふぅ〜、何でわざわざ軍人さんを怒らせるような行動を取るんだろう。

ほ〜んとバカ。)

ルリはやることがあるわけでもないが勤務中なので、オペレーター席に座っていた。

(拿捕してまでナデシコを手に入れようとしてる人達に説得なんか無意味なのにな。)

そんな時にルリのコミュニケがメールの着信を知らせる。

(えっ?私にメール?誰だろう・・・そんな人いないはずだけど・・

・・・あっ!?)

これまでにルリのコミュニケに通信してきた人といえば、

プロス、ミナト、メグミぐらいだが、その人達は全てここに居る。

ましてやメールなどは誰にも貰った事など無かった。

基本的にコミュニケの通信対象は同じ艦のクルーだし

メールなどより普通は通信を行う。

さらに言うとルリは極端にブリッジクルー以外の人と関わっていない。

そんなルリが宛名を見ると、そこには・・

(カイトさんだ・・・なんなんだろう?)

そしてメールを確認するルリ、内容は・・・・

(・・・・・・・・・・・・・・オモイカネ、カイトさんの状況を見せて。)

そしてオモイカネにアクセスするとアキトの部屋の様子が小さなウィンドウに現れる。

そこには涙を流しながら噛り付くようにゲキガンガーを見ているアキトとヤマダ

それに少し離れたところで憔悴しきっているカイトの姿があった。

(・・・・・・・・・・・・・これはキツイですね・・・

以前助けてもらった恩もありますし、助けてあげますか。)

そしてシートから立ち上がったルリは、プロスの所まで行き、話しかける。

「プロスさん、カイトさんがブリーフィングに参加したいそうなんですが、構いませんか?」

ユリカの対応に頭を抱えていたプロスがルリの問いに我を取り戻す。

「カイトさんですか?えぇ構いませんよ。どうぞお呼び下さい。

後でカイトさんかヤマダさんを呼ぼうと思っていたので丁度良いです。」

「そうですか、ではカイトさんに連絡しておきますね。それでは。」



そして再びシートに戻ったルリはアキトの部屋にいるカイトのコミュニケに通信を入れる。

「カイトさん、至急ブリッジまで来てもらえますか?」

ウィンドウに映るカイトの姿はどこかやつれていて、目も虚ろであった。

しかしルリの声が聞こえた途端、復活を果たし、直ぐに反応を示す。

「りょ、了解!カイト、すぐにブリッジに向かいます。

アキトさん、ガイさん、僕は用事が出来たのでこれで!それじゃ!!」

「お、おい、カイト・・」

ガイが呼び止めようとするが、カイトは凄いスピードで振り返りもせずに部屋から出て行った。

その光景を見ていたルリは・・・

「ばかばっか。」

やや辛辣なお決まりのセリフを呟いていた。






「助かったよルリちゃん、もう少し助けが遅かったらどうなってたか・・・」

僕はアキトさんの部屋を抜け出し、

ブリッジへと歩きながらルリちゃんとコミュニケで通信していた。

「いえ、別に。

それよりブリーフィングを受けるという名目で呼んだので、ブリッジに来て下さいね。」

「うん、元々ルリちゃんに会いにブリッジに行くつもりだったからね。

それより・・・ありがとう、ルリちゃん。ルリちゃんは優しいね。」

僕はルリちゃんが助けてくれた事が本当に嬉しかった。

正直、あまり他人に関心を持たないことを懸念していたから・・・

だからこそこんな些細な事でも凄く嬉しかったのだ。

だから僕は自分の一番の笑顔をルリちゃんに向けて感謝の意を表した。

するとルリちゃんは少し俯いて小さな声で言った。

「べ、別にそれほどでも・・・」

「!!」

ルリちゃんが取った行動と発した言葉は僕の記憶の中のルリちゃんと一致した。





アキトさんの部屋で4人で暮らしていた時に

押入れで寝ているなかなか起きない僕を起こしてくれたルリちゃんの姿。





もし目の前にルリちゃんがいたら我慢できずに抱き締めていたかもしれない

僕はやっぱりルリちゃんがルリちゃんである事を改めて認識させられた。


そんな僕を不思議に思ったのか、ルリちゃんが心配してくれた。

「カイトさん?どうしたんですか?」

ルリちゃんの声で思考の海から帰ってきた僕は再び笑顔を作り答えた。

「ん?なんでもないよ♪それじゃ、すぐにそっちに行くから。」

「お願いします。」

それだけ言うとルリちゃんのコミュニケの映像は途切れてしまった。

けれど途切れ際のルリちゃんの顔が少し赤らんでいた事に気付いた僕は、

足取りも軽く、ブリッジへと向かった。







「現在地球は7段階の防衛ラインで守られている。

我々はそれを逆に1つずつ突破していかなければならない。」

「幸い連合艦隊とスクラムジェット戦闘機はバッタと交戦中。

事実上、この2つは無効化されたような物ですな。

よって今私たちが突破しているのが地上からのミサイル攻撃

つまり第4防衛ラインです。」

ゴートさんとプロスさんの素人同然のナデシコクルーへの親切な説明。

それもそのはず、さっきからミサイルがガンガン飛んできてます。

これできちんとした説明が無ければ、何も知らない人は不安になるばかりです

「めんどくさいねぇ、一気にビュ〜ンと宇宙まで出れないのかな?」

「そう。それが出来ないんだなぁ〜。」

ミナトさんは分かってるみたいだけどメグミさんは分からないみたい。

操舵士の免許を持ってるミナトさんと違って、メグミさんは声優って事で通信士になったんだから仕方ないけど。

「地球引力圏脱出速度は秒速11.2km。

その為にはナデシコの相転移エンジンを臨界まで持っていかないとそれだけの脱出速度は得られないんです。

相転移エンジンは真空をより低位の真空と入れ替える事により

エネルギーを得る機関だから

より真空に近い高度じゃないと臨界点は来ないわけ。」

私が説明を終えるとカイトさんが私に優しげな笑顔を向けてきました。

なんだか不思議な感じ・・・ミナトさんやメグミさんの笑顔とはまた違う・・・

でも何が違うのかは分からない

・・・けど・・・なんだか心が暖かくなる感じ・・・


「相転移反応の臨界点は高度20000キロ。

だけどその前に第3、第2防衛ラインを突破しないといけないから・・うわゎぁ!!」

先程から飛んできているミサイルがまた当たった影響で艦内が少し揺れました。

この程度の揺れだと艦内に影響はほとんど無いんですが、

ただ一人、振袖姿の艦長だけは派手にこけています。

「またディストーションフィールドが弱まったか・・・・」

「あいたたたぁ〜〜〜。」

「着替えたらどうかね、艦長?」

咳払いをして着替えを促す提督。

こけたままの艦長は裾がはだけています。

「あっ、は〜〜い♪でもその前に・・・・・

私はアキトの所に行ってきま〜す♪

「ちょっと艦長!!それは困りま・・・」


プッシュ〜


艦長はプロスさんの静止も聞かず

あっという間にブリッジから出て行ってしまいました。


「ふぅ〜、艦長にも困ったもんですなぁ〜。少しは自覚を持ってもらわねば。」

「とりあえず第3防衛ラインに到達するまでは対応も必要ないだろう。

各自、それまで休むなり、食事を済ませるなりしておくといい。

ブリーフィングは以上だ。」




フクベ提督がそういった後、私とミナトさんとメグミさんはとりあえず持ち場へ戻りました。

「ねぇ、メグちゃん。どうする?」

「私はご飯ももう食べちゃいましたからここに残ってます。ミナトさんは?」

「ん〜、わたしも特に何かすることも無いからメグちゃんとお話してようかな〜?

そうだ!ルリルリは?」

(えっ?)

「ミナトさん、なんですかルリルリって・・・」

「うふふ〜、だってこの頃カワイイんだもん♪

ふさわしい呼び方を考えたのよ♪」

カワイイ?私がですか?・・・・そんな事無いと思うんだけど・・・・

「はぁ、別に呼び方なんて何でもいいですけど・・・・私、最初と違いますか?」

別に私としてはそんな事考えた事も無いんですけど・・・・

「ぜんぜん違うわよ〜!

最初は表情とかも全然無くてちょっと取っ付きにくいなぁ〜って心配だったんだけど

この数日、そうね〜カイトくんと接するようになってからかな〜?

すこ〜しずつだけど変わってきてるもの!!」

「そうそう、確かにカイトくんのお陰かもしれませんね。

ナデシコでルリちゃんと1番歳も近いし、気が合うのかもしれませんね♪」

なんだか勝手なこと言ってくれてます。


確かにカイトさんは私の無くした記憶の事を知っているみたいだし

キノコの軍人さんから守ってもらったし

その・・・・抱っこしてブリッジまで運んでもらった事もあったし

さっきピンチの所を助けたりもしたし、それに・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



あれ?なんだかナデシコに乗ってからカイトさんとの事ばっかり・・・・

まだ1週間も経ってないけど、仕事以外で他の人との思い出せるような記憶ってないな・・・

ミナトさんもメグミさんも優しいけど、仕事以外は特に何も無いし・・・・・・・

・・・・カイトさん・・・・・なんだか不思議な人・・・・・



「あら〜ルリルリ〜♪どうしたのかな〜?ボォ〜としちゃって。

もしかしてカイトくんの事で頭がいっぱいになっちゃったの〜?」


ドキッ


「そ、そういうわけじゃ、

ただナデシコに乗ってからカイトさんとの事ばかりだなって思っただけです」

まるで頭の中を見透かすような質問に私は柄にも無く取り乱してしまいました

「んふふ〜、図星か〜♪照れない、照れない♪

そっか〜、ルリルリは恋する乙女なのね〜、応援するわよ♪」

「・・・・本当にそんなのじゃないんです。

ただカイトさんって不思議な人だなぁって、そう思ってただけです。」



そう、不思議な人・・・・

まだ少年といえるような見た目とは裏腹に圧倒的な戦闘能力と操縦技能を持っていて

大人達相手にも自分の意見を曲げない。

それでいて力を誇示するでもなく、むしろ明るく、優しさを振りまいている。

でも時折見せる悲しげな顔は同じ少年の物とはとても思えない。

さらにはあの瞳の色、金色の瞳は本来有り得ない瞳の色・・・

マシンチャイルドの証とも言えるもの・・・

でもそんな話は聞いたことも無い、世間では私が初めての完成品と言われている。

カイトさんの身元も含めてそのことをオモイカネに調べてもらったけど・・・・・

返ってきたのは《分からない》ということだけ・・・・・

結局どれだけ考えても答えは出てこなかった。



「そうねぇ〜、確かにカイトくんって不思議な所あるわよねぇ〜

あの強さといい、落ち着きといい、15歳とはとても思えないもの。」

「ですねぇ〜、なんだか暗い過去とかも持ってそうですしね、カイトくん。」

「呼びましたか?」

「「「!!」」」

突然の声に驚いて後ろを振り向くと、少し離れたところにカイトさんが立ってました。

そういえばカイトさんもブリーフィングに参加していたんでした。

「カ、カイトさん、いつからそこにいたんですか?」

「??今来たところだよ。そしたら僕の名前が出てきたから・・ジャマだった?」

「あ、いえ。そういう訳ではないんです。ただ少し驚いただけです。」

良かった、さっきのミナトさんとの会話は聞いていなかったみたい。

「あっ、ところでカイトくん。どうしてここに来たの?

パイロットは基本的に格納庫付近で待機するものじゃないの?」

「えっと、それは、さっき提督が言っていたようにまだ時間が余ってるので

ルリちゃんをさっきのお礼も兼ねてお昼に誘おうかと思って。」

カイトさんは一度私に視線を向けると少し目をそらし頬を右手で掻きながらミナトさんに説明しています。

「あっら〜〜!カイトくんったら積極的ねぇ〜♪

ネッネッ、ルリルリ♪お誘いがきてるわよ、どうするの?」

・・・ミナトさん・・・なんでそんなに嬉しそうなんですか・・・

「ここは私たちに任せて行ってきたら、ルリちゃん。気になるひとなんでしょ?

メ、メグミさんまで・・・

まあ一緒にお昼を取るのが嫌な訳ではないんですが、今は・・・

「ごめんなさい、今は艦長も居ませんし、不測の事態が起こった時に対応するためオペレーターが席を離れるわけにはいかないんです。

その・・・お気持ちは有難いんですが、そういう事なので・・・」

「あっ!そうか。ゴメンね、ルリちゃんの都合も考えないで先走って。

それじゃあ宇宙空間に出た後なら時間取れるかなぁ?

さっきの約束の事もあるしさ。」

「「約束ぅぅ〜〜〜?」」

「そうですね、分かりました。それではまた後程。」

私がそう言うとカイトさんは笑顔を残し、ブリッジを出て行きました。



そこまでは良かったんですが・・・・・・・・・

「「んふふ〜〜ルリルリ(ルリちゃ〜ん)〜〜♪」」


ビクッ


私の背後には今日一番の強敵の二人が異様に楽しそうに立っていました。

「カイトくんとの事、色々聞かせてほしいなぁ〜〜???」

「ルリちゃ〜〜ん、約束って何の事かメグミお姉さんに教えてくれるよねぇ〜?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」





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