機動戦艦ナデシコ 刻戻りて白銀騎士 |
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必ず守るって誓った でも誓いは約束より大切なことなのかな? それとも約束の方が大切なことなのかな? 僕は約束の方が大切だと思うんだ だって 約束は二人やみんなでするものだから 誓いは一人でも出来るから だから・・・ 僕は約束が大切だし好きなんだ 第三章 久しぶりの「お約束」? 「はぁ・・・」 {只今のため息 640回目} ルリはため息を何度も繰り返していた 「はぁ・・・」 {只今のため息 641回目} 「オモイカネ・・・やめて」 少しむっとした声でオモイカネにそう告げる {了解} ブリッジには明日の作戦の為か既に他の人達は精気を養うために各自部屋に戻って睡眠などをしている。明日の作戦は大きな作戦だということはルリ自身もよく知っているのだが (眠れない・・・) 「はぁ・・・」 ルリの頭の中には先日の作戦の時のカイトの言葉が何度も繰り返される (僕は君を必ず守る。そして幸せにするよ。必ずね) その言葉が頭から離れない 「あれは・・告白なんですか・・私はまだ少女です。そんな告白なんてされても困るんです・・」 (カイトさんのあの時の真剣な顔・・・カイトさんの真剣な声・・カイトさんの・・カイトさんの・・・) 「はぁ・・・」 オモイカネが数えていたらこれが643回のため息になっていただろう。ルリ自身は決してカイトの事を嫌ってはいない。むしろ好意的な存在だとは思っているがそれでも好きかと聞かれれば判らないのである 「カイトさん・・・どうしてあんな事言ったんですか・・」 無人のブリッジではその答えは返っては来なかった その頃カイトはというと 「ホウメイさん、これでどうですか?」 「どれどれ」 真剣な表情をしてホウメイはテーブルに置いてあるチキンライスを一口食べる 「・・・んー、また米を炒めすぎだよ。カザマ・・・味はもう文句なしなんだけどこんな硬めの米じゃあ美味しいって言えないねぇ」 「そうですか・・・」 肩を落として落ち込むカイト。あの日からカイトは暇さえあれば厨房に顔を出してはチキンライスを作っている。その成果もあり、味はホウメイさんにも100点を貰えるほどになったがバランスに至ってはまだまだであると判断されている。米が硬い、やわ過ぎる、野菜がこげる、などそんな些細な事と思いつつそこが重要なのである。焦げればせっかくの味の質も落ちてしまうからだ 「またやり直します!」 カイトは厨房に戻るとチキンライスの材料をキッチンの上に置く 「ちょっと、カザマ」 「はい、なんですか?」 「どうして失敗するか判ってるかい?」 「え・・」 カイトは唖然してホウメイの方を見る 「あんたのチキンライスはさ、まるでお手本みたいな感じがするんだよ」 「お手本?」 「そう、まるで教科書通りに作ったみたいな料理さ。最初に作ったチキンライスはこげてなかったし、綺麗な仕上がりだったのは覚えているかい?」 「はい、僕も綺麗に出来たって思いましたけど」 「あたしはそれを不味いって言ったよね。それは基本過ぎる味だったからさ・・そんなお店でも食べれるチキンライスは美味しくないのさ」 「基本過ぎる・・・」 「そしてアレンジしてみなって言ったら今度は米を炒めすぎたり、火が通ってなかったりするようになった。味は格段に美味しくなったのにさ」 「・・・・・」 カイトはホウメイが言いたいことを理解した。自分にはアレンジ力がないのだ。忠実に再現できることは出来てもそれをアレンジする事は出来ない・・・そう知ったカイトは拳を握り締めて悔しい表情を浮かべた 「そんな顔するんじゃないさ、カザマ!そこを克服していくのも料理人って奴さね。あはははは」 ホウメイはカイトの肩に手を置いて嬉しそうに笑った。その顔を見たカイトは苦笑いした (もっと頑張ろう。そしてルリちゃんに・・・) そう思ってまたチキンライスを作り始めた そして作戦の日がやってくる 「クルッス工業地帯、あたし達が生まれるずっと昔は軍事採用、取り分け陸戦兵器開発で盛り上がって地帯よ・・・・このクルッス工業地帯を木星蜥蜴が占拠したの、その上奴らったら今までどの戦線でも使われたことない新型兵器を配備したの」 「その新兵器の破壊が今度の任務と訳ですね!提督」 「そうよ、司令部ではナナフシと呼んでいるわ」 真剣な顔をしてムネタケはそう告げる 「今まで軍の特殊部隊が破壊に向ったわ、三回とも全滅」 「なんと不経済な・・・」 プロスは電卓を弄りながら顔を顰める。それを覗くミナトとゴート 「そこでナデシコの登場!グラビティブラストで決まり!」 ピースをしながらユリカは笑う 「そうか!遠距離射撃か」 「その通り」 ジュンの言葉に再度ピース 「安全策かな・・」 「経済的側面からも賛同します」 「それにエステバリスも危険に晒さずにすみますしね」 「回りくどいな〜メグちゃん〜。それを言うならアキトさんでしょう〜?」 「そっそうですね」 「あら〜言うわねぇ〜」 「直ちに作戦を開始します!」 嫉妬顔でユリカが作戦開始の合図を告げる 「ちょっとまった」 その合図をカイトがふいに止める 「ん、何?カイト君」 「そのナナフシの射程距離はちゃんと判ってますか?」 「へ?」 カイトの問いにユリカはぽか〜んとした顔をする 「ナナフシが突然砲撃してくる可能性も考慮しているかと聞いているんですよ。ユリカさん」 「そっそれは・・・」 まったく考えていませんでしたと判りすぎる顔で冷や汗を流す 「まったく、ユリカさんってば」 少し困ったような顔で微笑むカイト 「もしもの時にはディストンションフィールドを最大に出来るようにしていた方がいいと思いますし、それに回避運動も考慮しておいた方がいいですよ」 「だけどディストンションフィールドを最大にするとグラビティブラストは撃てないよ?」 「もしもの為・・ですよ」 カイトはそう言うと何故か自分の席に行かずにルリの隣にあるラピスの席に向う 「カイト、どうしたの?」 ラピスが座っている前まで来る 「ラピス、ちょっと席変わってくれるかい?」 「うん、いいよ」 ラピスは席から降りると代わりにカイトが座ってオペレーション用IFSでオモイカネにアクセスする (オモイカネ・・・ここからは僕がもしアクセスをしたらすぐにディストンションフィールドを全開にしてくれないか) {作戦無視 無理 ダメ 拒否} (アクセスした時だけでいいんだ・・そう設定して貰えないかい?) {・・・・} (無理かな?) {了解} (有難う、オモイカネ) {・・・貸し1} (え・・・・そうだね) カイトは微笑んでオモイカネとのアクセスを終える。そうしている間に既にナナフシとの距離かなり近くなっていった 「予定作戦ポイントまで1万7000」 隣でルリがそう告げる 「さて・・・どうなるか・・な」 カイトは真剣な顔をしてその場から動くことはしなかった 「カイト・・・そこラピスの席」 「ああ、ごめん。ちょっとまっ・・・うわ!」 いきなりラピスがカイトの膝の上に座る 「これでいい」 ラピスはにっこり笑うとしっかりとカイトの腕を自分の胸辺りに持ってきてギュっと握る 「・・・あっ・・ははは、まあ・・・いいか」 「予定作戦ポイントまで1500!」 「うっうわ!?」 ルリが大きな声をあげる。明らかに怒ってらっしゃる声である (後でなんとかしないと・・・) 冷や汗を流しながらカイトは作戦ポイントまで静かに待つ 「予定作戦ポイントまで800」 ・・・沈黙がブリッジを包み込む 「敵弾発射」 「へっ?」 「回避運動!急いで!!!」 「あっ!」 カイトの声にミナトは即座に回避運動を開始する 「ちっ」 カイトはラピスを抱えるとオモイカネにアクセスを開始する (頼む!・・・間に合え!!!」 既に思っている事が声に出てしまっていた。一気にディストンションフィールドの出力を全開するがグラビティブラストの出力を上げる為にどうしても後手に回ってしまった為にディストンションフィールドの出力はなかなか上がらない 「くっそ!」 ナデシコはギリギリの回避運動で傾いたが左側面のブレードを大きく削り取る。直撃していたらかなりの被害が予想されていただろう。 「ディストンションフィールド出力30%ダウン!」 「被害は21ブロックに及んでいます」 「相転移エンジンは辛うじて生きてるけど停止寸前!」 「へぇ?」 いきなり通信が開いてイネスが説明を始める。 「きっとナナフシの正体は重力波レールガンね」 「ええ?」 イネスがまだ説明を続けているがそれ所ではない 「相転移エンジン停止!操作不能、墜落します!!」 「補助エンジン全開」 「そんなこと聞いてる場合じゃないってば!」 カイトはラピスを左手でしっかりと抱きしめると同時にすぐに立ち上がり右手を使いルリをこちら側に引き寄せる 「え?」 ルリは突然引き寄せられた事に戸惑いながら対ショック備える 「ぐっ!」 カイトは衝撃を受けながら後部座席に背中を打ち付ける そうして静寂が訪れ・・いやイネスさんの説明が続いていた 「威力は凄いけどマイクロブラックホールの精製に時間がかかるでしょうから、暫く安全だと思うわ」 「貴重なご意見・・どうも」 ユリカはのろのろと立ち上がりイネスにお礼をいう 「でも・・これからどうしよう・・」 「やっぱりエステバリスの出番かな・・・」 ジュンも立ち上がりながらそう意見する。腰を痛めたらしく腰を摩りながら 「ん〜カイト〜」 カイトの左胸にスリスリしながら幸せそうな顔をするラピス 「あっあの・・・カイトさん?」 戸惑いと頬を赤くしながら右胸に密着しているルリ 「ふう・・・やっぱりこうなるのか・・・」 残念そうな顔をしながらただ呆然と天井を見つめるカイト そうして立ち上がるとラピスとルリを開放する 「あ・・・・もっと・・」 「・・・・・・・」 ラピスは残念そうな顔をしながらカイトから離れる、そしてルリは無言のまま頬を赤くしたまま俯く 「二人とも怪我はない?」 「ない」 「・・・ありません」 「そっか、よかった」 そう微笑んでカイトは中心部のモニターに向う。既に他のクルー達は集まっていた。ミナトだけは何故かこちらを向いてニヤニヤとした顔でカイトを見ていたが 「ばか・・・」 ルリがそのまだ赤い顔のままそう呟いた 「対空攻撃システム・・・軍の迎撃部隊はこいつに全滅させられているの。現在の我々の位置でも向こうは攻撃可能よね」 「そんな大事な事、早く言って下さい!」 ユリカが少し怒った表情でムネタケを攻めるが 「あれ〜?言わなかったけ?」 とごめんごめん程度で言うムネタケ。これで命取りになったらどうするだよ・・とカイトは思いながらため息をつく 「とにかく空からエステバリスを向わせても同じって事ですよね?」 「経済的な面を考えると頭が痛い・・・」 「パイロットは痛いじゃすみませんよ」 「まったくだ」 「ん〜空からもダメ・・・」 ユリカはんーと考えているといきなりイネスの通信が開いてまた説明が始まるがさっさと切り上げる。カイトは次に来るだろう作戦の指示の為にさっさとブリッジから出る 「あっ・・・・」 ルリはその後ろ姿のカイトを見つめて少し寂しい気持ちになった (なんで寂しいなんて思うんでしょうか・・・) ルリは自分の不可解な気持ちに戸惑いを感じていた 「という訳でエステバリスを地上から接近。ナナフシの破壊を行う。作戦開始は「はい、ちょっとここで提案ですが」 ゴートの説明を割るようにカイトは席を立つ 「なんだ・・カザマ」 「もしナデシコから全てのエステバリスを出撃させるとしてナデシコの守りはどうするんですか?ナデシコは今は修理中です。もし敵が来たとしても迎撃も出来ません。ナナフシだけがここにいる訳じゃないでしょ?木星蜥蜴の兵器だっているはずですから一機のエステぐらいは残すべきだと思いますけど」 「たしかにカザマの言う通りではあるが・・・・」 「そういうことになると思ってましたから僕が残ります。それでいいですね?皆さん」 「えっ、カイト君はお留守番?」 「まあ、たしかにそれが妥当かな。彼なら一人でもなんとか持ち堪えられるだろうしね」 驚いたヒカルとは対照に当然だなって感じでアカツキは言い放つ 「なら、カイトはこの作戦には参加はしないってことか・・」 「ああ、そういうことになるかな、だからアキトさんは頑張ってね」 カイトはアキトの肩に手を乗せるとブリーフィング室から出ていこうとする 「おい、何処に「エステの調整ですよ」 そう言ってカイトは部屋から出る 「なんかカイトの野郎・・・今日は無愛想みたいな感じしないか?」 「無愛想・・・武の相性・・ぶあいしょう・・ぶあいそう・・・くくく」 「まあ、奴にも考えがあるって事だろうが・・・作戦の説明を続けるぞ」 そうして作戦の説明が開始された カイトは一人廊下を歩きながら格納庫に向う (本当は直撃だったんだ・・・ナデシコに・・・だから・・・可能性は・・・アキトさん達の作戦は失敗する可能性はある・・・そしてナデシコは・・・) 「そんなことは絶対にさせない」 カイトはこの作戦を聞いた時から胸騒ぎがして仕方なかった。嫌な予感とも呼べるこの感覚・・・初弾の重力波レールガンでナデシコが沈むとは思ってはいないがそれも可能性ではあった。本来の歴史とは違う流れである以上、いつ何が起こるとも言えないこの時間の中でカイトは必死だった。ifの存在がカイトにとっては今は忌わしい物にさえ感じる 「絶対・・守る」 カイトはそう呟いて格納庫に着くと入っていった 「補給物資担当はアキトだ〜〜〜じゃんじゃん積み込めぇ〜〜〜」 (アキトさん・・・みんな頑張って) カイトはそう思いながら自分のエステを整備していく 「カイトさん」 「ん?」 通信が開いてルリが話しかけてくる 「作戦開始15分前、各自パイロットは最終点検に入ってくださいだそうです」 「あれ?それってメグミちゃんの役じゃ・・・」 「今は特別通信中です」 「あっ・・ああ、そう」 苦笑いしながらそう答える 「カイトさん・・・」 「なに?」 「・・・・作戦前なので今は聞きません。だけど作戦が無事終わったら色々聞きたいことがあります」 「聞きたいこと?判った。この作戦が終わったら色々答えるよ」 カイトは微笑む 「約束です。必ず終わったら教えてください」 「やく・・・そく・・か」 カイトは懐かしい響きに少し目元が霞む 「どうしました?カイトさん」 「んや、判った。必ず・・・あ、それとこっちからも約束を一つ」 「はい?」 ルリは疑問的な顔をしてカイトを見る 「帰ったらチキンライスを食べて欲しいんだ。とびっきり美味しい奴を」 「それ・・・カイトさんの手作りですか?」 「そう・・だけどダメかな?」 「いいえ・・・判りました。ご馳走になります」 「有難う、ルリちゃん」 カイトは微笑むと通信を切ろうとする 「約束ですよ。カイトさん」 「判った」 そうして通信を切ると入れ替わりにラピスが通信を開く 「カイト」 「っとラピス、どうしたの?」 「あのね・・・この作戦終わったらね・・・あのね・・あのね・・」 「どうしたの?ラピス」 「あの・・ね・・デッデートしたいの!」 「・・・・え?」 「ミナトが教えてくれたの・・・好きな人とはデートする・・ん・・だって」 「・・・・・ラピス・・・好きな人って・・ラピスの考えている好きの部類が多分違うと思うんだけど・・・」 「ううん!そんなことないもん・・ラピスは・・カイトが好きだもん」 (・・・ミナトさんめっ!) カイトはため息をつくとラピスに微笑んで返事を返す 「だ〜め。それデートする場所だってないと思うけどな」 「バーチャル・ルームを使えばいいって・・ミナトが言ってた。メグミも艦長もそうやって使ったって言ったし・・・ダメじゃない・・・カイトは・・ラピスの事嫌い?」 「えっ・・いや・・そんなことはないけど」 そう答えるとラピスは本当に嬉しそうに笑う 「じゃあ、デート!約束」 「・・・・しょうがないな」 カイトはどうせラピスはまだ子供だからというまるで親が子供を旅行に連れて行く感じの気分で答えてあげた 「有難う。カイト・・・ちゃんと腕組んでね」 「・・・え゛?」 そう返事した時には既にラピスからの通信は切れていた (・・・・あれ?思ってるより・・大人になったか・・ラピス) 少し早まった考えを後悔したカイトである 「・・・カイト・・・デート〜・・わくわく・・・」 「あらぁ?ラピスちゃん。成功したみたいね」 「うん、有難う。ミナト」 「いいのよ〜別に、それよりも頑張ってね」 「うん!」 先ほどの通信を切り終えたラピスは本当に幸せそうに作戦終了を待ち望んだ 「バッカばっか・・・・・私もバカ・・なのかな」 ルリはそう思いながらも細く微笑んでいた 「ビシ!」 敬礼 何故か軍隊服コスプレをしているナデシコクルー 「あらぁ・・・」 「新手のコスプレかね・・・?」 プロス唖然 「セイヤさんがこれを着たほうが」 「作戦司令部みたいな気分が出るからって」 「こっコレクションから持ってきたそうです・・・」 「ビシ!」 そしてまた敬礼 「ん〜似合う?」 セイヤがまた何かコスプレを着たようだかスルーしよう 「まぁ・・」 「こちらの作業は整った。ドクターが観測衛星から送られてくる最新データを分析中だ」 「うふ」 何故かカメラ目線?でピースするイネス 「いずれ新たな情報が得られるだろう・・・」 目元を押さえてうな垂れるプロス、何故か凄く嬉しそうなエリナ、無関心のゴート・・・反応はそれぞれである 「エステバリス隊、エネルギーライン有効範囲内より離脱します」 「ビシ!」 再度敬礼 「・・これはほんとバッカばっか・・」 「こちらカイト機、こちらのそろそろ出撃しま・・・へ?」 そこでカイトが見たものは武者鎧を来たルリ、ラピス、他は軍事服コスプレ 「・・・・あれ?ここはナデシコ・・・だよね?」 「カイトさん・・・気にしないでください」 「・・・・・・・そっそっか」 「大人ですから」 呆れたようにルリはそうカイトに伝える。カイトはそれを聞くと冷や汗を流す 「とっともかく・・・カイト機、こちらも出ます」 「了解、気をつけて」 「それと・・・可愛いよ。ルリちゃん」 カイトはそう微笑むと通信を切って出撃する 「・・・・カイトさんの・・バカ」 カイトは出撃すると陸戦型エステで周りを警戒する (それにしても・・・ナデシコらしいやな・・) さっきの光景を思い浮かべながら嬉しそうに笑った その頃エステバリス隊は 「一〜二〜三〜四〜・・・」 「エステバリス部隊、グラカーニャ村を通過」 「ルリ・・・アキト機がもってるあれ・・何?」 「鍋です」 「エステバリス部隊、スベイヌン鉄橋を通過」 「アキト機だけ遅いよ・・なんで?」 「荷物のせいです」 「エステバリス部隊、カモフ岳を登頂中」 「エステバリスって崖登りとか出来るの?ルリ」 「そんな機能はありません。いずれ落ちます」 「あ、ほんとだ。落ちた」 「エステバリス部隊、イール河を通過します」 「ルリ、エステバリスって重くないの?」 「かなりの重量ありますよ」 「よく沈まないね・・・アキト機」 「いえ、あれは河が浅いからだと思います」 「ふーん、でも錆びるよね」 「はい、確実に」 「エステバリス部隊、モアナ平原を通過中」 「ルリ、あそこって地雷なかったけ?」 「ありますねぇ」 「・・・・・・」 爆発音が鳴り響く。スクリーンを見るとアキト機が地雷を踏んで転倒していた。 「踏んだねぇ」 「踏みましたね・・」 「・・・・」 「・・・・」 「「バッカばっか・・」」 と現状報告をラピスとルリは楽しく?報告していた (!) 「きたか・・・」 通信を開いてナデシコに敵襲報告を教えようとする 「こちらカイト機、敵襲って・・あれ?」 「え?カイトの方もかよ!」 「ってことはエステバリス隊も敵襲って事ですね・・・お互い忙しくなりそうだ」 ブリッジでエステバリス隊からの通信とカイト機からの通信が開かれて敵の戦力説明が始まる 「なるほど・・・戦車か、カイト機、一気に殲滅する。ナデシコには指一本触れさせない」 そういって交戦を始める。カイト機 「この程度の数なら!」 カイト機は中距離にきた戦車にはワイヤードフィストを巧みに使いこなし、遠距離にラピッドライフルで応戦を開始する。 「カイトさんはやはりさすがですねぇ、あれだけの数を相手に出来るんですから」 プロスが嬉しそうにカイトが撃破していく戦車を眺める。カイトはこの程度と言うがかなりの数がナデシコとカイト機の周りを包囲しているのが判る。その数を相手にカイトはナデシコの周りを円を描くように応戦しているのだ。勿論すぐにラピッドライフルの弾数は底を付いてしまったがカイトは焦らずに戦車にワイヤードフィストが届く距離まで行くと一気に放ち、戦車を撃破する。そしてそのワイヤードフィストが戻ってくる前に他の戦車に向って今度は接近戦を試みる 「このっ!」 「「「「「あ・・・・」」」」」 ワイヤードフィストがまだ戻ってきていないのだから仕方ないがだからと言って 「だからって・・戦車を蹴る戦い方はどうかしら・・・」 戦闘画面を見ていた全員の思いを口に出すエリナ 「すいません、ちょっと余裕がやっぱ無くなってきました」 カイトは苦笑いしながら通信に答える。たしかにカイトに取ってこの数は撃破できる数ではあるがその数が続くとなると話は別になる。更にナデシコを守りながら戦うのだから形振り構ってられる状態ではないがカイトはそれでも通信を出来る余裕すらあるのだから驚きである 「カイト、頑張れ〜」 そんなカイトを励ますようにラピスが微笑む 「ほら、ルリルリ。あんたも何か言ってあげなさいよ」 ミナトがルリを小突きながら小声で伝える 「あ、・・えっと・・カイトさん、頑張ってください」 ルリは顔を下に向けて照れくさそうにカイトを応援する 「有難う。二人とも」 カイトは嬉しそうにそう告げるとまた戦闘を続行する。それからすぐその後だった 「艦長、一大事よ」 「はい?」 「データ不足だけど悪い知らせよ」 「どれくらい?」 「そうね・・かなり悪いわ」 「動きましたか?ナナフシが」 「ええ、そうよ。あら、カイト君は今戦闘中じゃ」 「敵には判ってるって所みたいですね。イネスさんからの通信が入る前に撤退を開始しました」 「そう、・・向こうもエステバリス隊も気が済んだみたいね。そろそろいいかしらね、悪い知らせよ。ナナフシが動き出したわ」 (・・・念には・・念を・・・か) 「ウリバタケさん、いいですか」 「うお、なんだ!カイトいきなり特別通信なんか「シィー」 大声を出すウリバタケをなんとか宥めようとするカイト 「話は後です。空中換装の準備をお願いします」 「え、空中って・・お前どうしてだ?」 「いいからお願いします。後はこっちから全部やりますから取りあえず急ぎお願いします」 そういってカイトは通信を切る 「さてと・・・覚悟を決めないとな」 カイトは死ぬかもしれないような事をするべく気合を入れてその時を待つ 「敵も馬鹿じゃないから・・・で、その結果どうなっちゃうかと言うと」 イネスの解説が未だ続いてるがカイトは目を瞑りイメージを固めていく (タイミングが合わなければ一緒に蒸発する・・・早かったらナデシコに直撃・・遅かったら自分が死ぬか・・・いや、使わなければいい事に越した事はないんだけどな・・) 「たっくなんで今来るんだよ」 「ん、なんだ?」 カイトは通信を開くと丁度リョーコ達がエステバリスに隠れながら戦車一機と応戦している画面が写し出された 「あっ!リョーコさん、吸着地雷を使うんです。エステバリスからそれを取ってください」 何やら割り込み通信をしたような気がしたが構わずにカイトはリョーコ達に通信を繋げる 「んなもんどうするんだよ?」 「それを使って戦車を倒せます。急いで」 「わっーたよ!ヒカル、頼む!」 「ハイハーイ」 「地雷をハルに仕掛けて下さい。ハルって言うのは戦車の車体部分です。そこは装甲が薄いんです」 「お、カイトそれは俺のや「おーい、取れたよ〜」 ウリバタケの通信が入ったが丁度ヒカルの声がそれを遮断した 「よっしゃー任せろ」 リョーコは吸着地雷を戦車に仕掛けて退避すると同時に爆破が起き、戦車が動きを止める。その隙を狙いイズミがハッチを開き、中にいたトカゲを狙い打つ 「目にキッス、命中」 「あぁ・・はいはい」 「大丈夫みたいですね」 「おう、助かったぜ、カイト。しかしよくそんな事知ってたな」 「いや、まあ色々ありましたから」 (未来での時にウリバタケさんがその事を話してくれた時に熱く語ってて覚えていたとか言えないな) 「それじゃあ、後はその戦車使ってアキトさん達の援護に向って下さい」 「了解しました〜。なんか向こうも大変みたいだったし、リョーコちゃん、運転できる?」 「あっ・・ああ、多分」 「操作はそう難しくないはずです。IFS操作じゃないですが基本的には2世紀前のクラッチの方の車と代わりないはずです」 「クラッチって・・ずいぶん昔の言葉だな、おい」 「まあ、ともかくリョーコさん達なら動かせるはずです」 「あ、おい。カイト!ちょっとま」 カイトは通信を切ると強制的に全通信をシャットダウンする 「・・・え」 「ルリちゃん、どうしたの?」 「カイト機、全通信シャットしました・・・」 「へっ!なんで?帰還命令出す所だったのに」 「・・・・・っ」 ラピスは無理矢理通信をこじ開ける作業を始める 「ラピス、ダメです。プライベートな事なのかも知れませんよ」 「なら尚更・・・カイトが通信を切るなんて初めて・・ラピスには何時も繋いでるカイトがラピスの通信まで切るなんておかしい」 ラピスに何時も繋いでるという言葉でちょっとカチンと来るルリ 「私にだって調べてみればいつもカイトさんは繋いでいてくれます」 「なら判るはず・・カイトがおかしい・・この作戦が始まってからおかしい」 「・・・・・」 ルリはラピスの言葉に唖然した。ルリ自身は気付かなかったからだ。カイトにはおかしい所はないと思っていたがラピスにはおかしい所があると言うことに気付いていた事にだ。 (私は・・・気付いてませんでした。なんでラピスには判ったんですか・・なんで) それはカイトがどれほど好きかと言う差であるがルリ自身はそれにまだ気付かない。ただ自分も気付けなかった事に苛立ちを胸の中に感じていた 「開け・・開いて・・オモイカネまだ?」 {分析中} 「ナナフシ付近の空間に重力波増大中、来るわよ」 「修理が間に合わないぞ!」 「どうするのよ!ねぇどうするのよ!、このまま司令部になんて報告すればぃ「お静かに!!」 「ご協力感謝します。提督!」 「いざとなると強いですな。うちの艦長は」 「信じてるからですよね・・・」 その言葉にユリカは静かに頷く (来る!) 「行くぞ!」 時間になりナナフシの方向から光が集まるのが見えたカイトはブースターを全開にさせてナデシコの前に飛び上がる 「なに!?」 「あれは・・・カイト機」 カイトが陸戦フレームのブースターを全開にして空中に浮上している姿がスクリーンに映し出される 「なっ!なんて馬鹿な事をしてるの、カイト君は」 「無茶ね。あのスピードではナナフシの対空攻撃システムに撃ち落され・・・まさか彼は」 「時間稼ぎですか・・カイトさん」 ナナフシから充電しきれていないマイクロブラックホール弾がカイト機に向って撃ち出される 「カイト!オモイカネ!!急いで!」 {ロック解除・通信開きます} 「カイト!逃げて」 ラピスは大声をはり上げるがカイトは無言のまま急上昇し続ける。そうして限界点にきた瞬間に 「ディストンションフィールド全開!」 カイトがそう言うとエステの全エネルギーを使いディストンションフィールドを張った。その瞬間にナナフシのマイクロブラックホール弾がカイト機に直撃する 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」 カイトはIFSの性能の限界まで引き上げマイクロブラックホール弾を受け止めているが次々と腕から頭部付近まで一気に破壊されていく (今だ!) 「ウリバタケさん!空戦フレームを早く!!」 「おっおお!おおおおお前ら!早く!急げ!急げぇ〜!カイトがぁぁぁ」 いきなりの通信で焦りまくりのウリバタケが急いで指示を出す、どんなに急いでも射出には10秒かかる 「ぐっ・・・まずい」 予想はしていたがかなりの重力と風圧が圧し掛かる。カイト自身がすっかり忘れていた腹部の傷口が一気に開いていくのが判った。これほど長い10秒はカイトにとっても初めてだった 「カイト!逃げてっカイト!」 ラピスが大声で画面に向って叫ぶがカイト自身返事する暇も無いが声だけはしっかりと聞こえていた 「ごめん・・ラピス・・・ルリちゃん・・・約束は少し・・遅れる・・かもしれ・・・(ザァァァァーーーー」 誰に伝えるわけでもなくただ一言そう呟いたカイトのコミニュケに砂嵐が現れる。ブリッジいた全員の誰もがただ唖然としたまま動かないでいる 「ひっく・・・カイ・・カイト・・うっぇぇぇ」 ラピスが我慢できなくなり泣き出してしまうが誰もなだめる事をすら出来なかった 「・・・・空戦フレーム射出します」 ルリが機械的な声でそう呟いた。その声でユリカはカイトの生存を確かめる為にメグミに問いかける 「カイト君・・・どうしたの?ねぇカイト君は?!」 ユリカが必死にメグミに問いかけるがメグミもただ呆然としたまま動こうとはしない 「ねぇ!カイト君はどうしたの?誰かお願いだから答え「生きてます・・・」 「え?」 ルリがぽつりと呟く 「生きてます」 「・・ひっぐ・・ルリ?」 ラピスは泣くを一旦辞めてルリを見る 「生きてます!カイトさんは生きてます」 今度はブリッジ全員に聞こえるように大きな声でまるで自分に言い聞かせるようにそう言う (私は・・私は信じてます。カイトさんを信じます。ですから・・ですから) 「そうそう、勝手に殺されるはちょっと困るかな」 「「「「「え?」」」」」 「やっと繋がった・・・カイト機、無事空中換装完了しました。コミニュケの方はちょっとぶつけて壊れちゃっただけです」 「カイト君!」 ユリカが安堵したような顔でカイトを見る。ブリッジの面々も安堵の表情が戻る。ラピスは涙を流しながらも笑顔を浮かべている 「正直ちょっと危ない所では、ぐっ・・あっあったかな」 腹部の痛み、そして体中にかかった重力のせいでカイトの体はボロボロでだった。だがその痛み生きている証、そして守れた事の証であった 「あの状態でよく生きてたね!カイト君・・本当に君は凄いよ」 ジュンはカイトのその生命力に驚いた 「こちら、テンカワ機!、ナナフシの鎮圧しました!ナデシコは大丈夫だったか?!」 「お疲れ様、テンカワさん」 「カイト、お前・・・どうしたんだ?なんか顔色悪いし・・・それにいきなり時間より前にナナフシが撃った時は本気で焦ったんだからな!」 「間に合ってたんだ・・よかった。本当に・・ちょっと僕はオートパイロットで帰還します。正直動かせる自信がなくて」 冷や汗を流してそう告げるとカイトはコミニュケを切る (間に合って・・・よかった・・・) カイトは目を瞑るとただ安らかな寝顔をしてナデシコに帰還した。 その後格納庫で収容されたカイトの緊急オペがすぐに開始された。腹部からの出血がかなり酷く、このままでは命に関わる事だった。ブリッジではカイトあの行動に対しての会議的な物が行われることになった 「あんな事しなくても僕は間に合っていたと思うがね。僕らってそんなに信用ないのか?」 自分が信用されていないと思っているのかアカツキは不機嫌だった 「違います。テンカワさんのエステバリスの弾数、そしてアカツキさん達が駆けつけてきた時には時間帯を考慮したとしても間に合いませんでした。これはオモイカネが計算して出した時間です。間違いありません」 ルリが反論する 「俺のせいなんだよな・・俺が・・俺が無駄弾さえ使わなければ・・カイトはあんな事には」 「違う・・例えアキトがナナフシに弾数を使わずに行けたとしても無理、だってナナフシは予想数値よりもダメージを与えなければ鎮圧は不可能だったから」 ラピスがアキトを励ますつもりではないのだろうが真実を口にした結果アキトは少し沈んだ気持ちから救われる感じがした 「作戦には予定通りにはいかないものよ。まあ、パイロット一人が死なずに大怪我程度で成功してよかったじゃない」 ムネタケのその台詞にアキトが切れる。ムネタケに向って殴りかかろうとするがリョーコとアカツキが止めに入る 「あいつは!あいつは命をかけてナデシコを守ったって言うのに提督は程度で済ますのかよ!おい!」 「落ち着け!テンカワ」 「そうだ、落ち着け。テンカワ君・・・提督も言い方ってもんがないかね」 「なっ何よ、戦場ではいつ誰が死ぬかなんて判らないのよ。あたしが配属されてから死者が出てないナデシコの方があたしは不思議でたまらないわ!」 「ですが提督、今の言い方はあまりにも酷いです」 「じゃあ、こんな会議、あんた達だけでしなさい!あたしは戻らせて貰うわ」 ユリカ、アカツキ、そしてアキトの言葉にムネタケは腹を立てるとブリッジから怒りながら出て行く。そしてまた会議は再開される 「・・・私が思うにですね。カイト君はこのナデシコの為に命を懸けていると思います。・・・・ナデシコを守るためなら命さえいらない。そんな覚悟なんだと思います」 「でも、死なれて貰っては困るわ。ネルガルとしてもナデシコクルーとしても彼の存在は大きいのよ」 「判ってます。ですから私は彼にパイロットを降りて貰おうと思っているのですが」 「それは無理だよ。ユリカ、たしかに彼は危ういかもしれない・・けどパイロットとしてはナデシコでは随一なんだ。そんな彼をパイロットを辞めさせる事は出来ないよ」 「ジュン君・・・」 「ですねぇ・・・彼のパイロットの腕前が無くなれば経済的にも戦力的にもそして作戦遂行確立すら響きます。これでは辞めて下さいなんて言えませんし、何より契約がありますからね」 「たしかに・・彼の戦力は大きすぎる。抜ける事はできん」 「ん〜じゃあ、パイロットお休みなんてどうなの?それでいいんじゃないかしら」 「それでも何も変りませんよ。たださえアキトさんやみんなに負荷が来ると思いますし」 「俺達がもっと強ければいいのによ」 「ほんと、カイト君ばっかり頼ってた所あるもんね・・」 「・・・・・・」 そのまま結論が出ないまま時間が過ぎていく。そして 「ちょっと、みんな。聞いてくれるかしら」 通信が開きイネスが出る 「イネスさん!カイトさんは大丈夫ですか?!」 ユリカがカイトの安否を気遣うが返ってきた返事は予想外の物だった 「・・・カイト君は・・出血が酷すぎて脳に酸素が回らなくなったの・・・簡単に言うわね」 「・・・植物人間・・・ですか?」 ルリが震えた声を搾り出す 「そう・・・回復の見込みは・・限りなく0に近いわ・・・」 「そんな・・・」 「カイト」 ラピスはブリッジから医務室に急いで走る 「・・・なんで・・こんな事に」 「判っていた事ではあった・・まともにあれを受けたんだ。生きている事さえが奇跡だ」 「この会議は・・意味を成さなくなってしまったって訳か」 アカツキは静かに医務室に方向を見つめる 「・・・カイト、ごめん。俺の・・俺のせいで・・」 「・・・・」 ルリは沈黙のまま静かにブリッジを出ると医務室に向って走り出した。そうして医務室に入るとそこにはラピスが寝ているように意識が無いカイトの手を握りながらただカイトと呟き続けていた (生きています・・・あの時、私はそう言いました・・・ですけど・・これじゃあ死んでるのと変りないじゃないですか・・・カイトさん) ルリはその光景を見つけていた時に瞳から雫が零れた事には気づくことはなかった 本当にお久しぶりです。闇光です!一年と半年?ぐらいお久しぶりですorz 本気でごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい。書く暇がない+意欲が沸かないというコンボでこんなに日数が経ってしまった後に再度投稿されて頂きました。サイトの方々や読んでくれてる皆様に大変申し訳ないですorz まあ、なんとか書き上げる事ができました!また更新がいつになるか判りませんがこれ以上遅くなる事は決してないと思います!むしろさせません では次の次回作 「あの忘れえぬ約束と想い出」をお楽しみにして下さい! 本気で頑張ります |
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