機動戦艦ナデシコ 刻戻りて白銀騎士

                                   思い出すと悲しくなる過去

                               いや、それは過去ですらなく体験した未来

                               僕はその未来を変える要素になると思う

                            もしかしたらもう既になってしまっているかもしれない

                           それがいい事なのか、それともダメな事かは判らない

                                だけど何もしないままは絶対に嫌だから

                                      だからこそ・・・・・・

                                  「僕は変えて見せる・・・絶対に」






                    
第一章    奇跡の作戦「再会か?」





ナデシコ内部 カイトの部屋



「ふう・・・」

カイトはベットの前に横になると目を瞑った。どうやら相当疲れているようだ。一時間前までネルガルと個人で取引していたようなものだから仕方ないと言えば仕方ないのだ

(・・・・もうすぐだからね)

カイトはそのまま深い眠りに入ったようだ



二時間前 ナデシコのある一室


「では、ボソンジャンプは時空移動ではなく、時間移動って事ね」

エリナがカイトに再度確認するように聞き返す

「そうです」

「時間移動・・・ね」

アカツキは少し考え込んでいた

「別に瞬時にその場に移動できる利点は使えると思うわ・・・しかも木星蜥蜴のように大群を使ってボソンジャンプすれば「無理ですね」

「何故?」

エリナの提案をカイトは切り捨てる

「ボソンジャンプには条件があります。下手すればジャンプ一回で全滅なんて事もあります」

「くっ、その条件を貴方は知ってるのよね・・・」

「知ってますが、これは教える事は出来ません」

「なっ何故よ?」

「未来を変える・・・想像してくれませんか?僕がこのナデシコに現れた時点で僕の知っている事とはまったく違う事が起きているんですよ。僕の知らないね。もし仮に僕一人が現れた事によって地球が木星蜥蜴の戦争に負ける事だってありえるんですよ。・・・・だけど僕はそれでもやる事、いや絶対にやらないと行けない範囲だけはどんな事があってもするつもりですけどね」

「君のその発言を聞く限りでは君の未来では木星蜥蜴との戦争に勝ったと聞こえるのは僕の間違いかな?」

アカツキがニヤリと笑ってカイトにそう言い放つ

「たしかに僕の未来では・・・勝利はしてませんが色々な意味でいい方向に流れました。だけど・・・その後が絶望的でしたけどね」

「どんな事?」

エリナがそこに食いつく。しかしカイトは喋る気はまったくなかった

「未来を知りたいと言ってるような質問は全て却下します。もっともボソンジャンプの時間移動を知るのも本当ならもっと先の話だったんですからね」

アカツキとエリナは押し黙るしかなかった。たしかに未来の情報は喉から手が出るほど欲しいに違いないがだから言って人間として入っていい領域と入ってはいけない領域ぐらいは理解しているのだ。

「では、そろそろボソンジャンプの話は置いて取引の話をしませんか?」

カイトの本題はここにあった

「ボソンジャンプの事も含めてと言って欲しいわ」

「話せる範囲まで・・・ですけどね」

カイトとネルガル取引の条件はこれだった

新型のエステバリスの設計(スーパーエステバリスの設計)

ブラックサレナ装甲の設計

ボソンジャンプに関しての出来る範囲の助言

これがカイトがネルガルに提供する条件だった。一方のネルガルが提供するの条件

マシンチャイルド一人の受け渡し

カイトとマシンチャイルドの戸籍

今後のカイトとマシンチャイルドの身の安全

全面的なカイトとマシンチャイルドのバックアップ

だった。アカツキとエリナはマシンチャイルドの単語を聞いた時に疑問な顔を浮かべていた。そのはずである。ネルガルが知る限りではマシンチャイルドは星野・ルリ以外は確認されていないからである

「ネルガルの会長に知られないようにある施設がマシンチャイルドを作っているんですよ・・・裏でね」

そのカイトの言葉を聞いた時にアカツキは無性に腹が立った。別にアカツキ自身が指示を出して作っていたのなら腹は立たなかっただろうが自分の指示が出ていない裏でそんな事が起こっていた事に腹が立ったのだ。これはエリナも同じ考えだった。もっともカイトはそんな二人の考えをあまり好きではなかったが

「ブラックサレナ装甲・・・いやサレナ装甲といいましょうか。それは普通の人間・・いやこの地上で装備して動けるのはアキ・・いや現時点では僕しか居ないですから、これは未来の技術と思ってください」

「たしかに・・・スーパーエステバリスの設計は現段階でも不可能ではないな、耳にした事もあるがこのブラックサレナ・・いやサレナ装甲は初めて耳にする言葉だ」

アカツキに取って軍より先にこの情報が手に入ったのまさに幸福だったのだろう。未来ではスーパーエステバリスを先に設計したのは軍が先だったからである

そうして取引は終了した。カイトは少し休んだ後にマシンチャイルドを迎えに行くと言い残し部屋から出て行った

「会長・・・宜しいのですか?この条件」

「全然問題ないよ。エリナ君、むしろ彼はまだ沢山の事を知っているんだよ。決して逃しはしないよ・・・決してね」

アカツキはニヤリと笑って部屋を出ていった。残されたエリナはすぐ近くにある物を掴めない事にまだイライラとしていた



そうしてカイトが眠りついて暫らくした後にブリッジに呼び出しの連絡があり、しぶしふカイトは起きてブリッジに向った

「と言う訳でいきなりだけど命令よ」

「提督」

「なーにー?」

「ネルガルが軍と協定を結んだといえ、命令以下によっては拒否権が我々には認められています」

「まあ、一応はね」

「本艦クルー総員に反する命令は対してはこのミスマル・ユリカが艦長として拒否致しますので、ご了解下さい」

「戦うだけの手駒に為らないって事ね」

その言葉にユリカが頷く

「おあいにく様、貴方達へ命令は戦う事じゃないわ」

「ほぇ?」

その言葉にユリカが気の抜けた返事をする

「敵の目を掻い潜って救出作戦を成功させる事よ」

「「救出作戦?」」

「木星からの攻撃の攻撃を尊い命を守るというナデシコの使命は・・・まあ、果さなきゃダメよねぇ」

そうしてメインスクリーンの地図に救出を求めている場所の赤いマークが次々と表示されて行く

「このように現在2千6百3十7個のも救出があるのよね。で北極海域ウチャツラワツスク島、ここに取り残された冒とくの親善大使を救出するのが私達の仕事」

「しつもーん」

「なーにー?」

「何でこんな所に取り残されたんですか?」

ユリカの言葉にジュンが相槌を打つように頷く

「大使は好奇心おおせいな方でね。北極海気象データ、余剰諸々を調査していたらならばバッタに襲われさあ、大変。チャツラワツスク島海域今の時期ほんど毎日ブリザードでね。通り過ぎるだけでも大変なのよ」

カイトはその話をぼーっと聞きながらユリカとアキトを見ているが何かギクシャクしている空気が感じられる。そればかり見ていたせいで結局何がどう決まったのかさえ注目していなかった。勿論カイトに取ってこの作戦をしようとは思わなかった。既にカイトの心は今から行く所の事ばかり考えていたかられである

そうして話が終ったせいでブリッジからはパイロット全員が食堂に向って行く、カイトもそれ続いた。アキトの事が少し気になったせいである

「取り合えず俺達パイロットは暇だよなぁ」

「鋭気を養えってかぁ」

「鋭気を養ってヘイキーで、くっはっはっはっは」

「「「ふぁぁぁぁぁ」」」

「アキトさん」

「・・・何だよ」

カイトはアキトに話しかけたがやはり嫌そうな顔をした

「ちょっと・・・付き合ってもらっていいかな」

「・・・・ああ」

「ってそういう意味じゃないから・・・勘違いしないでね」

「ふぇ?」

そうして廊下に出るアキトとカイト

「話って何だよ・・・」

「・・・・貴方の両親の事は僕は実際会ってもないし、どんな人かも知りません」

「・・・そっか・・やっぱそうだよな」

「だけど、どうして亡くなったのかは・・・知ってるんです」

「・・・・どうしても教えてくれないんだよな」

「時が来れば・・・自分自身で知る事になるんです」

「・・・・・・・お前が殺したんじゃないって事は判るさ」

「・・・・ごめんなさい。だけど貴方は誰よりも幸せになる事が出来る・・いや僕がさせてみせますから」

「どういう意味・・・だよ」

「僕は・・・貴方や艦長、そして・・ルリちゃんの事をどれだけ優しくて・・・どれだけ楽しくて・・・どれだけ・・・悲しい運命を背負ってるか知ってます。だから」

「カイト」

「・・・はい」

「料理作ってやるから来いよ」

「え?」

「食べたいって言っただろ」

「・・・はい!」

(有り難う・・・アキトさん)

それはアキトなりに心遣いだった。カイトの悲しい瞳がアキトから見ればとても辛い思いをしてきたと痛感したから、だからこそこいつは心優しい奴だと思った

(カイト・・・お前の口から教えてもらわなくてもいいさ。俺は何とか俺なり見つけ出してやるからさ・・・答えを)

そうしてカイトはアキトに作って貰った火星丼を食べた。それは懐かしい、そしてまだ食べたこと無いアキトの未熟な腕の味だけど温かい優しい味がした。

そうしてこの時からアキトとカイトは親友と呼べる昔の関係を築く事が出来た

その一時間後、カイトは自分の部屋から出るとあの時の白い服装を身にまとい、アカツキの部屋を尋ねた。気づかれないように人目がつかない場所を移動しながら

「アカツキさん、カイトです」

カイトはノックをしてアカツキの部屋に呼びかける。扉が開くと同時に素早くカイトは部屋に入り込んだ

「おや・・カイト君。その服装はなんだい?」

アカツキはカイトのその奇妙とも言える格好に質問するがカイトは押し黙ったままアカツキに用件だけ伝える

「今からマシンチャイルドを僕の知っている施設から連れ出します。勿論その施設も破壊すると思ってください」

「おいおい・・なにも施設を破壊しなくていいんじゃないか?」

「これ以上マシンチャイルドを増やしたくないし、それに目的がありますからね・・・」

「・・・・・それも未来を変える出来事に一つに当てはまるということかい?」

カイトは静かに頷くと部屋から出ようとする

「待ちたまえ、カイト君」

「はい?」

「どうやってその施設まで行くつもりかね?」

カイトは懐からCCを取り出す

「これで行きます」

「CC・・・チューリップクリスタルか・・・やはりそれはボソンジャンプとの関連があったんだね。それとそれを何処で手に入れたんだい?」

「エリナさんからの支給品と言っておきます」

「エリナ君か・・・」

「ええ、ご丁寧にケースに発信機を付けてね」

「・・・・・・」

アカツキは少し居づらい雰囲気を漂わせながら難しい表情をした

「気にしてませんから・・・エリナさんに取ってはボソンジャンプの答えが目の前にあるのに手が出せないのが悔しいのでしょう」

カイトは細く微笑んだ。それはニヤリとした表現に等しかった

「では、失礼します。アカツキさん」

そういってカイトは部屋から出て行く

「カイト君・・・敵にすると恐ろしい相手かも知れないな・・・もっともまだ味方とも言えないけどね」

アカツキは椅子に腰を下ろして難しい顔をしたままになった

カイトは部屋から出た後にすぐCCを使ってボソンジャンプしようとするが問題が起きた。イメージする場所が掴めないのだ。実際カイトは今から行く施設の場所は聞いただけで行ったことはないのだ

(参ったな・・・場所は分かるんだけど・・・まあ、近くに跳べばいいかな。時間かかるけど仕方ない)

カイトはそう思ってボソンジャンプを開始した。顔から体にかけて光の模様が現れる

(ジャンプ)

カイトはナデシコからその場所にジャンプした

カイトが行き着いた先は林に囲まれた場所だった。それはカイトに取っては初めてと言えるほど判らない場所でもある

「行くか」

カイトはその林に囲まれた森の中を一人で歩いて行った



一方ナデシコではと言うと


ポチ

「説明しましょう。この部屋は宇宙空間におけるクルーの精神ストレスを緩和させる為に作られたものです。各自の脳波、その他のデータを自動的に計測し精神スト」

とこの瞬間にアキトがボタンを押して説明叔母さ・・・イネスさんの説明を中断させる

「それじゃあ、アキトさん。二人だけの学園生活にレッツゴー」

「うおおおおおおお」


「馬鹿ばっか・・・」

何処で少女がそう呟いた気がした



その瞬間もカイトは足を休めることなく歩き続けた。そして遠くに大量に光が灯った場所を見つけた。カイトはそれが自分の探していた施設だと判ると一気に足を速める

(ここか・・・)

そしてその施設は規模にしてみれば大きな建物だった。カイトは窓を見つけるとその窓が開いているか調べるが鍵掛かっていて勿論入れない

(仕方ないが・・)

カイトはそのドアを腰から取り出した小太刀の鞘でぶち破る

大量のガラスが割れて落ちると同時にすぐにカイトはその窓から施設内部に進入した。音を聞きつけてベルが鳴り響く中をカイトは疾風のように走る

カイトはこの日に為に拳銃1丁(まだ復讐者だった頃、アキトが持っていた銃)と小太刀と日本刀を持ってきていた。小太刀と日本刀に関してはカイトの趣味が入っている。日本刀と言っても刃が逆に付いている日本刀。逆刃刀と言うわれている刀である。勿論これはカイトが極秘にエリナに頼んで作らせた物の一つである。小太刀もエリナからの支給品である。実際どうやって作らせたのかは不明な点が多いがカイトは気にしていない。拳銃に至っては一度ナデシコで跳んできた時に没収を喰らっているが自力で取り戻している。盗品に近い部分があるが仕方ないとカイトは思っている。

カイトは自分自身の体の能力を調べる事もこの施設破壊の内の項目に入れている。実際カイトはナノマシン改造を受けて人以上の能力がある事は判っていたが運動性の事も気にはしていたのだ。事実カイトは今走っている自分の速度に驚きの部分がある。100mを6秒単位で走っていてそれでいてバテてもいないのだからである

(運動能力もやはり上がっているのか・・・じゃなきゃシルバーエステに乗れないか・・・)

カイトは走りながら自分の目的の場所にと急ぐ。そしてカイトは目的の場所にと到着する

「・・・・・」

カイトはその場の光景に少し嫌気がさした

長丸いケースに入れらている人間・・・その数は10個もないがカイトに取っては嫌気が刺す光景には違いなかった。カイトはそのケースを一つづつ覗く。まだ赤ちゃんのままで入れられているケース。20歳ぐらいの年の男性が入れられいるケース。そしてその奥に6歳の白い髪・・だが少し桃色の掛かった長い髪の少女がその中に居た

「・・・やっと会えたね」

カイトはケースに手を当てると少し悲しい表情を浮かべる

カイトはそのケースを開けるスイッチを見つける為に近くの機械の側に行った瞬間だった

「誰だ?!」

カイトはその声がした瞬間に拳銃を取り出すと素早くしゃがみ込む

「隠れているのは判っている。出て来い!!」

どうやら研究員に見つかったようだ

(足跡からして人数は7人か・・)

カイトは立ち上がると拳銃を向けたままの姿で研究員を見つめる

「きっ貴様は何者だ?侵入者というのは貴様だな」

「それより研究員は全員でこれだけか?」

「なっ」

「質問に答えろ・・・研究員はこれだけかと聞いている」

「・・・・そうだ」

「なら、話は早い。この施設を破壊する。このケースに入っているマシンチャイルドを全員外に出して逃げるんだな。そして今後こんな研究をするな・・・ネルガルはもう気づいたぞ」

「きっ貴様、それをどうやって知った」

「僕は最後の誠意で言ってあげてるんだ・・・さもないと死ぬことになるよ・・君達全員ね」

「・・・・巫山戯るなー!」

「巫山戯るいるのはどっちだ・・・違法でこんなにこの人、この子達を生み出して一体お前達は何を考えている?!」

「それは未来の必要なこ「必要な事だといいたいのですか?貴方達を見ているとある組織を見ているようで許せないんですよ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

静寂がその場を包み込んだ

「・・・ネルガルは気づいたんですよ。僕がこの施設と研究の事を言いましたからね・・・貴方達とこの人達の事を考えると、この施設を破棄を今すぐして謝罪した方がいい・・さもないと僕が潰さなくてもネルガルが潰しますよ」

「君をここで消しても意味がないということか」

「ご名答ですよ」

「・・・・・・・」

「僕が破壊します。それでいいですね・・それに近い未来にここは破壊されるんですよ・・・皆殺しにされてね」

「・・・・そうか」

「ええ」

研究員の一人(多分この研究施設のリーダー格の人)が頷いた

「・・・・君に任せる・・八方塞りな気がしてならないからな・・・」

「それが一番いいです・・無駄な殺しはしたくないし・・・僕だって貴方達の家族を悲しませたくない」

「家族か・・・もう1年間も会ってはおらぬな・・・」

「そうですか・・・」

カイトはその研究員に歩みよると微笑んだ

「普通の生活でいいじゃないですか・・・他の未来より自分の未来を幸せにしてもいいじゃないですか」

「・・・・なんだか肩のに荷が下りた気分だな・・・」

「それで一つ頼みがあります」

「なんだい?」

「このケース・・・あの子を私に任せてもらえませんか?ネルガルにはもう契約してますから」

「・・・そうか、判った。しかしまだあの子はまだ何も知らないぞ」

「構いません」

「では、その子は君に任せよう・・・ネルガルに私達は謝罪せねばならないな・・・大きな罪を作ってしまったな」

「でも、未来はありますよ」

「そうだな」

研究員の人はそう言って微笑んだ

「君の名前を教えてくれないか・・・私達の愚かな行いを止めてくれた君の名前をね」

「カイトです」

「カイト君・・・有り難う」

カイトは微笑んでその研究員と握手すると研究員達はケースに入れられた全員を解放する。そしてコンピュータの電源を落としていく

カイトはその少女の前に行くと微笑んだ。少女はきょとんとした顔をしてじっとカイトの顔を見つめる

「久しぶりだね。ラピスちゃん」



カイトに取って、それは最高の再会だった・・・・・


カイトとラピスはそのまま無人になった研究施設から最後に出る。研究員達は既にネルガル本社に向かっている所だった。他のマシンチャイルドと共に

(あの人達は頭がいいから・・・そして・・優しいから何も起こらなかったんだ)

カイトはラピスを抱っこしたまま施設に残してある車まで連れて行く。研究員の好意で車を一つ用意して貰ったのだ

「それじゃあ、いこうか」

カイトは微笑んでラピスにそう告げた。ラピスはただじっとカイトの顔を見たままコクンと頷いた

カイトは車を飛ばしながらこれからの事を考えていた。ナデシコに帰るのは簡単だったがそれ以前の問題があった。勿論それはラピスだった

(進入者だし・・・国籍もないし・・アカツキさん達が手を回してくれるとは言え・・・)

カイトは人通りに出ると車を止めてデパートに入る

(取り合えず研究室にあったこの実験服みたいな服じゃなくてラピスちゃんにはもっとまともな服買わないと、あ、それと本とかも買わないといけないし・・・その前に文字とか言葉を教えないといけないし・・・)

カイトはデパートの中で頭を抱え込んでいた・・問題は山のようにあるのだ。その間にラピスは車から降りてきたのだろう。カイトの横に来て手を握ってきた

「ん?」

カイトはその感触気づくと横を振り向くるラピスはただきょろきょろしながらも迷子にならないようにと思っているだろうか。カイトの手をしっかりと握ったまま周りを見回していた

「・・・守らないと・・・だね」

カイトは微笑んでラピスの頭を優しく撫でて、そしてその後に重大な事に気づいた。ラピスは裸足だったし、しかも周りの目が痛い事に

「・・・いっいこうか」

コク

カイトカイトは冷や汗を掻きながら急いでその場所からラピスを連れて歩く。そして靴、服、本と順序よく買い物をしていく。勿論服も靴も何着か買っていく。勿論下着もだったが・・・

(視線が・・・痛すぎる)

少々地獄を味わったようだ

ラピスは何が何なのか判らない表情ばかりしているがカイトの微笑みを見ると安堵の顔になるのが判る。

(全然あの時とは違うから・・・大変と言えば大変か)

それでもカイトは嬉しかったのだ。最初からラピスと会えたらと思った事があったから

そして車に戻るとラピスは買ってきて本を読み漁る

「・・わ・・たし・?」

「・・・だ・れ?」

「ん?」

カイトは車のエンジンをかけようとしてその声に気づく

「わ・・たし・・だれ?」

「・・・・君はラピスだよ・・ラピスちゃん」

「ラ・・ピ・・ス・・・わた・・し・・ラピス?」

「そう・・それが君の名前だよ」

「ラ・・ピス・・ラピス・・名前・・ラピス」

カイトは車の中で色々な事をラピスに教えていく。最初は言葉、そして文字、そしてそれの意味

「名前・・・貴方の名前」

「僕はカイト・・カイト・カザマだよ」

「カ・・イト・・・カイト」

ラピスはカイトの顔に手を当てて触った

「これ・・何?」

「これは・・・涙だよ」

「涙・・・悲しいの?」

「嬉しいから・・・悲しいときも出るけど嬉しい時も出るものさ」

「涙・・・」

「嬉し涙・・かな」

「・・・嬉し涙」

ラピスが最初に覚えたことはそれは嬉し涙だった

カイトはラピスに色々教えている間に泣いていたのだ。また会えた事に・・また話させた事に

「カイト・・・もっと色々教えて・・・」

「ああ、ずっと教えてあげるよ・・色々な事を」

「うん」

ラピスはその時に初めて微笑んだ。

何時間経っただろう。カイトはラピスの理解力、記憶力には驚かされていた。たったこれだけの時間で色々な事を覚えていた。それは既に小学生の6年生並みの知識を得ていた。さすがマシンチャイルドとしか言えない事だった。そして未来のラピスより表情が豊かなラピスになっていくのが判った。ただ無表情な所は今でも変わらない事ではあったが

「よし、ラピスちゃん。そろそろ行こうか」

「何処に・・?」

「僕達が居る場所にだよ」

カイトはナデシコに戻る決心を固めた。どんな事があっても必ず離れないと心に誓って

「居るところ・・・?」

「そう、ナデシコだよ」

「ナデ・・シ・・コ?」

ラピスの手を握るとカイトは光の模様を体に走らせてボソンジャンプする。勿論ラピスを握ってない手にCCを持ちながら

そうしてカイトはナデシコに戻ってきた。勿論カイトの部屋なのだが

「さって・・これからどうしよう」

「・・・・?」

ラピスは訳が判らなかった。さっきまで車の中に居たのに今は部屋に座っているのだから

「なに・・・したの?」

「ん?」

ラピスは少し怖がっていた。カイトがしたことに

「大丈夫だよ・・・それに知らないほうがいい。いや・・まだ知らなくていいよ」

カイトは優しくラピスの頭を撫でながら落ち着かせる

そうしてここから出ちゃダメだよと付け加えるとすぐにブリッジにと向かった

そうしてブリッジにと入ると何やら全員がブリッジの窓から下を向いているのが見える

「あれ・・?」

カイトのその窓から下を向くとアキトのエステバリスが白熊を支えていたのが見えた

そしてムネタケ提督が何か言っている横でユリカが拳を握り締めている様子を丁度目撃してしまった

「おい!」

その時だった。後ろからゴートが声をかけてきた

「貴様・・・パイロット全員出撃だと言ったのに貴様は何をしていた?!」

「えっ?」

カイトはその事が何なのか判ってはいなかった

(そういえば・・・たしかこの時にユリカさんが間違えてグラビティブラストを撃って・・・敵に見つかって・・・しまった・・ラピスちゃんの事でこっちの方を疎かにしてしまった・・・)

「そういえばそうね・・・カイト君。貴方ずっと姿が見えなかったけど何処に居たの?」

「えっ・・いや、それは」

(不味い・・・なんとかしないと)

「それは・・えっっと・・・」

「緊急時に何をしていたんだ。貴様は」

「・・・・妹を」

「ん?」

「妹をナデシコの内部で探していました!」

「いっ妹だと」

「はい、僕があの時現れるときに妹と一緒にだったの思い出したんです。それで探してたんです」

(よく口からデマかせを言えるよ・・・ほんと)

カイトは少し情けなくなってしまった

「え?じゃあカイト君はどうしてあの場所に居たのか思い出したの?」

「いえ・・断面的にしか覚えてないだけです。ただあの時にナデシコに来る前に妹と一緒にいた事だけは覚えているんです」

「しかし幾ら妹とは言え緊急事態、しかも貴様がナデシコに来てから大分経っているのに探しに行ったというのか」

「はい・・・そうです」

「まあまあ、ゴートさん。落ち着きましょう」

プロスが間に入る

「それでその妹さんはナデシコ内部に居たんですか?」

「・・・居ました。今は私の部屋に居ます」

「何処に居たのですか?」

「使われていない・・部屋です」

「空き部屋ですか・・そうですか」

プロスは何やら考える仕草をした後、そのまま、まだ怒っているゴートと共にブリッジから出ていった

(・・・・後始末が大変かも・・・)

カイトは内心でため息を付きながらブリッジから出ようとした時だった

「ねえ?カイト君、妹さんは今自分の部屋にいるのよね?」

「えっ?・・はい」

「会わせてくれないから?」

「えっ・・・いいですよ」

不味いと思いながらも断ると変になるのでそのままカイトはミナトと共にブリッジを出て行く

ムネヌケは興味なさそうにその場から退散しているしユリカもメグミメグミも既にブリッジからは出て行ってしまった

「・・・・・・オモイカネ宜しく」

ルリはそう呟くとすぐにカイトが今まで何処に居たか、そしてその妹を探し始めた

(おかしいですね・・・コスモス収容の時にはカイトさん以外の不審者はこの船の中に居ません・・・そしてこの数時間の間にカイトさんは突然姿を消しています。コミニュケも反応してないし・・・切られていた?)

「オモイカネ・・・カイトさんが消えた時刻と場所の映像・・お願い」

ルリは黙々と作業を続けていた。何か見てはいけない気がするがそれでも見ないといけないと思っていたのだ

「・・・これは・・・何」

その映像はカイトが体中から光の模様を放ちその場から消えた映像だった

「オモイカネ・・・この映像を削除して・・」

{了解}

(カイトさん・・・貴方は一体・・・)

ルリはカイトの存在がとても異様な存在になる気分だった


ミナトとカイトはカイトの部屋に戻るとちょこんと正座して本を読んでいるラピスが居た

「ラピスちゃん、ただいま」

「お帰り・・・カイト・・・その人は誰?」

「貴方が妹さんね・・始めまして。ハルカ・ミナトよ」

「妹・・・違うラピスは妹・・・違う」

「え?」

「あっ・・えっとミナトさん、ラピスはちょっとまだ混乱してる所があるからあんまり無理な質問とかやめて貰えますか?」

カイトは苦笑いしながらそう告げる

「それにほら、さっきまでラピスはずっと暗い部屋に居た訳だし、もう疲れてると思うから」

そういってすぐにミナトを追い出すようにカイトは部屋からミナトを連れ出す

「ちっちょっと・・・まだ話もロクに」

「ごめんなさい。ミナトさん」

そうして部屋を閉めるカイト。廊下にそのまま取り残されてしまったミナト

「・・・・妹じゃない?・・・どういう事」

そうしてミナトは納得がしないままブリッジに引き返すことになってしまった

「ふぅ・・・」

カイトはその場にしゃがみ込んで大きなため息を付く

「つらいな・・・みんなに嘘付くのは・・・嘘つけないし・・・僕は」

本当に辛そうな顔をしているカイトの膝の頭を乗せてゴロリと横になるラピス

その頭を優しく撫でるカイト

(・・・・これからどうしよう)



本当にカイトに取ってはこれからが大変なのだ

ただこれだけは言える・・・カイトはラピスを守るのだと










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