機動戦艦ナデシコ    〜忘却の白銀色の戦士〜
 

                                  これが・・・・・・最後だから・・・・・

                                  これが終わったら僕は・・・きっと

                                  地獄にいけるから・・・だから・・・

                                          だから



                                  最後に・・・・・・・あの子の・・・・







                     
最終章 約束と言う剣持つ戦士 (前編)









火星遺跡


「この者と少し話がしたいので攻撃はするな。決して我の邪魔をするなよ」

「了解です。南雲様」

カイトは加速してるシルバーを夜天光の前に止めるとフィールドランサーαを取り出した。

「どういうつもりだ。何故攻撃を仕掛けない?」

「殺人傀儡よ。貴様は生きたくないのか?」

「黙れ」

シルバーは夜天光だけを攻撃するがまるであざ笑うかの様にカイトの乗るシルバーの攻撃を避けながら通信越しにカイトに話かける

「貴様は道具だ。殺人と言う名の付く我々が作った道具なのだ。良いではないか。道具でも生きていけるのに何故死に急ぐ」

「黙れ!」

シルバーが両手にフィールドランサーα掲げあげ夜天光に斬りかかるがそれを大型錫杖で受け止める

「それに貴様には死なれては困るのだ。我々が敗北してきた歴史を塗り替えて貰わないといけないのだからな」

「なに?」

シルバーは後方に下がると南雲の話の口から火星の後継者の全貌の企みを聞く事になる

「我々は常に敗北してきた。草壁中将様もそして北辰もな」

「・・・・・・・・・・」

「だが、それでも何故この様に余裕があるか。分かるか?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「それは貴様が居たからだ。貴様が遺跡ユニットと融合する事により歴史、つまり木星の戦いの頃からの歴史すら塗り替える事ができるのだ」

「な・・・に・・」

カイトは何を言っているのか理解が出来なかった。それ以前に歴史塗り替える事など到底できない事なのだから

「貴様はこう思っているだろう。歴史が戻る訳がないとな。しかし何故遺跡ユニットが消滅すれば現在、過去。そして未来さえもなかった事に出来るのか、考えた事はなかったか?」

(・・・遺跡ユニットが消滅すれば、そんな事考えてもいなかった・・・・)

「フッ、そうなのだよ。貴様は鍵なのだ。貴様が遺跡と融合し、そして我々が歴史を意のままに動かす事が出来る。つまり我々が歴史の支配者になれると言うことなのだよ。ミカズチ!」

「・・・・・・・・巫山戯るな」

君のナノマシン量を上げて置かないと遺跡との翻訳機の代わりには為りにくいからねぇ・・・・ヤマサキはあの時そう言った

(翻訳機・・・・ユリカさんがどんな扱いを受けていたかは知っていた。それ以上の事をこいつらは考えていたのか・・・)

「その為に・・・
イツキを・・・イツキを僕の中に組み込んでアサミを殺したのか!!

「このプロジェクトは貴様が生まれた時から考えられていたプロジェクトだ。勿論貴様が居なくなった時は代わりの物を作る予定だったが、それも必要無くなったのだよ、貴様が帰ってきたからな」

人の・・・人の命を何だと思っているんだ!


シルバー加速して夜天光の大型錫杖に攻撃を加えたたき落とした。大型錫杖は遺跡の地下中心部に落ちていく

「ぐっ、・・・貴様は人ではない。道具なのだ。我々に取っての最後の切り札でもある。だから我は泳がせた。貴様が此処に来る事が分かっていたからな!

夜天光はシルバーの片腕を持つと手刀を繰り出しシルバーの片腕を小破させる。片手が無くなりもう片手だけにフィールドランサーαを握るシルバー

「所詮、貴様は我々手の中で踊らされていたに過ぎないのだ。全軍に次ぐ、白銀天光の捕獲、いや機体は破壊していい、ミカズチを捕獲しろ」

「了解」

・・・・・巫山戯るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

シルバーは無人兵器やエステの攻撃を避けながらも片手のフィールドランサーαを巧みに使いこなし、敵戦艦を落としていくが数に押されるのは当然の結果だった。しかしカイトは休む事なく戦闘を続けていた。しかしそれがいけなかった

「はぁ・・はぁ・・・ぐっ」

カイトは胸を押さえて薬3粒を飲み込んだ。残り5粒

(・・・もう、後がない・・・か。)

シルバーは完全に包囲されている中心でその動きを止めた。

「南雲・・・一つだけ教えてやる」

「・・・なんだ」

「薬が切れれば、僕は死ぬ。それで貴様の計画はもう終わりだ」

カイトはそう言うと冷たく笑った。だがその笑みを見た南雲は高笑いを始めた。

「は〜はっはっはっはっ、そうだな。早く死ぬがいい。そうして肉体を差し出せ。我々は貴様の肉体だけしか必要ないのだからな。何故私が貴様を生かしておきたいと思ったと思ってる?、それは貴様が戻ってこれば歴史の清算なぞしなくてもこの宇宙を制圧できるからだ。それだけの器が貴様にはあるからな。は〜はっはっはっは」

「なっ・・・・」

愕然とした。どちらに転んでも自分は道具だった・・・復讐してきたつもりが手の中で踊らされて、結局は南雲のシナリオ通りだったのだ

(僕は・・・今まで何をしてきたんだ・・・)

「さあ、観念するといい、ミカズチよ」

(僕は・・・復讐してたんじゃなかったのか・・・結局は道具だったのか・・・)

(諦めないで・・・・ミカズチ・・・お願い。生きて)

(イツキ・・・僕はもうダメだよ。投げ出せばよかった。残りの命でみんなと一緒にいればよかった・・・)

(絶望しないで、生き・・・いえ、もう生きてなんて言わない。だけど・・・せめて最後に貴方だけしか出来ない事を・・・貴方がするべき事を)

(僕の・・・すべき事・・・)

「また会って下さい・・・」

(ルリちゃん・・・
ルリちゃん!

「僕は・・・約束は守る。破りたくない。破られる約束は約束じゃないんだ

シルバーはまるで魂が戻ったかの様に最大の加速で敵を切り刻んだ。かなりのGがカイトを襲うが気にして入られなかった

「む、ミカズチよ。貴様」

「僕は約束を守る。嘘つきには為りたくない。嘘をつきたくてもつけなんだ!」

「何を分からぬ事を」

「分からないでいい。貴様のみたいな奴が僕を分からないでいいんだ」

シルバーは加速しながらボソンの光をその身に纏う

「ジャンプ」

「なっ?」

シルバーは夜天光の後ろに回り込むジャンプをすると後ろから切り裂いたが切り裂いたのは夜天光の背中の部分だけだった

「己・・・最後の最後まで足掻くか。この道具が」

「道具でいい。でも僕は・・・生きてるから」



・・・・・・・・・・・約束を必ず守るから・・・それまでは生きるから・・・・ルリちゃん




ナデシコC  火星遺跡付近



「つまり、ラピス。カイトはもう火星遺跡に居るのか?」

「・・・うん。もう戦闘してる・・と思う」

ラピスはブリッジにアキトと共に来て現在のカイトの現状を説明していた。自分がカイトにボソンジャンプで送られた事、既にカイトは遺跡で戦闘をしている事

「・・・・カイトさん。急いで下さい。皆さん」

ルリは話を聞いた瞬間、嫌な予感がした。二度と彼とは会えないそんな予感さえしていた。

「ラピス、お前は医務室で休んでいるといい」

アキトはラピスにそう言うがラピスはブリッジから動こうとしなかった

「ラピス・ラズリ。こっちに座っておきなさい。そこに居ては邪魔よ」

「・・・・・・・」

ラピスは無言のまま瞳を潤ませながら、イネスの言われた席に座る

「ルリちゃん。俺はブラックサレナに搭乗しておくから、すぐに発進できる状態になったら許可をお願いする」

「分かってます」

アキトとサブロウタはそのままブリッジを出た。サブロウタはラピスと初対面だが何故か無性に苛立ちを覚えていた

(あんな可愛い子を泣かすか、普通。カイト・・・お前変わっちまったな)

サブロウタはカイトに一回だけ会っている。火星遺跡調査の時の見送り人として、印象はとても優しい、そしてとても穏やかな青年だった事を記憶していた。

「カイト、お前。最低だな」

サブロウタはそう呟きながらアキトの後を走って追って言った

「カイト君。・・・間にあってくれるといいわね」

「必ず間に合わせます」

ミナトのその問いにルリは胸の辺りで拳を作った

「・・・そうね。間に合わせないと」

「ルリちゃ〜ん」

突然通信が繋がれてユリカの顔を出す。

「ユリカさん。どうしました?」

ナデシコBの修理完了したよ」

「そうですか」

「うん!。あれ?アキトは?」

「アキトさんは既に格納庫で待機しています」

「あ、そうなんだ。なんだ、つまんないの」

もうすぐで戦闘と言うのに相変わらずのマイペースである

「取り敢えず、エステバリスの整備も完了してるから戦闘に何時為っても大丈夫だからね」

「了解です」

「じゃあ、ばいば〜い」

そうして通信を切るユリカ、そのすぐ後にエリナがレーダーに反応を捕らえた

「えっ?・・前方に戦艦一機確認。識別信号は無し・・いえ、これは」

「ユーチャリス・・・ですか?」

ラピスは立ち上がりエリナに問いかける

「・・・ええ」

「・・・・・・・・」

ナデシコは無人のユーチャリスにラピスをイネスの単独ボソンジャンプでユーチャリスにジャンプした。

「・・・ダッシュ・・・カイトは?」

{・・・・・・・ご主人様は・・・もう火星遺跡で戦闘を開始しています}

「・・・・そう・・」

(私の家・・・・思い出の場所・・・カイトは残してくれた・・・カイト・・)

「カイト・・・・ひっく」

イネスは後ろの方で泣いているラピスを見る事しか出来なかった

「カイト君・・・貴方は・・・人を悲しませるのが上手になったわね」

そう一言呟いて

「ユーチャリスは戦闘に出す事はできませんね」

「・・・・はい」

ラピスはナデシコに戻るとルリとユーチャリスをその後どうするかで話をしていた。

「では、ラピス。貴方はここにユーチャリスと残っていて下さい」

「・・・・・・・」

ラピスは無言のまま、少し下を向いている

「宜しいですね?」

「嫌です」

「・・・・ですが、ユーチャリスを戦闘に参加させる事はできません」

ルリはラピスをかつての自分と重ねていたのだ。だからこそユーチャリスの参戦を硬く拒んだ

「貴方の事はアキトさんから聞いています。そして貴方の気持ちも分かりますが、カイトさんの気持ちも分かってあげて下さい」

「・・・分かってる。だからユーチャリスには乗らない」

「ナデシコに、残るのですね?」

ラピスは頷いた。

(せめて、カイトの近くに行きたい。危ないって怒られてもいい。カイトの側に行きたい)

ルリは無言のままラピスを見つめる。そしてラピスも見つめる

「分かりました」

ルリはそう言って艦長席に座る。

「・・・有り難う。ルリ」

「別にお礼されるほどの事じゃないです。それに」

「それに?」

「貴方は、私の子供の頃によく似てますから」

ルリがそう言うとラピスは笑った。瞳は泣き疲れて赤くなっていたが、それでも笑った。その言葉が嬉しかったから

「急ぎましょう。火星遺跡へ」






火星遺跡


ドォォォォォォン

凄まじいほどの爆音が響く。爆風の中からはシルバーが浮上してくる。既に左足は無くなり、傷だらけでオイルな様な物が傷口からまるで血の様に流れ出していた。

「ハァ・・・ハァ・・ハァ」

カイトは胸を押さえていた。あの時の発作から薬を飲んでいなかったからだ。幸いまだ5粒から減っていないが、そのせいでかなりカイトは苦しがっている。薬とて即効性の効果がある訳ではない。そうして今日と言う日は29日目。カイトが目覚めてから29日目である

「ミカズチよ・・・そなた一人でよくここまで戦った。どうだ、諦めて我々と共に歩まないか?貴様は我も超える器なのだ。もうよいではないか?」

南雲はカイトにそう告げた。たしかにカイトの技量、精神力、集中力はあのアキトすら凌ぐほどだった。だからこそ南雲はカイトが欲しかった。

「五月蠅い・・ハァ・・・んだ・・ハァ・・」

「そうか・・仕方ない」

南雲はそう言うと近くよってきたエステから大型錫杖を受け取る。

「・・・武器が・・・ぐっ」

シルバーに向かって大型錫杖を夜天光は投げつける。シルバーはそれを難無く避けるがそれはブーメランの様に回転してシルバーに戻ってくる

「ちっ・・・」

カイトはボソンジャンプしてそれを避ける

「ほう、その体で飛ぶか」

夜天光はその武器を手元に戻すと、少し離れた横のシルバーを睨む

「ぐっあぁぁ」

カイトは胸を押さえ、必死に痛みを耐えた。手元の薬を2粒飲み込む。体に負担をかける。ボソンジャンプ、しかもカイトの場合はナノマシン量は多いがそれぞれ違う種類のナノマシンが体の中にはあるのだ。一つは自分のナノマシン、もう一つはイツキのナノマシン、ジャンプすればその二つのナノマシンがより合わさる。それで拒否反応を起こして、体がボロボロになっていくのだ

(目が・・・霞んできた・・・このままじゃ不味いかな・・)

(・・・ミカズチ)

(イツキ、そんな悲しい声をしないで、僕は大丈夫だから・・さ)

(ミカズチィィ)

「泣かないで・・・よ。イツキ」

「・・・・もう、よい。終わりにしてくれようぞ。・・・ミカズチよ」

夜天光は武器を構える。シルバーは棒立ち様な形に為っていた。

「さらばだ。木蓮の最強の戦士よ」

ザッシュ!!!!!























ナデシコBとCが遺跡に到着した。ルリ、アキト、ラピス、ユリカ、そしてナデシコクルーが見たものはあまり過酷なものだった

シルバーエステバリスに胸元に突き刺さる大型錫杖。

そうして落下していくシルバーエステバリス

「あっ・・・ああ」

ルリはその光景を見て一瞬に悟った。間に合わなかったのだと

「・・・・・カイト」

「カイト君!」

カイト〜〜〜

ウィンドウで送られてきた映像見て、ブラックサレナに乗るアキトは叫んだ。そうして、まだハッチも開いていない状態なのに発進しようとブースターを点火させる。

「おっおい、落ち着け、アキト。まだハッチは」

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ブラックサレナはボソンジャンプしてナデシコCの目の前に出る

南雲ぉぉぉぉぉ

アキトは体全体を発光させながら、夜天光に突っ込む

「むっ、あの黒い機体・・・黒の復讐者か!」

「ナデシコBとC戦艦も確認されてます」

「ミカズチの回収を急げ。地下に落ちているはずだ。肉体だけでも確保せよ」

「了解」

何機かのエステバリスが火星地下に向かっていく

「逃がすか」

ブラックサレナは夜天光から矛先を地下に向かうエステに絞る、そうしてハンドガンを連射させ、全てのエステを落とすと同時に矛先をまた南雲に向ける

「ぐっ、貴様」

が南雲はブラックサレナの攻撃を反転しながら避ける

「よくも・・・よくもカイトを、大切な家族を・・・」

「ふん、奴にも家族が居たと言う訳か・・・道具風情のくせに」

だまれ〜〜〜

そうしてブラックサレナと夜天光は戦闘を開始した。ナデシコBからはエステバリス隊が出動して戦闘を開始していた。

「このくそ野郎共が〜」

「・・・・・カイト君」

「・・・くっ、リョーコ、ヒカル、フォーメンションを忘れないで」

目の前で落ちていくシルバーを見たせいか、リョーコとヒカルは単独で敵を破壊させていく。イズミはそれを落ち着かせる為にフォローに回るがフォーメンションはバラバラだった

「艦長。ハッチはまだ開かないのか?」

ナデシコCではハッチ自体が開かないのでサブロウタは苛立っていた。

「ルリルリ、しっかりして?・・もう!」

ミナトは指示を待たずにハッチを開けた。

「お待たせ、ごめんね。遅くなっちゃったわ」

「どうしてこんなに遅くなったんだよ」

「・・・ルリルリが・・」

「え?」

ルリは艦長席で放心した様に座ったままだった

「また会ってくれるって・・・言ったのに・・・」

涙を流しながら、何もない空間だけを見つめるルリ、その時ラピスが近寄ってきてルリの頭を撫でた。

「!!」

「カイトが居たら・・・きっとこうしてるもんね」

ラピスも瞳からは涙を流しながら、ルリを撫でる

「ラピス」

ルリは頭にあるラピスの手を握った。そして

「有り難う。ラピス」

涙してそう言った

「私は諦めない。カイトは約束を破らないから、だからきっと、ルリに会いに帰ってきてくれる」

ラピスは涙を流しながらも微笑みながらそう言った

「そうですね。知ってますよ。そのぐらい」

ルリも微笑む。彼女もまた涙を流しながら

「これから火星の後継者へのハッキングを行います。ラピス、バックアップをお願いします」

「了解。ルリ」

ラピスはルリから離れるとハーリーが座るべき席に座る

「皆さん、カイトさんは必ず生きて戻ってきてくれます。・・・だから」

ルリは全通信を繋げて断言する

「だから、お帰りと言ってあげて下さい」







カイトさんは帰ってくる。そう信じてる。

だから・・私達はお帰りって言ってあげよう

私達は笑ってあげよう。

きっと彼も笑ってくれるから・・・・










どうも、闇光です。いやーついにここまで来ました。最終話、約束言う剣持つ戦士、カイト君は一体どうなったんでしょうか?

帰ってくるのでしょうか?

それは来週のお楽しみです。ちなみにもうここまで来たらゲストなんて呼べません!!ええ、呼べませんとも・・・・(怖いから・・

では、次回で会いましょうーー

「よくも・・カイトさんを」

ギク・・・・・(生きてたらまた会いましょう






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